第24話トラック沖海戦 敵艦隊接触
内容が詐欺っぽいけどいいよね?
「行くぞ」
そう愛機の中で高城一等飛行兵曹は、呟いた。
彼が第一艦隊上空で、曲芸飛行を行ってから十数分が経とうとしていた。
第一艦隊の艦影は、ほとんど見えなくなっている。
彼らの元には、「武運長久を祈る」の無電が第一艦隊から届いていた。
任せとけ、そう思った者も多かった。
しばらくは、第一艦隊の艦影を見たりしていたが、それももうできないほどの距離だ。
相変わらず、周囲は母艦攻撃隊の九七式艦攻、零戦の立てる爆音で満たされている。
敵機の姿は全く見えない。
いや敵の気配さえも存在しない。
そんな事を考えると、思わず敵のいない方向に突き進んでいるのではないか?と思わずにはいられないが、ここは攻撃隊長を信じて飛び続けるほかない。
九七式艦攻なら兎も角、零戦は単座の為自力で正確な方位に飛ぶことは、かなり難しい。
どんな時でも先導役の多座機が、付いていた。
唯一の例外は、艦隊や基地上空の邀撃戦ぐらいである。
だから、自分から敵艦隊を見つけようとするのは、自殺行為に他ならない。
現在は、攻撃隊の1機として飛んでいるのだ。勝手に編隊方離れるわけにも、行かない。
「調子はどうか?」
日本製に比べ明瞭に聞こえる、イギリス製機上電話から、彼の所属する小隊の小隊長の声が入った。
「おかしいところはありません。発動機の調子は、優良では無く、可程度ですが」
彼は真面目にそう返すが、どこか可笑しかったのか、電話から小隊長の笑い声がした。
「そうか、なら良い。まだ先は長いようだからな」
「分かっております、小隊長」
そう言うと彼は、高度を落とさなない程度の、バンクを行う。
「まだ先は長いか」
バンクを行ったのち、小声でそういった。
単座機で辛いのは、しゃべる相手がいないことである。
確かに機上電話は、前期に搭載されているが、それはあくまで連絡確認ぐらいにしか使われず、私語は厳禁だという空気もあった。
その為、彼はほとんど機上電話を自分から使ったことは無かった。
いやほとんどの下士官はそうだろう。
それに比べ、九七式艦攻は三座機であるため、すべての点で零戦に比べ楽をできる。
一番違うのは、気楽に話せる仲間がいるという事だろう。
確かに操縦員の負担は決して、楽なものではないが、それでも息抜きを常に行えるのは、士気や気力を保つという面では、決して小さいものではなかった。
しかも、この日は地平線まで真っ青な空が広がっていた。
その為何も変化のない景色に飽きて、居眠りしそうになる機が、続出した。
そのような機体は、挙動が細かく震えたりおかしくなるため、すぐ分かる。
その場合は腕に自信のあるものが、自機の翼を相手にぶつけ、強引に起こすのだ。
この際強すぎては最悪空中分解を起こす為、ほんの少しぶつけるのが基本であり、いかにそっと当てるのかそれを競っているものもいた。
それはさておき、高城一等飛行兵曹も睡魔に目けた一人であった。
「気をつけろ」
その後そう言われただけだったが、彼はもう居眠りはしないと決めた。
なぜならうとうとしてる時にいきなりきた、衝撃にかなりやられたからである
「気をつけます」
彼はそう答えると、軽く伸びをした。
眠気をなんとか取ろうという、魂胆だ。
こうしてる間も、攻撃隊は巡航速度で、飛翔している。
その時突然「敵艦隊発見」の報が入った。
「 ついに来たか!」
報告を聞いた、攻撃隊長友永大尉はそう言って、その方向に機首を向けた。
その前に電話とバンクによって、転針は伝えてあったため混乱は無かった。
「あいつらか」
海に浮かぶ鉄の、艨艟たちを発見しそう呟く。
しばく攻撃隊は接近を、続けた。
「おかしい」
そう友永大尉は、つぶやきながらもう一度敵艦隊を見やった。
「やはりか」
そしてその違和感は、現実のものとなった。
「空母がいない。という事は更に奥にいるはずだ」
彼は後席の電信員村井定一等飛行兵曹に、そう言った。
「確かに、これは第一艦隊によって叩き込めされた、戦艦部隊のようですね」
即座に答えたのは、偵察員の赤松作特務少尉である。
「ならば突き進むただそれだけですな」
「その通りだ、各機に通達、敵艦隊は後方にあり。これでいいはずだ」
友永大尉はそう言いつつ、操縦桿を傾ける元の進路に戻っていく。
「発見されました」
その報告が、輪形陣の外側を固める駆逐艦から入ってくる。
その瞬間旗艦「サウスダコタ」の艦橋は、凍りついた。
「我々には反撃する力がありません」
「サウスダコタ」艦長トーマスジャッチ大佐は、来るべきものが来たと言いたげに、悲痛な声で言った。
「確かにそうかもしれん。だが合衆国軍人たるもの、最後まで諦めたらいかん!」
そう強い口調で言ったのは、第一任務部隊司令官ハルゼー中将であった。
「とは言いますが」
「だからどうした?」
艦長は何か言おうとしたが、ハルゼー長官が即座に止めた。
艦長はやれる事は、何もありませんと言おうとしたのだ。しかしそれを言っては士気が下がりきってしまうのが、分かりきっているため、止めたのだ。
「全艦対空戦闘用意!」
すでに遅きに失した感が強かったが、そうハルゼー長官は命じた。
命令が通達されるとともに、各艦の12、7センチ両用砲が天を睨む。
「全艦対空戦闘用意」の令が降るとともに、「サウスダコタ」の艦内は配置場所に向かう、靴音で満たされる。
それは、全艦で起こっていることだ。
駆逐艦からの報告で、向かってきている敵編隊は、ジークおよびケイトと、分かっていた。
それがわかった瞬間、ジャッチ艦長は、血の気が引く思いになった。
なんせケイトは雷撃機であることが分かっていた。
雷撃されれば、大穴を喫水線下に開けられ、浸水により沈没に至るのだ。
無傷の状態ならばともかく、今は全艦が傷つき速度も低下している。
その状態から魚雷を食らえば、撃沈されること間違いなしだった。
もしそうなれば残存する「サウスダコタ」「ノースカロライナ」「ワシントン」「メリーランド」「テネシー」の全艦が撃沈される、悲劇も考えられた。
もしそうなれば、合衆国に残存する戦艦は、「レキシントン」「サラトガ」「ニューヨーク」「テキサス」「ネバタ」「オクラホマ」の6隻のみになってしまうのだ。
そうなってしまえば、なおも10隻前後の戦艦が健在な、日本海軍に対応する術がなくなる。
なぜならその中で、16インチ砲搭載なのは、「レキシントン」「サラトガ」の2隻だけとなるためだ。
それでは、16インチ砲以上の艦を7隻保有している、日本海軍への対抗手段が無くなってしまうのだ。
確かに、16インチ砲12門搭載のモンタナ級戦艦の建造も進められているが、1番艦が竣工するのは、1943年の春頃と成っており、急場には間に合わないだろう。
そこまでハルゼー長官が、絶望的な想像を巡らした頃、見張り員から信じられない報告が届いた。
「敵編隊反転します」
「なに」
それは、ハルゼー長官も驚くものだった。
「どういう事だ?」
ハルゼー長官はそう、訝しげに呟いた。
彼を始めとする「サウスダコタ」艦橋要員は、みな直掩機のいない艦隊ほど、攻撃機にとってやり易いものはない、ということはわかっていたため、よもや敵が引き返すなどとは、思っていなかった。
しかし、ハルゼー長官が艦橋を飛び出しそこで見た光景は、見張り員の言う通りのものだった。
攻撃態勢まで取っていたであろう、敵機が反転し空中に集合している。
だがそれが何のためなのかは、分からなかった。
「何をする気なんだ?」
彼は再びそう呟いた。
だがそれで答えが帰ってくるわけでもなかった。
艦橋内の誰もが、その光景に言葉を失っていたのだ。
だがそれは、敵編隊が艦隊を追い越す進路を取った瞬間、氷解した。
ハルゼー長官は、即座に艦橋内に戻り、こう言った。
「まずい。奴らは空母をやる気だ!」
「本当ですか?」
ギャッチ艦長が、それでも疑い深く聞いた。
「ああ、的編隊の方位的にそうだ」
断固とした意思を持って、ハルゼー長官は言い切った。
その瞬間違う意味で、艦橋内がどよめいた。
それは別の意味でまずい事だった。
いくら大艦巨砲主義者と言っても、エアカバーのない艦隊の弱さは分かっていた。
それは現に先ほど、彼らがそれを味わって来ていた。
しかも今艨艟たちは、無傷ではなく傷ついているのだ。
その状態では、空母をやれられてしまえば、まさになぶり殺しにされてしまうだろう。
そうギャッチ艦長は、思った。
いやそれは、確信に近かった。
その間「サウスダコタ」の艦橋は、静寂に包まれた。
皆が皆考え込んでいたのだ。
その静寂を破ったのは、やはりハルゼー長官だった。
「「エンタープライズ」に警告「貴隊に敵編隊向かう」だ!」
そう矢継ぎ早に言い切った。
その瞬間、ハルゼー長官の声に弾かれたように、「サウスダコタ」艦橋に活気が戻った。
先ほどまでの停滞が嘘のようだった。
そして命令が下されてから、5分後にはその電文が、暗号で「エンタープライズ」隊に送られた。
「間に合えば良いが」
そうハルゼー長官は、小声で言った。
彼としては、「エンタープライズ」の迎撃が間に合うのを祈るしかできない。
たとえ大艦巨砲主義者であっても、自国の艦がやられて喜ぶものはいない。
「きっと間に合います」
それを目ざとく聞きつけたギャッチ艦長が、確信なさげに言った。
今は彼もそういうしか、できない。
「電信室よりです!」
電信室より寄越せられた、伝令がそう言って「エンタープライズ」艦橋に入った。
「何っ?」
まず反応したのは、当然のごとく「エンタープライズ」艦長ニュートンHホワイト大佐だった。
「はっ第一任務部隊第一群よりです」
そう若干ビクつきながらも、若い伝令は答えた。
「そうか。読め」
必要最低の語数で艦長が言った。
これならば聞き間違えようがない。
「警告「敵編隊貴隊に向かう」以上です」
即座に伝令は、打って跳ね返すように答えた。
「何!」
その瞬間、「エンタープライズ」艦橋は、今ままで体験したことのない喧騒に包まれた。
「今出てるのは何機だ?」
事の重大さを即座に悟った、艦長が飛行長に聞いた。
「今は、防空隊の16機が出てます」
「甲板には何機いる?」
「同じく16機です」
聞けば即座に返答が入ってくる限り、長年の連携を感じさせる。
現在「エンタープライズ」は、70機の戦闘機を搭載していた。
そのうち飛行可能機は、66機である。
残りの4機は、破損が大きく未だ修理が終わっていない。
そのうち、32機はすでに飛んでいるか、即時発艦可能である。
すなわち残りは、34機ということになる。
「全機出撃準備開始!出来次第どんどん出撃させろ!」
そうニュートン艦長が命じた。
「全機出撃準備開始、出来次第順次発艦させます」
飛行長が素早く要点をまとめ、復唱する。
その瞬間、格納庫内部も喧騒に包まれる事が、決定した。
残りの34機は、完全に翼を休めている状態だったのだ。
燃料はもとより、機銃弾も装填されていない。
これでは役に立たない。ただのジュラルミン製の物体である。
その頃、飛行甲板では、16機の、F4Fワイルドキャットが艦隊を守護すべく、滑走を開始していた。
これまで5分程度しか掛かっていない。
そして、1番機が発艦すると、その後は流れるように、残る15機が矢継ぎ早に発艦していった。
「急げ!」
飛行甲板から1段下がった、格納庫で一人の整備員が怒鳴った。
「急いでくれよ」
そういったのは、中堅搭乗員のロールド少尉だ。
「分かってますぜ」
整備員も威勢のいい声を返してくる。
だがそれに反して作業は、遅おそとして進まない。
いくら急いでも、格納庫全体が混乱しているためスムーズな作業ができないのだ。
最低限30分はかかると見ていいだろう。
敵編隊がその頃には攻撃を開始しているかもしれないが、それは関係なかった。
間に合うか間に合わないか、それだけだった。
格納庫内の喧騒は、艦橋内にも聞こえてきていた。
「かなり混乱しているみたいだな」
「確かに。突然の出撃命令だったため、仕方ないとは思われますが」
そう飛行長は言いつつ、「エンタープライズ」の周囲に布陣する10隻の駆逐艦を見やった。
それらは全て最新鋭のフレッチャー級駆逐艦で構成されている。
それは、対艦だけでなく対空性能でも、従来の間に比べ勝っていたからだった。
対空性能を十全に持つ艦は、合衆国といえども駆逐艦ではフレッチャー級位しかなかった。
艦隊型駆逐艦は大量にあったのだが。
そのため、第一任務部隊第一群には、やや旧式の艦が当てられたのだ。
彼の視界には、すでに敵編隊到来に備え、1艦あたり5門の12、7センチ両用砲を天に睨ませている、艦が見えて言いた。
すでに、フレッチャー級の10隻は、高角砲を最大の90度にあげているのだ。
「続報です!」
「読め!」
「貴隊に向かう敵機は、ジークおよびケイトと思われる。以上です」
「そうか」
ニュートン艦長は続報を聞いてから、若干考え込んだ。
「全艦に命令、(対空砲は雷撃機に備えよ)だ」
考え込んだのち、そう命じた。
その命令が届くと同時に、10隻のフレッチャー級駆逐艦は、今まで天を睨んでいた両用砲を水平に倒した。
第24話完
九七式艦攻の出番は、当分先ですので悪しからず
てか、今回の題名攻撃じゃ無いから詐欺じゃない?
エッチングパーツって難しいなー
一瞬で、消し飛び発見不能w
まあ凡庸パーツだから、最低限の被害だけど(金銭面で)
萎える
まあ、後戻り不能だから、J社の窓枠B1600円買いに行くけど
厳しいなー
感想お待ちしてます




