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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
章間 激戦前夜 新作戦準備
64/66

第63話 日英海軍次期作戦会議

お久しぶりです ほぼ三か月ぶりの更新です


今回は文章推敲に気を付けましたので誤字脱字少ないと思います

1942年10月下旬

台湾から、二式大艇4機及び護衛の零戦12機がシンガポールにあるイギリス東洋艦隊司令部に向けて発進した。

 二式大艇には、宇垣纒参謀長及び黒島亀人参謀の二名と、従卒が乗り込んでいた。

 彼らは2機の二式大艇に分かれて乗り込んでいた。

 すなわち、残りの2機の二式大艇はおとりであった。

 そこまで用心しているのは、航路の中ほどに敵の要衝である、フィリピンが横たわっているからだ。

 もし1機にまとめて乗っていた場合、その機が落とされた瞬間連合艦隊の参謀長及び参謀が戦死するということになるからだ。

 一見飛行艇であり、重鈍であると見える二式大艇だが、最高速度は、470キロをたたき出す、高性能機であった。

 護衛は、最近では力不足になりつつある零戦ではなく、新鋭の紫風を付けたかったが、まだ十分訓練が終わっておらず、技量に不安が残るということで熟練者の乗る零戦で固められている。

 「この作戦のが、英国側に認められるかは、ひとえに君の説得にかかっている。

 本来なら私が行きたいところらが、忙しい身であるし、GF長官ともあろうものが、内地ら消えるというのも問題がある。

 また道中の危険を考えると、下手に危険地帯を通ることも避けなければならないからな」

 任せてください、長官…

  そう宇垣は、退任を任された時のことを思い返していた。

  そう独りつぶやきながらかれは、4基のエンジンがもたらす振動で眠気を誘われていた。

  それからしばらく宇垣は、まどろみに落ちていった。

 それは黒島参謀も同じようだった。

 ここ最近は、ルソン攻略作戦の計画づくりに、奔走していたからだ。

 それは、連合艦隊司令部、軍令部内のほとんどがそんな状況だった。

 ほかにも石油の備蓄状況の調査、トラック沖海戦で損傷した艦艇の修理計画の作成など、やることは山積していた。

そんな中での、大作戦である忙しくならない道理がなかった。


 そのころシンガポールでは、東洋艦隊司令長官のジェームズソマーヴィル大将や、G、H両部隊の指揮官、参謀の各員が司令部に集合していた。

 理由は、日本海軍との共同作戦についての会議を、両国の将官、佐官を交えて行うためである。

 「今頃出発したころ合いだな」

 ソマーヴィルはそう、誰に言うこともなくつぶやく。

  かなり早い時間帯に集合となったのは、東洋艦隊内の意見を決めるためであった。

 また、作戦に対する疑問点問題点の洗い出しも行う必要がある。

 これまでは、特に将官クラスの面々が集まる機会がなかっただけに、直前に集まる羽目になったとも言えなくなかった。

 また、第一海軍卿からは、作戦を受けるかどうかは、現地裁量で行っていいとの、訓示が来ていた。  

 理由としては、極東方面の作戦については本国から、とくに合同作戦については、指示を出さないという方針を立てたからだった。

 それは、東洋艦隊に高い独自性が与えられるということであった。

 理由としては、いちいち報告を本国に上げて、返答を待っていては、戦機を逃すことが往々に起こってしまうと考えられたからである。

 それでは、何のために日本と手を結んでいるのか アメリカに宣戦布告したのか意味がなくなってしまうと、も割れたからであった。

 だが方針といて、明らかに無茶な作戦は受けないように、判断に困るような作戦については、本国に送るよう指示を出されてもいた。

 それをしないということは、十分勝算があると彼らが認めているという証拠であった。

 さらに言えば彼らとしてもフィリピンの米軍が、目の上のたん瘤と認知されているということだろう。

 この点での、認識は日英ともに、同一だったのだ。

 「この作戦について、の意見は何かあるか?」

 ソマーヴィルはそう、居並ぶ面々に切り出した。

 「司令官は、日本海軍の要求をどこまで飲むつもりですか?」

 まず発言したのは、G部隊司令の、バーナードローリングス中将である。

 「彼らの要求には、基本飲もうと考えている。

 むしろここで出し惜しみをして、フィリピン、マッカーサーの引きこもるバターンを落とせないようなことがあれば、これからに響いてくるからな。

 そう、ソマーヴィルは、言いよどむことなく返す、

  「しかし、アメリカの投入してくる戦力が分からない以上、慎重を期したほうがいいと思います。

 作戦素案を見る限り、日本海軍が投入する戦艦はわずか3隻のようですから。

 それなのに我々には、少なくとも4隻の投入を求めてきています。

 現在東洋艦隊には6隻の戦艦、巡洋戦艦がありますが、作戦によっては全館を投入する必要が出てくると考えます。

 そう考えますとわが艦隊の艦は、どれも一級の強力な艦ばかりです。これらをやられた場合、本国艦隊のほうにしわ寄せがいくと考えます。

 それについて長官はどう考えてますか?」

 「私としては、むしろこちらから全艦投入を提案しようと思っている。

  皆はなぜここまでする必要があるのか、そう思うかもしれないが、むしろここで全力を投じず、負けたとなればそれは戦力を出し渋った我々にも責任ができてしまうからな。

 そうなれば同盟国同士で、互いに疑心暗鬼の状態になってしまうだろうからな。

 むしろ、まだ本格的に戦が始まっていないこの時期に日本海軍に、協力すれば、互いに信頼感が生まれるし、恩を売っておくことができる。

 そうなれば、こっち側からの、無茶なお願いも聞き入れてもらえるだろうからな。

 それに、損害を減らすならば、戦力の小出しは厳禁だ。

 だったならむしろ、全力で敵をたたきつぶしたほうが損害は少ない。

 ランカスター法則からも、それは明らかだろう?

 損害が怖いからと戦力を小出しにするという愚を犯すのは、敵さんにとっても、都合がいいだけだ。

 奴さんだって、トラックでの損害から完全回復することはできないだろう。

 むしろアメリカが、全力を投じたいけれど投じれないいま、少しでも敵の戦力に打撃を与えることが、必要なのだ。

 ここで敵に、立ち上がらせる隙を与えるのは、愚策でしかない。

 今は、敵をたたきつぶす時だ」

 「そうは言いますが、日本の国力が問題です。

 彼らが長期戦にどこまで耐えられるか、それが分からないではないですか。

 下手すれば、実質我が国だけで戦う必要が出てくるかもしれません。

 そうならないとも言えますか?

 だから自分は、深入りすべきではないと言ってるのです。

 作戦を否定する気はないですが、リスクを減らす必要があると、本官は考えます」

 「リスクマネジメントか。

 だが、それはこちらの戦力に余裕があるときにしか言えないぞ。今なら、敵に倍近い戦力差で当たれる。

 だがここで力を抜けば、その差は一気に詰まってしまうぞ。そうなれば、無駄な損害が増えるだ。それに、本国艦隊だって、クィーンエリザベス級やりヴェンジ級が5隻ずつにレナウン級2隻、新鋭のキングジョージ5世級の残り3隻がいる。

 たとえ東洋艦隊が壊滅しようとも十分な数だ。

 それに、オライオン級も5隻本国は、作る腹のようだからな。それが合わされば、米海軍にも負けはしないだろう。

 確かに奴らはすでに、条約後8隻も新艦を作っているが、(ノースカロライナ級2隻、サウスダコタ級4隻、アイオワ級2隻のこと)我々も5隻を竣工させてるし、同盟国の日本の2隻も合わせれば、ほとんど互角なのだよ。

 だが、トラックでは、我々が幸か不幸か完全に蚊帳の外に置かれていた」

 「確かにそうかもしれませんが、この時期に無為に人命を失うようなことがあれば、今は鳴りを潜めている反戦派の動きが、活発化しないとも限りません」

 「まあ、まて。

 さっきも言ったが、すでに日米両国は、多くの血を流してる。

 ということは、その分乗員の質が下がっているということだ。

 特に敵さんの、新艦は、訓練が足りてないはずだ。

 それに比べ我々は、少なくても1年は訓練を積んでるものばかりだ。

 ということは、それを敵が補い始める前にたたくのが、一番人命を無為に失わなくて済むはずではないか」

 「しかし長官。

 そうとは言いますが、それは同時に、同盟国にも当てはまることです。

 そうなると、乗員の技量の点からも、我々が主役に担ぎ出されないとも限りません。

 そもそもこの戦争は、アメリカが日本に吹っ掛けたものです。我々が深くかかわる必要はないと考えますが」

 「確かにそう、損得で考えればそうかもしれないが、バーナード中将。君は世界大戦の折日本がどれほど我々に協力したか知らないとは言わせないぞ。

 今回と違い彼らは、関わらずを決め込める位置にいたにかかわらずだ。

 なら我々はその時の恩を返す必要があるということだ。

 確かに、ドイツと戦うことを考えれば、戦力の温存かもしれんが、ドイツにしたってソ連にかかりきりだ。

 活躍しない戦艦は、税金の無駄遣いだ。

 そう言われかねないぞ。特に今は戦時で敵がいて同盟国が勝利を飾った直後だからな。 

 プロパガンダの意味でも、イギリス海軍またユニオンジャックに勝利を届ける必要があると考える」

 「ですが、そうとも限りません。

 むしろ、わが軍の戦艦健在なりを、見える姿勢が大切ではないですか?

 まさに戦時にこそ、サイレントネーヴィーの色を強く出すべきでは?

 確かに国民は勝利を欲しているでしょう。しかし主戦場は、植民地利権を除けば、本国にとっては痛くもかゆくもない太平洋です。

 それも、同盟国の救援です。

 ことが、本国もしくはヨーロッパで起きてるのならば、勝利を拙速にでも得るべきでしょう。

 しかしここは、ほとんど地球の反対側ともいえる場所です。

 それに主にアメリカと戦ってるのは、日本海軍です。

 そこで無理に我々が、出しゃばって敗北を喫したらどうするのですか?

 ここはむしろ彼らの要求に従ったところ、負けてしまったと責任を転嫁できる余地を残すべきではないでしょうか?

 ここで東洋艦隊の全力を出して敗北を喫したとすれば、世論はそれこそ、莫大な税金をつぎ込んどきながら役立たずな海軍と、罵ることでしょう。それがたとえ同盟国に対する友誼の結果で結果であってもです。

 其れよりは、たとえ同盟国に臆病者といわれようとも、東洋艦隊の健全な姿を見せつける必要があるのではないですか?

 それに圧倒的に優勢というのなら、フィリピン作戦の終わった直後ではないでしょうか? 

 その時に全力で米海軍をたたきつぶすのです。

 そうすれば、我々が逆に日本海軍に恩を売れます」

 「だが貴様の考えだと穴があるぞ?

 フィリピン作戦で日本海軍が敗北を喫したならばその考えは実行できないということだ。

 日本海軍が負けたとなれば、相当な損害を受けるはずだ。 

 そうなれば状況は今より悪くなるぞ。

 相手は16インチ砲艦を、量産してくるに決まってるからな。

 そうなると36センチ砲のキングジョージ5世級だと、重荷になってしまう。

 我々は、4隻しかない16インチ砲艦を前面に出すしかなくなるわけだ。

 しかしそのどっちもがどこかしら問題を抱えている。

 ならば、やはり隻数で上回るしか手はない。 

 本国からの増援は厳しいだろうから、やはり日本海軍と共同するのが、損害を減らすうえでいいだろう。

 それに我々の標的は、主力部隊というよりは対地攻撃に残敵掃討の色が強いようじゃないか。

 ならばやられる可能性は少ないはずだ。

 確かに、読みが外れて米軍が我々を狙ってくるということも考えられなくもないが、その可能性があるならば余計、戦力を充実させる必要がある」

 「しかし、それは戦艦の本文ではないと考えます。

 戦艦乗りは、砲撃戦にあこがれを持っています。

 敵との正面切った砲撃戦が最初からほとんどない、むしろ本道から外れうようなことしかないかもしれない作戦に、賛成するとは思えません。

 もしたしたら、ボイコットするものが出ないとも限りません」

 「バーナード途中で言ってることがおかしくなってるぞ。

 きさまは、損害を出したくないのだろう?

 だが損害の出づらい、本道を外れた作戦に乗員がついてこないのではないかという。

 ではどうすると貴様は言いたいのだ?」

 「それは、あくまで日本海軍の要請通りもしくは、それより少ない戦力の派遣です。

 東洋艦隊の全力を挙げる。 

 その点に対し反対してるのです。

 要請そのものをけるなどは考えていません。

 そんなことをすれば同盟国同士の絆に、ひびが入ってしまいますからね。

 しかし、我が国に逃げ道を残す必要があるのではないか?

 それだけです」

 「だが要請より少ない戦力を派遣すれば、そこで問題が発生するのは、目に見えている。

 それにそうした邪な考えで会議に臨めば、空気から相手に伝わってしまう。

 それだけでも、問題になるだろう。

 「ですが、ただ無心で協力するのは、きれいすぎると思います」

 「だがそこで、相手によく思われれば、戦後の利権を考えれば、損とも言えないだろう?

 もっとも勝てればだけどな」

 ジェームズソマーヴィルはそう、言いながらちょうど機上の人になっているだろう、同盟国海軍人のことを考えていた。

 会議はまだ終わりそうなない。

 第63話完


というわけで、日英両軍が次期作戦に向けて加速してゆきます

そしてのんびり投稿で進めてきた章間も、次回で終わります

漸く次期作戦開始です

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