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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 「エンタープライズ」防空戦
24/66

第23話トラック沖海戦 進撃の攻撃隊

地味な話です

「ついに俺らの出番が来たか」

前方に見えていた零戦が、1機残らず発艦したのを見て、攻撃隊隊長兼艦攻隊隊長の、友永 丈市大尉が呟いた。

彼のあやつる九七式艦攻の調子は、いい。

「発艦開始」

彼はそう呟き、スロットルを全開にする。

若干音色は異なるが、零戦のそれと同じ栄発動機である。

そして、運転状態が安定したのを確認する。

「問題無しだな」

再び小声で呟くと、ブレーキを解除する。

車輪止めは、すでに外されている。

ブレーキが解除された数瞬のち、九七式艦攻が動き始める。

九七式艦攻の腹には、銀光している航空魚雷が、抱えられている。

滑走距離が長くなるにつれ、速度が大きくなり、微妙な段差による振動が大きくなっていく。

当然のことながら、主翼に装備されているフラップは、全開である。

機体が浮き上がりそうになるのを感じた彼は、水平尾翼のエレベーターを、下げ機体の後方を上げることにより、対処する。

そして、飛行甲板の前端がみえた瞬間エレベーターを、元の位置に戻す。

今度は機首が浮き上がろうとする。

だが、そうなる前に飛行甲板の前端を蹴り出し、機体が宙に浮く。

すると、一瞬減速した機体が下降に入る。

これはいつものことでありますここで上昇に持っていけるだけの、揚力を稼ぐ。

海面がぐんぐん近くなるのを感じながら、早まってはいけないと、腹の中に呟く。

操縦桿をめいいっぱい引くことで行う、引き起こしのタイミングが速すぎると、重量のある九七式艦攻は失速、墜落してしまう。

彼も新人の頃には、何度も墜落死そうになる経験をした。

だがいつからか、一連の動作を自然にできるようになった頃、この手の事故は無くなった。

「十分だな」

速度計を見やり、機速が十分なものに達した事を確認し、呟く。

それと同時にゆっくり、操縦桿を引いていく。

零戦のそれとは、比べ物にならない鈍重さで、機体を上昇に持っていく。

ここで焦っても、失速させる羽目になる。

彼の操縦は、ほぼ完璧であり鈍重ではあるが、滑らかに上昇していく。

「ふー」

彼は、他の二人の部下に聞かれないよう、小さく息を吐く。

いくら手練れの彼でも、発艦と着艦は凄く疲れる。

攻撃時と同様、下手をすれば墜落することになるからだ。

彼は上昇速度が十分になったのを確認したのち、車輪を格納する。

それと同時に空気抵抗が小さくなり、機速が若干上がる。

3翅のプロペラは、快調に回り機体を引っ張って行く。

機体の上面を濃緑色に塗装された機体が、彼に続くように順々と発艦して行く。

ふと横を見ると、僚艦の「蒼龍」でも順調に発艦が、進んでいるのが見える。

すでに零戦隊の半数は、編隊を組み終わり旋回しながら、艦攻隊を待っている。

「壮観ですね」

そう伝声管越しに、彼に話しかけてきたのは、キャノピーの中央部に座る偵察員赤松作特務少尉である。

「そうだな。これで一航戦や五航戦がいれば、もっと壮観だったろうがな」

「確かに、その通りですね。しかし零戦がこんなに攻撃隊についてくるのは、ほとんど無いですよ」

頼もしげにそう言ったのを聞きながら、友永大尉は少し考え込んでから言った。

「それは、もともと零戦の数が多かったのと、敵が前期戦闘機で固めてきたからだ。的にも攻撃機がいたならば、こうはなって無い」

「そうとも言いますね。それならなおさら、決めましょう」

「その粋だ。だがいつ敵がくるかわからん。あしっかり見張っておけよ」

「了解です」

そんな話をしている内に、集合高度の3000メートルに機体が達する。

すると彼は、操縦桿を若干今度は押す。

それによって、機首が下に下がっていく。

機体が平行になったのを確認してから、彼は一息ついた。

そして、後続してくる僚機を待つべく、旋回に入る。

日本海軍の場合、一個小隊が3機でそれが3つで中隊、中隊が2つで大隊となる。

彼は麾下の2機が定位置についたのを確認し、零戦隊の最後尾につき、旋回を始める。

その頃にはすでに、全機発艦しているらしく飛行甲板は、空に見えた。

「全機発艦完了。事故なしです」

そう言ったのは、報告を受け取った加来止夫「飛龍」艦長だ。

「そうか」

そう短く答えたのは、二航戦司令官山口多聞少将である。

「やはり俺の鍛えた部下だ」

続けてそう言った。

彼らの頭上には、美しい円を描く何条もの、飛行機雲が見えている。

「出撃にかかった時間は、最短ですね今までで」

「帰ったら、良くやったと言ってやらねばな」

司令官は少し考えてから言った。

「艦隊に戻る。取り舵いっぱい、機関原速」

その間に空になった飛行甲板を見やりながら、加来艦長が命じる。

すると「飛龍」は減速しながら、艦隊に戻っていく。

それは、「蒼龍」も同様である。

「攻撃隊行きます!」

そう見張りから、報告が入る。

二人が空を見上げると、一本棒になって敵艦隊に向かう、攻撃隊の姿が見えた。

「やってくれるよ、友永。貴様に日本の命運がかかっていると言ってもいいんだからな」

そう山口司令官は、誰にも聞こえないよう小声で言った。

その山口司令官の期待を背負った、友永大尉は零戦隊に囲まれるように、麾下の九七式艦攻を率いて飛行している。

見渡す限り、敵機の姿はない。

その為、敵機の黒点を見ることもまだ無い。

攻撃隊の78基の栄発動機が奏でる騒音で、周囲の空域は包まれている。

敵機に遭遇したならば、零戦隊が迎撃に出る手筈になっている。

二航戦攻撃隊は、一糸乱れぬ隊形で敵艦隊へ飛行する。

見渡す限りの蒼い空は、気を抜けば眠気を誘う。

その為平時の訓練では、居眠りしてしまいあわやという目を見るものも、少なくない。

だが、友永大尉はそんな物を今は感じていない。

今はただ、敵艦隊に攻撃を成功させる事に集中している。

「敵は1隻だ。油断しなければ、絶対にやれるはずだ」

は彼が出撃前に言った事だが、攻撃隊の威容を見れば攻撃が失敗するとは、考えられない。

出撃してからしばらく経った頃、偵察員の赤松特務少尉が言った。

「前方に艦隊みゆ。第一艦隊と思われます」

赤松特務少尉は、その経験によっていち早く凱歌をあげて帰還の途についた、第一艦隊を発見したのだ。

その頃「大和」の二号一型電探が、航空機の編隊を捉えていた。

「敵味方不明機探知、距離100000」

「わかった」

電探室からの報告に、「大和」艦長松田千秋大佐が、短くそう答えた。

おそらく味方だろう。

そう彼は素早く考えた。

敵空母には戦闘機が、乗っていないはずだ。

それに方位的にも、二航戦のある方向だ。

敵攻撃隊が、わざわざ韜晦してくるとも思えなかった。

だが万一と言うこともある。

その為「対空戦闘用意」を命じた。

その瞬間、「大和」の無事な左舷側に備え付けられた、3基の12、7センチ高角砲を始めとする対空火器が、空を睨む。

しかし右舷側には、そのような動きはない。

先ほどの砲戦により、全てが破壊されていたのだ。

「大和」が対空戦闘用意を、大まかに終了した頃には、艦隊の全艦が対空戦闘用意を発令、対空火器を軒並み空に向けていた。

「距離80000」

電探員の緊張した、報告が入る。

その間にも、旗艦「大和」を始めとする第一艦隊は、敵味方不明機の集団に向け、航行を続けている。

同盟国である大英帝国(イギリス)では、規定の電波による返信を持って敵味方を判別する、敵味方識別装置(IFF)の開発を進めおり、一部部隊には既に配備を開始しているらしい。

この装置があればと、高須長官は思わないでは居られなかった。

この装置さえあれば、こんなまどろっこしい真似をしなくて済むのだ。

今は、ただ警戒する以外にできることはなかった。

「50000」

の報告が同じ電探員から、入る。

ここまでくると、おぼろげながら編隊見える。

そして「30000」

の報告が入る。

見張り員ならば、もう敵味方の識別ができるかもしれない距離だ。

さらにしばらく待ち、「20000」

の報告が入った時、外縁を守っている駆逐艦から、「味方機と認む」と報告が来た。

この瞬間、艦隊の緊張が一瞬で溶けた。

それと同時に天を睨んでいた、高角砲や機銃が仰角を落としていく。

攻撃隊が上空に到達する頃には、すべての対空火器が平射の角度になっていた。

おそらく、自らに対空火器が火を吹いたかもしれないとは、攻撃隊は気づいてないはずだ。

「あれが、第一艦隊か」

攻撃隊隊長、友永大尉がそう呟く。

それと同時に彼のあやつる、九七式艦攻が艦隊上空に差し掛かる。

現在第一艦隊は、戦艦を中心とした輪形陣を、敷いているようだ。

一瞬彼は、戦艦が一隻しかないのではと思った。

だが、損失は1隻だけだった筈だと、改めてよく見ると、先頭に居る艦が他の艦に比べとてつもなく大きいのに気づいた。

そして彼は、それが名前だけを噂で聞いた「大和」だと悟った。

「あれが「大和」他の戦艦が巡洋艦のように見えるな。それに加賀型も巨艦のはずだが、幅が全く違う」

そう呟きながら、よくも祖国はこんな物を作ったなと、思った。

しかしそれは、砲戦時の安定性に大きく寄与するとも分かった。

彼も腐っても海軍軍人だ、この程度のことはわかる。

彼は軽く翼を、バンクさせた。

それから、零戦隊を無線で呼び出し、「艦隊に挨拶してきてくれ」と命じた。

それを受けた戦闘機隊長は、即座に1小隊に「艦隊上空に降下し、宙返りしてこい」と感度良好な、航空電話で言った。

「よりにも寄ってうちの小隊か」

そう呟いたのは、運悪く自機の所属する小隊が、宙返りに選ばれてしまった、高城一等飛行兵曹だ。

そう彼が呟くのと同時に、小隊長が付いてこいとばかりに、バンクを大きくやってから効果に移った。

彼も二番機と共に、ほとんど同時に降下に入る。

翼が風圧によって、震えているのがわかる。

計器速度は300キロぐらいだ。

そのくらいでは、震えはしても空中分解には至らない。

いくら徹底した軽量化が行われた零戦と言っても、近代的な全金属セミモノコック構造である。

最高速度に達する前に分解するほど、やわではなかった。

そんなに柔だったならば、そもそも採用されてない。


「零戦降下してきます」

そう見張り員が言うのを聞き、高須長官は挨拶代わりに何かする気だと、すぐに分かった。

思わずにやにやしていた為、松田艦長などから、不審な目線を送られたが、気づかぬふりして、零戦を目で追っていた。


高度が1000メートルまで下がってくると、気温がかなり上がってくる。

その為今まで体を包んでいた、寒気もなくなっている。

「500まで降りたら、やるぞ」

そう小隊長は言った。

500と言えば航空機で言えば、低高度と言える。

だがまだ余裕のある高度でもある。

さらに言えば、宙返りを見てもらうには、このくらいがちょうどいいだろう。

そう思いつつ、操縦桿をこれ以上降下角が上がらないよう、若干持ち上げる。

現在彼らが行っているのは、緩行下と言われるもので、艦爆が行う急降下とでは角度に天と地の差がある。

その分気楽だが、戦闘中ではないし普段そんなことは滅多にやらず、さらに緊張の為手に汗がにじむ。

高度を下げていくに従い、キャノピーの曇りが取れていき視界が、良くなる。

計器が指し示す高度は、順調に低くなっていく。

ここまでくると、艨艟達の大まかなディティールが、分かるようになる。

そして小隊長が「始めるぞ」と短く、命じた。

それと同時にまず、小隊長機が上昇に入る。

やや遅れて二番機が、同様の機動を動作もなく行う。

そして高城一等飛行兵曹の、零戦も二番機にやや遅れて、宙返りに入る。

その瞬間操縦桿を引く。

だが思いっきりすぎると、一気に減速してしまう為、それは控えめである。

だが、宙返りの円周の1/4を超えたあたりで、一気に引き込む。

すると一気に天地が逆になり、失速する。

今度は、発動機の重量を利用し機体が降下する。

操縦桿をやや緩めたまま、引いた状態にしていると、機体が水平飛行に戻る。

それで宙返りは終わりである。

だが小隊長が「もう2、3週するぞと言った為、連続して宙返りの機動をする事になったが。

その後さらに、スローロール、クイックロールという上級技を、結局披露することになった。

その機動を行って小隊長も、満足したのか「戻るぞ」と短くいい、機首を上に向ける。

それを聞いて彼は、ようやく終わったかと、ため息を吐いた。

そして彼らが編隊に戻ると、航空電話から良くやったと、賞賛の声がしばらく連続して入った。

「進撃を再開する」

友永大尉がそう命じたのは、高城一等飛行兵曹らが編隊に戻ってから、数分経ってからだった。

第23話完

という感じで、何やってんだ的に終わります

この辺なぜか、伸びてしまった

でもマンネリ化はしていないはず

現在F社の超大和型戦艦を建造中

一気に作るぞ!

てか初の大和型Σ(・□・;)

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