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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
22/66

第21話トラック沖海戦 「インディアナ」沈没

ついに・・です

その瞬間、艦橋内にいた者は皆吹き飛ばされた。

直撃弾炸裂の閃光が、艦首の第一第二砲塔があったあたりで、煌めいた。

「大和」の放った、46センチ砲弾が再び「インディアナ」に襲いかかったのだ。

だが、「インディアナ」は屈しない。

こうなってもなお、後部の3門の主砲を敵艦に向け放つ。

だが艦が傾斜してる為、殆ど見当はずれの海面に虚しく、水柱を打ち立てるだけだ。

それを見て、「インディアナ」に完全に止めをさす為か、敵艦はこれでもかと撃ってくる。

メリル艦長は、絶望に囚われた。

先ほど旗艦の「サウスダコタ」を、大破に追い込んだ敵が、今度は執拗なまでに「インディアナ」に向け射撃を続行している。

それはすなわち、自艦隊が敗北への道を少なくとも、アメリカ艦隊に対し、圧倒的な優位を確信したのではないか。

そこまで思い至った時、さらなる報告が入った。

それはほとんど同時に「ニューメキシコ」そして、「ミシシッピ」から届いた。

(我雷撃を受けく。航行不能傾斜大。総員退艦は時間の問題)

という殆ど、同じ電文だった。

これで、傾斜しほとんど戦力になっていない、「インディアナ」を含め、7隻が撃沈破されてしまったのだ。

しかもそのうちの、3隻は既に太平洋の洋上に姿を見ることはできない。

いや、旗艦の「サウスダコタ」以外で被害を受けた艦は、もう帰還出来ないことが確実と言ってよかった。

「第三砲塔、早く当てろ!ここまできたら、1発でも命中させるんだ!」

そうメリル艦長が、己を鼓舞するためか、絶叫した。

しかし、第三砲塔が射弾を放つより速く、敵弾が「インディアナ」の周囲に着弾した。

しかし、幸運の女神が味方したのか、被弾の激震に艦が揺さぶられる事はなかった。

そして、本来は砲術長の仕事なのだが次のメリル艦長が「撃てっ!」

と短く、命令した。

そしてメリル艦長の渾身の叫びとともに放たれた砲弾が、敵艦めがけ飛翔していく。

そして、その根性は実った。

ある程度時間が経った時、敵艦の艦上に橙色の閃光が煌めいたのだ。

しかし、敵艦はそんな物はかすり傷にすぎないとでも言いたげに、恐らく止めのつもりであろう、射弾を放った発射炎が煌めいた。

主砲が砲弾を射撃するときに使用する装薬の量は、半端な量ではない。

その為、夜間ならば相当な明かりを提供することにもなるのだ。

そして、敵弾の飛翔音が近ずいてくる。

レーダー室からは、「初めて敵弾を探知しました」

と意気軒昂な報告が届いていたが、そんな事を気にかけるほど余裕はなかった。

そして、それが最大に達した時「インディアナ」は、かって経験したことのない激震に、艦全体が襲われた。

「くっ!」

メリル艦長が、衝撃によって壁に叩きつけられ、悲鳴を上げる。

それだけでは無い。

艦内至る所で、強かに壁に叩きつけられる、乗員が続発した。

「インディアナ」に命中した敵弾は、運悪く艦が傾斜していたために、煙路にまともに飛び込み、罐室で炸裂した。

それによって、艦中央部から衝撃が一気に広まったのだ。

この一撃で、「インディアナ」は航行機能を、ほとんど喪失した。

一気に、ボイラーからタービンに届けられる、蒸気量が低下し、スクリューの回転数が落ちていく。

惰性で艦が動いているものの、出せて5ノットだという報告が、機関長から届いていた。

「艦長、決断してください!」

「インディアナ」副長の、モーリシャス中佐が、言った。

「分かってる」

艦長は、短くそう言った。

それから、手慣れた手つきで艦内放送の設定を行い、乗員に向けて言った。

「総員退艦せよ。総員退艦せよ。本艦は敵戦艦との砲戦に敗れ、重大な損傷を被った。皆艦に未練があるとは思う。しかしもう艦がいつ沈んでも、おかしくない状況にある。よって総員退艦せよ」

そうメリル艦長へ、一気にいった。

その放送には、彼の無念が込められているのがよく分かった。

その頃になると、敵戦艦からの砲撃が、止んでいた。

もう「インディアナ」にとどめを刺したと、判断したのだろう。

そして、放送から5分が経った頃には、甲板上は乗員でごった返していた。

主に右舷側から飛び込んでいく。

時たま、左舷側から飛び込んでいく者も居るが、運悪く弦側に開けられた破孔に吸い込まれてしまうものが、かなりの割合で出た。

その脱出行は艦が致命的な損害を受けてから、20分ほど続いた。

その間艦は、奇跡的に傾斜をほとんど増大させずに、乗員たちの脱出を見守っていた。

そして、メリル艦長が退艦する時がやって来た。

艦橋内以外に、逃げ遅れた乗員がいない事を確かめた後、艦上層部の面々と共に、甲板に向かった。

メリル艦長は、最上甲板に立ち、脱出用のカッターに乗り込み寸前、振り返った。

彼の目には、光るものがあったという。

さらばだ、俺の艦。

彼はそう心の中で、呟いてからカッターに乗り込んだ。

かれは、カッターに乗り込んだ後も、寂しげな表情で、「インディアナ」を見つめ続けた。

そして殆どの乗員が、沈没により起こる渦から、逃れ得る位置に到達した時、艦の傾斜が一気に強まった。

今まで、乗員が避難するのを見守っていたようでもあった。

そして、「インディアナ」は左に傾斜を増大させつつ、沈んでいった。

それは、とても静かなものであり、アメリカ合衆国海軍最新鋭戦艦にふさわしい、威厳に満ちた物だった。

そしてメリル艦長は、「インディアナ」の姿が見えなくなる、寸前敬礼し艦が沈みきるまでずっと続けていたという。

「くっ」

艦が見えなくなったと同時に、メリル艦長が嗚咽を漏らした。

そしていつしか、周囲の海面を「インディアナ」乗員にいる嗚咽画、覆った。

それは、決して大きな声では無かったが、乗員の艦に対する愛情が、こもっていた。

彼らは無事、海戦を生き残った駆逐艦に救助されることになるが、それはまだのちの話である。

「インディアナ」沈没の報告は、ハルゼー長官乗り込みの旗艦、「サウスダコタ」に届いていた。

それを聞いた瞬間、ハルゼー長官は「ここまでやられるとはな」とつぶやいたという。

「サウスダコタ」は、なんとか沈没の危機を脱していた。

「長官、如何しますか?」

トーマスギャッチ艦長が、そう聞いて。

ここでの如何しますかは、撤退か否かでしかない。

それを聞いた、ハルゼー長官は少し考え込んだ。


「敵戦艦、傾斜落伍します!」

見張り員が、喜びを前面に押し出して言った。

その瞬間、艦橋内をどっと歓声が包んだ。

「これで2隻目です」

「大和」艦長松田千秋大佐が、言った。

「よくやった、やはり「大和」は凄いな」

そう、感嘆の表情を浮かべつつ言ったのは、一艦隊司令官高須四郎中将である。

「その代わり、被害も凄まじいものが有りましたが」

そう松田艦長が右舷側の甲板を、見やりながら言った。

彼の視界には、もともと何が有ったのか分からないほど、平坦にしかし表面は木材が荒れている、最上甲板があった。

「だが、今は敵の方が被害は大きい。幸い大型艦の損失は「日向」だけに止まったからな」

結局、艦上を猛火が覆った「日向」を救うことはできなかった。

「大和」が2隻目の戦艦との砲戦を交わしている頃、自沈命令が発令され、総員退艦していたのだ。

「日向」はまだ機関は、無事な区画も多く残っており、自力航行も可能だったが、消火不能と判断されたのだ。

その頃には、砲戦は一気に収束へと向かっていた。

日本側が確認しただけでも、5隻の敵戦艦を撃沈したのだ。

他にも大破している艦もある。

そこまでの損害を被ってまで、砲戦を続行する意思は無いようだった。

「敵艦隊を追撃せよ!」

旗艦「大和」艦橋で、高須長官が力強く命令を下した。

今回は、損害が少ない艦のみが追撃に参加するようにとの命令も、追加されて各艦に伝えられた。

「面舵いっぱい!」

「大和」艦橋に松田艦長の、力強い声が響いた。

「面舵いっぱいよーそろー」

航海員が、すぐに復唱を返し舵輪を回す。

その様子を、高須長官は頼もしい部下を持ったものだと、思いながら見つめていた。

「大和」の巨体は直ぐには、転舵を開始しない。

だが、一度回り始めるといかなる戦艦にも負けない、小半径で転舵を行う。

「「加賀」「長門」「山城」「金剛」転舵します!」

後部見張り員が、そう告げた。

日本海軍第一艦隊は、敵艦隊にとどめを刺すべく、5隻の戦艦を持って追撃戦に移ったのだ。

敵艦に残された戦艦は、おおよそ6隻。

しかし、存分に砲戦を交わせる状態の艦は、ほとんど無い。

殆どの敵戦艦を撃沈出来るだろうと、艦長を始めとした面々は疑っていなかったが、ここで敵巡洋艦や駆逐艦が突撃をかけてきた。

「魚雷を放たれると厄介です!」

艦長はそう長官に言いつつ、応戦命令を出した。

幸いにも、「大和」は回頭を終えていた為、無傷の左舷側を敵駆逐艦に向けることが出来た。

「打ち方始め!」

の命令が、副砲長から発せられた。

それと同時に、「大和」に唯一残された15、5センチ三連装砲塔が敵巡洋艦に向け、射撃を開始した。

それにやや遅れて、9門の主砲が重巡と思われる目標に対し、轟然と射撃を開始する。

同様の光景が各戦艦で、発生していた。

アメリカ艦隊は、残る巡洋艦全てと駆逐艦の大半を、迎撃に当ててきたのだ。

駆逐艦程度の軽艦艇に対処する為、三水戦の14隻と第六駆逐隊の、4隻が戦艦たちを護らんと、間に割って入ってくる。

だが、日本側の攻撃は熾烈を極めた。

「大和」をはじめとする、戦艦たちは主砲はもちろん副砲、高角砲を持って敵艦に射弾を次々と浴びせていたのだ。

特に12、7センチ高角砲は、対駆逐艦戦闘で役に立った。

圧倒的な速射力を持って、一気に敵駆逐艦を浮かべる鉄塊に、変えていったのだ。

「しつこい!」

「大和」艦橋では、なかなか引かない巡洋艦や駆逐艦に対し、松田艦長が怨嗟の声を上げていた。

やっても、しつこく食らいついてくるのだ。

その頃、一艦隊の中でも不遇をかこっている、艦があった。

十戦隊の「大井」「北上」の2隻である。

この2隻は、重雷装艦と呼ばれている。

言葉から分かる通り、雷撃力を徹底的にあげた艦である。

そう、61センチ4連装魚雷発射管10基を5基づつ、両舷に分けて装備している。

その為、甲板上はほとんどが魚雷によって覆い尽くされている。

その結果、「大井」「北上」の両艦は被弾に極端に、弱くなっていた。

もし機銃弾が1発でも発射管に命中すれば、その瞬間誘爆を起こし轟沈しかねないのだ。

だから、一艦隊司令部は海戦開始時戦艦列の後方に配置していた。

しかし、激しい砲撃戦の最中に飛び込むのは、ただの無謀な行為と言えた。

その為、戦機を逃していたのだ。

現在も重雷装艦にとっては、とてもでは無いが突撃できる体制にない。

なんせ中小艦艇、がひしめいているのだ。

それによる流れ弾によって、やられないということを誰が言えなかった。

その為現在に至るまで、その2隻は戦艦列の後方で待機していたのだ。

しかし、いつ突撃させるか、タイミングがつかめないまま、戦艦だけでなく軽艦艇も乱入してきたため、完全に突撃の時期を逃してしまったのだ。

「司令官はこれで良いんですか!?」

第九戦隊旗艦「北上」の、艦橋で司令官岸福治少将に、食ってかかるように叫んだのは、「北上」艦長荒木伝大佐である。

「仕方ないだろう。それに本戦隊の弱点は貴官が、一番よく分かってるだろう?」

「ですが、それでも活躍の機会を与えられないのは、おかしいと思います。そもそも本艦は、敵艦隊を追撃し撃滅するために、改装されてのです¥

「だが、今は乱戦下だ。どうやって無傷で、射点まで行くつもりだ?」

「それは・・」

荒木艦長が、言葉を詰まらせる。

「どうしようも無い。そうだろ」

岸長官が、とどめを刺すように言った。

「次こそは、活躍の場を・・」

荒木艦長が、絞り出すように言った。

「ああ、できる限りそうするつもりだ」

岸長官が、そう冷静に言った。

「それに我が国は、艦を無為に失うわけには行かないのだ・・・」

続けて岸長官が、小さな声でそう言った。

その言葉には、どこか寂しげな響きがあった。

そして、追撃戦が始まってから、数十分が経った頃ようやく、長かった艦隊戦に終止符が打たれた。

旗艦「大和」が、(集まれ)の信号旗を掲げ、無電を放ったのだ。

「ここまでだな」

殆どの副砲を失った、「大和」艦橋で高須長官が、そう呟いた。

それにしても、「大和」は凄まじい損害を被った。

今までの艦なら少なくとも、大破と判定される、損害を受けていただろう。

しかし「大和」は、そんな事を感じさせず、どっしりと浮かんでいる。

その姿は、まさに海の王者であった。

第21話完

砲戦がほぼ終わりました

長かった・・

さてここまできたので、裏話を暴露しましょう

この時書き始めてから、少しの間大和第一艦隊に居なかったんです(ガクガクブルブル)

で進んでから、勝てねえなと

やっぱ、大和出して数合わせと無双してもらわないと、勝てんぞと(Σ(・□・;))

てなわけで、こうなりました

いやあ水雷戦隊が、予想以上に活躍しました

最近は毎日2500は書くのが、日課になってます

てか1話5000字縛りの為、何できるの?で終わった話もあったかも

皆さんはどうですか?

ここまでで1時間経ってないかもです

トラック沖海戦始まってから

なんでこうなった

そして今日はまだ続きます

最低でも30話までは引っ張られると思います

感想お待ちしてます


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