第1話アメリカ参戦せず
てな訳で、どんな訳だ？
プロローグに続き第1話投稿しました
「いいぞ」
1915年5月7日のその日、ドイツ潜水艦Ｕ－２０艦長ヴァルター・シュヴィーガ―大尉は、潜望鏡を覗きながらそう言った。
彼は、長い航海の末ようやく目標を発見したのだ。
彼の視界には、絶好の獲物が映っていた。
彼の視界に入っていた船は、兵員輸送船に見える。
そのため、彼は躊躇なく雷撃を決行する事に決めた。こんな狙いやすい獲物はそうはいないのだから、彼の判断も当然だろう。
「変針しろ、雷撃準備」
かれは、乗員に対し手短にそういった。
艦長がそれを言い終わると同時に、艦内で雷撃に向けた準備が始まった。
「取り舵いっぱい」
同じ、発令所にいる航海長に対し言った。
Ｕ－２０潜水艦は、目標を左手に見る方向すなわち左舷側に見ていたのだ。
「了解、取り舵いっぱい」
舵輪を握っている航海手が、返答した。
「深度１５」
艦長は、そう言って艦を雷撃深度へ浮上させる。
「魚雷の調整は済んでるか？」
艦長は、水雷長に伝声管を通じて問いかけた。
その問いに対し水雷長は、逡巡したのちに答えた。
「いつでも行けます、艦長」
「そうか、分かった」
艦長はそう言うと、再び潜望鏡を覗きこんだ。
相手は全く気付いていないようだ。
それも当然だろう。
まだこの時は、ソナーがまだ実用化されていなかったのである。
そのため、もし見つかるとしたら見張りがしっかりと立っている戦闘艦艇に潜望鏡を発見される、もしくは、自ら攻撃をしかけた時程度だろう。
そうして、Ｕ-２０潜水艦は敵に発見される恐れもなくゆうゆう敵に接近していったのだ。
その時、Ｕ－２０潜水艦に狙われてるとも知らず航海を続けていたその船の名は、アメリカ船籍ルシタニア号である。その船には中立国であるアメリカ合衆国の乗客も多数乗っていた。
ルシタニア号はその時、ドイツの交戦国である大英帝国にむかっていた。
だがその時、アメリカ国旗が風になびいておりＵ-２０潜水艦からは国旗が見えないようになっていたのである。
そう、本来ならアメリカ国籍を持った船を攻撃する筈はないのである。
だが、その時は見えていなかったために国籍を英国籍だと仮定して攻撃準備をしていたのである。
そしてルシタニア号は減速転針し、わざわざＵ－２０潜水艦に自ら近づいて行ってしまった。
だがこの時も、風向きは変わらなかったため、国旗が見える事はなかった。
そのため、ルシタニア号とUー20潜水艦は、歴史の転換点にお互い居合わせる事になるのである。
「距離1000。もう少し近付くぞ」
Uー20艦長ヴォルター・シュヴィーガー大尉はそう言って、さらに目標の間にUー20を接近させていく。
一方、ルシタニア号は先ほどと変わらず、静かな航海を続けていた。
だがそれも、もう終わるだろう。
「魚雷発射用意」
艦長がそう言うと同時に艦が停止し、発射管扉が開かれる。
緊張がUー20潜水艦を包み込む。
それはそうだろう。
いくら相手が気づいていなかったとしても、いつ反撃を食らうかなんて分かったことでは無いのだ。
いつ大英帝国の駆逐艦が襲ってくるかも、分かった事では無いのだ。
すでに、何隻かの潜水艦が英駆逐艦の手によって沈められているのだ。
今はまだ、爆雷などと言う気の利いたものは存在せず、ケーブルに爆薬つをつけたもので対潜掃海を行っていた。
それでも、潜水艦にとって脅威であることに変わりはなく、艦長の間で語られていたのである。
「発射用意！」
艦長が言う。
「了解」
水雷長が、落ち着いた声で返答する。
「発射！」
艦長がそう言うのと同時に、圧縮空気が発射管内に放出され、G型電気魚雷が2本発射された。
電気魚雷とは、その名の通り電気でモーターを動かし航行するため、航跡が見えずらいという利点があった。
だがその反面、航続距離が短いという欠点があった。
だが、潜水艦の主兵装としては都合のいいものであった。
なぜならば、航跡が見えず隠密性が高ければそれだけ敵に避けられる可能性を減らせるからである。
こうして、水面下を群狼が放った魚雷が航走を始めた。
艦長は、たった今発射した魚雷が目標の水面下で炸裂し、弦側に水柱が立つ場面を想定していた。
だが、艦長の思い描いた通りの光景が現出する事はなかった。
「まだか？」
艦長が、水雷長に聞く。
「いえ、もう到達していても良いはずですが」
水雷長も疑念を隠さずに言った。
「外したというのか？この距離で」
艦長は、信じられないと言うように呟いた。
そして再び、潜望鏡を覗き込んだとき艦長は安堵の息を吐いた。
「危なかったか・・」
「どうされましたか？」
副長が、「攻撃は失敗したのですよ？」と続けていった。
「これを見てみろ」
そう言って艦長は潜望鏡を、副長に譲った。
「あっ！」
副長はそう言ったが、それ以上の言葉を吐くことは出来なかった。
副長の視界には、風向きが変わったために先ほどまでとは打って変わって、アメリカ国旗がルシタニア号船上にたなびいているのが、明瞭に観察出来たのである。
「中立国の、しかもあのアメリカの船をやるところだったんだ」
艦長は憮然としながら、言った。
彼らが、ルシタニア号に対し放ったG型魚雷はその時、電池の不調によって海底に沈降していた。
これは整備のミスだったが、ドイツが対英戦に置いて今まで以上に不利になるであろう米国の参戦を招く自体を免れる事に成ったのである。
その事によって、アメリカの世論が反独に過度に傾くことに成らなかった。
特にアメリカは、モンロー主義を取っていたため自国民に被害が出たわけでもなく、参戦するように求める声はほとんど出てこなかった。
その結果はアメリカはこの戦争に参戦することはなかったのである。
それが1915年のことである。
その後、大英帝国を筆頭とする連合国側はかなりの疲弊をきたしていた。
それは西部戦線が塹壕戦と言う終わりなき消耗戦に突入したからである。
その為、彼らに貸していた金が返却されるのか、それも怪しくなってきた。
それが、1917年のことである。
結果、その年の8月アメリカは交戦国に対する金の貸し出しを停止する事に、決定した。
それには、モンロー主義と共に戦後に向けた海軍の戦艦10隻準用戦艦6隻を建艦する、ダニエルズプランに莫大な金がかかると言う事情もあった。
この時、アメリカ国内では参戦しなかったことにより不況が、国内を襲っていたのだ。
その為かなりの失業者が生まれてしまっていたのだ。
政府はこれに対し公共投資を、増やすことで失業対策とすることに決定した。
それによって、1番経済効果が大きい船舶特に、軍艦が建造されることになったのである。
すでに最初の艦であるコロラド級4隻の建造は開始されており、さらに合衆国最初の巡洋戦艦であるレキシントン級も建造が開始されていた。
レキシントン級は最終的には6隻が建造される予定になっている。
また、コロラド級が完成した暁にはさらに発展強化したサウスダコタ級戦艦6隻の建造が決定されていた。
また同時期のには日本海軍が八八艦隊計画を、進めており、すでに長門型戦艦が起工され36センチ砲搭載戦艦の「伊勢」「日向」が相次いで竣工していた。
またイギリスでは、対独戦を遂行中でありまた、アメリカから金を借りれなくなたために新たな建艦計画こそなかったが、クイーンエリザベス級戦艦、ロイヤルソベリン級戦艦各5隻またレナウン級巡洋戦艦2隻が、1915年から相次いで就役していた。
それらの艦は全て15インチ砲搭載艦であり、日本の長門型戦艦が就役するまでは世界最強の、戦艦たちであった。
また、このころの日本はイギリスなど同盟国より、大量の武器弾薬の注文が入っていた。
その為、日本は同盟国側の兵器廠と化していたのである。
その頃の日本は基礎工業力がかなり貧弱であった。
その為、不良品がかなりの数出てしまっていた。
その惨状を見た英国は、背に腹は変えられず多数の技術者を日本へ派遣した。
その為この大戦が終わる頃には、イギリスに比肩しうる工業力を持つに到るのである。
大戦自体は、アメリカ参戦がなかったために1920年5月に漸く終結した。
それまでの戦いで、イギリスや日本はドイツのUボートによる通商破壊これでもかと食らっていた。
その為、日本は戦時量産型駆逐艦とも言える、1号駆逐艦を24隻建造した。
1号駆逐艦とは、当時建造されていた樺型駆逐艦から魚雷発射管を2基取り外し、爆雷投射機を2基代わりに搭載したものである。
1号駆逐艦は半年程度で竣工できたが、イギリスへの輸出用や商船なども、同時に量産していた為24隻の就役にとどまったのだ。
これらの艦は、対艦攻撃力が全くと言って良いほど無かった為、戦争が終結次第解体されることになっていた。
その為、固有名を持たず1号ー24号と番号で呼ばれていた。
1号駆逐艦は、イギリスへの船団護衛に全艦投入された。
その為、1号駆逐艦はかなりの消耗を強いられた。
結果終戦までの3年間で半数以上の15隻が、戦没していた。
また、ドイツ大海艦隊の出撃を警戒して、第1艦隊から「摂津」「河内」の2戦艦と当時際優良巡洋戦艦と言われた金剛型の「金剛」「比叡」の2艦計4隻の主力艦を派遣していた。
だが、開戦当初のユトランド沖海戦のような、大規模海戦はついぞ起こらなかった。
その為、主力艦は全艦無傷で残っており、十分な戦力を保持していた。
一方、イギリスはクイーンエリザベス級戦艦以降の戦艦の喪失はなかったが、それ以前の戦艦を数隻雷撃によって失っていた。
また、商船隊の損害も甚大であった。
結局Uボートの攻撃を防ぎきることはできなかったのである。
その為イギリス商船隊は終戦時、優良船をほとんどそうしていたのだ。
それでも、戦後になって完成した多数の戦時輸送船が、まとまった数あったためそこまで酷い物資不足には見合われなかった。
だが、敗戦国であるドイツは違った。
多量の賠償金によるハイパーインフレと、徹底抗戦したことによる、激しい飢餓が襲っていたのだ。
そうドイツは最後まで徹底抗戦したために様々な種類の生産設備を、破壊されていたのだ。
特に食料は、どこも余裕がなかったためかなりの不足をきたしていたのだ。
第1話完
今回は、第一次世界大戦にアメリカ合衆国が参戦しませんでした
この後どうなるのでしょう？
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