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干渉

作者: 片結 あるふ
掲載日:2015/02/17

 はたして僕はその好意を受け入れることを許されたのだろうか。

 散々に憧れ仮定した恋という行為を、けれど僕は実現できない。それだから、誰かの向けたそれを安易に許容することなどできなかった。

 現実逃避を常々繰り返した先に、己が求めていたはずのものすら現実であれば逃避の対象にしてしまうようになっていた。仮定し、非現実という己だけの世界では、逃避し手放してきた全てを得て極楽の如く優雅たる自分が居るというのに、全く同じものを現実で与えられても其の世界では別物として扱ってしまうのだ。

 それほどまでに、僕は狂い。どこまでも、救いようがない。

 結果。それはやはり逃避でしかなく、己の貧弱さの導いた酷く利己主義な解答にしかなり得なかった。

 不安定ながら、確実な、最低の結論は。

 好意という純粋には到底許されることのない、謝罪という背徳だった。

 そうして、ようやくに手に入れることのできたであろう憧憬を僕は無情に断ち切った。

 逃避し、無かったことにし、それまで通りの皆無たる日常を取り返すつもりだった。恐らくは心などと呼ばれる機能を酷使し、再び仮定の極楽で偽りの己に酔いしれるつもりでいた。

 それなのに。

 僕の現実逃避は失敗する。

 理由は知っていた。意味は理解不能だった。難攻不落と自負していた見えない己の世界は、荒れ狂う天候の下孤独に哭く者の如く冷やかに僕を否定した。

 つまり、僕は己に罪を課したのだろう。

 罪の名は後悔か、或いは利己主義という人間の性か。

 何に後悔せねばならない?

 己に向ける好意を何故に己の意思で断ち切ってはならない?

 仮定の世界では、全てを思いのまま手にした世界では、決して生じない疑問という概念。雷のように怒りを込めて、吹雪のように痛く、堕落した己を苛む。

 お前には懐かしいことすぎて、忘れたか。

 過去の己を装って。自問自答するように僕は言う。

 解っているはずだろう。

 苛立つほど冷静な声だった。自虐に適したその声が僕に何を思い出させたいのかなどというのは、無論解っていた。

 散々仮定したのだから。

 一度は、真実として経験したのだから。

 後悔の正体は、自分可愛さの優しさという不可思議で恥ずべきものだ。

 逃避してきた現実で孤独だった僕は、いつしかその孤独を愛していたから、今更に誰かと関わってしまうことを許せなかっただけだ。

 いいや、本当はそれも偽りか。

 求めても手に入れられなかったものを、遅まきに手に入れても大切にできないと思っていたのだ。要するに、怖かった。

 誰かと関わることで自分が傷つくことも、相手が傷つくことも。

 大嫌いだったから。自分というのが嫌いで仕方なかったから、誰かをも嫌うほうが正しいという判断を下した。

 そうして孤独に溺れるうちに、もう一つ知ったことがあったが、僕はそれから逃げ出した。それはおそらく僕にとって現実そのものに等しかったのだろう。

 僕が孤独でいることで、誰かたちを否定することで、無意識に誰かを傷つけていたということを本当は知ってしまっていたはずなのに。

 それなのに僕というのは、その行為を止めなかったのだ。これは最早、完全に悪そのものだった。こんな悪だと本当は知っていたから、取り返しがつかないほどに拒み続けてしまった。傷つけていることを知っている悪だから、誰かと関わる権利などないという被害妄想による悪循環。

 そんな僕は、恋的な感情も同等に扱った。それでいいと思った。それが完成した僕という悪者なのだ。

 それなのに、渦巻くこの感情は何者か。

 無駄に思考し、ここまで己を蔑んで、尚も消えぬこの後悔はいつ息絶えて諦めてくれるのか。

 恐怖は他人との関係にあったが、これはもうそれを凌駕する怪現象になり得る。そうであるから、僕はこの新たな恐怖を払拭するべく、古き恐怖に手を伸ばすことにする。

 好意をくれた誰か、最大の恐怖でもあるその人に。僕は…………。

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