第27話トラック沖海戦 エンタープライズ防空戦 戦闘機激闘
とにかく空戦です
「行くぞ!」
高城一等飛行兵曹は、そう叫ぶと同時に7.7ミリ機銃の発射把柄を握った。
自機は上昇しており、敵機は急降下してくるため、目標との距離が一気に詰まる。
この状況では、20ミリ機銃を撃ち放っても当たらない。
敵機の数は多いため、ここで無駄撃ちするわけにもいかない。
それに相対しつつならば、威力に弱い7.7ミリ機銃出会っても、グラマンを落とせるはずだ。
敵機はグラマン鉄工所と呼ばれるほどの防御力を持つが、至近距離しかも相対しつつ放ったならば、7.7ミリ機銃でも、落とせるだろう。
今だ。
彼は心の中でそう呟くと同時に、ためらいなく発射把柄を押し込んだ。
照準器で見ると、まだ入っていないがこの距離ならば当たるはずだ。
そう思いつつ、短く1連射を見舞う。
それと同時に、軽い連射音とともに曳光弾の放つ、光の筋が蒼空に刻まれる。
それと同時に、敵機の両翼からも発射光がきらめく。
そして激しい光の濁流が、彼の視界に広がる。
F4Fワイルドキャットは、6門の12.7ミリ機銃を搭載している。
その圧倒的な弾量によって、敵機を粉砕するのだ。
「ちぃ!」
彼はそう叫ぶと同時に、操縦桿を倒した。
それと同時に、零戦の機種が若干下がる。
そして光の濁流が、迫ったと思ったと同時にキャノピーの上空を、機銃弾が埋め尽くした。
びりびりとキャノピーが、衝撃波によって震える。
瞬時の判断によって、被弾しなかったようだ。
機体に異常はない。
だがその代わり、敵機も落とせていない。
彼の視界には、すでに何機かの飛行機だったジュラルミン片が、散華しているのが見えた。
おそらく、12.7ミリ機銃弾の直撃を受けたのだろう。
味方も何機かを、落としたように見える。
だが、彼ら飛龍戦闘機隊は、およそ3倍の敵機を相手取らなければならない。
なぜなら、蒼龍戦闘機隊は九七式艦攻の直掩に回っているからだ。
確かにその半数でも行けば、楽になるだろうがもし敵機が、零戦の直掩スクリーンを抜けた場合、九七式艦攻を守る機体が少なくなってしまう。
ただでさえ少ない九七式艦攻である。
ここで一気でも失うわけにはいかない。
だからこその、重層配置である。
これだけの数がいれば、空戦によって抜けられる確率も、かなり減るだろう。
そして、艦攻隊の損害が少なければそれだけ、「エンタープライズ」を撃沈できる確率が上がる。
だからこそ、艦攻隊を死守する必要があった。
「逃がすか!」
高城一等飛行兵曹は、そう叫びながら操縦桿を倒す。
彼の耳には、隊内電話から僚機からの声が届いてくる。
それに対し彼は、「付いて来い」とだけ短く言った。
それと同時に、機体が傾き降下し始める。
機体を傾けたことによって、揚力が減少し機首が下を向いたのだ。
彼は、スロットルをやや絞りつつそのまま急降下に移る。
下手に速度を出し過ぎると、二階堂易中尉のような目に遭いかねない。
彼は、つい速度を出しすぎたために外板がたるみ、あわや空中分解寸前まで行ったのだ。
この時は近くに飛行場があったため、九死に一生を得ていた。
その事故の原因は、補助翼に付けられたマスバランスだった。
マスバランスにより、操縦桿が軽くなり操縦しやすくなったため、速度を出しすぎたのだ。
そのため、マスバランスは廃止されることになった。
しかし速度制限はかけられていた。
そのため、急降下といっても600キロ程度までしか出せないのだ。
これも機体が空中分解しないためである。
その結果、零戦は急降下でアメリカ機に追いつけないということになる。
急降下に移った彼の機体に、振動が伝わってくる。
翼にかかる風圧が増したためだろう。
しかしスロットルをしっかり絞っているため、危険なほど高速にはなっていないはずだ。
彼は、そう思いながらも一瞬右翼を見た。
やはり予想通り、若干たわんでいるが問題のない範囲で終わっているのが見えた。
その時、彼はちょうどいい敵機を発見した。
敵機は2機編隊だった。
アメリカ機は4機編隊が基本というから、おそらく2機づつに別れたのだろう。
うまく連携されると厄介な相手だが、まだ迫り来る機影に気づいていないようで、ただのカモ同然だった。
彼は気付かれないよう、敵機の後方に回り込む。
ふと彼は、涙滴キャノピーの後ろを見る。
彼の視界には、しっかりとついてくる僚機の姿があった。
これで3対2である。
数で敵を圧倒しているのだ。
ここにランカスターの法則というのがある。
それは、双方の戦力を二乗しそれを引き、その引いた値のルートを出せば、どのくらいの損害が出るか、わかるというものだ。
条件が全く同じではないと、意味がないが、F4Fワイルドキャットと零戦の性能は、そこまで変わらないため、問題は少ないだろう。
すると零戦が9でワイルドキャットが4引くと5となる。
すなわちおおよそ、2.3ぐらいである。
すなわち零戦側が最低でも、2機を残してF4Fワイルドキャットを全滅させるということがわかる。
さらに奇襲効果も加わる為、零戦の勝ちは揺るがないのでは無いか。
それは置いとき、彼は気付かれないうちに後ろ上方という、空戦においては最も優位な位置を得ていた。
そして彼は、頃合い良しと判断すると同時にさらに操縦桿を押し込む。
今まで緩行下だったものが、一気に急降下に変わる。
それに伴い、彼に襲いかかるGも大きくなる。
だが旋回格闘戦のそれに比べれば、まだ軽い方である。
彼が急降下に移ると同時に、敵機が天城一等飛行兵曹らに気づいたらしく、慌ただしく旋回を始めた。
まだ腕はいくないらしく、慌てているのが丸分かりだった。
なんせ挙動がおかしいのだ。
しかも2機ともあっさり背後を取られたことに動揺しているようだった。
そこは、熟練搭乗員の多い日本側に劣っている部分である。
今は大増員をかけているが、それまでは少数精鋭手技だったため、腕の良いのが揃っている。
特に二航戦は勢揃いで有名である。
彼らのような、ルーキーに負ける通りがなかった。
確かに僚機の技量は、不安がないわけでもないが相手よりは、明らかに上だった。
「お前らは、2番機を頼む!」
彼は、口早にそう命じる。
「了解です!」」
二人の息のあった返答が返ってくる。
その返答を聞きながら、彼は敵の動きに合わせ機体を傾ける。
それと同時にさらにスロットルを絞り、速度を下げる。
これは速度が速すぎると、極端に舵が重くなってしまい、旋回格闘戦を行うには難しくなってしまうからだ。
彼の機体は、減速したのと相まって、徐々に旋回角を小さくしていく。
前方に見える敵機が、今度は右旋回で逃げようとする。
しかし動きにキレがなく、大回りでS字カーブを描くような軌道になる。
そこを見逃さなかった。
彼は一気に操縦桿を反対に倒しつつ、フットバーを足で操作する。
すると、彼の機体は一気に傾斜が逆向きになり、敵機との距離を詰める。
敵機はそのまま旋回で、逃げるつもりのようだったが、低速格闘戦は零戦の十八番である。
彼は速度を上げ引き話そうとする敵機に対し、さらに操縦桿を倒し、旋回半径を小さくする。
それと同時に零戦が、垂直近くまで傾斜する。
彼の列機も、やや遅れつつもしっかりついてきている。
敵機の加速により、一時離れた距離が旋回半径の違いにより、じわじわと近づいてくる。
しかし敵機はまだ、意志を喪失していなかった。
敵機は旋回をやめ、一気に加速した。
水平速度の差で逃げる気だ。
「甘い!」
彼はそう言って、操縦桿を戻しつつスロットルを全開にする。
零戦が、水平に戻りつつ弾かれるように加速する。
すると徐々に敵機の姿が、大きくなる。
零戦の方が水平速度や、上昇速度は速い。
零戦が劣るのは、急降下速度と防弾装甲ぐらいだ。
しかしその為ほとんど互角の戦闘力を持っている。
決してワイルドキャットが、鈍重なわけでもない。
だから腕の差があれば、零戦も簡単にやられてしまう。
そこは腕と戦術の差が、如実に現れるのだ。
「もう少しだ」
彼はそう呟きつつ、射撃の機会を窺う。
まだ距離が遠く、7.7ミリでは威力不足20ミリでは、正確な照準が難しい。
理想は、100メートル以内まで接近することだが、乱戦の渦中に置かれているため、そこまで悠長にやっているわけにもいかない。
「今だ!」
まだ遠いかと思いつつも、彼は発射把柄を押し込む。
すると機首から、2本の曳光弾の筋が吹き伸びる。
それは、一気に敵機に近づいていく。
かれは、7.7ミリ機銃を放ったのだ。それは敵1番機の尾部に命中した。
命中に伴う火花が、散らされる。
やはり効果が薄いようで、落ちる気配はない。
チッ!
彼は内心そう、毒づきなが機首をややあげる。
そして再び、1連射をぶっ放す。
今度は、やや放物線を描きつつ吹きのび太光の矢が、敵機上部に命中した。
それを見ると同時に彼は、さらに機首を持ち上げた。
徐々に着弾点が、敵機のキャノピーに近づいていく。
そして、彼が連射をやめると同時にキャノピーが、吹き飛んだ。
それと同時に、鮮血が大空に散華する。
コックピットの中は、肉塊と血潮の泥濘になっているだろう。
操縦者を失った敵機は、いきなり機首を下げ、そのまま海に向け落下していった。
彼が目標の末路を見送っている頃、2番機が突如として大爆発を起こした。
列機が、20ミリ機銃を直撃させたのだろう。
一瞬で翼に大穴を開けられ、左翼が吹き飛ぶ。
20ミリ炸裂弾の威力は、絶大なものがあった。
炸裂したと思った瞬間に、翼をへし折ったのだ。
これは、うまく桁を撃ち抜いたからが、このような現象をひき起こすには、やはり炸裂弾出ないと無理だろう。
一瞬で左翼をもぎ取られた敵機は、火は吹かずに弧を描きつつ落ちていった。
左翼が吹き飛んだ為に、揚力が減少し機体を支えきれなくなったのだ。
「次行くぞ!」
彼は無傷で、敵機を屠った列機にそう命令すると、機体を鋭く旋回させ上昇に入った。
上昇中腹部を撃ち抜かれるのが一番危険だが、今狙っているような敵機はいなかった。
彼の機体は、緩くロールを描きつつ高度5000まで上昇する。
彼の眼下には、南海で行われている激戦の様子が、よく見えた。
そこで、誰にも目をつけられていない敵機の姿が、見えた。
放って置くわけにはいかない。
そう呟くと同時に彼は、翼を翻し急降下に移る。
それと同時に敵機が、獲物を見つけたようで、鋭く旋回する。
その先には、敵機を追うのに夢中になっている、零戦があった。
これは僚機の危機であり、見逃すわけにはいかない。
そう思うと、彼は無意識に敵機と交差するよう機体を傾ける。
零戦が、意志を持っているかのように、旋回する。
急降下と旋回によるGが、彼の体に襲いかかってくる。
だがこの程度は、慣れたものである。
彼は若干操縦桿の傾斜を緩める。
旋回が終了した時に、ちょうど後方に付くためだ。
旋回半径が、若干大きくなるとともに体の負担が、小さくなる。
敵機は、味方を追い回す零戦を追うのに夢中になっているようで、天城一等飛行兵曹らが接近しているのに気づかない。
さらにその気は、列機とはぐれたのか一機だけだった。
これは連携を基本とする、アメリカ海軍としては、珍しかった。
「列機の後を負わせてやるよ」
彼は冷たい闘気が、湧き上がってくるのを感じた。
だが彼も、視野狭窄に陥っていた。
「小隊長危ない!」
叫び声が、隊内電話から聞こえた。
彼も敵機を追うことに夢中になっていた。
その為迫り来る敵機に対する反応が、遅れた。
しかし彼の体は、その声が聞こえると同時に無意識に緩横転を行っていた。
一瞬にして、機位を変えた彼の視界に、敵機の放った機銃弾の濁流が入ってくる。
もし少しでも、隊内電話に対する反応が遅れていたら、確実に落とされていただろう。
それだけ際どいタイミングだった。
彼はすぐさま、目標をたった今攻撃を仕掛けてきた機に変更する。
ロールを打った直後に、今度は降下して離脱しようとしている敵機の、背後に回る絵緩旋回しつつ、降下の態勢に入る。
敵機は、戦果を顧みずに急降下していく。
彼もそれについていこうとするが、期待が脆弱な零戦が、悲鳴をあげる。
しかしここで見逃すわけにはいかない。
彼は安全圏内まで速度を落とし、降下を続ける。
それに伴い、高度計の針が一気に回り、高度が落ちていく。
彼の視界に徐々に、水面が広がってくる。
蒼空と南海の比率が、逆転していく。
ふと見ると、高度計に針は、1000メートルを指していた。
かなり高度が下がっている。
彼はそう思いながら、500までいったら降下をやめると、決断した。
これ以上は、ダイブブレーキを持たない零戦にとっては、危険な高度であった。
第27話完
こちらは、始めたばかり(1ヶ月くらい)とは言えなんでか知らんが、全部改で揃えてるのにかかわらず丙2がクリアできない
ボスまで行ってもいつも、戦術的敗北Cになってアウト・・
バケツもあんま残ってないし・・
ツェッペリンどこででますかね?
丙1で出るなら良いんですが・・
超大和型建造中
カタパルトエッチングで作った
折るのがむずかった
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