第30話トラック沖海戦 エンタープライズ防空戦 戦闘機の凱歌
なんか・・終わんねえ・・
航空戦細部詰めるほど長くなる
「きたか!」
高城一等飛行兵曹は、愛機の零戦のコックピットの中でそう叫んでいた。
急上昇によって攻撃点につこうとしていた彼の視界に入ってきたのは、見方の危急を救わんと西部劇の騎兵隊よろしく突っ込んできた、「蒼龍」戦闘機隊の零戦だった。
「蒼龍」戦闘機隊の接近に敵は気づいていないようだった。
そのため乱戦の最中で奇襲に等しい攻撃を受ける羽目になった。
「突っ込め!」
「蒼龍」戦闘機隊第二大隊長多田少尉はそう隊内電話に向けて絶叫しながら、味方機に群がる敵機に対し突入を開始した。
彼の体は、急降下によって座席から浮きそうになっているが、しっかりと止めたベルトによって抑えている。
彼の視界には、絶好の鴨とかしている敵機が中心に入り周辺の視野は、自機に向かってくる敵機がいないかを確かめる程度しかやっていない。
いやこの状況で後方へに警戒を怠らない彼を、褒めるべきだろう。
一瞬で敵機との距離が詰まる。
敵機は未だ気づいた様子は無かった。
「いくぞ!」
彼は射程内に捉えた敵機を確実に落とす為、操縦桿を微調整しつつ叫んだ。
そして次の瞬間多田少尉の零戦の機影が、ぶれたように見えた。
それと同時に敵機のコックピットが、爆散している。
彼の放った20ミリ弾がコックピットに直撃し、窓ガラスを吹き飛ばしさらに搭乗員の体もズタズタに切り裂いたのだ。
グラマンの機体は炎上こそしているものの、原型を留めたまましばらく惰性で直進した。
しばらくしたのち、不意に機首が下を向き悲鳴のような騒音をあげながら、蒼海へと落ちていった。
多田少尉とほぼ同時に、複数の零戦が敵機を火だるまもしくはばらばらにし、撃墜の凱歌をあげていた。
それによって、押されつつあった「飛龍」戦闘機隊の残存機も一気に立て直した。
いや機数が同等になったため、ほとんど同数で当たることが増えたからだろう。
零戦を操る海鷲どもの動きに、キレが戻っている。
「くっ!」
多田少尉は、急降下から上昇そして格闘戦にはいるため、操縦桿を手前に思い切り引いた。
その瞬間翼が大きくたわみ、不協和音が機のどこかしろから、聞こえてくる。
しかしモノコック構造である胴体は、難なく耐え抜いていた。
速度が付いていたため、普段よりも大回りに垂直方面に旋回し上昇に移る。
後ろを見ると列機も、しっかりとついて来ているのが確認できた。
「次はあいつで」
多田少尉は興奮を押し殺した、冷酷な口調でそういった。
彼の口調からは、その気に対する殺意がにじみ出ているようにも思えた。
彼はその機と同等の高さまで上昇すると同時に、操縦桿を右に倒した。
敵機は左から右の方向で、飛行している。
彼が操縦桿を倒すと同時に、零戦の機体がのんびりとロールを打ち傾斜していく。
それから鋭く右旋回を開始する。
彼が今度狙った敵機は、最初の敵機よりも腕が上で、後方警戒もしっかりと行っていたようだった。
彼が機銃の有効射程にはいる寸前、機体を左に旋回させたのだ。
それを見た多田少尉は、逃げられてたまるかと操縦桿を逆の左に旋回、フットバーも同じ方向に回す。
だがこれによって敵機に若干距離を開けられてしまう。
敵機が旋回に入るのを見てから、逆に旋回したため無駄な距離を、動く羽目になったのだ。
だが再び時が少しすぎると旋回率の差により、グラマンとの間合いがつまり始める。
すると敵機が速力をあげてきた。
その瞬間グラマンの旋回率は、若干上昇した。
半径は大きくなったものの、速度の上昇がそのデメリットを超越したのだ。
だが多田少尉の操る零戦も、旋回戦に対する強みを発揮していた。
彼もスロットレバーを前方のグラマンを追い抜かさないぐらいに加速し、ここぞとばかりに距離を詰めていた。
零戦が遠心力によって外へと引っ張られる。
また脆弱な主翼は、風圧に抗い振動している。
機内にも今までに増して、振動が届いてくる。
だがどれも致命的な損傷を発生させるほどのものではない。
急旋回をかける時の常態と成っているものだった。
今度は敵機が不意に機首を上げ旋回状態からそのまま滑らかに、宙返りに入った。
多田少尉もグラマンが宙返りに入ったとほぼ同じ地点で、思い切り操縦桿を手前に引いた。
それと同時に機首が前方の視界を、塞ぐように持ち上がる。
彼は上昇によって失速し切った瞬間に、操縦桿を倒した。
それと同時に機体が一気に傾き、最短距離で宙返りを終える。
この機動を捻り込みといい、縦方向での格闘戦での零戦の十八番と成っている。
また捻り込みは、中堅搭乗員以上でないと完璧に行うことが難しい上級者向けの技でもあった。
それを戦場で難なくこなした彼の技量の高さも、これからわかるだろう。
一気に捻りこみによって、距離を詰められたグラマンだが機動を変えることなく、そのまま2回目の宙返りに入った。
多田少尉も、負けじと操縦桿を再び引く。
今度は捻りこみによって失速していたこともあり、思うように距離が縮まらない。
だが逆に敵機との間合いも、開くことはない。
多田少尉の操る零戦は、一気に減速していた。
零戦のコックピットの中で彼は、失速の恐怖と戦いながらも操縦桿を引く手に意思のブレを感じさせないほど、がっしりと握りしめていた。
彼は敵機が垂直格闘戦を続ける限りは、挑戦を受け続けると決めていた。
宙返りの連続によって、両機とも減速し旋回半径が小さくなっていく。
彼らは、腕としてはほとんど互角に戦っていた。
残るは機体性能の差だけである。
翼面荷重の少ない零戦の方が、長時間のよう格闘戦には強かった。
零戦に対し善戦を続けていた、グラマンであったが、ついに宙返りを維持し続けられなくなった。
その為水平飛行に戻ったが、その瞬間すきが出来てしまった。
再び捻り込みをかけていた多田少尉にとっては、絶好の位置に敵機はいた。
その瞬間敵機は逃げきれないと悟っったのか、水平旋回をかけてきた。
だがその機体が水平旋回に入る前に、多田少尉は機銃弾を放っていた。
今度は右翼の接合部に数発が連続して命中した。
そして次の瞬間、炸裂弾が炸裂し右翼が吹き飛んで行った。
さすがに頑丈さを売りにする機体でも、20ミリ弾の直撃には耐えきれなかったのだ。
そのまま錐揉み旋回しながら、敵機は墜落していった。
多田少尉は、翼が吹き飛ぶのを確認すると即座に操縦桿を引き、機体を上昇させる。
「悪いな、こっちもやられるわけにはいかないんだ」
彼は誰にも聞こえないのがわかっていたが、そう呟いた。
「しかし、やはり頑丈だな。口惜しいが、零戦ならば7.7で十分落とせるだろうが、奴らはそうじゃない。20ミリではないと当たりどころによっては、落ちてくれないか・・」
彼はそう言いつつ、機体を水平旋回させる。
彼の視界には、あちらこちらで絡み合っては火を吹いて落ちていく、敵味方の戦闘機であふれていた。
「蒼龍」戦闘機隊が援軍として、飛び込んだ為味方の減少するペースは落ち、半比例するようにグラマンの落とされるペースが、上がっていた。
「あれが、目標か」
彼が遠くを見渡すとそこに、目指す敵空母の姿が見えた。
敵空母の周囲には、何隻かの駆逐艦が従者のように付き従っているのも見えた。
見るとその敵空母は味方が劣勢なためか、空戦空域とは逆に逃げるように航行していた。
「あくまで空母を護ろうって、腹か。だがこの程度で攻撃を、防いだことにはならないぞ」
彼は遁走しているように見える敵空母に向けて、冷酷な殺意を乗せた視線で見やりながら、そう呟いた。
「ワイルドキャット隊劣勢です!」
第一任務部隊第二群旗艦「エンタープライズ」の艦橋に、見張り員の悲痛な叫びが届いた。
「わかってる!」
そう怒鳴りかえしたのは、副長のフロイデ中佐である。
「うろたえるな!たとえワイルドキャット隊が全滅しようとも我が艦が、やられなければ負けにはならん!」
「そうとも言いますが、敵はケイトです。被害が飛行甲板で収まる急降下爆撃機と異なり、水面下にも被害が及びます。それにわずか10隻のフレッチャー級で、十分な弾幕を張れるとは思えません」
「そう言うな、残りは輸送部隊の「コンステレーション」と「コンスティチューション」の直掩に割かれてるんだからな。主力部隊がフレッチャー級を、持ってかなかったんだから、それでいいだろう」
「しかし、数が少なすぎますよ。確かに護衛駆逐艦は余り、空母戦の中心では戦えませんが、数合わせには良かったのでは?」
「確かに速力がもっと出れば良かったんだが、いかんせん最高速力が18ノットだろう。艦隊機動の支障をきたすぞ」
「確かに、そうかもしれませんが少なすぎますよ」
「それに上陸部隊を守るには必要なんだ、仕方ないだろう」
「まあそう言うことにしときますよ」
と副長は言ってから、静かに深いため息をついた。
「しかし、なるべく距離を開けたほうがいいのではないですか?敵だって航空機です。ずっと飛んでいるわけにも行きません」
フロイデ中佐は、そう意見具申をしながら劣勢に立たされている、味方機を見やった。
「それはそうだ、面舵いっぱい!」
即座にそれを受け入れた、ジョンHホワイト艦長が、そう発令した。
「面舵いっぱい!」
航海長がそう復唱し、舵輪をも回す。
だが2万トン近い重量を持つ鉄の塊は、すぐには艦首を振らない。
面舵いっぱいは、護衛のフレッチャー級10隻にも伝えられていたが、「エンタープライズ」に合わせるため、まだ転舵する艦は居ない。
しばらく時間が経ってから、ようやく「エンタープライズ」が回頭する。
「エンタープライズ」が回頭するに伴い、はげしく波紋が広がる。
「逃げきれればいいのですが」
フロイデ中佐はそう、どこか場違いな感じで言った。
「それは、実際やってみない限りわからんだろうな」
艦長も気楽な調子でそういった。
「対空戦闘総員配置に付け」
艦長はそう艦内放送で、落ち着いた声音で命じた。
それと同時に、まだ配置についていなかった非番兵が、持ち場に付くため早足で移動していく。
しばらく艦内は、彼らの立てる靴音で満たされることになる。
敵はケイトだけということがわかっていた為、仰角があげられることはない。
もしかしたら水平爆撃を仕掛けてくる敵機が、いるかも知れないが水平爆撃の命中率はあまり高くない。
それに行動3000メートルを飛ぶ敵機を撃墜するのは、高角砲であっても難しいだろう。
それに明らかに水中をひた走って来る、トーピードの方が脅威度は高かった。
まだ敵機は戦闘機掃討に集中しておりケイトも、向かってきていない。
だがワイルドキャット隊が、撃滅されればもはや残るは対空砲火だけとなってしまう。
浮かべるその城と形容される戦艦ならともかく、装甲の薄い空母に耐えきれるのだろうか。
確かに攻撃隊自体の規模は小さかったが、護衛艦艇が10隻しかない現状は輪形陣の防御スクリーンをやすやすと抜け、「エンタープライズ」に迫ってくるだろう。
状況はどこまでワイルドキャット隊が、奮戦するかにかかっていた。
しかし航空無線を通じて届くのは、戦果報告も断末魔の叫びも同程度であり、ほぼ同数のジークをおしとどめられそうにないのがよくわかった。
「エンタープライズ」が回頭しきり、直進に移る。
だが、空戦空域は徐々に「エンタープライズ」に近づいてきている。
「もういっちょ行くぞ!」
高城一等飛行兵曹は、そう叫ぶと同時に機体を鋭く旋回させる。
零戦が小さい半径で、旋回し一気に敵機よの距離を詰める。
敵機は後ろに着こうとする高城一等飛行兵曹を認識したのだろう、彼とは逆の方向に旋回し遁走しようとした。
「甘い!」
そう高城一等飛行兵曹が叫ぶと、即座に操縦桿を逆に倒し逆方向の旋回に移る。
だがやはりて敵機との距離が開く。
これが最後か、彼は心とも無くなった弾量計を見た。
次の敵機を落とした時点で彼の零戦の20ミリ弾は尽きるだろう。
残りは、大量に命中させなければならない7.7ミリだけになる。
確かに落とせないこともないのだがその分連続して射撃を続けなければならず、隙ができやすいのだ。
だがそれもコックピットを一撃で射抜けば問題には、ならないだろう。
すなわち搭乗員を吹き飛ばして仕舞えば、いくら頑丈な機体であっても意味がない。
旋回戦では零戦が負けるということは、なかなか起こらない。
今もひたひたと敵機との距離を、詰めていた。
鈍重そうな機体を俊敏そうな機体が追い込んでいく。
いつしか空戦は、数でまさり始めた零戦の一方的なものになりつつあった。
「行け!」
高城一等飛行兵曹はそう叫びながら、20ミリ機銃の発射把柄を押し込む。
発射に伴う反動が機体を襲う。
そして次の瞬間敵機の発動機付近に火花が、発生した。
次の瞬間には発動機が吹き飛ばされ、コックピットより前の機体が消滅した。
次の瞬間には機首をしたにして、落下していった。
第30話完
そんな感じで・・続きます
今はフジミの矢矧とか欲しい
正月は長門作ろう
ストック溜まってきた
なんだこれ?
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