第十二章、学園編、初日、異者の初日体験?(2)
アガスティア魔法学園での俺の新しいジョブ取得クエスト。
それは驚きに満ちたものだった。
馬鹿でかい校庭で神託と言う神官による適性検査を行われるらしい。
さて、どうなることやら。
隣にいるシズマ=ラインズ、セバス=B=サカヅキ、マリアン=フェイトナも期待に胸を弾ませている様子。
公的にジョブを取得するのは難しいようだから、仕方ないけどね。
「では……次はセバス=B=サカヅキ君」
「は、はいでござる!! では、いってくるでござるよ!」
「楽しみだね」
「頑張ってね?」
何をだ?
「期待して待ってるぞ。いってこい」
勿論面白い方をな。
他の生徒とあわせて5人一組で指定された椅子に座って何やら受け答えしている。
そして……。
「ジェイルさん!? サカヅキさんの首がガクンって!?」
「あれがトランス状態なのかな?」
「なる程、催眠状態のようなものか?」
そこで適性を調べるのか。魔法ではないんだな。
そして、いくつかの会話を交わした?
後で、セバスは覚醒して用紙を渡される。
「終わったでござるよ! 侍でござる! これで、それがしの一族は侍継続中でござるよ!」
「まあ、見た目や話し方、武器を見ても他に思い付かないけどな」
「侍の一族なんだ……じゃあ、随分遠くから来たんだね……」
「なりたいジョブになれたんですね。おめでとうございます。あ、次は私ですね。じゃあ、行ってきますね」
マリアンも同様神官の所で椅子に座る。
繰り返される謎の問答。
「セバス、あの時、一体どんな感じだったんだ?」
「それが……よく覚えてござらん!」
威張るな。
「ただ、何かよくわからぬ事を幾つか聞かれたような気がするでござる」
ふむ、ならやはり深層心理に語りかけてるって事か。
「二人とも、終わったみたいだよ」
「私、魔法使いだって!」
うーん。賢者じゃなかったんだ?
「おお、おめでとうでござるよ!」
「魔法使いって、なんか始めてこの学園っぽいジョブな気がするよ」
「正確にはニルバーナって言うらしいんだけど、神官さんに聞いたら魔法使いでいいよって」
ニルバーナ? また、聞いた事ないな。
「ほら、ジェイル。僕達の番だよ、行こう?」
「ああ、そうだな。それにしても……この何百人もいる生徒がいる中で、一回五人しか出来ないとかなんか間違ってないか?」
非効率だよな。
「それはそう思うけど……仕方ないんじゃない? あの人にしか出来ないんだろうし」
ま、もう俺の番だしどうでもいいけどな。
俺はカマミタティ神官の正面の椅子に座る。
「では……皆さん。目を瞑って気を楽にしてください」
ふむ、心理学者の第一文句みたいなものだな。めをつむりながらって難しくないか?
「私がいいって言うまで御願いしますね……スキル、スリープレス」
なるほど、催眠状態にする為に睡眠状態にするのか。
俺、レジストしちゃったんだけど、どうしようか?
「すいません、カマミタティ神官。俺、レジストしちゃったんですけど……」
「あらあら……困りましたね……じゃあ……これで」
取り出したのは……棍棒だった。
「この夢産の棍棒には相手を睡眠状態にする追加効果があります」
「うん、そうですか……まさかとは思いますが……それで何を?」
「はい! 殴られて下さい!」
やはりか!? いいのか? こんな横暴が許されて!
「魔法が聞かないなんて、ジェイル殿はやはり凄いでござるよ」
「あれ、叩かれるみたいだけど、あんまり痛くないのかな?」
いや、どう考えてもこの人の通常装備だろう。
他の生徒達もひそひそと話しながら怯えを顔に出している。
ん? これが目的なのか?
「カマミタティ神官、俺を一罰百戒にしようとしてます?」
「あら? 難しい言葉を知ってるわね? そんな……神の身元でそんな酷いこと考える訳ないわよ」
ウフフと笑いながら、棍棒を振り下ろすカマミタティ神官。
回避は楽々出来るけど、しない方がいいよな。
次は何をなれるかわかったもんじゃないし。
「ぐ……マジか……ぐぁ……だぁ……が……」
「あら? 中々効きませんね……じゃあ、よいしょ……」
あんまり痛くはないがやはり抵抗がある。
しかも、若い女性に殴られて喜ぶ趣味はないし。(異世界、現実社会の実年齢込みで)
巨大な何かを構えてる気配がするがもう見ない。
見た所で殴られるのは確定だし……。
「えーい!」
「がはぁ! こ、これは……モール……? ……普通のやつだと……し、ぬ……ぞ……」
衝撃に思わず目を開けてしまったが、そこにあったのは大工が使うような巨大なおおづちだった。
ダメージではなく、やっと入ったであろう睡眠効果(これ重要)で、俺の視界は暗転した。
一罰百戒。罪を犯した1人を周囲が罪を犯さないように、惨たらしい罰を与えて牽制とすること。
今なら、自分の魔法をレジストしないように不必要に打撃を加えたって事……酷いものだ。




