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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 エニウェトク環礁沖海戦
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第49話エニウェトク環礁沖海戦 増強された対空火力

超久しぶりです

不定期更新にもかかわらずブックマークしてくださった皆さん、ありがとうございます!

九七式艦攻は、敵機の攻撃によって数を減らしていた。

いや現在進行形で、減らしている。

敵機はあの後も、思い出したかのように仕掛けてきた。

編隊で、まとまった攻撃ではなかったために、直掩隊の反応が遅れがちだったのだ。

そのため72機の艦攻の内、10機あまりが撃墜されていた。

だが依然として、60機はいる。

2隻の空母を葬るにはこれでも十分な戦力であろう。

すでに敵艦隊は視界に入っている。

まだ敵戦闘機との空戦は続いているが、これ以上増援の敵戦闘機は無いだろう。

「降下!」

淵田総隊長の命令が、隊内電話を通じて隊員に伝えられる。

零戦も、40機ほどが追随する。

元は42機の零戦が直掩についていたが、敵機との交戦によって、数を減らしていた。

降下に伴い、零戦隊が、九七式艦攻の前方に布陣する。

九七式艦攻は、速度が出過ぎないよう角度を緩めにとっている。

そうしなければ、主翼が耐えきれず空中分解を起こすかもしれなかった。

まだ敵艦隊とは、4万メートルほどの距離がある。

だが巡航速度でも10分ほどで走破できる。

それが航空機だった。

敵戦闘機は、制空隊との戦闘に忙殺されており、艦攻にまでは手が回らないようだ。

その分、落ち着いて布陣できる。

「「高雄」隊、「愛宕」隊は、我に続け。「翔鶴」隊、「瑞鶴」隊は左から回り込め!」

淵田総隊長による命令が、電波の波を流れて、伝えられる。

それと同時に、淵田機は右旋回にかかる。

敵艦隊を左右から挟み込むのだ。

これには護衛艦艇からの、対空砲火を分散させる効果も期待できる。

敵艦隊は、平甲板の空母を中心に置き、その周囲を多数の艦艇が囲んでいた。

すなわち、輪形陣である。

もっとも近くにいるのは、戦艦だろう。

それに多数の駆逐艦が最外殻を、囲んでいる。

1隻1隻は大したことがなくともこうも、密集してれば、かなりの砲火になるだろう。

攻撃隊は、その砲火を乗り越えなければならないのだ。

高度100程度で、降下を一旦止める。

まだ距離があるため、20メートルなどの低空には降りない。

それと同時に、淵田機がフルスロットルで加速する。

九七式艦攻の最大速力は、380キロである。

その速度まで、栄発動機を最大出力にして上昇させる。

それに伴い、前方を行く20機あまりの零戦も、加速する。

だがこちらは、九七式艦攻を引き離さないよう。フルスロットルにはしていない。

発動機は、ややふかし気味だ。

九七式艦攻の心臓部たる、栄発動機の唸りが一気に大きくなる。それに伴い、プロペラもより高速回転をする。

ここからではわからないが、ハミルトン式の恒回転システムがプロペラの、ピッチを最適な角度に自動調整していることだろう。

20機あまりの零戦が、30機ほどの九七式艦攻をエスコートするかのように、前方を行く。

彼らは、護衛艦艇の対空砲火を漸減する役目がある。

その方法は、機銃掃射である。

確かに、最大速力で500キロを軽く突破する零戦であるが、それでも無傷では終わらないだろう。

彼らの緊張が、九七式艦攻のコックピットに居てもひしひしと感じられる。

もっとも危険なのは、自分らであるが、その突撃路を開く役目の零戦には頭が上がらない。

感謝しか無い。

もし機銃掃射がなければ、より被害が増えるだろう。

これだけの艦艇である。

無傷で突破できるとは、考えられなかった。

それにしても、味方に比肩する大艦隊だ。

大きな違いは、主力艦の差、ぐらいだろうか?

これまで痛めつけまくっても、これほどの艦隊を突入させるとは。

自分なら被害を恐れて、弾いているのではないだろうか?

そう、九七式艦攻を操る矢滝一等飛行兵曹は思った。

ただの兵でしかない自分が、そこまで考える必要はないとわかっているが、それでもそう思わずにはいられない。

確かに、第一航空艦隊も今までの戦いに関わってはいなかった。

だが、味方がほぼ壊滅したなら引かせるだろう。

特に、貧乏性の日本海軍ならば艦艇の喪失に怯え、早々と引いてしまうのではないか。

だが敵艦隊は、悠然と立ち向かってきた。

その度胸には、敬意を感じないでもなかった。

だがそれは、ただの蛮勇ではないのか?

その片鱗は、すでに敵戦闘機隊の敗北が見せていた。

それにこれほどの九七式艦攻が、2隻の空母に集中するのだ。

敵艦隊を撃滅できると思うと、武者震いが止まらなかった。


「ワイルドキャット隊は、敗れたか」

ただ黒点にしか見えないが、遠方で悠然と編隊を組み替える敵編隊を見つめながら、フレッチャーが言った。

「そのようです」

副長から報告を受け取った、ダニエル艦長が言った。

「敵は何機の戦闘機を出してきたのでしょう?」

副司令が、フレッチャーに問うた。

「簡単だ。ワイルドキャットを軽く超える数だろう。

そうでなければ、あそこまで悲鳴に満ちることはなかろう」

そう、無線室に届いた報告はほとんどが、「やられる!」「誰か助けてくれ!」などという、敵機に背後をつかれたという恐怖や、断末魔の叫びばかりだったのだ。

まだレーダー上では戦闘を、続けているようにも見えるが、本体と思しきそれには見当たらない。

「なるほど・・」

「砲術対空用意!」

艦長が命じる。

すでに、総員配置の号令は届いている。

「レキシントン」はその初陣を対空砲火と言う、本来の目的とは異なる戦闘で迎えようとしていた。

艦に備え付けられた、10機の5インチ連装両用砲や10基の40ミリ4連装機銃、40基の20ミリ単装機銃が天を睨む。

これらは、空母直掩のため、艦隊防空のために備え付けられたものだ。

特に、「レキシントン」「サラトガ」の2隻は空母直掩艦として、強化されていた。

他の戦艦は条約明けの艦を除き、連装両用砲を除き、40ミリ4連装機銃4基、20ミリ単装機銃20基しかなかった。

条約明けにしても20ミリ単装機銃は30基ほどしかなかった。

そのため「レキシントン」「サラトガ」は、最強の防空艦と言えた。

しかも、輪形陣は、9隻の重巡などさらに多くの艦艇が構成している。

それらの艦も、対空戦闘用意が、発令されているはずだった。

そうこうしている間に、敵機が距離を詰めてくる。

敵機が殺到してくる前に、準備を終えんと甲板上は混沌とした空間になっていた。

弾薬箱を運ぶ兵士や、持ち場に急ぐ兵士。

それらが、複雑に絡まり合っていた。

「距離20000!」

レーダー室が、そう伝えてくる。

敵味方はわからないが、戦況を加味し上層部が、判断するだろう。

「敵機は、何を狙っていると思う?」

フレッチャーが、参謀長を試すように聞いた。

「おそらく空母ではないかと・・航空機で戦艦を潰すことはできませんから」

「やはりそう思うか。だが、戦艦といえど魚雷を食らえば速度低下を引き起こす。艦隊戦になれば、足を引っ張るのではないか?

それに敵には4隻の戦艦が居るらしい。

おそらくコンゴウ(クラス)か天城(クラス)だろう。

奴らは30ノットの速力を持ってる。

いくら、「レキシントン」と言っても、速度低下を引き起こしてたら、逃げきれないのではないかな?」

フレッチャーが、眼光鋭く言った。

「だとしても、空母を潰してしまえば後は、自由になります。

特に輸送船団が、標的になる恐れもあります。

戦艦には、戦艦を当てればいいのですから」

「そうかもしれないが、引くわけにはいかない」

「それはその通りです。ワイルドキャットをもっと残しておけば、良かったと思いますが」

「いや、攻撃隊がしくじればそっちの方が痛い。

少なくとも、敵の半数は攻撃不能にしたいからな」

「ですが、我々が全滅しては意味がないのでは?

すでに「エンタープライズ¥も、戦列を離れています」

「それでもいい。それにワイルドキャットが全滅しきったわけでもあるまい?

夜まで持てばいい。

そうすれば、輸送船団と合流しトラックに突っ込める」

フレッチャーはことも何気に言ったが、それが一番困難なのでは無いか。

だが、ここまで進んでしまった以上、撤退するわけにもいかないのも事実だ。

敵の攻撃隊を前にしても、その認識は変わらなかった。

「艦長」

フレッチャーが、ダニエル艦長に言った。

「なんでしょう、提督」

「本艦は、絶対に「コンスティレーション」のそばを離れるな」

「レキシントン」は、「コンスティレーション」の左に布陣していた。

「はい」

「我が艦の猛射によって、「コンスティレーション」を守るのだ」

フレッチャーはそう、決意を込めながら言った。

「しかし、本艦が標的になることはないでしょうか?」

先ほどの会話を、気にしてのことだろう。

「無いとは言い切れんが、殺られることはない。

それが常識だ。たしかに、本艦は装甲が薄めだが敵も航空機の方を潰したいはずだ。

そんな何十機とくるわけがない」

「なるほど、やはり敵機は、空母に集中する、ですね?」

「そのはずだ。特に空母は沈められるからな、ほとんどが、2隻に集中するだろう。

本艦の兵装も、空母を守るためでもある」

「しかし、海の王者が、護衛ですか。不思議な気がします」

ダニエルは、そう言った。

彼は別にこの任務が嫌なわけではない。

それに今回は、敵艦と撃ち合う機会もあるという。

それを得るには、できる限り空母を護ることが重要だった。

「そうかもしれない。

だが本艦はもともと、強行偵察用も含めて建艦されたという。

そもそも真昼間から、敵艦と打ちあったら装甲が薄いのだから、直ぐにやられてしまう」

そうましになったとはいえ、「レキシントン」の装甲は、薄すぎた。

なぜなら、敵巡洋艦をその火力によってなぎ倒しつつ偵察を強行すると言う目的の為、速力を増強する必要があった。

そのために、装甲厚が犠牲になっていたのだ。

「かかって来いや!」

増設された、20ミリ単走機銃の銃床を肩にかけながら、マクラニ一等水兵は黒点にしか見えない敵機に、叫んだ。

場所は、「レキシントン、第二主砲前である。

彼の両側にも、さほど離れていない位置に機銃が置かれている。

40ミリ4連装機銃は、艦中央部に集中的に配置されており、反対的に、20ミリ単装機銃は艦首尾、主砲周りに配置されていた。

おおよそ穴はなさそうな、配置である。

それらがいざ、敵が来襲すれば、迎撃のため火を噴くのである。

おそらく、敵機の乗員にはまるで、艦が火に包まれたように見えるだろう。

彼の後ろには、40、6センチの主砲塔が、堂々と鎮座している。

だがこの戦いの主役は、機銃や両用砲だ。

マクラニは、敵機を落としてやるぞと天を睨む。

彼の視線の先には、巡洋艦や駆逐艦が浮かび、敵機を迎撃戦としている。

いずれも体躯は、「レキシントン」に及ばないが、輪形陣を確固たるものにする重要な艦艇たちである。


敵の艦影が、ようやくはっきりしてくる。

まだ距離は残しているが、陸上構造物に比べれば、圧倒的な巨躯を持った艦艇である。

細部は分からずとも、主砲塔や艦橋など構造物の配置などは、かなりわかる。

ワイルドキャットは、今も攻撃隊に襲いかかろうとしているが、あっても1機ほどの損害に抑えていた。

いい加減諦めて欲しいものだが、それは無理な話だろう。

敵の母艦を沈めんとしているのだから。

艦攻の後部座席では、電信員が機銃を構え敵機の迎撃に当たっていた。

そろそろ、弾が切れそうだが、そこはあまり盛大にばら撒かないことで、対処していた。

だがそれにも限度がある。

何万発も、あるわけではない。

ここまで撃ち続ければ、いい加減弾切れになっても仕方ない。

前衛の零戦との距離は、かなり開いていた。

それは、直掩を放棄したわけでなく、戦術上の都合なのだが、それがよくわかっていても不安になる。

すでに、落とされた僚機も少なくない。

「くそったれ!」

彼は攻撃をなかなか仕掛けられないことにイライラしていた。

だがこれ以上早く、九七式艦攻を突っ込ませることはできない。

すでに最大速力で飛行しているからだ。

もうすぐ、死の花火の中に突っ込むと思うと、操縦桿を握るてに汗がにじむ。

死の花火とは、あちこちにばら撒かれる、曳光弾がまるで花火のように見えることから、つけられたものである。

実際には、艦隊の防空演習を遠目で眺めそう感じただけでその中に、突っ込むのは今が初めてである。

緊張と興奮とで、心臓の鼓動が早くなる。

また、口の中も、カラカラに乾いていた。

ちらりと、横を見ると変わらない高度で突撃する、僚機の姿があった。

「高度20に降下!

突撃開始!」

距離が、15000になった瞬間、淵田総隊長が大音声で命じた。

その命令が、隊内電話によって届くと同時に全ての九七式艦攻の機首が下がる。

その頃、零戦隊は敵艦隊との距離を一気に縮め機銃掃射を始めんとしていた。

第49話完

「レキシントン」たちの対空力はまあまあ増強済みです

無茶な事は、しないので安心?してください

更新もう少し不定期になります

なるべく早く戻したいですが、忙しいので

そして昨日書いた、53話は、なんか作風が変わり(最近西尾維新の本ばっか読んでたからか?、全く話が進まなかったです

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