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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
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第4話トラック沖海戦 航空撃滅戦

まずはここから始まります

「敵艦視認!」

見張り員の声が入ったのは、1942年8月27日の太陽が昇り切った頃だった。

すでに敵艦の存在自体は、「大和」や「加賀」に搭載されている二号二型電波探信儀によって確認されていた。

さすがに戦艦11隻を含む艦隊を、黎明期の電波探信儀だからと言って見逃す通りが無かった。

しかも、ここでトラックを占領されてしまえばマーシャル諸島が、占領されてしまう。

その為何としても、敵艦隊を迎撃する必要があったのである。

艦隊はすでに、変針し始めている。敵艦隊に対しノ字を描き、同航戦を強要するのだ。

もしここで丁字を描こうとすれば、敵に反航戦を取られ取り逃がす危険があった。

そのため、第一艦隊長官高須中将は北方即ち取り舵に舵を取り敵の頭を抑えにかかったのだ。

「いいか、やりすぎるなよ。少しでいいんだ。敵を後ろに逃さないように、するんだ。艦隊取り舵2度」

敵アメリカ太平洋艦隊は第一艦隊から見て、左手に見えた。

そこから同航戦に持ち込むため、ほんの少し取り舵に取り敵に変針を強いるのだ。

「敵先頭艦は、新型艦の模様」

見張り員からの続報が入る。

「建造が進められていたという、サウスダコタ級でしょうか」

参謀長の小林大佐が言った。

「そうだろうな。場合によっては、ノースカロライナ級もいるだろう」

この情報は、イギリス諜報機関から入ったものである。

まだ諜報の技術が未熟な日本に比べ、有益な情報を多数届けていた。

「敵は、建造した新型艦をすべて投入してきたと考えられます」

「簡単に考えて、加賀型にかなう艦がいないからな。コロラド級にしたって、レキシントン級にしたって加賀型が負けるような相手ではない。しかもこっちには、その加賀型をあらゆる面で凌駕するこの「大和」が居る。敵が4隻程度の新型艦を投入して来たところで、不覚は取らないだろう」

高須長官が、一気に言った。

確かに彼の言うとおり、アメリカに加賀型や天城型にかなう艦が、条約中には存在しなかった。

だからこそ、日本側にとっては艦名以外未知の新型艦を投入してきたのだろう。

「距離50000。敵艦隊変針の模様」

今度は、すでに放っていた偵察機からの報告がはいる。

「取り舵20度」

「取り舵20度よーそろー」

高須長官が言うと同時に「大和」の操舵手が舵輪を回し始める。

また、マストにもそれを意味する信号旗が、掲揚されている筈だ。

こうして、排水量7万2千トンの巨艦が転舵を始める。

艦首を振り始めればあとは速い。「大和」は横幅が広く回頭半径が小さいのだ。

「大和」に続き「加賀」「土佐」そして長門型をはじめとする、計11隻の艨艟が一直線に変針する。

まるで、一本の紐のように滑らかな動きである。

それに伴い、艦隊の左舷側に陣取っていた第三水雷戦隊が艦隊の右舷側に、陣形調整を行い始める。

これは、第一水雷戦隊が敵艦隊に突っ込み、第三水雷戦隊が艦隊側面を敵軽快艦艇から守る、という手筈になっていたからである。

そのため、右舷側に30隻もの駆逐艦が集中することになったのである。

これらの駆逐艦の主兵装は61センチ魚雷である。

また、吹雪型駆逐艦には九〇式魚雷が、初春型駆逐艦以降の艦には九三式酸素魚雷が配備されている。

特に酸素魚雷は秘匿兵器とされ、同盟国イギリスにも厳重に秘匿されていた。

その頃、その九三式魚雷を片舷20本計40本を搭載した、通称重雷装艦と呼ばれる十戦隊の「北上」「大井」の2隻は艦隊左舷側を隠れるように、航行していた。

なぜか、甲板上に大量の魚雷を乗せたために重雷装艦の2隻は被弾に極端に、弱くなっていたのである。

もし、戦闘機の機銃弾が1発でも4発の魚雷が詰まっている、発射管に命中すれば敵艦の横っ腹を打ち抜くはずの、魚雷が自身の船体を破壊するのだ。

数万トンの排水量を持つ戦艦を数発で、戦闘不能に追い込む九三式魚雷である。

圧倒的に防御の面で劣る、「北上」「大井」の2隻に耐えられる道理もないだろう。

結果、ギリギリまで戦艦の陰に隠れる事になったのである。


「ちぃ、艦隊の頭を抑える気か。仕方ないが、面舵いっぱい」

第一任務舞台旗艦「サウスダコタ」の艦橋で、ハルゼー中将はそう言った。

彼は、筋金入りの鉄砲屋であった。

確かに、空母の艦長に推された事もあった。だが、彼は今までの常識である、大艦巨砲主義の信奉者であり、空母などという得体の知れないものの、艦長になる気などさらさら無かったのだ。

彼が言うと同時に、艦隊は日本艦隊に同航戦を挑むべき、「サウスダコタ」を先頭に転舵していく。

またこの頃には、双方の直掩機による戦闘が始まっていた。

この海戦で最初に激突したのは、各空母から放たれた戦闘機たちだったのだ。

日本側は、「エンタープライズ」のように戦闘機のみを乗せた編成ではなかった。

第二航空戦隊の「飛龍」「蒼龍」は、零式艦上戦闘機54機と九七式艦上攻撃機18機計72機を搭載して降り、此れとは別に5機づつの捕用機を搭載している。

2隻合わせて、108機の戦闘機である。

それに対し「エンタープライズ」は96機のF4Fワイルドキャットを搭載している。

そのため、航空戦力では空母2隻を擁する日本側が優勢であった

また、艦上爆撃機を何故日本側が搭載していないのかというと、戦艦に対し効果の大きい艦攻と制空権を奪手する艦戦の開発が優先され、もう時代遅れである九六式艦上爆撃機しか存在しなかったのである。

しかし、それは流石にまずいという認識が、海軍航空技術廠を中心に広まった。

その為、空気抵抗を減らすためにあえて整備の難しい水冷エンジンである、イギリスのマーリンエンジンを搭載した、高速艦爆である彗星の開発が進められた。

その為今回の海戦には間に合わなかったものの、10月には部隊配備が開始される予定になっていた。

こうして、「エンタープライズ」からは防空隊16機を除いた80機のF4Fワイルドキャットが、第二航空戦隊からは90機の零式艦上戦闘機が放たれたのである。

性能的には互角である両機だが、機数の多い日本側が有利であることは確実だろう。

彼らは、双方の水上偵察機を守る為に飛翔したのだ。

まずは、急降下速度で優れているワイルドキャットが、仕掛ける。

「敵機、来ます!」

との声が、イギリス製の無線を通じて各機に届く。

それと同時に狙われた、「飛龍」戦闘機隊45機は中隊ごとに、回避運動に入る。

1機の零戦がまともに、ワイルドキャットの射弾を浴び瞬時に翼をもがれる。

また、急上昇に移った零戦がワイルドキャットと正対し、20ミリ機銃を打つこむ。

零戦の20ミリ弾をまともに食らった、ワイルドキャットはツインワスプエンジンの、ピストンを撒き散らしながら、墜落していく。

だが、派手に炎を吹き上げながら墜落するのが多い零戦に対し、ワイルドキャットは炎を吹かずに墜落していく機体が多かった。

それは両機の、正確によるものだった。

零式艦上戦闘機は極限まで軽量化することにより、低速時の旋回性を高めらのに対し、ワイルドキャットは大量の装甲板を装備することで、乗員を守ることを優先しているのだ。

だがそれでも、20ミリ弾をまともに食らって落ちない機体はほとんどない。

確かに火は吹かないが、それ以外の箇所が破壊され墜落するのだ。

「ちくしょう」

そう叫びながら、高城一等飛行兵曹はワイルドキャットの後ろに付くため旋回を続ける。

だが相手のワイルドキャットには、格闘戦を挑む気は無いらしく、すぐに急降下に移る。

それを高城一等飛行兵曹は、同じく急降下で追跡しようとする。

しかし、零戦の強度の低い翼が悲鳴をあげる。

「ダメか」

彼は悔しそうにそう言うと、機首を持ち上げ上昇に移る。

機体の軽い零戦は上昇速度がワイルドキャットよりも速いのだ。

その為、追いつかれることはないだろう。

そして高度5000に達すると、彼は水平飛行に移る。

高度5000は零戦がその性能を出せる、最大の高度といっても良かった。

「あいつが良さそうだな」

彼はそう言うと1機の零戦を追尾するのに夢中になるあまり、周りが見えなくなっているワイルドキャットに、目をつけた。

そして、言うと同時に水平旋回に入る。

そして、一気に降下に入る。

急降下速度は速くないが、相手が気付いていないのならば、問題はない。

そして彼は、後ろに付くと同時にスロットルを緩め、機体をワイルドキャットの動きに合わせる。

やはり、旋回半径は零戦のほうが小さい。

たちまち後ろに着くと、機首の7、7ミリ機銃と翼内の20ミリ機銃を同時にぶっ放した。

まずは初速の速い、7、7ミリ機銃弾が、ワイルドキャットの水平尾翼に命中する。

ついで、本命の20ミリ機銃弾が垂直安定板を吹き飛ばし、さらに機体の後部をも弾き飛ばした。

これが、炸裂弾の威力である。

本来なら、防御力に優れる攻撃機に20ミリ機銃を、防御力の劣る戦闘機には、威力は低いが初速が速く直進性の優れる7、7ミリ機銃とを使い分けるのが、定石であるが、今回の敵はワイルドキャットだけであり、20ミリ機銃を出し惜しみする必要が無かったのである。

その為、20ミリ炸裂弾に機体の一部を吹き飛ばされる機体が、続出したのである。

そして、ワイルドキャットを落とした高城一等飛行兵曹は、即座に次の目標を発見する。

今度は、編隊からはぐれたらしい機を狙うと決めた。

そして、今度は背後から静かに接近し確実に仕留める為、緩行下旋回をかけ後ろ下方から接近する。

しかし敵機は、自分を狙っている高城機に気付いたらしく、慌ただしく急上昇に移った。だがその行動が、自身の破滅を速めるとは全く思っていないのだろう。

高城一等飛行兵曹はエンジンスロットルをフルに開き、機体を急上昇させる。

そして、一気に距離を詰める。しかし敵機はこっちの思惑に気付いたのか、水平旋回にはいる。

それを見て高城一等飛行兵曹も、同じように水平旋回に入る。

旋回半径は、速度が速くなければ零戦にかなう機は存在しない。

その為たちまちワイルドキャットは距離を詰められる。

そこで敵機は、クイックロールをかける。

そこで高城機は、若干距離を開けられてしまう。

零戦はロール率が低いのだ。その為旋回に入るまでに後ろにつけられれば逃げ切ることは難しいのだ。

その弱点が、露呈した形になったのである。

しかし、それでも敵機に食らいつく。

水平速度では零戦の方が優れているのだ。

問題があるとすれば、操縦桿が重くなり旋回しづらくなることだろう。

だが、距離を詰めた高城一等飛行兵曹は敵機が旋回に入る前に、一気に機銃を撃ち放つ。

そして、敵機は主翼に食らったのか左翼を吹き飛ばされ、くるくると回転しながら墜落していった。

その頃には、複数の零戦がワイルドキャットの直掩網を突き破り、敵水上偵察機キングフィッシャーに攻撃を始めていた。

キングフィッシャーは、戦艦の数と同数の11機が飛行していたが、直掩機の存在しない水上偵察機が戦闘機から逃げられる道理がなく、1機また1機と徐々に打ち減らされていった。

しかし1機の零戦が、キングフィッシャーが適当に放った7、7ミリ機銃をキャノピーにまともに当てられ、搭乗員が戦死し墜落したのが、対キングフィッシャー戦で零戦が被った損害であった。

その頃には、空戦もたけなわになっていた。

初めから数で勝っていた零戦隊が、ワイルドキャットを袋叩きにし始めていたのだ。

その為、ワイルドキャットが1機の零戦を落とす間に数倍のワイルドキャットが零戦に落とされていたのだ。

その結果、戦闘からかろうじて離脱したワイルドキャットは、20機程度しかなかった。

しかし、これらの機が生還出来たのには圧倒的な優勢を確信した零戦隊が、本来の任務である零式観測機の直掩に戻ったからである。

しかし零戦隊も70機近くのワイルドキャットを撃墜した代償として、40機近くの機体が落とされていた。

それは、総合性能で双方拮抗しており、零戦隊が数に物を言わせた形になったからである。

そして残存する60〜70機の零戦は、本来の任務である艦隊防空と零観の直掩を開始したのである。

零観には1機につき3機計33機の零戦が直掩に着き、残りの40機程度の機が、第一艦隊の直掩に着くのである。

第4話完

F4F強くね?と思うかもしれません

しかし実際零戦とF4Fってソロモンあたりからしかまともに当たってませんし

そもそも零戦も実際は、ベテランになればなるほど1撃離脱に移ったらしいですし

こんなもんかなと

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