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南溟の艦隊  作者: 飛龍 信濃
トラック沖海戦 レヴァイアサンの宴
16/66

第15話トラック沖海戦 第六駆逐隊の進撃

と言うわけで、投稿です

どういうわけだwというツッコミは置いといて、ストック溜まってきた


ズワン、低い音ともに「ボストン」の傾斜が、再び強くなった。

「何!」

カーソン艦長が、言った。

その低く重々しい音は、艦橋にも届いていた。

「失礼します!」

その時、艦橋に伝令が入って来た。

「どうした?」

艦長が訝しげに、言った。

「艦首の区画が破られました」

伝令は、そう言った。

それだけで、何があったのか分かった。

水圧に耐えられなくなった、隔壁が破られたのだ。

ダメコンの報告によれば、装甲板がちょうど設置されている区画だという事だったが、抑えきれなくなったのだろう。

だからと言って、一気に傾斜が強くなるということはない。

破られたと言っても、隅が破られただけしい。中央部はなんとか、角材で保たせてる状況だ。

「排水作業急げ!」

艦長は、伝声管でそういうことしか出来ない。

「ダメです!浸水が多すぎるため、支えきれません」

左舷罐室からの、報告だった。

弦側の罐室は、もう腰にまで浸水している。

この状況では、放棄するしかないだろう。

だが、まだ内側には浸水していない。

今度は、そこが防水の最前線になるのだろう。

だが、もう「ボストン」は限界に近かった。

何せ戦艦でも数発で、行動不能に出来る九三式魚雷を3発も喰らっていたのだ。

耐え切れという方が酷だろう。

確かに艦首に集中するなど、1点に被害が集中していれば、対処可能だったろう。

しかし、魚雷は艦首部と中央部に命中した。

これでは、もう持たせることは出来ないだろう。

「そうか」

艦長は憔悴しきったように、言った。

ズワン、再びその音がした。

その瞬間、「ボストン」は傾斜を一気に強めた。

艦首と中央部で同時に、隔壁が破られたのだ。

艦首では、装甲板が水圧に負けてぐにゃぐにゃに、曲がっていた。

中央部では、内側の罐室に浸水が始まった。

「ボストン」は一気に、左舷側へと傾斜を強めていた。

「もうダメです!総員退艦の指示を!」

副長が、焦るを露わに言った。

もう誰の目にも、「ボストン」が助からない事は明らかだった。

「分かった・・総員退艦!ただし右舷側から、退艦するように。左舷側には、魚雷による破砕孔が開いてるため、吸い込まれる恐れが高い」

艦長は、そう言った。

「艦長行きましょう!」

副長が、立ち尽くしているカーソン艦長に、そう声をかけた。

「よし、行くぞ!」

艦長は、生気を取り戻したのか、そう大声で言うと艦橋要員に、退艦を促した。

「艦長も速く!」

そう言っても、動こうとしない艦長に、業を煮やした副長が、突っかかった。

「私は、全員の退艦を見届けてから、退艦する」

艦長は、静かにそう副長に告げた。

「私も艦長とご一緒します」

副長が、そう言った。

艦長は、意外そうに副長を見てから「分かった」そう静かに言った。

「急げ!」

艦長は、艦内放送によって乗員たちに再度、退艦を促した。

乗員たちの、動きが速くなった。

「速くしろ!」

「立ち竦んでるんじゃねえ!」

ところどころから、そんな声が聞こえてくる。

だが、流れに大きな乱れはない。

乗員たちは、規律を大きく崩すことなく、行動している。

「そろそろ行くか」

総員退艦が、発令されてから10分ほどがたった頃、艦長が一緒に艦橋に残っていた、副長に言った。

すでに甲板は、海水で現れている。

「行きましょう!」

副長は、そう言うと艦長とともに艦橋を出た。

彼ら二人は、艦橋を出た後名残惜しそうに振り返り、もう一度自分たちの艦の艦橋を見やった。

そしてかぶりを振って、海面に飛び降りた。

彼らの目には、悲しみの光が湛えられていた。

そして彼らが、「ボストン」の骸から、数百メートル離れた頃、「沈むぞ!」

の声が、不意に上がった。

「「ボストン」が!」

副長は、振り返りそう叫んだ。

艦長も、ほとんど同時に振り向いていた。

「俺の艦が・・」

艦長は、振り向きざまに悲しみを込めて、そう呟いた。

その声を聞いて満足したのか、かろうじて海面に浮かんでいた「ボストン」は、一気に水没のスピードを速めた。

そして、被雷から20分程度で「ボストン」は最後を迎えたのだ。


「やったか!」

敵艦に高々と立ち上った水柱を見て、第六駆逐隊司令成田茂一大佐は、そう叫んだ。

戦果を挙げたのは、第六駆逐隊の所属する一水戦だ。

現在第六駆逐隊は、本隊と別行動を取っているため、現場にいるわけではない。

それでも、僚艦があげた戦果が嬉しくないはずがなかった。

水柱は、3隻の敵艦から上がっている。

命中数は、10発である。

命中率は13%でありお世辞にも良いとは言えないが、敵艦列を足止めするには、十分だった。

敵艦は、魚雷を避けるために各々の判断で、転舵を行ったために、陣形が大きく乱れている。

「どうします?」

司令駆逐艦「雷」艦長折田常雄少佐が、成田駆逐隊司令に言った。

「ああ、本隊との合流を待つという手もあるが、突っ込むぞ!」

駆逐隊司令は、逡巡した後そう言った。

「幸いにも、魚雷を警戒してか直掩駆逐隊も、隊列が乱れている。突撃するには、今しかない」

続けてそう断言するように言った。

「取り舵いっぱい、敵艦列の後方を抜けるぞ」

折田駆逐艦長が、航海士にそう言った。

第六駆逐隊は、巡洋艦列の後方を抜けるために、巡洋艦列と反航していた。

今ちょうど、殿の巡洋艦を抜けたため、そして巡洋艦列や、直掩駆逐隊の隊列が乱れたため、第六駆逐隊は突撃に移ったのである。

幸いにも、反航中に砲撃を受けることはなかった。

今も、砲撃を受けることは無いだろうと、成田駆逐隊司令は読んだのだ。

まず、先頭に立つ「雷」が艦首を降り始める。

やはり海軍一の、軽快艦艇である。

転舵の動きの機敏さは、ほかの艦種の追随を許さない。

鋭く、転舵を終わらせると、36ノットの最大戦速で、一直線に突撃を開始した。

結果第六駆逐隊に狙われる羽目になったのは、「アイダホ」であった。

「アイダホ」は、「伊勢」や「日向」と同時期に竣工した戦艦である。

砲力も、伊勢型、扶桑型と同等である。

現在「アイダホ」は、砲力で勝る金剛型の「榛名」と互角の砲撃戦を演じていた。

門数では「アイダホ」の方が上だが、命中率で「榛名」が勝っていたのだ。

結果、互角の砲撃戦という形となって現れたのである。

第六駆逐隊の4隻は、波を切り分け波濤を砕き、進撃している。

今の所、砲撃をかけてくる敵は、いない。

いや、気にかける暇が無かったと言えるだろう。

「いいぞ!敵は混乱してるぞ」

成田駆逐隊司令が、顔を上気させて言った。

「はい!5000で雷撃します」

「雷」艦長折田少佐が、言った。

「いつでも行けます」

水雷から、報告が入る。

「雷」は9本の九○式魚雷の発射準備を、終えた。

「距離10000」

見張り員から、報告が入る。

「後5000か」

「はい、敵艦が反撃して来なければいいのですが」

いつ敵艦が、第六駆逐隊に対し副砲によって、反撃を仕掛けてくるか、分かったものでは無い。

しかし、「アイダホ」は第六駆逐隊に対し砲火を開く、気配がない。

気付いていないはずは、あり得なかった。

ただただ、主砲で「榛名」と撃ち合う、だけだ。

「もしかして」

折田艦長が、はっと思いついたように言った。

「どうした?」

成田駆逐隊司令が、訝しげに言った。

「敵は副砲を撃てません」

「何?」

「「榛名」ですよ。「榛名」が放った命中弾が、敵艦の副砲群を、なぎ払ったんですよ!」

折田艦長が、堰を切ったように話した。

「そうか、後続艦に伝えろ、敵が反撃してくる可能性は、極小なりと」

成田駆逐隊司令は、すぐに納得し第六駆逐隊の僚艦に対し、隊内電話で伝えさせた。

ただ、皆無と言っていないのは、万が一があったからである。

完全に反撃が来ないとは、誰にも言い切れなかったのだ。

しかし敵艦は、不気味な沈黙を護っている。

いや、第六駆逐隊に対して、そう言うべきだろう。

「舐められたものだな、我が第六駆逐隊を脅威に感じてないとは」

折田艦長が、凄みを感じさせる声音で、言った。

敵は、我が隊を脅威に思っていないと、ふと思ったのだ。

「いや、「榛名」と砲撃戦をしている限り、敵も逃げられないのだろう。それに、直掩駆逐隊が間に合うと思ってるのだろう」

そう成田駆逐隊司令は、戒めるように言った。

彼が言った通り、混乱から立ち直った数隻の敵駆逐艦が、第六駆逐隊に対し、接近してきていた。

「だが、直掩駆逐隊は間に合わない。目標への距離は、我が隊の方が近いのだからな」

続けて言った。

そう彼は言うものの、艦長は不安を拭えなかった。

「9000」

見張り員から、報告が入ると同時に折田艦長は「打ち方始め」を下令した。

その瞬間「雷」が、艦首に搭載する12、7センチ連装砲が、火を吹いた。

まるで今まで出番のなかった、鬱憤を晴らすかのようであった。

それを皮切りに、後続する「電」「響」「暁」の3隻も、主砲を撃ち放つ。

真っ赤に発熱する鉄の塊は、一直線に敵艦めがけ飛翔した。

それから、寸秒がたってから、敵艦から直撃弾炸裂の閃光が、煌めく。

この距離では、全弾が外れるわけもなかった。

第六駆逐隊が放った、計8発の砲弾の内3発が、命中していた。

しかし、弦側に命中したのだろう。

敵艦が、被害を受けたようには見えなかった。

「命中3!」

見張り員の、報告が入る。

心持ち興奮しているように、思える。

「第六駆逐隊の戦果だな」

成田駆逐隊司令が、そう言った。

味方の砲弾が、ほとんどいっぺんに命中する、現状では、どれが自艦が放った砲弾かは分からない。

だから、このような言い回しになったのだろう。

おおよそ6秒に一回、艦首の12、7センチ砲が火を噴く。

まだ、後部の第二第三砲塔は、射界に敵を納めていないのだろう。

まだ沈黙を護っている。

子君良い衝撃が、艦橋を襲う。

戦艦のそれと比べれば、比べ物にならないほど小さいが、それでも人体には十分響いてくる。

敵艦には、絶え間なく直撃弾炸裂の閃光が上がっている。

それ以上の数の、水柱が敵艦を包み込むように、立ち上る。

時々、それをはるかに凌ぐ、閃光が上がる。

それは「榛名」の36センチ砲だろう。

敵艦は、計5隻の帝国海軍の艦によって、集中砲火を受けているのだ。

おそらく、甲板に設置されていた、副砲や対空砲、機銃は全て、命中弾によって粉砕され、至近弾の立てた水柱によって、海中に残骸が引き摺り込まれただろう。

特に、艦尾からは日が立ち上っている。

第六駆逐隊が、後方から射撃しており、命中弾が後部に集中したからだろう。

それでも、駆逐艦ごときの主砲は聞かないとばかりに、「アイダホ」は「榛名」に向けて射撃を続ける。

「本隊きます」

後部見張り員が、言った。

敵巡洋艦列への雷撃を成功させた「阿武隈」以下、12隻が、第六駆逐隊が通った航跡をなぞる様に、突撃してくる。

だが彼らの目標は、より大きい物だろう。

いや、戦艦列の全体に雷撃をかける気だろう。

「いいぞ、後少しだ」

成田駆逐隊司令が、自己を鼓舞するように言った。

「7000」

1000ごとに、見張り員が知らせてくる。

「あれは、アイダホ級か」

成田駆逐隊司令が、ぼそりといった。

ここまで近づけば、見張り員でなくても、詳細が分かる。

伝統的な籠マストを流用した、塔マストが見える。

現在の合衆国艦艇で、籠マストを持っている艦は、存在しない。

それでも、艦体の洗練さは全然違う。

その時だった、敵艦にひときわ大きい閃光が、巻き起こった。

その時、細長い砲身が吹き飛ぶのが見えたように、司令は、思った。

暫く目標を黒煙が覆う。

だがそれも、風に流されて薄くなる。

「やったか!」

その瞬間彼は、叫んでいた。

彼の目には、砲身を吹き飛ばされた敵艦の四番砲塔の姿が、目に入ったのだ。

「榛名」は、ついに敵艦の主砲を破壊したのだ。

「6000」

見張り員から、興奮した口調で報告が入る。

今の「榛名」の戦果の、影響だろう。

「後少しだ!」

司令が、艦橋内に聞こえるような大声で言った。

「取り舵!」

折田艦長が、大声で命じた。

「雷」が、敵艦と平行になるべく、艦首を左に降る。

若干タイムラグが生じるが、鋭く回頭していく。

波をかき分け、傾斜しながら「雷」は敵艦めがけて、舳先を回す。

後方から、砲音が聞こえてきた。

今まで沈黙を強いられてきた、第二第三砲塔が射撃を開始したのだ。

艦橋にも、今までと違う衝撃が、襲ってくる。

「続いてるか!」

「はい、僚艦遅れずに、後続してます」

見張り員が、即座に返した。

第六駆逐隊は、一糸乱れぬ動きで敵艦に肉薄していく。

その姿は、まるで一本の槍のようだったという。

それでも敵艦の動きに、変化は生まれない。

「榛名」へに砲撃を未だに、優先している。

第四砲塔を破壊された、仇を何としても取らんとしているようだ。

第15話完

というわけで、艦これでも有名な第六駆逐隊が主役でっせ

金曜日に艦これ初めまして

昨日戦艦レシピ3回回したら、扶桑姉妹揃ったw

フジミから信濃でないかなあ

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