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第十四章、学園編、二日目、商人は語り始める?(1)

 俺の教室は生徒は30人。正直、殆ど覚えてない。


 集合時間より少し早く到着した俺は窓際の席でまったりと、教室に入ってくるクラスメートをみたり、簡単に挨拶したりしていた。


 時間で思い出したけど、この世界、十二ヶ月/一年。みたいな判断があるよ。

 正確には十ヶ月だけど。一月は三十日で固定されてる。

 言い方はそのまま現代と同じ。


 言葉とその月日の判断が同じだったことが俺の救いになったよ。


 時間の判断に気付くのが遅かったから、こっちに気付いたのが遅くなったけどな。 



 そう言えば、昨日倒したモンスターバイコーン。奴はギルドのお姉さん、フラム=リザスさんがクラスを間違ってしまい、実はクラス75のモンスターだったらしい。


 散々謝られた。異様に耐久度が高かった理由がよくわかった俺だった。

 クラス75の敵は今回が初めてだな。あの感じならまだまだやれそうな気はするが。


 実際にはクラスが1違うだけでも、パーティーにとっては死を意味する。

 フラムさんがとんでもなく謝るのは仕方ない事だな。


 あれは元々学園側に提出する用の高レベルクエストだったらしい。

 なんでも、あまりに高いクラスのモンスターが出てくると教師陣がパーティーを組んで討伐に当たるんだと。


 しかし、その上級モンスター共言えるバイコーンを仕留めた俺の射撃……改めて考えると凄い威力だな。名前でも付けた方がいいかな?


 その方が格好いいよな。こんな世界なんだもん。多少はファンタジーな名前にしてもいいよな?


「おはようございます、ジェイルさん。早いですね」

「マリアンか、おはよう」


 俺が必殺技の名を考えてると、マリアン=フェイトナが俺の隣に座る。


 ああ、何も浮かばない……アニメとかもっと見ればよかった。

 なんで、俺はあの時コンビニや引っ越し、寿司屋でバイトしてしまったんだ!? 秋葉原にでも出張って知識を磨けばよかった……。


「何を考えてるんですか?」

「自分の空想力のなさに絶望してたんだ」


 席は決まってない。講堂みたいな感じなので、皆が好き好きに座っている。


「おはよう、ジェイル、マリアンさん」

「拙者達が最後でござるか。明日は負けないでござるよ」


 シズマ=ラインズとセバス=B=サカヅキも登校してくる。

 何を競ってるんだ? こいつは。


「よお……今日は何をするんだろうな?」

「私も気になります。勉強なんて受けたことないですから……」


 貴族とかを除いて大半がそうじゃないのか?


「僕も義父さんや姉さんに教わった位だな」

「拙者は似た感じと言うと……寺子屋に通っていたでござるな」


 寺子屋な。この世界にもそんなのがあるのか。


 どうも、聞いてるとセバスの国は日本に近いように感じる。

 今度見に行きたい物だ。


 そんなどうでもいい話は、俺たちの担任、クラース講師が来るまで続けられた。






「さて、俺はとても不機嫌だ、わかるか? 理由はな、この中の誰かが俺の方針を教頭にリークしたからだ。お陰で、あのハゲにチクチク嫌みを言われる羽目になった」


 自業自得だろ?


 ちゃんと、おかしいと感じて行動する奴がいるんだな。


「ったく、仕方ないから、一応真面目にやってやるからありがたく思え」

「お前、教師だろ? 恩着せがましく言うなよ」

「ジェイルか……昨日から妙に突っかかるな、俺の教室で面倒は起こすなよ」

「俺だってごめんだ。俺は平穏を愛してるんだ」

「ならいい。じゃ、まずは出欠……はいいか。欠席したら後で自己申告してこい。どうせ、遅れて困るのは本人だ。でなきゃ、毎日出欠にしてやる」


 ……駄目だ、全く持って反省の色がない。


 まあ、これも個性なのか?








「今日は、まず、お前達に自分の中にある魔力を体感してもらう……」


 へえ、ちゃんとした授業なんだな……。


「魔力とは簡単に言えば、自分の中にある超自然的な力だ。気力やスキルもしかり。そのどれかを使えれば自覚するのは難しくない」

「ジェイルさん、どう言う事ですか?」

「体に眠っている力は一つじゃないって事。魔力も気力もスキルも基本は使い方は同じだから、どれかが使えれば簡単って事さ」

「私、どれも使えないです……」


 俺は逆に経験ない方が覚えやすいと思うけど……自分が全然だった訳だし。


「今から、魔力の込められた石、魔石を配る。これを身につけて今日の授業を受けろ。自身の魔力を感じる為の指針になる筈だ」


 人差し指大の石ころを手に取る。


 確かに弱く魔力がこもってる。


「これと同じ波長の力がお前達の中に眠っている。体で覚えろ、まあ、スキルや才能の差はあるから簡単にはいかんだろうがな」


 マリアンは魔石を握り締めて、目を閉じている。

 いや、祈ってるみたいだけど、そんな簡単にはいかないだろ?


 シズマも魔石を握ってるが、クラース講師の話に集中している。

 セバスは魔石を置いたまま、クラース講師を見てる。


 三者三様だな。


「さ、じゃあ、お前等。今日はこの後実技だ。おら、校庭に行くぞ」


 なんだか、外に行く事になった。


 さて、何をするんだろうな。








「さて、今からやるのは1対1の模擬戦だ。武器はこれを使え。獲物が相手に触れたら終了とする。後、物理的接触はこの武器以外は禁止する」

「魔法で作った武器か……」


 クラース講師が武器に指定したのは、俺の魔力の矢によく似た光る棒の形をしたものだった。


「先生……俺、槍が専門なんすけど……」

「ん、お前が想像すればこれは形を変える。それも授業の一環だ。ただ、遠距離攻撃は禁止する。それが専門なら今回は諦めろ」


 周囲から不満の声が上がるが馬耳東風を貫くクラース講師。

 模擬戦なんだから、当然っちゃあ当然だがな。


「じゃあ、初めは……ジェイル、お前だ。それとパンタロン。前に出ろ」

「俺か? 一回目は特に注目されるからやだなぁ」

「頑張ってくださいね、ジェイルさん」

「期待してるでござるよ!」


 俺に、しかも、ただの生徒相手に何を期待してるんだ?


「シズマは何かないのか?」

「頑張って、とかいっておこうか?」


 まあ、そうなるよな。


「俺の槍を受けられるなんて、お前は運がいいぞ! 国で自慢していいからな」

「……はいはい。クラース講師、もう始めていいのか?」


 相手はさっきクラース講師に質問した槍使いか。


「待て待て……合図は俺がするから……おし、では、初め!」


 棒を槍状に変形させたパンタロンは思い切り振りかぶって俺に向かってくる。

 ご丁寧に叫び声をあげながら。


「魔力の武器を変質させてるんだから、お前も才能は有るんだろうが、それってただの棒じゃないか?」

「問答無用、でややああああああ!」

「そうか、ほいっと」


 ご丁寧に振りかぶってくれたので、俺はただ武器を前に突き出した。


「ぐえっ!?」

「動きに無駄が多い。それに今回の模擬戦のルールを考えるなら突き主体で戦うべきだったな」


 自分から吸い込まれるように喉を強打して悶絶するパンタロン。

 残念だけど、木剣だったら死んでたかもな。


「そこまで! ジェイル……お前慈悲とかないのか? それじゃあ、訓練にならないだろう?」

「以後注意するような気がしないでもないような……まあ、どうでもいいか?」

「もういい、じゃあ、次……」


 何もしてないような気分で戻る俺。


「おめでとうございます! 凄かったです」

「流石でござるよ! 拙者も見習わんといかんでござるな!」

「まあ、順当な結果だよね。あれならバレないものね」


 シズマはわかったみたいだな。俺があの武器を僅かに伸ばしたのを。


 パンタロンも多少の心得はあったろう。しかし、向かった先の武器が急に伸びるとは思わないよな。

 形を変えられる武器ならば、戦闘時に変形させる事も可能って事。

 で、結果は自爆みたいになった訳だ。


 まあ、クラース講師の言う事も最もだがね。これはこの魔力の武器だから出来る戦法で、あの人がみたいのは自力の強さだろうし。


 ま、終わった物は仕方ない。


 俺はその場に座ると、シズマ達と雑談しながら全て終わるまで過ごしていた。








 シズマは武器は剣の形のまま華麗に一閃。

 セバスは刀の形にして上段からの振り下ろし。

 マリアンはほうきの形にして振り回してた。


 結果全員が模擬戦に勝利した。


 模擬戦と、言えるかどうかはわからないが……。


 俺はなんとなくこの模擬戦の意味がわかった気がしていた。


「セバスとマリアンは剣から形を変えて戦えたのか」

「……成る程。そういう事だったんだ……」

「ん? どういう事ですか? 私にはさっぱりです」

「全くでござる! 分かり易くては早急に終わる説明を希望するでござる」


 我が儘だな。と、言うか別に俺から説明しなくてもクラース講師が言うだろう?


「よし、全員終わったな……じゃあ、グループ分けだ。俺が続けて呼んだ奴らは適当に集まれ……まずは、マクラーン……」


 あれ? 言わないのか?


「ジェイル殿、早く教えて欲しいでござる」

「クラース先生言わない気かな?」


 その可能性もあるかも……面倒くさがりだから。


「次は、マリアン=フェイトナ、シズマ=ラインズ、セバス=B=サカヅキ、ジェイル……」


 俺達は皆一緒か……何か狙いがあるのか?


「と、これで全員か? シズマの班が1人少ないな……まあ、いいか。じゃあ、これからお前等には今季はこの班……パーティーで協力して行動してもらう。わかったな」


 説明なしかい!


「成績は基本パーティー単位でつけるから、全員尽力するように……じゃあ、今日はこれでお終いだ。後は、お前達の荷物に学生証を置いといたから、それを持って購買部で教科書を支給されるといい。明日も同じ時間に教室に集まれ。魔石はかたときも手放すなよ」


 言いたい事だけ言って、本当帰って行くクラース講師。


「面倒くさがり、ここに極まれり、って感じだな」

「まあ、いいじゃない? もう慣れたよ」

「シズマは順応性高いな」

「で、結局、模擬戦の意味とは何でござるか?」


 仕方ないので俺が説明する。


「魔法に触れ合うって事。形を変えるって事はそれに干渉するって事だから、その分魔法を扱う上での経験になる」

「僕は失敗したなぁ。初めから気付いてれば気をつけてやったのに……」


 シズマは魔法適正がマイナスだから、どうなんだろうか?


「そうでござったか。じゃあ、拙者達は一歩リードって事でござるね」

「でも、良かったですね。私達一緒で……楽しくなりそうです。これからよろしくお願いしますね」


 そうだな、確かにこの面子なら退屈だけはしなさそうだ。

 俺はこの幸運に感謝しながら、マリアンに対してこの言葉をかけた。


「こちらこそ宜しく。我が友人よ」


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