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第十九章、異者の大冒険(1)

 初めての新しい義家族達。途中からやけっぱちになっていた部分もあるが、概ね良好に受け入れられたような感じだ。


 俺はそのまま進められるままにこの巨大な豪邸に泊まっている。


 今後はどうしたものか。やはり、寮を出てここに住むべきか?


 特異な物が多いから出来れば寮を継続したいんだが……。


「ま、なるようになるか……」


 寝つけない……普段ならもっと安眠できるんだが、枕(家と環境が)変わったからかな?


 と、言うか、この静けさ……明らかに何かのフラグだよな。


「召喚、ドライアード。ドライ、俺にはわからんが、何か感じるか?」

「マスター、始まる」


 ん? ドライが唐突に訳の分からんことを言い出したぞ。日頃から出番が少な目だったから拗ねたのか?


「どうしたんだ? 異常があったのか?」

「マスター、ゴーレム達、必要」


 ドライから他の召喚獣の打診があったのは初めてだ。どうやら緊急の事態になりかかっているみたいだ。


 自分の感を信じて警戒を始めてよかった。クレイゴーレムとロックゴーレムも呼び出す。

 一部屋の中に人間一人、女性型召喚獣一柱、人型もデカい砂と岩の塊が一堂に会してるのだ。


 狭い。


「ここから出た方がいいか?」


 俺はまだ見ぬ敵に警戒度をマックスにして、石の槍とフェイのローブを装着して確認する。


 当然、最大攻撃力を誇る弓、トュルーアイも背負っている。


「ここで大丈夫」

「そうか。じゃあ……って! これか!?」


 ドライアードの言葉に少しだけ警戒を解いた時、俺達のいた部屋は突如発生した光りの奔流に呑み込まれた。


 なる程、今更警戒しても無駄、って言いたかったのか……。


 そして、俺の意識は闇に落ちていった。







「ここは……って、明らかに異世界だよなぁ」

「つまらん。最近の人間はこんなに状況把握が早いのか?」


 あちこちが光に満ちた、しかし、太陽をイメージさせる温かさを感じる白いもこもこの上で俺の意識は覚醒した。


 俺の目の前には仁王立ちの赤い鎧を着た金髪のあんちゃんが立っている。

 一寸不機嫌そうだ。


 先程何やら独り言を言ってたのはこいつか?


「俺は無理矢理な展開は初めてじゃないからな。あんたの名は? どうせこっちの事は全て知ってるんだろ?」

「ふむ、確かにあの方の言うように不遜な人間だ。本来ならばこのような不信心者は私の炎で焼き尽くすのだが……今回は特別だ。有り難く我が名をその耳に納めるといい」


 典型的な偉そうな神だな。俺の嫌いなタイプだ。まあ、向こうにしてもそうだろうがな。


「我が名はアポロン。太陽の神だ」

「アポロン……アルさんの兄貴だっけか?」

「人間、我が妹を知っているのか?」

「月と狩猟の神、アルテミスだろ? 俺の恩人の家で暮らしてるが?」

「何!? それは誠か!!」


 急に俺の肩を掴んでブンブン振り回す偉大なる太陽神。


「お、落ち着け! 離せって!!」

「む、ああ、済まん、取り乱した。妹の様子はどうだったのだ? ちゃんと食事は取っていたか?

入浴はちゃんとさせてもらっているか? 楽しくやっていたか?」


 思いっきり石の槍で突いたが全くダメージはないみたいだな。

 むしろ、アルさんを心配しすぎだろう? この世界がどれだけ一部の生き物以外が弱者だと知らないのか?


 しかも、それじゃあペット扱いだろ?


「一言で言うと……」

「言うと?」

「幸せそうだった」


 額に手をやって感無量ってな感じか? 何なの本当に、この神は……。


「あの竜人も中々やるじゃないか……」


 アイネスさんの事だろうけど、なんだか話が進まなそうなのでわざわざ聞いて遠回りになる愚は避ける。


「で、俺に何の用だ? 朝早いから俺も忙しいんだが?」

「お? おお、そうであったな。人間よ、私と戦え」


 唐突は神の専売特許とは言え、唐突過ぎないか? せめて理由を説明しろ。


「何でそんな事しなくちゃいけない?」

「神が人間に奇跡を与えるには、闘争が必要だからだ」


 奇跡を与える? 何故、こいつが俺にそんな事をする?


 アルさんとの関係も知らなかった位だ。特別俺、と、言う訳じゃ無かったのか?


「聞きたい事がある」

「いいだろう。我等は人間を愛している。父なる子の人間の質問だ。嘘偽りなく答えよう」

「誰の差し金だ? 意味もなく奇跡なんて与えないだろう?」

「言ったろう? 我等は人間を愛している。奇跡だって、愛する人間に与えるのは当然の事だ」


 ダウトだろ、それは。


「それは一般的な話だろ? 俺は今回の件について聞いているんだ」

「……この世界の主柱となる神、偉大なる創造神殿だ」 


 となると、神託の時の神、ブラフマーが一番候補としてはくさいな。


 まあ、それが想像できれば死ぬことはないだろう。


「わかった、じゃあ、始めようか? 戦うと明言してるくらいだ。俺の力は全て使えるんだろうな?」

「心配は不要だ。我等が見たいのは人の心の強さ、可能性の力だ。むざむざそんな事はせん……勿体ない」


 ん、今何か聞こえたぞ?


 取りあえず俺は、居なくなっていた全ての召喚獣を再度呼び出して、武器を創造、臨戦態勢を整えた。

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