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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
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第6話トラック沖海戦 重巡「古鷹」の死闘

古鷹の活躍です

「古鷹」は敵二番艦に対し第五射を放つ。

まだ夾叉弾を得られていないため、交互打ち方の状況である。

「まだ斉射に移行出来ないのか?」

中川艦長は、再びそう呟いた。

敵一番艦に対しての砲撃では、すでに斉射に移っており、直撃弾を得ている頃だったのだが今回は、着いてないのか、未だ斉射に移れずにいた。

その間に五射目の射弾が、着弾する。

「至近弾2!」

見張り員から、待望の報告が漸く届く。

「次より斉射!」

中川艦長が間髪入れずに命令する

そして「古鷹」は、一番砲の装填を待つ間暫く12センチ高角砲のみの射撃となり、主砲が沈黙する。

そして20秒が過ぎた頃、今日2隻目に対する斉射を放った。

交互打ち方に倍する衝撃が「古鷹」を、襲う。

計6発の主砲弾が敵二番艦を、叩きのめすべく飛翔していく。


「またか!」

たった今「古鷹」が斉射を開始した駆逐艦の艦長が喚く。

先程先頭艦を打ちのめした、敵巡洋艦の斉射が今度はこの艦に襲いかかろうとしているのだ。

こちらも、命中弾を出してはいるが駆逐艦の5インチ砲程度では、巡洋艦に打撃を与えるには至っていないようだ。

こちらの巡洋艦は、敵駆逐艦との戦いに忙殺されている為、暫く応援には来ないだろう。

「総員対衝撃体勢とれ!」

彼がそう言うのと同時に、艦が至近弾の衝撃により激しく揺さぶられる。

今回は、命中弾を喰らわなかった様だ。

しかし、薄い鋼材で出来ている駆逐艦の艦体がいつまでも、敵巡洋艦の射撃に耐えられるとも思えない。

艦が水柱を突き破るのと同時に、艦は5インチ砲5基を用いて敵巡洋艦に、砲弾を浴びせる。

再び、敵巡洋艦に命中弾炸裂の閃光がきらめく。

しかし、敵艦が弱った様子を見せる事はない。

恐らく防御力の高い、弦側に当たり表面で炸裂したのだろう。

そして今度は、5インチクラスと思われる砲弾が2発、着弾する。

水中爆発の衝撃は比べ物にならない程小さいが、直撃すればタダでは済まないことは、確かである。

そして、その少ない衝撃が収まる頃には再び、主砲を放つ。


「直撃弾は得られないか。だが、大丈夫だ」

中川艦長が自身を納得させるように、呟く。

その頃には、主力戦艦同士の距離も、26000にまで詰まっており、いつ11隻同士の艨艟による艦砲戦が始まってもおかしく無くなっていた。

そんな中、「古鷹」は敵駆逐艦と死闘を繰り広げている。

今のところ「古鷹」が優勢に戦いを進めているが、どうなるかは分からない。

そう考えている間にも、「古鷹」は第九斉射を放つ。

その間にも、敵駆逐艦3隻からの砲弾が裁断無く、「古鷹」の周囲に着弾する。

これでよく、数発の被弾しかしていない。そう思えるほどの数である。

そして、「古鷹」が第十斉射を放とうとした時だった。

漸く敵ニ番艦に、命中弾炸裂の閃光が上がる。

「命中弾2!」

見張り員からの、報告が入る。

そして数瞬敵艦は突如として大爆発を起こした。

「敵ニ番艦轟沈!」

見張り員の歓喜の声が上がる。

敵ニ番艦は、魚雷発射管に命中弾を喰らったのか、姿形ももう、みえなかった。

これで残る敵艦は、三、四番艦の2隻のみである。

「古鷹」は1対4という劣勢ながら、敵駆逐艦を撃沈していたのだ。

「目標三番艦!行けるぞ」

艦長が、気分を高揚させた声音でいう。

もう、「古鷹」がやられる事は無いだろう。

そう確信した声だった。

艦長が、言い終わると同時に「古鷹」は初っ端から斉射を行う。

敵艦との距離が、7000まで詰まっていたのだ。

それは、敵艦が戦艦同士の砲撃戦が近い事を悟ったのか、戦艦列に突撃を仕掛けたからである。

しかし、「古鷹」は素早く敵艦の動きに合わせ、丁字戦の要領で敵の頭を抑えたのだ。

これなら敵艦は、「古鷹」に向け針路を変更しない限り、魚雷を放てない。

「行くか?」

彼は、「古鷹」の砲術科員の腕なら、初弾命中が果たせるそう思った。

それには敵艦との距離が詰まったこともあった。

夜間ならば微妙な距離だが、今は昼間である。

しかも今日は、雲一つない快晴なのである。

照準は正確に行えるのだ。

そして、係員が「じかーん」と発すると同時に敵三番艦を、水柱が包み込む。

直撃弾を得れたかは、すぐにははっきりしない。

「直撃弾全部にあり!」

見張り員からの、興奮に満ちた声が伝声管を伝って、届く。

「古鷹」は速くも直撃弾を敵三番艦に得たのだ。

よく見ると、艦橋が消滅してるように見える。

「古鷹」の射弾は敵三番艦の艦橋の基部に命中し、艦橋を消し飛ばしていたのだ。

それでも、敵三番艦は射弾を「古鷹」に浴びせてくる。

しかし、その抵抗をあざ笑うかのように「古鷹」の第三斉射が艦首部喫水線付近に命中する。

その一撃によって、敵三番艦の速力は12ノットにまで、落ちていた。

おそらく、隔壁を破られない為に最上級者が機関を、止めさせたのだろう。

その為「古鷹」の第四斉射は、敵艦の前部に水柱を吹き上げただけに終わった。

しかしその瞬間、「古鷹」を大きな衝撃が襲いかかった。

「どうした!」

中川艦長の怒号が、飛ぶ。

最後に残った敵四番艦の放った、5インチ砲弾が艦首甲板と艦尾甲板に計ったかのように命中したのだ。

その為、実害は大したことはないが大きな衝撃を「古鷹」にもたらしたのである。

「前甲板に被弾するも損害軽微!」

「後甲板損害小!」

の報告が、続けて入る。

「古鷹」は、運良く被弾しても問題のない箇所に、被弾したのだ。

「いいぞ。敵は後一隻だ!」

中川艦長が、砲術科員に向けて言う。

今日は近距離戦という事もあるだろうが、命中率が良かったのだ。

敵三番艦との砲戦では、初弾命中という砲術科員ならば誰もが夢見ることを、成し遂げたのだ。

「目標敵四番艦。打ち方始め!」

砲術長の命令とともに、6本の砲口から火炎が煌めく。

それと同時に、強烈な衝撃がどことは言わず襲いかかる。

またその衝撃波によって海面が押さえつけられ、お椀のようにえぐられる。

そして、しばらくすると敵三番艦の周辺に水柱が林立する。

「古鷹」は今だにその戦闘力を、削がれることなく保持しているのだ。

その頃、お互いの艨艟共の激突が始まろうとしていた。


「距離25500!」

砲術長からの報告が、松田千秋艦長の元に入る。

艦橋上部に備え付けられた、15メートル測距儀と二号二型(ニニ号)電探双方の数値から出した値である。

この電探は、二つのラッパ状のアンテナが付いており、発信と受信に役目が分かれている。

第一艦隊は、「大和」を先頭に単縦陣を組んでいる。

各艦の間隔は2000メートル程度である。

「大和」の後方には、十一戦隊の「加賀」「土佐」「長門」「陸奥」の4隻を始め10隻の艨艟達がいる。

そしてその瞬間が、ついに訪れた。

「距離25000!」

その報告が入ると同時に、渾身の力を込めて高須長官は「打ち方始め!」を下令した。

それと前後して、「大和」艦長松田大佐も「主砲打ち方始め!」を砲術長に下令する。

その声は、彼がかなり興奮しているのが良く分かる、声音だった。

その高須長官の命令は、隊内電話によって他の艨艟達にも届いている。

そして遂に、艨艟達の砲口に溢れんばかりの火炎が、噴出する。

「大和」も各砲塔の一番砲から第一射計3発の46センチ砲弾を、撃ち放つ。

先ずは、交互打ち方によって弾着修正を行うのだ。

「大和」の場合、それが終わればおよそ40秒ごとに46センチもの砲弾を9発叩きだすことが出来る。

発射の瞬間「大和」の艦橋に、主砲射撃に伴う衝撃が襲いかかる。

「加賀」までの41センチ砲などとは、比べ物にならないほど大きく、そして重々しい衝撃だ。

そして、「大和」艦橋から見える第一第二砲塔の一番砲から噴煙が、流れ去った頃敵一番艦の艦上に発射炎が煌めく。

敵艦隊も、第一艦隊に向けて砲撃を開始したのである。


「敵撃ち始めました!」

第一任務部隊旗艦「サウスダコタ」の艦橋に、見張り員からの報告が届く。

すでに艦橋に詰めている、ハルゼーを始めとする艦隊首脳部もはっきりと、敵艦に発射炎がきらめいた事は見ていた。

「こっちも、打ち方始めだ!」

ハルゼー長官が、敵に先手を取られたと言いつつ、命令する。

その瞬間「サウスダコタ」は、砲撃の反動で激しく戦慄いた。

「サウスダコタ」もまずは砲塔ごとに一門づつの、交互打ち方である。

後続する「インディアナ」「ノースカロライナ」「ワシントン」3隻の新鋭艦も撃ち始める。

それだけでは無い。日本艦隊の全艦が撃ち始めたのに呼応するように、第一任務部隊の全艦が砲撃を始める。

敵一番艦の放った砲弾が放つ飛翔音が、大きくなったそう思った瞬間艦の前方に3本の水柱がそびえ立つ。

まだ照準は甘いらしく「サウスダコタ」に取って脅威になるものではない。


「全弾敵艦前方に着弾しました」

見張り員から第一の報告が入る。

大和の主砲弾には赤い染料が少量混ぜられており、自艦が放った砲弾かどうかの区別をつける事が出来るのである。

現在のように、整然とした打ち合いの際はあまり意味が無いが、乱戦下には効果を発揮するだろう。

「大和」の生涯初めての敵艦に向けた射撃は、至近弾すら得ることなく終わったのだ。

この頃には、「加賀」を始めとする麾下戦艦達も撃ち始めており、「大和」の艦橋からは「加賀」の放った5発の砲弾の着弾が、辛うじて見えた。

それを見ると夾叉はしていないが、「大和」に比べれば余程近い位置に着弾したみたいだ。

「旗艦の意地を見せるんだ!新鋭艦だからと言って技量が低くない事を、見せつけるんだ!」

砲術長に発破をかけるように言ったのは松田艦長だ。

まだ焦っているような口調ではないが、「加賀」の方が正確な初弾を放ったのを見て、旗艦の意地にかけてもの思いが、強く出たのだろう。

「まだ始まったばかりだ、そう焦らんでもいい」

そう松田艦長をなだめるように言ったのは、第一艦隊参謀長の小林謙吾大佐である。

「分かってますよ。ただ旗艦が無様な様を見せるわけには行かないではないですか」

そう松田艦長は言った。

その頃「大和」と相対している敵戦艦からの、砲弾が着弾する。

吹き上がる水柱の本数は3本であり、見張り員の見立て通り、敵新鋭戦艦が「大和」の相手である。

しかしその水柱は、「大和」後方のかなり離れた箇所に吹き上がっている。

まだ敵の照準もかなり甘いようだ。

「負けられないな」

高須長官がそう呟いた時だった「大和」は初弾のデータによる諸元修正を行った第二射を、二番砲から放ったのである。

今度も先ほどと変わらず、重い衝撃が襲いかかる。

しかし「大和」自体の揺れは大したことはない。

満載排水量72000トンを誇る巨体と、39メートルに迫る艦幅が、主砲射撃の衝撃を楽々と受け止めているのだ。

この様に幅が広く安定性の高い艦は、大口径砲を搭載するプラットホームとして最適なものであると言える。

そして、「大和」の第二射に若干遅れる形で、敵一番艦も第二射を放つ。

どちらも第一射より精度の良い、射弾を送り込む事が出来るだろう。

そして先に放った「大和」の第二射が敵艦を包むように着弾する。

「至近弾2直撃弾無し」

見張り員の報告が、即座に入る。

「大和」は速くも、至近弾を出したのだ。

「もう一度、修正射を放ち次第斉射に移行!」

松田艦長の力強い、声が艦橋に響き渡る。

松田艦長が言い終わるや、敵の放った射弾が海面に着弾する。

しかし先ほどと同じように、至近弾は全くない。

「大和」は敵に先駆けて、至近弾を得たのだ。


「行けるか?」

第二戦隊の戦艦「伊勢」艦長武田勇大佐は、不安げに言った。

「伊勢」と早退する敵艦は、長門型と同時期に竣工したアメリカ海軍初の16インチ砲搭載戦艦であるコロラド級である事に間違いなかったのだ。

確かに主砲塔を4基搭載している合衆国の艦は他にもある。

しかし、それに当てはまる艦はニューメキシコ級を始めとする14インチ砲搭載艦である。

しかし、今しがた「伊勢」の前方に吹き上がった水柱の大きさから見るに、それは明らかに16インチ砲の物であるのだ。

「伊勢」の持つ14インチ砲弾とは比べ物にならない、太さであり高さである。

確かに、「伊勢」は14インチ砲12門搭載であり門数では、1、5倍を持っている。

それに、コロラド級は十分な対16インチ砲防御を施されていないとの情報もある。

だが、対41センチ砲防御を施されていないのは「伊勢」も同じである。

どちらかと言うと重装甲なのが特徴である米戦艦である。確実に14インチ砲対応の防御力は持っている。

しかし、当たってしまったからにはやるしかない。

それに主砲の直径の面で劣勢なのは「伊勢」だけである。

その為、苦戦したとしても敵艦を片付けた僚艦が援護に回ってくれることみ考えられるだろう。

「伊勢」はそんな艦長の思いなど知らない、と言ったように第三射を放つ。

その瞬間6基の主砲塔の12門の砲身のうち、半数の6門の砲門に発射炎がほとばしる。

「伊勢」は修正射の時点からすでに、一回につき6発の主砲弾を放っているのだ。

第6話完

遂に心踊る戦艦同士の艦砲戦が始まりました!

最近アオシマの天城作り始めた

やっぱ空母はパーツ数多い

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