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第十二章、学園編、初日、異者の初日体験?(3 )

(やあ、お疲れさま……)

(なんだ…ここは……)


 呼び声に対して、俺は今までの事を思い出して状況を把握しようとする。


 ジョブを得る為に、無理矢理睡眠状態にされた筈。


(こんにちわ、私は神だよ。早速、神託を始めようか?)


 はい? 一体、何を言ってるんだ? そもそもなんだこれ?


 意識は急速に浮上したが、体の実感がない。


(無駄だよ、私の世界でそんな事しても意味ないよ)

(……神って、どういう事だ? 俺、何か悪い奴に捕らわれたのか?) 

(あのね……そんな訳ないでしょ。メリットがないもの)


 む、失礼ながら。貴様の言葉を肯定するとしたら……ここはカマミタティ神官の魔法の力の中だったのか?


(初めはそうだね……霞純也君)


 ……っ!?  どういう事だ。何故、このだれとも知れない奴がその名を知っている。


(当たり前だよ。だって、私が君を呼んだんだから)

(……どういう事だ?)


(君はそればっかりだね、オンラインオンラインのヘビープレイヤーのジェイル君)

(……元だ。そこまで知ってるって事は……言ってる事は真実か?)

(だから、そう言ってるでしょ。うたぐりぶかいともてないよ?)


 かまわん。既に初っ端から訳のわからん、異世界旅行なんてしてるんだからな。


(あーあーあー、聞こえなーい)


 軽いな、こいつ。


 俺の真の情報。ここでそれを知るものはアイネスさんとアルさんしかいない。

 もしいたら、それは俺を飛ばした犯人か関係者だけ ……下手な事は聞けない。


(ん? 別に何を聞いてもいいよ? 答えられるかは別だけど)

(太っ腹な誘拐犯だな)

(誘拐じゃないもん。一寸許可を得ないで、勝手に連れてきただけだもん)


 それを誘拐って言うんだ。


(もういい。とりあえず、まず貴様の名だ)

(その質問いい! 私も君に貴様なんて呼ばれた くないし是非聞いてくれる? ……私はブラフマー、君の世界でもそこそこ名の知れた神の筈だよ? 知ってる?)


 俺は出てきた黒幕の名に驚きを隠せなかった。


 ブラフマーと言ったら、シヴァ神やビシュヌ神と並ぶインドの三大神の一柱じゃないか!? 確か創造を司る神。


(おおーよく知ってるね。若い人に知ってもらっちゃってるなんて、私もうれしくなっちゃうよ)

(俺の大学の専攻が……って、流していたが、やはり俺の考えは筒抜けなんだな。神だからか?)

(そうだよ。意外に受け入れ早いね。もっと混乱して怒られるかと思った)


 そうか……元々の状況が俺には有り得ないんでね。

 それに、わざわざセッティングしてくれたこの場を無駄に終えるつもりもないからな。


(それで、ブラフマー神よ。たかが一ゲームをしただけの元ゲーマーの大学生に何の用なんだ? 俺は平穏を愛する只の人間だぞ)

(それはね……ヒ・ミ・ツ。でも、君じゃなきゃ駄目だった理由があるんだよ)

(答えになってないな。じゃあ、質問を変える。俺は帰れるのか?)


 聞く事は一番大切なこと。


(帰りたい?)

(え? 帰れるのか!?)

(勿論、だって、君は今私の世界に魂が移動してるからね )


 今すぐの話かよ!?


 余りに軽く言われた答えにこっちが戸惑ってしまった。 そして、即答は出来なかった。


 俺はあの世界であんなに恩を受けたのに、何も返さずに 消えてもいいんだろうか? 一度はそこで骨を埋める覚悟すらしたのに……。


(悩むと思ったよ。そんな気概がある事も君を選んだ理由の一つだし)

(帰れるのは今回だけか?)


 出来れば今はまだ向こうにいたい。


 とんでもなく我が儘な事を聞いてるのわかってるが。


(大丈夫だよ? だって、君は無事に元の世界に戻る事が、アカシックレコードに記されてるから)

(マジか!?)


 アカシックレコードって言えば……全ての出来事、事象が記された神の書。


(まあ、時期までは教えられないけどね、わかってるだろうけど、今のだって大サービスだよ)


 そんな事はわかってる。安くない情報だろう。帰れるって言う事だけでも希有な情報なのに、アカシックレコードの事すら話したんだ。


 等価で言うなら、どれだけの事をすればそれが成り立つのか想像も付かない。


(別にアカシックレコードや私の存在を他者に洩らさないなら、そんなの気にしないでいいよ)

(ただより高い物はない。知って言ってるんだろう? 俺がなすべき事を言え)


 思い通りの展開なんだろうな。


 軽く含み笑いでも聞こえそうだ。


(じゃあ、あの世界でもし、危機が迫ったら努力して…それだけでいいよ)

(努力……解決しろ、じゃなくてか?)

(うん。OOのスキルがあるっていっても君とあの世界の人間との元々のステータスの差が大きすぎるもの。そこまで強くはなれないだろうし)


 シズマと戦った時も感じたが、やはりか。


 この俺のスキルは純粋にステータス数値の倍率の増加。

 つまり、元々が低いもやしっ子の俺じゃ、増幅してもたかが知れてるって事ね。

 だから、シズマやゲンチュールは俺の高レベル格闘熟練の一撃を受けても死ななかったのか。

 正直、あれだけのスキルが適正に発動したら弾け飛ぶよな。


(把握するの早いね。なんとなくわかってたの?)

(ああ。まあな。とりあえずわかった。俺もあの世界で返す恩もあるし、ブラフマー神よ。貴女の言う依頼、確かに引き受けた)

(ありがとー。じゃあ、メインディッシュの神の神託に移ろうか?)


 え? そっちがメインだったのか?


(当たり前。その為に呼ばれたんだから)

(呼ばれてるのか……本当に?)

(勿論だよ。純也君の世界と違って、人間のナイメンに対する学問は全く進んでないから。生死をかける余裕が違いすぎるから)


 確かに……日本は水と安全が買える国って言われてるしな。

 そもそもの価値観が違うか。


(わかったら、行くよ…… 汝、平穏を望むか?)

(……それって、OOの神の……)

(こっちが本家なんだよ。向こうはこれを真似てるの。さ、霞純也君、答えは?)


 初めてOOを始めたときのように、顔が少しにやついてしまう。


(平穏? 当たり前だろ……はい)

(じゃあ、次の質問……村に襲ってきたモンスター。 汝はどうする?)

(平穏を選んだ俺が、表立って戦うなんて選択肢は初めからない。戦える者を足止めに使い、その間に村人を避難させる。出来るだけ被害が少ない手段を探す……かな?)


 ゲーム内だと、ニ択だったから、ひょいひょい選んでたけどそうも行かないから少し考えながら答えていく。


(汝は戦士と対峙している。 どうする?)

(戦わないって言ったのに……出来るだけ仲間に引き込もうとする。無理ならまずは、足や腕をねらってその後の行動の阻害を狙う)


 なんか、前と全く同じ選択を選んでる気がする。 


(じゃあ、これで最後の質問ね? )


 確か最後はどうでもいい選択だった気がするんだよな。


(結婚して子供が出来たら、その子や奥さんも連れて元の世界に帰りたい?)


 はい? 何その質問?


(じゃあ、純也君は愛する奥さんや子供を置いて帰るの?)

(いや、そこまで行ったらここで一生暮らすよ。俺が異世界の人間だって事は、そう言った配偶者にも秘密にしないといけないのか?)


 いや、まてよ? アカシックレコードに記されてるなら、俺は必ず帰るのか……まあ、元々そんな風に暮らすつもりはないからいいんだが……もし、そんな事になったら、俺最低のクソ野郎じゃないか。


(気にしないでいいよ、アカシックレコードうんぬんは嘘だから。別に信頼出来る人になら今まで通り話していいよ)


 唐突なカミングアウトしやがった。なんて奴だ。


(でも、帰れるのは本当だよ。私の力だけで充分だし。そもそも、アカシックレコードなんて無いもの)


 は? 存在しないって事?


(そ。まあ、神々の中には未来予測が出来る子もいるから近い物はあるけどね。だって、世界や時の流れは兎も角、全事象なんてわかったらつまらないじゃない。無限を生ける私達がそんなもの作ったら、退屈に拍車がかかっちゃうし)

(……やっぱり、神々って暇を持て余したるんだなぁ)

(まあ、それは兎も角……質問の答えはそれでいいの?)


 質問? ……ああ、子供や奥さんに……ってやつか。

 まあ、そんな状況になったら、その奥さんを置いてく事は出来ないし、俺の都合で親族との別れをさせる訳にもいかないだろう。


(俺の家族……ああー柚子とか母さんとかな。に、一回だけでいいから紹介したいが……それは駄目か?)

(ううん、いいよ。一番誠実な答えだね。わかってたけど、意外に誠実だよね)


 わかってたなら意外じゃないし、わざわざ言葉にしなくていい。


(じゃあ、この世界で生きる。でいいね)

(ああ。それで構わない)

(じゃあ、これで質問は終了でーす。じゃあ、帰って)


 用が終わればぽいっ! みたいでやだなぁ。


(って、感覚が消えてくし……本気で即座について返すつもりか!?)

(もう終わったし向こうで新しいジョブが君を待ってるよ。じゃあ、またねぇ)


 そんな事を言われながら、俺の感覚の全ては泥に埋もれたように消えていった。







「ジェイル、どうだった? 僕はトリックスターだって……奇術師って事なのかなぁ……一寸ショックだったよ」

「え? ああ……シズマか」 


 神託はとっくに終わったらしく、俺は紙を持って立ち尽くしていた。


「ジェイルさん、大丈夫でしたか?」

「ハンマーで潰されてたみたいでござったが……無傷! 流石はジェイル殿でござる!」


 催眠状態にする為に、モールで打たれたんだっけ?


 さて、それはさておき……今はこの世界で精一杯生きるか。 

 まず、俺の新しいジョブは……と。


「練弾の射手?」

「聞いた事ないね……何のジョブなんだろう?」

「ジェイル殿は特殊でござるか! 流石でござる!」


 やはり、スキルこそあれ俺には近接格闘の才能はないみたいだった。


 弓兵かぁ……。

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