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第三章、魔力の魔の字は何ですか?(1)

「おはよう! ジェイル。君、青年時代からこんなに遅くまで寝てたの?」

「いえ、学校に行ってたのでもっと早かったと思います。きっと、この世界に来て初めて安心出来たからじゃないでしょうか?」

「私のお陰ね? 感謝してくれていいよ? 後、学校って何?」

「心の中だけでそうします。学校って言うのは……寺子屋……はないか、ええと、一人前になる為の常識や知識、人間関係を構築する場の事です

。俺の世界ではそれが大体成人まで続いてました。因みにアイネスさんは何処に?」


 アルさんと何でもない問答を行いながら、養父代わりとなった聖霊王を探す。


「アイなら、ミッドガイに呼ばれて出てったわよ。はい、御飯……ねえ、聞きたい事あるんだけど?」

「そうですか、有り難う御座います。何ですか? 手短にお願いしますね」

「この子は……ジェイルは今はちっさなお子ちゃまなんだよ! わかる? この意味?」


 なんだかよく判らない事を手振りまで使ってまくし立てる。


「意味が分かりませんね。ああ、やはりこのスープは美味しい。お店が開けるレベルだな」

「これはアイの自信作だから当然ね……じゃ、なくて! 君、子供! 私、大人! なら、私に甘えるものじゃないの!?」


 昨日の話をあんまり聞いてなかったのかな?


「何言ってるんです? 話したでしょう、俺は見た目はこんな子供だけど、中身は既に社会に……家を出て自活する位の年齢だって。忘れたんですか?」

「忘れてないけど……こんな可愛い子がいるのに勿体ないじゃない!」


 恩人に失礼な話だが、敢えて言わせてもらう。


 なんだこいつ? なんかおかしいぞ? 


「バカ言ってるんじゃない。別の孤児が来るまで我慢しろ。はい、御馳走様でした」

「あああああ……勿体なや、勿体なや」


 食べた皿を洗いながらも、背後から神の視線を感じて昨日の信頼が揺らぐような気がしていた。






「仕方ない。良識をわきまえた子に、子供プレイをさせるのも酷だろうし諦めるわ」


 食器を洗った後、部屋の掃除を済ませて居間に移動してきた俺。

 そこにため息と共に残念そうな声を上げるアルテミス。


 まだ、考えてたのか!? そっちが恐ろしいやい!


「じゃあ、ジェイル。こっちに来て。面白い事するから」

「何ですか? それは俺にとっても面白いんですか?」

「多分ね~こっちこっち。中庭に行くよ」


 不安しか感じないんだが、アルさんは俺の手を引っ張って移動する。

 力が強すぎて、完全に引きずられる俺。


 この辺は流石に人間と大きな違いがあるんだなぁ。


 一寸だけ感心してしまった。







「で、何をやるんです?」

「君、やっぱり淡泊だね……普通、こんな天気のいい時にこんな広い庭に来たら、もっとテンションが上がるものじゃないの?」

「これは生まれつきのものなので、矯正は諦めてください。で、何なんですか?」


 晴天の中、向かい合ってたたされてる俺。


 何をするんだか?


「ジェイルの魔力を発現させようと思って」

「俺の魔力? そんなのあるんですか? 俺のいた場所は、魔力なんて全く存在しない世界でしたよ?」

「それは勿体なかったわね。ジェイルには凄い魔力があるわよ? ひょっとしたらアイよりも高いかも」


 科学一辺倒の地球人の俺に魔力? ゲームじゃないんだから、そんな都合よくはいかないだろ?

 しかも、この世界で最も凄いと思われる聖霊王よりも、なんて冗談もいい所だ。


「そんな馬鹿な、俺にそんな力はないでしょう?」

「かもしれないし、違うかもしれない。でも、身を守る為に、魔力があった方がいいのは間違いないわよ。やるでしょ?」


 昨日の俺の告白の後、当然の如く異世界転移の話を他者にする事を禁じられた。

 ま、当然だ。


 よくて頭のおかしい人、悪くて実験動物位しか未来が浮かばないし。


 しかも、死が身近にあるこの世界なら、尚の事強くならないといけない。


 そんな話をしていたのだ。


 それが翌日から早速とは思わなかったが。


 俺、この世界の常識すら知らないんだけど、そっちは後回しですいいのかな?


「いや、まあ、やりますけど……」

「よーし! いい返事! じゃあ、この水に手を触れて」


 拒否権はないらしい。話を最後まで聞かず、置いてあった桶に水を出現させるアルさん。

 この状況で危険は無いだろうと考え、その桶に手を入れる。


「水を出したのも魔術? 何でも出来るんですね、これでいいです? 一体何が判るんですか?」

「これはね……ジェイルの魔力の適正を見るものだよ?」


 適正? どんな魔術に特化してる、とかそういうのだろうか?


「ああ、近いね。ジェイルは魔力が満ちあふれてるから、むしろそれでいいや」


 違うのか? 魔力があるかないかも、この方法で判断するのかな?


 特に水に動きはない。


「で、どうですか?」

「うーん、反応無いわね」


 やはり落伍者って事か?


「つまり?」

「魔力はあるのよ。ただ、その魔力が全く反応しない。ああ、そうか! ジェイル、魔力ってなんだか判る?」


 いや、ゲームもOO位しかやらない俺にそんな難しい事言われてもなぁ。

 判らんがな。


「魔力って位だから魔の力じゃないんですか? 魔王やそれに類する存在の」

「やっぱりかぁ。そりゃ、反応しないわ」


 何だ? 俺が原因なのか?


「ジェイルが、魔力を理解出来てないから反応ないの。魔力はね、大地や全ての生ある存在に元々備わってる神聖な力。例外はあるけど、長い暮らしの中でそれを自覚した物だけが使う事が出来るの」

「はぁ~、それは、随分俺の認識と違ってるわ」


 さあ、説明したぞ、とばかりに俺を見てくるが……そんなのでいきなり魔力が使える訳ないでしょ。


「難しいのね、異界の人間って」


 その後も何やら色々とそれっぽい事をやってみたが、やはり魔力というものを感じる事が出来なかった。と、言うよりも何も出来なかった。


 それ以外の事も世間一般で言う大学生レベルの動きしか出来なかった。

 世界観を考えると、これは死亡フラグじゃないのか?


  

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