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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
20/66

第19話トラック沖海戦 加賀型シスターズの共闘

今回は加賀

「土佐」は、第三砲塔を破壊されたが、敵艦に対し射撃を続けている。

「「加賀」が応援に来たんだ、無様な真似は、許さんぞ!」

「扶桑」が、「カリフォルニア」を撃沈する少し前、「土佐」艦橋で艦長長岡青磁大佐が、(「加賀」は「土佐」の応援に迎え。敵二番艦は「大和」が相手取る。)との、旗艦「大和」よりの電文を読み、言った。

「加賀」と「土佐」は第一艦隊第十一戦隊を、「長門」「陸奥」と共に構成する、誉れ高き戦艦である。

特に帝国海軍最新鋭にして、41センチ|《16インチ》砲を世界で唯一10門搭載する、「加賀」と「土佐」は長い間、帝国海軍を代表する戦艦として、国民から長い間愛されてきたのだ。

今でこそ、帝国海軍最新鋭、最強の艦の座は「大和」に譲って居たが、第一線の戦力を持つ有力な戦艦であった。

だからこそ、無様な戦いは出来ない。

戦闘開始前、艦長は艦内放送による訓示にて、「我が艦が無様な戦いを見せることはできない」と言って、乗員を鼓舞していた。

その一言によって、「土佐」乗員は士気を大いに高め、まさにやる気に満ちていた。

だが、砲戦の女神は彼等には微笑まなかった。

むしろ「土佐」の相手である、アメリカ合衆国新鋭戦艦「ノースカロライナ」にそれは微笑んだ。

結果「土佐」は、夾叉こそ敵艦と殆ど変わらずに得たが、砲戦の流れは常に敵艦に握られていた。

先に命中弾を、食らったのも「土佐」であった。

「土佐」も、喰らった直後の斉射で命中弾をだすことに成功したが、流れを引き寄せるには至らなかった。

常に敵艦の方が、多く命中弾を「土佐」に与えて来たのだ。

誰かが言ったことに、帝国海軍の戦艦の命中率は3倍と言うのがある。

だが、それもあくまで訓練の話であった。

実践になればどうなるかは、分からないのだ。

それにいくら精度が良くても、命中弾を出さなければ意味がない。

「土佐」は、確かに撒布界精度においては、敵艦を上回っていた。

だが運命のいたずらか、徹底的に命中弾がなかなか出なかったのだ。

それには、長岡艦長も何も言えなかった。

何せ観測機からは常に、最低でも「近6遠4」の報告が入ってきたから、精度が悪いわけではないことが、分かっていたからだ。

それに対し敵の射弾は、至近弾こそ少ないが、確実に「土佐」を捉えてきたのだ。

これはもう、運が無いにもほどがあったと言えるだろう。

その結果、砲戦開始から十五斉射を迎える頃には、乗員の士気が、ガタガタに落ちてしまっていたのだ。

しかし、「大和」が敵一番艦を撃沈したことによって、その悪い流れが断ち切られた。

いや正確には、乗員の士気が戻ったと言えるだろう。

先ほども出した「大和」からの「加賀」は「土佐」の応援に迎え。敵二番艦は「大和」が相手取る。」の電文によって、姉妹艦の「加賀」が、「土佐」と同目標に目標を変更したのだ。

「加賀」が相手をしていた艦には、「大和」が砲門を向け、射撃を始めている。

その「加賀」の援軍が、「土佐」乗員の下りきった士気を、奮い立たせ「加賀」に負けるなとばかりに、盛り上がったのだ。

だが、いかんせん第三砲塔を爆砕されている為、一気に戦況を覆すには至らなかった。

だが、「加賀」が共に砲門を開き始めてから、状況は一気に好転した。

「土佐」自身が「加賀」に負けたくないとばかりに、命中弾が一気に増えたのだ。

「いいぞ、この調子で一気に片を付けろ!」

長岡艦長が、そう砲術長に行った。

艦長は内心、最初からこの調子なら、とっくにやれていたなと思ったが、それを口に滑らせるほど、愚かでは無かった。

それを言ってしまったが最後、艦長としての信用を、無くしてしまうことが分かりきっていたのだ。

部下が調子を上げてきたのに、水を差すようなことを自ら言っては、指揮官失格であろう。

その事をしっかり、肝に命じていたのだ。

「土佐」が射撃を行うと同時に、爆風が艦上を席巻し、爆圧が艦橋の窓を震わす。

さらにそれに伴う衝撃が、長岡艦長を始めとする艦橋要員に襲いかかる。

砲戦開始時に比べれば、幾分和らいだ物だ。

それでも、長門型と同等の砲数がまだ残っている。

そのため、未だに多大な衝撃を艦橋要員に与え続けている。

発砲と同時に、第一第二砲塔の砲口から、砲煙がたなびく。

それは、ほんの僅かな時間だが艦橋の視界を遮る。

だがそれも一瞬のことで、次の瞬間には目標としている敵艦が見えてくる。

敵艦もほぼ同じタイミングで、砲弾を打ち出したらしく、砲煙が僅かながらも観測できる。

だが先に着弾したのは、「加賀」が放った交互打ち方の5発であった。

それが、命中弾を出すことはなかった。

その5発が立てた水柱を敵艦が、通り抜ける頃「土佐」の放った斉射弾が、敵艦に襲いかかる。

「命中2!」

見張り所に立つ見張り員から、報告が入る。

その瞬間は、艦橋からも観測できた。

敵艦の前部と中央部に、発砲と異なる閃光が踊ったのだ。

だが、敵艦が弱った様子を見せることはない。

さすが「大和」の射弾に、長時間耐えた艦の同型艦と言える、抗堪性である。

(日本側は、艦型がにてる為ノースカロライナ級とサウスダコタ級の区別がまだ付いていない)

おそらく、左舷側に設置されている高角砲や機銃は、すべて吹き飛ばされていることだろう。

だが9門の主砲は、変わらずに1トン近い鉄塊を打ち出している。

やはり主砲の装甲は、かなり厚い。

だが、「土佐」も相次ぐ被弾に竣工後15年を経ようとしている艦体を、軋ませ悲鳴を上げつつも耐えている。

被害が最上甲板に集中してる為に、浸水が無いのが、現在のところ救いであった。

そして、敵艦の放った射弾が「土佐」の周囲の海水を、噴水さながらに吹き上げる。

硝煙の臭いを含んだ噴水だ。

そして「土佐」は前方に発生した、水柱に臆する気配も見せずに、突入する。

それは、一番砲塔の前方に広がっていた、若干の残骸を綺麗さっぱり海へと押し流す。

後には、千切れた鋼板の断片が露出しているだけだ。

そして、その衝撃は決して小さなものではない。

被弾の時と同じように、艦体を軋ませる。

だがそんな物には動じないのが、戦艦である。

弦側に貼られた厚い、装甲板が艦体の歪むを強引にねじ伏せる。

そして、砲弾の装填が終わると共に、それにも劣らない衝撃が、再び艦を襲う。

「ぐっ!」

長岡艦長も、思わず声を出してしまうほどだ。

その反動の元凶である装薬の炸裂によって、砲身からはじき出された砲弾が、敵艦を粉砕すべく蒼空を飛翔していく。

「加賀」一斉打ち方入ります!」

見張り員が言った。

それは長岡艦長も、艦橋からしっかり見ていた。

「土佐」が、被弾により出来なくなった、41センチ砲10門による、一斉打ち方である。

その瞬間、「加賀」周囲の空気が一瞬にして圧縮され、空気を震わせる。

「加賀」の一斉打ち方による殷殷 とした砲声は、数千メートルの海上を超えて、「土佐」にまで届いた。

「やはり、41センチ砲10門の斉射は、凄まじいものがあるな」

その光景を見た、見張り員が独語した。

「負けるなよ!」

「土佐」砲術長が、射撃指揮所に喝を入れる。

それに応えるかのように、「土佐」が放った射弾が、着弾する。

一瞬敵艦が、水柱に覆われて見えなくなる。

だが次に瞬間には、水柱を抜けいまだ健在の勇姿を見せる。

「「土佐」に負けるなよ、砲門数でもこっちが多いんだ、無様な戦いはするんじゃねえぞ!」

「加賀」艦長長野芳樹大佐が、射撃指揮所に向けて言った。

「分かってます!先程よりも早く命中弾を得てみせます!」

そう意気揚々と、伝声管越しに言ったのは、射撃手の平田大尉である。

そして、第一斉射が着弾する。

今までの交互打ち方に、倍する数の水柱が敵艦の周囲に乱立する。

「近4遠6」

命中弾は出なかったが、そこそこの精度と言える。

そして、砲身がその角度のまま装填に入る。

現役の戦艦の中で、固定装填式の装填機構を持っているのは、「大和」のみで残りの全戦艦が、就役後に自由装填式に改装されていた。

大和型の46センチ砲は、重量を軽減する必要や、全高を抑える必要があった為、固定装填式になったのだ。

そして、30秒が経ち「加賀」の艦体を再び、装薬の炸裂による反動が襲いかかる。

「ぐっ!」

しっかり身構えていなかった物には、そう苦悶の喚きを漏らす者も出てしまう。

「加賀」と「土佐」は一生でもう無いかもしれない、同一目標に向けて、射撃を行っているのだ。

「着弾・・今!」

計測員の声が、響くとともに敵艦の周囲に長大な、水柱が吹き登る。

それは丁度「土佐」の水柱が、崩れ落ちた直後だった。

しかし、そんな物は無いと言いたげに、敵艦は射弾を「土佐」目掛け放つ。

「加賀」は狙われていないものの、いつ「土佐」が落伍するか分かったものではない。

何より敵が、目標を「加賀」に突如として変えることも、十分考えられる。

「土佐」の周囲に、敵艦による9本の水柱が、「加賀」から隠すように立ち上る。

後部見張り員も、束の間「土佐」の姿を見失う。

経験が浅いものには、「土佐」がやられたと、呆然と何も言えずに立ち竦んでいる、者もいた。

だが、十秒も立たないうちに「土佐」が、健在な姿を見せる。

そして、負けじと「土佐」が8門に減った、主砲をぶっ放す。

そのさらに後方では、「長門」「陸奥」の2隻も、41センチの射弾を、敵艦を打ちのめす為に放っている。

そして、「着弾・・・・今!」

の合図が、計測員によって「土佐」艦橋に入るとともに、水柱が立ち上る。

それを見る限り、「土佐」が未だ強大な戦力を保持していることが、見て取れた。

「命中1」

「加賀」見張り員が、姉妹艦の戦果を報告する。

その声は、まるで自分の乗艦が、その戦果を挙げたかのように、高揚していた。

そして、その報告が終わる頃に「加賀」が、新たなる射弾を放っている。

2隻の加賀型戦艦から、集中砲火を受けている、敵艦は怯んだ様子を微塵と感じさせずに、射弾を撃ち放ってくる。

それが、再び「土佐」を捉える。

その瞬間、今までに倍する衝撃が艦を襲った。

長岡艦長は、何か重要な設備が破壊されたと悟った。

そしてそれは当たっていた。

「第五砲塔被弾!第五砲塔射撃不能!」

の報告が、砲術より入ったのだ。

「っく!」

誰かが、そう叫ぶ。

「やられたか!」

長岡艦長の、怒号が艦橋内に響き渡る。

それは、どうやったらそんなに出せるのかと、皆に思わせるほど大きかった。

第三砲塔が、破壊された時もそんなでは無かった。

それほど、悔しかったのだろう。

この被弾によって、「土佐」は使える主砲塔が、わずか3基6門にまで減ってしまった。

すなわち砲戦開始時の3/5に減ってしまったのだ。

それでも、「土佐」が有力な艦であることに変わりはない。

何より、まだ航行に影響が無いのだ。

「「加賀」がやられました!」

後部見張り員が、そう悲痛な声で報告を入れた。

「詳しく言え」

艦長が、重々しく反論を許さない口調で言った。

「はっ新たに砲塔が破壊された模様です。砲身が吹き飛ぶのを視認しました」

艦長からの詰問を受けた彼は、ベテランらしく動じた様子も見せずに答えた。

実際は、冷や汗をかなり書いていたが。

「そうか・・」

そう言って、長野艦長はだんまりと思考に移った。

こうなってしまうと、結論が出るか余程のことがない限り、話しかけても反応しなくなる。

だが、艦橋要員達にしてみれば、慣れたものであり、問題視するようなものは存在しなかった。

また、艦長の思考を邪魔するような無粋な者も、いなかった。

その間にも、「加賀」は新たなる射弾を、10門の主砲から撃ち放っている。

それには、「土佐」をやられた恨みが、乗り移ったようであった。

その、「加賀」の放った怒りの、射弾が敵艦を捉える。

「命中1!」

敵艦の中央に、射撃とは異なる爆煙が踊った。

だが、水平装甲を破るには至らず、敵艦の左舷側を綺麗に整地したにとどまった。

これまでの被弾によって、蓄積されていた残骸を一気に吹き飛ばしたのだ。

それに送れるように「土佐」が、6門に減って主砲を放つ。

その「土佐」に、萎縮した様子は全く見えない。

むしろ、第三第四砲塔の復讐を、成し遂げんとしているようにも見えた。

そして、再び敵弾の吹き上げる水柱が、「土佐」を包む。

だが、今回は被弾しなかった。

そして「土佐」が、水柱の洗礼を抜け出す頃「加賀」が、新たなる斉射を放つ。

姉妹艦同士、打ち合わせたかのような、連携であった。

射撃のタイミングが、程よくずれることで敵艦に息をつかせぬ圧迫を、加えていたのだ。

だが、その鬱憤を弾き飛ばすように、敵艦が9発の16インチ弾を「土佐」目掛けて、打ち出す。

だが、「土佐」は再び被弾し無かった。

先ほどまでの不運が、一気に清算されているようであった。

第19話完

てなことになりました

やっぱ加賀型良いなあ

フジミ信濃まだかな?

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