表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 エニウェトク環礁沖海戦
54/66

第53話エニウェトク環礁沖海戦

前話から、1か月以内に投稿できました…

すいません遅くなりました。


淵田機が雷撃に成功した巡洋艦にはその後、もう一本の航空魚雷が命中した。

そのためその巡洋艦、「インディアナポリス」は減速を強いられていた。

その命中による水柱は、淵田隊長には見えていなかった。

だが、中破で止まっていた事は確かだった。

「減速!速力5ノットにせよ!」

一本目の魚雷命中直後マライア艦長は、そう命令していた。

魚雷が命中した以上、浸水を防ぐには減速するのが、一番だからである。減速する事によって、浸水を少しでも減らそうという、魂胆である。

だが減速にかかっている最中、回避力が大幅に落ちているその瞬間に、2本目の魚雷を食らった。

それはどちらも、右舷側に命中していた。

その瞬間激しい振動が、「インディアナポリス」全体を包み、艦橋も当然のごとく激しく揺さぶられた。

それによって、天井に取り付けられた照明が、点滅する。

また衝撃で、完全に壊れた照明も少なくはなかった。

だが幸いにも、「インディアナポリス」の主機や罐室は生きていた。なぜなら、命中した魚雷は、2本とも中央部より前方に命中していたからだった。

そのため「インディアナポリス」は艦首特に右舷側を海面すれすれまでに、吃水を低下させていた。

この状況では、たとえ5ノットだとしても被害を拡大させかねない。

そう考えたマライア艦長は、「艦を停止させろ!」と命令を下した。

その直後、タービンからの回転力の伝達が止められ、スクリューが停止した。

「インディアナポリス」は未だ、輪形陣の内側にいたため、他艦に激突する危険もあったが、その頃にはすでに攻撃の大半は終わっているように見えた。

そのため避けてもらうことは、出来るだろうと艦長は確信していた。

流石に攻撃に終わっていない状況で、応援に駆けつけてくれる艦はいないと思えたが、そこまでの重症では、今の所はなかった。

艦隊行動に合わせるよりも、艦の保全を図るのが最善だという事だった。

確かに艦隊から落後してしまったため、敵機の集中攻撃を受ける危険も考えられたが、敵機はすでに輪形陣の

へ突撃を開始しており、そこまでの余裕はなさそうだった。

だがここからでも、自軍の対空砲火によって落とされる敵機の姿が、艦橋から見えた。

攻撃は過半が終わっていたが、完全に終わった訳ではないのだ。

「インディアナポリス」もその中で重要な立ち位置を持っていたはずだが、それが抜けた穴を感じさせないほどの物だった。

それは、合同機動部隊の層の厚さを示しているように思えた。

だがそれは同時に、敵機に取っても重要な目標が前面に出たということでもあったように、思えた。

だが、空母に手を出すほどの余裕は、敵にもなさそうだった。

そう艦長が考えてる間にも、「インディアナポリス」を救うべくダメコン班が総出で、艦の沈没を防ぐべく尽力していた。

艦の電源は生きていたため、エレクトロ装備も問題なく使用できた。

艦の傾斜は、軽くはなかったが、復元が不能なほどでは無かった。

あくまで今のところで、あるが。


「敵機もしつこい!」

敵機の攻撃を対空砲火で退けつつ、「レキシントン」艦長ダニエル大佐は、艦橋で敵機を見やりながらそう叫んでいた。

特に右舷側に陣取っていた「インディアナポリス」の退場が痛かった。

そのためケイトが直接、インディアナポリス」に向かってきているのだ。

今は未だ投雷を許していないし、突破も阻止していたが、いつ投雷を許してもおかしく無かった。

また敵機が徹底的に、低空飛行を行わなかった事も幸いしていた。

やれるとは思わないが、もし弦側よりも低く来られては、俯角に限界がある以上、全ての砲火を集中させたくても、出来なかっただろうからだ。

反対側に位置する、「サラトガ」も激しく対空砲火を吹き上げ、敵機を撃退しているようだ。

それは、空母がどちらも被雷していない事から、分かった。

対空砲火の漏れで突破を許した敵機もあるかもしれなかったが、空母自身が回避したのだろう。

また、「コンスティレーション」「コンスティチューション」の2隻の航空母艦も、他の艦艇には見劣りするが、激しく火線を弦側から放っていた。

だが主に敵機に当たっているのは、「レキシントン」「サラトガ」2隻の巡洋戦艦だった。

まだ十分では無いと、マライア艦長は思っているが、それでも鈍足な、しかも艦攻のみを狙うのには十分な対空砲を搭載したその姉妹が、その力を存分に敵機に向けて発揮していた。

「まるで、こちらが空母を守る盾になったようだ」

マライア艦長は、対空砲火の奏でる喧騒の中でふと呟いた。

彼はまだ戦艦が海の主役だと思っている、男だった。

だが防空任務というのをまるっきり否定する、というわけでは無かったし艦保全の観点から、それが重要であるともわかっていた。

魚雷を食らえば沈まずとも、傾斜が起き十全な力を発揮できなくなるからだ。

そのため彼は、対空砲の増強は時代の流れに即したものと強く思った。

だがそれも、時間が中心だろうと考えてのことだった。

今のように、輪形陣の一角で空母を守る任務に就くとは思っていなかった。

予期していたことではあったが、それは空母が海戦の主役になったようでいい気分では無かった。

だが、空母に随伴出来る戦艦が今の所、巡洋戦艦である「レキシントン」と「サラトガ」しかないことは分かりきっていた。

また敵艦隊とまともに撃ち合いには、防御力が足りないだろういうこともわかっていた。

話は単純だ。

彼は「レキシントン」の初陣が、艦砲で撃ちあわないものとは、思っていなかっただけだ。

もし敵艦隊を打ち破った後なら、もっと乗り気だったはずだ。

確かに対空砲という名の、艦砲を放っていることに変わりは無いのだが。

彼は迫り来る敵機を見やりながら、なんとあっけない事かと思った。

戦艦ならば機銃弾ごときでやられることは無いというのに、敵機はハエを落とすが如く落ちていく。

確かに昼には、「エンタープライズ」が大破し今も予断を許さない状況に敵機の猛攻によって置かれていたから、威力はわかっていた。

だがその威力を持った槍がここまで脆いとは思っていなかった。

「インディアナポリス」がやられた時は流石だと思ったが、それだけだ。

航空戦の主役である空母には、手をふれさせていないし、艦隊戦の主役になるだろう巡洋戦艦もまた、無傷だった。

やられたのは外側を守る駆逐艦や巡洋艦だけだった。

敵機の攻撃はまだ続いていたが、だいぶ数を減らしていた。

おおよそ30機ほどだと思ったが、「レキシントン」等が対空砲火で撃墜したのと早々に雷撃した機がかなりいた様だった。

気分的にはさほど時間が経っていない様だったが、実際はかなりの時間が経ってるのかもしれない。

だが、敵の攻撃の過半を乗り越えたのだ。

この調子でいけば、完全に敵機に仕事をさせずに追っ払える。

そう思った。

だが油断はしてはいけないと、彼は同時に思い直していた。

ここぞというときに、追い込まれた敵がどうゆう行動に出るか、まったく予測がつかないからだ。

そう考えれば、完全に攻撃が終わるまでは、緊張が解ける様なことは言わない方がいいだろう。

そう思いつつ、敵機をねめつける様に見据えるが、その闘志は衰えていない様に思えた。

既に残りは5機ほどの様だったが、それがなかなか落ちなかった。

「敵機が低空で迫ってくるため、俯角が足りません!」

そんな悲鳴が聞こえたのは、その時だった。

おそらく機銃手がやけに言ったことが伝声管を通じて、艦橋まで届いたのだろう。

「何!」

彼はほとんど反射的に目を凝らした。

その通りだった。

彼の目には、曳光弾が引いていく危険な曳痕が敵機の頭上を飛んでいくのが見えた。

ほとんど5メートルぐらいの世界なのでは無いか。

彼はほとんど瞬時にそう思った。

これは完全に、「レキシントン」を殺りに来た。

彼はそう直感した。

射点としても、ぱっと見だが完全に「レキシントン」が収まってしまうだろう位置にいた。

マライア艦長は、即座に「面舵一杯!」を下令した。

だが30000トンほどの艦体はもどかしいほどに、曲がらない。

そうしてる合間にも、敵機はぐんぐん「レキシントン」に迫ってきていた。

5インチ両用砲が、40ミリ4連装機銃が、20ミリ単装機銃が狂った様に砲弾、機銃弾をその5機に打ち込むが、敵機の高度が低いために虚しさを覚えるほどに当たらない。

曳光弾の残していく曳痕が、敵機と重なったように見える瞬間もあったが、敵機は落ちていかない。

それは単純な話として、艦橋から斜め下に見下ろす様に、見ていたからだった。

どちらにせよ全力で右舷側に向けられる、対空砲は射撃を繰り返すが当たらない。

今までが順調すぎたツケが回ってきたか、彼はそう混乱する頭の中で思った。

そして、「レキシントン」の舵はまだ効き始めていなかった。

30ノットを超える速度で航行しているため、抵抗が大きくなってすぐに旋回できても良さそうだったが、その巨体が俊敏な動きを阻害しているらしかった。

実際はこの間の時間は、たいしてやっていなかったのかもしれない。

だが彼の感じたその時間の流れは、とても長いものだった。

いつ終わるとも知れない緊張が、ずっと続くのでは無いか、そう感じるほどだった。

「総員対衝撃体勢取れ!」

マライア艦長は、回避が間に合わないと直感し、そう命令していた。

彼は、迫り来る敵機に対する恐怖で、体が硬直しない様、20ミリ単装機銃の引き金を、弾き続けていた。

「ちくしょう!」

彼は誰かに向けたわけでもなく、そう叫んだ。

そうでもしないと、やって行けないのだ。

今まであっけなさ過ぎるほど呆気なく、撃墜できていた敵機が、同じ様に射撃しているのに落ちない。

その事実が、彼に混乱をもたらしていたのだ。

いや、正常な判断力を奪っていたとも言えるのか。

さらに、即座に落とさなければ、自分の乗っている艦がやられるという恐怖が、彼の焦りを増強していた。

そのため彼は冷静な判断が、ほとんどできない精神状況に、置かれていた。

それは、全員もしくは過半数、では無いが少ないとは言えない者が、その状態になっていたのだから彼だけを責めることはできないだろう。

彼は、ほとんどろくに照準を合わせることなく、機銃を乱射していたのだ。

もし彼が、もう少し冷静さを残していたら、その曳光弾が的外れな方向に、無駄な浪費という名の下に着弾しているということが、分かっただろう。

だが彼は、ほとんどその曳光弾を見ていなかった。

彼の意識は、大半が迫り来る敵機を凝視しつつ、機銃を発射することに割かれてしまっていたのだから。

いや敵機から目を離したくても、恐怖心からくる金縛りの様なものが、彼の動きを止めてしまっていた。

いや彼は、ほとんど敵機の機首、いやエンジンのみに視界を奪われているとも言えたからだ。

だが装弾手は装弾手で、装填作業に没頭していた。

だが彼が冷静さを失っていたかというと、これは違うだろう。

彼はその任務の特性上常に弾込め作業を続ける必要があったのだから。

だがいくら装弾手が冷静さをまだ持っていたとしても、射撃手が完全に失っていては、意味が無いも甚だしかった。

結局彼の装填した銃弾が、敵機を撃墜するいや、攻撃を妨害するのにすら、役に立たなかったのだから。

そんな様に、照準を個人に完全に委ねる単装機銃は、射手の判断によって、役に立ったか無意味だったか、かなり別れたことだろう。

「行け!」

40ミリ4連装機銃の旋回手は、そうそのハンドルを回しながら叫んでいた。

そこまで重く無いものの、仰角手と息を合わせる必要があるため、気は抜けなかった。

さらに言えば、絶賛彼に乗る艦が標的にされているのだ。

これで気を抜けという方が酷だろう。

その彼の叫びとともに、対戦車砲としても使えないことは無い大型の機関砲が、敵機めがけて旋回する。

いやし続けていると言った方が、適切だろうか。

敵機の位置と機関砲のいる関係上敵機が、「レキシントン」に迫ってくるほど、時計回りに機銃を旋回させ続ける必要があったのだ。

そのため仰角は最低でほとんど固定されたも同然だったが、射軸は回し続ける必要があったのだ。

そうやって、機関砲を旋回させ続けてる合間にも、40ミリというほとんど必殺に近い、破壊力を秘めた砲弾が打ち出される。

だが、ギリギリ敵機の上をかすめてしまい、当たらない。

彼らが焦りを覚えるうちに5機の敵機はついに1機もやられることなく、射点に到達した。

それは彼ら、艦攻隊員の腕の勝利だった。

「敵機投雷しました!」

見張り員がそう叫ぶと同時に敵機が、横旋回に入った。

おそらく艦尾を抜けようという腹なのだろう。

だがわずか一瞬だが、旋回のため傾斜したために、左翼が持ち上がった。

その瞬間、2機の艦攻の主翼が弾け飛んだ。

今まで低空飛行によって対空砲火を避け続けてきた彼らだったが、傾斜に伴う左翼の盛り上がりは、どうすることもできなかったのだ。

おそらく複数の砲弾、銃弾が同時に命中したのだろう。

敵機の主翼は完全に瞬間的に、消し飛んでいた。

だがその戦果に浮かれている暇はなかった。

白い航跡を残しながら、敵機の放った5本の魚雷が、「レキシントン」めがけて迫ってきていたのだ。

だがここに置いて、ようやく取り舵が、効き始めた。

だが敵機の魚雷を完全にかわし切るのは、難しそうだった。

敵機も魚雷の標準に幅を、もたせていたのだった。

そのため魚雷網から、完全に逃げ切れたかは、全くわからなかった。

第53話完

異常に長くなっている、第一幕です。

実は、56話で終わらせようと、話をできるだけ区切らないで書いていたのですが、なかなか終わらなく、2万字到達してしまったため、次の話に移ります。

作者としても次の話に移りたいのですが、凝り性なのと、リアルが忙しくなかなか書けないため、移れません。

完結までは、何とか持っていきます。

これからも、1月に1話は最低限上げていこうと思いますので、よろしくお願いします。

感想、ご意見、批判お願いします。

なかなか更新できませんが、最後まで楽しんでください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ