表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/42

第十八章、受付は家族の予感(3)

 俺はアガスティア魔法学院の外周にある森を、スキルで作り出した石のストーンランスで義兄のチュール=リザムと一緒にどんどん奥に向かって歩いていた。


「いたか?」

「おらんなぁ。諦めて入口まで帰るか? 新しいワイルドボア位ならお前でも対処出来るだろ?」

「ううむ、確かに熱くなり過ぎた感じはする。戻ろうか」


 しかし、森の民でもないのに人がこんなに近くに生活してる場の真横に、なんでこんなに高クラスのモンスターばかりいるんだろうなぁ。


 来た道を戻るのは面白くないので、一寸ずつ道をずらして歩きながら、魔法学園の違法実験とか合成獣とかが原因じゃないか? 等と、色々と想像させられた。







「あれはなんだ? 随分大きな猪だが」

「あ、あいつはグレートボア……もっと奥に生息してる筈のクラス15のモンスターだ」


 説明口調だな、おい。


 超巨大な同じ姿にしか見えないから、親なんじゃないのか? 怒ってるし。


 なんか、クラス制度のせいでそう言った思考から外れる感じあるよな。


「さ、どうする?」

「どうするも何も、あんなの手に負えないぞ。なんとかして逃げられないか?」


 そりゃそうだよな。まぁ普通は手には負えないよな。


「一寸いいか? このクラスのモンスターは頻繁にこんな風に人を襲うのか? 後、簡単にエンカウントする位数が多いのかと言う事と、討伐出来る冒険者はいるのかと言う事が俺は聞きたい?」

「何を悠長な! あいつが交戦体勢を整える前に逃げないと!」

「逃げるのか?」

「しょうがないだろ。あんなの相手じゃ、俺なんかぺぺいのぺいだ。俺にどうにか出来る相手じゃないから! お前だってそうだろ?」


 ふむ、どう答えたものかな? まあ、今日から家族で俺を歓迎してくれる為にやってくれてるんだし……まあ、いいかな。


「ああ。全く持って問題ない」


 大地に転がっている石ころを拾って、鍛冶スキルで槍を創り出す。


「ジェイル……お前……何をしたんだ? 手のひら大の石がなんで、そんなでかい槍になるんだよ!? それに学園での高ランクパーティーでの討伐対象だそ!! 問題ないって……」


 突っ込み所多くて大変だな。


「そんなのあるのか? 面倒臭い制度だな。まあ、簡単な事だ。それはな……」


 石の槍を地面に突き刺す。


「それは?」

「全ては……俺が強いからだ!」


 俺の剣気(槍気?)を感じたのか、前脚で地面を蹴りながら、こちらに向かって来るグレートボア。

 その余りに言葉通りな猪突猛進振りに、苦笑しながら石の槍を地面から引き抜くと相手に向ける。


「おい、マジか? ここまで引っ張って自分自慢とか、どれだけ鬼畜なんだお前は?」

「黙れ、そんな事より俺の質問に応えろ!」


 石の槍で、突撃を逸らして横凪になぐりつけながら、チュールに指示を飛ばす。


 実際にはクラス15位のモンスターは鼻糞ほじってても倒せるのだが、一応それっぽく振る舞っている。

 むしろ、晩御飯、豪勢に行くならこっちの肉の方がいいだろ。ワイルドボア10匹以上位の体積だし。

 加減して戦わないと粉々になりかねんから、注意が必要だしな。むしろ、そっちの方が気を使うわ。 


「あ、ああ……わかった。なんか大丈夫そうだし、任せたぞ!」

「気持ちはわかるがよ。何でお前木の上に登って難を逃れようとしてんの? 吹き飛ばすぞ」


 応援は空の上から飛んできた。いつの間にか一番でかい木の枝に腰掛けてやがる。

 邪魔にならなくていいけど、なんか腹立つ。


「生き抜く為の処世術といってくれ!」

「まあ、いいが。ほら、早く話せ」

「何だったっけ? 余りの恐怖に聞いてなかったかも……」


 俺は黙って、グレートボアの突撃をチュールの乗っかっている大木の方向に誘導する。


 そして、予想通りに頭から大木に突っ込むグレートボア。激しく揺れる木や枝。


「ああ、済まんな。一生懸命過ぎて、そっちに逸らしてしまったみたいだ、上は無事か?」

「わかった! すぐ思い出すから待ってくれ!」


 なんか、子悪党が命乞いしてるみたいだな。


「ブキーーー!!」

「問題は固さが、中々の強度だ。動きが直線上だから、正直御しやすいな。これならうり坊の方がよっぽど厄介だぞ?」


 重くて動きが悪くなるのか? 弱くなってるんじゃないか? 確かに学生がなんとか出来るかもしれないな。


「ええ……と……グレートボアの数だよな? こいつはこの森でも最高ランクのクラスだ。人界に出てくる事は無かった筈だから、目撃例は殆ど無かったと思う……」

「ふむ、じゃあ、殆ど人も襲わないし、数も少ないと予想されるな。じゃあ、後は討伐出来る奴はどれだけいる? ……と、邪魔だな。一寸飛んでろ!」

「ブギャ!? キキキイキ!!」


 懲りる事なく同じ突撃を繰り返すグレートボアに、少々飽きてきたからバットのように石の槍を持ってグレートボアにジャストミート。


 そして、狙い通りにチュールの木に直撃。


「おわ! 落ちる、落ちるから! 勘弁してくれ」

「ほら、早く続けろ」

「……冒険者はいない。アガスティア魔法学園があるから、冒険者は殆ど集まらない。クエストの優先権が学生にあるからな。最近、凄腕の冒険者が来たらしいが……」

「それはいい。除け」


 明らかに俺っぽかったので、それは省く。ダメージがデカかったのか、グレートボアは中々起き上がれない。


「急に発生した非常識なクラスのモンスターは教師陣が対処してるが……クラス15までは、ランクの高い学生のパーティーでも受給出来る」


 やっと俺の聞きたい話になってきたな。


 ふらつきながらも突撃を止めないグレートボア。


 それをかわして、グレートボアが折り返そうと動きを止めた時に、巨体に比べれば余りに小さい左前足を石の槍で貫く。


「ブキャーーー!?」

「それで? 今それが出来そうな学生はいるのか?」

「楽勝かよ……ううーん、いない……いや、聖剣のバタフライのパーティーならひょっとしたら……」


 聖剣とは……また、大きく出たな。


「そうか、わかった。じゃあ、お前ともお別れだ、猪。お前は俺が旨く食ってやるから安心して俺の血肉になれ」


 前足から槍を引き抜くと、力を込めて振りかぶり、振り下ろした。







「よいしょっと……ジェイル、何者?」

「俺か? なんて言ったらいいか。お前のさっきの話しに俺ら出てきたぞ」


 木から飛び降りてきたチュールが、グレートボアの周囲を歩き回りながら呆れた目で俺を見ている。


「俺の? なんだ? 俺が話したのは……」

「所でこれ、どうやって運ぶ?」


 正体なんて、この後バレるんだからそんな事より今は肉運びだろ?


 いまいち納得いってないチュールを促し、二人で担ごうとする。


 しかし、またしても感じられる殺気。チュールを蹴り飛ばす俺。


「ぐええええ。何するんだ、ジェイル……って、あれは何だ……」

「あんなのもこにいるのか?」


 今度は一寸意外な客が、空から急降下してきた。


 ちらっとしか見えなかったが、鳥だったな。それに七色に輝く大きな体……南国出身と言われる巨大鳥、恐らくは……。


「チュール、隠れないと食われるぞ、あれは獰猛だからな」

「マジか!? ジェイルは何だかわかるのか?」


 鳥型のモンスターはグレートボアを咥えると、また飛び上がって去っていく。


 急にやってきた新しいモンスターに、危険も忘れて蹴り飛ばされたままの姿勢で固まっているチュールの前にたってやる。


 新しい家での紹介前に死なれても寝覚めが悪い。


「あれは、クラス30前後のモンスター、極楽鳥だ」

「あ、俺達の肉が……」


 確かに困る。気配が去っていっている事を察すると、俺はチュールの前から離れる。


「どうする?」

「時間もないぞ、ジェイルが出来るなら追い掛けよう!」


 遅れては元も子もない。ならば、と、俺達は極楽鳥の後を追って森の奥に進むことにした。  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ