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第十章、学園編プロローグ、天才は天災?

「どうしてこうなった?」


 最近は全てが俺の意に添わない方向に物事が進んでいく。


 俺の前に立つ人物を見ながらため息を付く。


「やっぱり止めないか? 入学前に怪我でもしたら面倒な事になるぞ?」

「それは僕の心配? ちゃんと手加減してくれるでしょ?」


 いや、そう言う問題じゃなくてさ……。


 はあ……回避不可か……仕方ない。


 俺は確実に未来に英雄になるであろう少年に対して、この拳を握りしめた。






 アガスティア魔法学園の入学試験が発表前に合格がわかった俺達。

 そのまま学園の用意した待機場所に行くのも他の受験者に悪いと言うことで、ライアン=フィルグライドの自宅……(シズマ=ラインズの自宅だな)に厄介になる事になった。


 そこで一つの会話がなされた。


「ジェイルよ、ワシとやらんか?」

「やらん。よるな変態妖怪爺」


 何を言うかと思えば……自分の家に呼んだのもそのつもりだったのか。


 俺はセバスとマリアンに声をかけて、荷物をまとめだす。


「いやいや、違うからの! そんな意味じゃないから! ワシが愛してるのは婆さんだけだからの!! 何を言いたいのかわかっとるよね!?」

「わかってるが……興味はない。他を当たってくれ」


 ライアン爺も家にいる人外の仲間だろう? そんな奴と、生死を分けるような死合なんかしたくないっての。


「じゃあさ、僕と戦ってくれないかな?」


 へ? 今の俺の拒絶具合聞いて見てたよな?


 何で急に?


「僕なら、ジェイルは苦もなく相手出来るでしょう? 僕あんまり他人と戦った事ないから自分の程度がわからないんだ」

「……そうよな、済まんが頼めんか」


 学園長クラスの人間が姉と二人養子にする位だ。

 何か訳ありなんだろうな。


 俺は視線で事情の開示を要求する。


 ライアン爺は頷く事で納得を見せる。


「はぁ、仕方ないなぁ、死んでも恨むなよ」

「やってくれるの!? 有り難うジェイル!」


 俺が出来るのは溜め息だけだった。








「行くよ。本気でやってね!」


 いや、本気でやったらシズマ粉々になっちゃうから。

 飛びかかってきたシズマの拳を、ステップを駆使して回避する。


 速い……手で受け流した感じ、重さもある。年からすればスキルレベルは高いが、むしろ素のステータスが高いんだろうな。


 俺も受けっぱなしじゃ面白くないので、カウンター気味にハイキックを繰り出す。


「ーー!? 重い!! ガードした腕が痺れてるよ……やっぱり凄いよ、ジェイル!」


 両腕をクロスして俺の蹴りをガードする。その力を殺しきれず、そのまま1M位後退させられる。


「俺にはゴブリンとの戦闘でみせたみたいな、感性を無視した技は使えないがな」

「一つは僕も勝る所があったんだ。よかった」


 今度は俺がシズマに向かう。


 早さと威力でラッシュをかける。回避やガード技術が高く、かなりの率で回避される。

 しかし、ガードされれば、した腕毎ダメージを与える。 


「流石だな。格闘メインは伊達じゃないな」

「……やっぱり……余裕……だね」


 玉のような汗を流しながら、俺の拳の回避に専念するシズマ。

 だが、甘い。


 俺は突き出した腕を途中で止めて、シズマの眼前で指を鳴らす。


「わっ!? 何!?」

「ただ、殴りかかるだけが戦いじゃないぜ」


 目を閉じてしまったシズマの足を払って、倒れた所を踏みつけようとする。


「まだ、まだだよ!」

「おっと……へぇ、逃れるか。流石だな」


 転がって俺の足を避けると、自信の腕を軸に回転して俺の足をかける。


 その隙に距離を取って立ち上がる。


「予想通りだったけど、全く相手にならないか」

「いや、レベルを考えれば驚愕だ」


 俺の中には規格外と即殺出来るような盗賊しかいなかったから、驚きだ。


「でも、これ位は受けてもらわないと……行くよ」

「隠し手か……いいね、こいよ」


 拳に力を込めるシズマ。


 気を込めているようだな。


 そして何をするかと思ったら、普通に向かってきて拳を振るってきた。


 その速度は変わらない為、回避する。一撃目は問題なく回避出来たが、体に電流が走り腕で受ける。


「なる程……雷か……」

「そう、僕の奥義、雷神拳だよ! 一気に行くよ! はあああああああああ」


 ガードを続けるが、ダメージに加えて状態異常の感電(麻痺のようなもの)を受ける形になり、その内殆どサンドバックのように打たれ続ける。


 ワンツーパンチにローキック、ソバットにバックハンドブローと思いつくままにラッシュを受ける。


「おおおお、これで! 終わり!!」


 マシンガンのように拳を振るい続けた後で、両手で掌打を叩きつけた。


 俺の体は吹き飛ばされて、床に倒れ込む。


「どう? 少しは効いた?」

「放電状態の拳は予想以上に厄介だな。シズマはやはり強くなるよ。天才肌だな」


 感電状態も解けたので起き上がる。


 スキルと本人のステータスを足しても、俺にきちんとしたダメージを与えるには至らなかったようで殆どダメージはない。


「……凄いよジェイル。僕、これでも少しは自信あったのに」

「いや、自信持っていいさ。俺もライアン=フィルグライドと同じ規格外の存在だからな」


 そもお前は今代の英雄になる為にのスキルを修得するんだから。


「じゃあ、行くぞ……歯ぁ食いしばれよ」

「ーー!? 速っ!?」


 スキルの力を存分に使用した全力の接近に、シズマは目で追うのやっとみたいだ。

 こちらに拳を向けるのが精一杯みたいだ。


 速度に任せて手のひらを腹に添えてると、勢いで吹き飛ばした。







「ああーー駄目だったぁ。確かにジェイルは規格外だよ」

「自覚はある。ほら、手……」


 手を貸して倒れたまま起き上がらないシズマを起きあがらせる。


「もはや声もでないでござる。拙者、ジェイル殿を崇め奉るでござるよ」


 止めてくれ、冗談じゃない。


「こんな人達の中で私、やって行けるのかしら……」


 失礼だな。賢者の才を持ってるくせに。


「ありがとね、ジェイル。僕頑張ってもっと強くなるよ。だから、その時はまた……」

「気が向いたらな……」

「シズマ、楽しかったかの?」

「うん、勿論!」


 ま、それならやった甲斐があった。よかったよかった。


「そう言えば……スキル、召喚、ドライアード。彼女は俺の召喚獣のドライアード。ドライ、挨拶」

「宜しく」


 ここにいる奴らには別にドライアードを見せても構わないし、挨拶をさせる。


「おお、おちびちゃん! 久しぶりじゃな」

「ええ、使い魔……じゃないの?」

「これもライアン学園長殿の使う魔法と同じでござるか?」

「この力は……僕、本当に手加減されてたんだ」


 

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