2.少し思慮に耽ってみよう
「はぁ…。今日も帰ったら、コンビニ弁当を食べて寝るだけになりそうだな…」
会社を出たのは夜の9時半を過ぎた頃である
最早、何かをする気力も湧かない
会社から自転車で約30分くらいのところにある、会社借り上げの格安賃貸に、コンビニ経由で帰宅するだけだ
「ホント、毎日こんなんで良いんだろうか…?」
自転車をこぎながら思わず独り言が漏れてしまうのも、最早恒例行事なのである
そして目的地である、いつものコンビニにたどり着く
無造作に開く自動ドアと、入店を知らせる無機質なSEが、日々の"作業感"をより一層、増幅してくれているような気さえする
「とりあえず今週の新刊立ち読みしてから、いつもの弁当だな…」
などと、ボソボソ呟きながら、足早に用を済ませ、いつもの如くコンビニを出る
家に着く頃には、既に23時前になっていた
「週刊誌立ち読みしてたから、若干遅くなったかな…。……ん?何だコレ?」
レジ袋から弁当を取り出した際、一緒に袋からこぼれるように出てきた一枚の紙片…
普段であれば、しょうもないクーポンやキャンペーンの案内故に目もくれない一品であるが、今回のは訳が違った
「へえ…。資格講座。"これからの時代に強い資格を!"ねぇ…。」
とりあえず弁当をレンジで温めながら、ザッと目を通していく
よくテレビのCMでやっているような、通信制、または定期的にテキスト等が届く、資格習得講座の案内であった
いつもならば、黙ってイン・トゥ・ゴミ箱に成る紙切れではあったが、今日のそれは不思議と魅力的な紙片となった
「介護福祉士…、漢字検定…、へぇ…。色々あるもんだな…」
温めた弁当を食べながら、その紙に目を通していく
今日はどうしたことか、その紙切れから目が離せない
「確か…、つい数ヶ月に芳人が地方公務員だかに転職したとかメール入ってたよな…」
この"芳人"とは和都の学生時代の数少ない友人である
メールで数通やりとりしただけだが、何やら入社した年から既に公務員になる為、勉強していたと聞く
「それって、何の為に最初の会社に入ったかわかんねぇじゃん…。でも…転職かぁ…」
そんなこんなで、一喜一憂しながらその紙を読んでいると、気付けば既に、時刻は夜中の1時を回っているのであった