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第五章、正直本編はここから始まりますか?(1)

「一体何匹いるんですか? ゴキブリと同じか!?」


 雑に振り下ろされるさびた剣をはじきながら、返す刀でそれに一撃を加える。


「害がある分、ゴキブリより質が悪いよ……数は後、30匹位だね」


 アイネスさんが持ってるのは俺の作った石の剣。ゴブリンに攻撃させる暇もなく斬り捨てながら俺についてくる。


 刀身も石なんだよ? 普通斬れないでしょ? どんな力で叩いてるんだよ。


「結構多いですね……これで槍スキル、覚えられるでしょうか?」

「難しいとは思うけど、やらない事には始まらないしね」


 鍛冶スキルで作り出した石の槍で、次々と奇声をあげながら襲いかかってくるゴブリンを次々と刺し殺す。

 俺も出来るだけ前に進む遙かなる先輩のアイネスさんに遅れないように、森の更に奥深くを進んで行った。








「スキルについて聞きたい? 勿論いいよ」


 OOの世界の能力が解放された翌日、俺の一日はアイネスさんにこの世界のスキルの事を聞くことから始まった。


「まず、この世界でもジェイルの世界みたいなスキルはある」

「俺の世界じゃ無くて、俺のやってたゲームのですけと……」

「私、そこでマスターにあった」

「そんな事どうでもいいじゃないの! 今日も可愛いわね、ドライちゃん!」


 まあね、些細な問題と言えばそれまでだけどさ。

 後、アルさんはドライアードに過剰反応し過ぎだから。


「スキルとは、卓越された才能を持ち、長い間その腕を振るった熟練者だけが手に入れる事が出来るんだよ」

「……つまり、希少って事?」

「アイは言い方がわかりにくいよ。その通り、スキル持ちはレアって事。元々持ってるのもあるし、修行とかで手に入る物もあるって事。わかった?」


 大体わかった。でも、レアならそのスキルの恩恵を一番受ける魔法使い系のジョブはあまりいないのか?


「いい質問だね。実際の所、スキルがなくても魔法や特殊技能を使用する事が出来るんだ。効率や威力は段違いだけどね」

「ジェイル位スキルを持ってる人はいないのは確かね」

「じゃあ、無理かぁ……」


 俺は特性で自分の所有するスキルが召喚獣にも適応される。

 木の精霊、ドライアード。あの子はツタで武器を作る事が出来る。


 その数は弓と槍……後決めてないけどもう一個。


 弓の熟練は既に持っている。なら、後は槍の熟練を、と、OOでもスキル取得にせいを出していたがついには叶わなかったのだ。


 出来る事なら取得してあげたかったが……残念。


 まあ、スキルの重要性はあまり高くないみたいだから仕方ないのか?


「ごめんな、ドライ……代わりに俺に出来うる手段で君の力になるからな」

「逆。マスター、私が、守る」

「……ジェイル、そう言う理由なら話は別よ! アイ、是非ジェイルに槍の熟練スキルを取得させましょう!!」

「気合い入ったなぁ……ジェイルが相対的に強くなるんだから、私は反対しないけど」


 健気過ぎるドライアードを見て、本当に話せるようになった事の有り難みを感じていたら、なんだか話が進んでいた。


「アイのあれにジェイルも連れて行ったら?」

「あれか? 確かにジェイルの強さなら全く心配はいらないが……」


 アイネスさんが気乗りしなげな様子の事……明らかによろしくない事だよな。


「ええと……果たして私は何をさせられるのでしょうか?」

「戦闘系スキルを手に入れるには一つしかないじゃない! モンスター退治よ!!」








「これで、打ち留め! と……アイネスさん。俺が思ってたより、ゴブリンって弱いものなんですね」

「まあ、クラスレベル10位ならこの位だよ。それにジェイルは強すぎるんだよ。近隣の村々の人にはゴブリンは絶対的な強奪者でしかないし、並の冒険者ならクラス10はパーティーで臨まないと危険なレベルだよ?」




 毎日のようにアルさんにはあしらわれるし、スキルってあんまり重要じゃないみたいだったから、俺って実は弱いんじゃないか。と、思ってたから一寸嬉しい誤算だった。


 クラスレベル……何でも世界共通で定めた難易度の事だ。これは既に聞いてたから知ってる。

 例えばドラゴンを退治しろ、みたいな無茶苦茶な依頼だとクラスレベルは最低でも100以下にはならないとの事。


 因みに、アルさん……月と豊穣の神、アルテミスのクエストはクラスレベル120~255の超高難易度を誇るらしい。

 差がある? それは本人いわく……「才能の良し悪しで私が決めるから!」との事。


 全くはた迷惑な話である。何時まで経っても一本が取れないし。


「そう言ってくれると少しは自信が持てます。有り難う御座います。所で、普段はアイネスさん何で戦ってるんですか?」

「何って、この拳でだけど?」


 いやいや、流石は聖霊王だな。


 近接物理戦闘も万能かよ。


「血しぶきとかかかる時あるでしょう?」

「それ、困ってたんだよ。うちはお金無いからね」


 そう、孤児院と言う位だから例に漏れずお金がない。

 世界を救った勇者もどきなのに、と思うだろうがそう簡単じゃないのだ。


 まず、孤児院なんてものは今までこの世界に存在しなかったのだ。

 教会等が善意で引き取っていたのだ。

 しかし、それには限度があるし、大半が奴隷商人等の手で不幸な目にあるらしい。

 俺、本気で危なかったな。


 で、それをアイネスさんが今回の報酬として自国の様々な場所に建設させる事にした、と、言う訳だ。


 やはり革新的な意見だったようだ。


 国王が随分乗り気で、即座に実行された。第一号が俺。

 今後も増えていくだろうしね。


 ま、何がいいたいかって言うと、それを報酬としたから自分達の手元に一銭も入ってないって事。

 生活費を稼ぐ為にアイネスさんはクエストを受けてたのだ。


「じゃあ、俺の武器や防具をがんがん使ってください。素材さえあればどんどん作れるから、きっと役に立つと思います」

「有り難うね。じゃあ、そうさせてもらうね」


 明らかにゴブリンの集落と思われる場所に来たが、もう自分達二人以外に動く物はいない。

 俺はゴブリン達の持っていた錆びたり折れたりしてる武器を集める。


「ジェイル、何をしてるんだい?」

「……感傷なんですが、古い仲間との約束を」


 鍛冶スキルでその刃を解かして固めていく。そせて、それを加工してダークの模様を刻んだ一つの指輪を作る。


「……そうか」

「俺は弱いですから。どうしても、仲間や家族の事は捨てられない」

「ジェイル……いやジュンヤ。私はいいと思うよ。忘れる必要なんてないさ。それも大切な君が生きてる証なんだから……私は一寸向こうにゴブリンが残ってないか見てくる。ジェイルもここ周囲に残ってるかもしれないゴブリンを探索しててくれるかい?」


 優しいアイネスさんだ。この状態のここに残存敵なんていないから。


 歩いていくアイネスさんを見ながら、余計な気を使わせてしまった事を申し訳なく思った。


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