第六章、いつの間にか家を出ることになりました?
アイネスさんと一緒に行った初クエスト。
クエスト内容のゴブリン討伐以外にも、変な老人に出会って、盗賊達を殲滅したりした。
盗賊であっても、人を殺して何も感じない等、俺が現代社会的に壊れた人間である事もわかった。
変わらない。それからも俺は何も変わらず、日々を過ごしている。
あれから、10年の月日が流れた。初めの年がわからない為、5歳として考えて今15歳と、言う事になっている。
孤児院に俺の兄弟が増えた事もあり、今では一人でクエストをこなして回っている。クラスレベルは大体52~5位だ。
槍の熟練も手に入れた。鍛冶のスキルも上がって作れる物も増えた。
今も、グラウンドサーベルと言う大型の虎の討伐に来ている。
場所はジョシュ大森林という所。周辺のモンスターはクラスで言うなら30弱位だろうか?
まあ、苦もなく一蹴出来るレベルだ。
「話しによると、出現報告は夜。もう出てきてもおかしくない」
「がんばる」
「…………」
茂みに潜んで気配を絶って早数時間。反芻する為に声に出した呟きに、俺の召喚獣のドライアードとクレイゴーレムが反応を返す。
新しく覚えたスキルの効果で、複数の召喚獣を同時召喚出来るようになった。
このお陰で戦略の幅が広がった。
……未だ、アルさんには勝てないけど。
「周囲からモンスターが消えた?」
「来る」
暗闇と共に虫の声すらも消える。
そして、姿を現す大型の虎縞。
「確かに歯ごたえがありそうだな。随分待たされたし、早速行くか。いつものように俺が敵を釣るから、クレイがガチ殴り、ドライは、俺と一緒に射撃。その後、爆発するタイミングはクレイに任せる。可能ならそのまま倒しても構わない。じゃあ、行くぞ!」
拾った拳大の石は、ランクアップで素材を石からかなりの強度を持つ鉱石のコランダムに変わる。
更にそれを鍛冶スキルでより専用の弾丸に変える。
そして、それを投擲する。
「ギャン! ……グルルルフル!!」
「倒れたか? 以外に柔いな。よし、クレイ、行け!」
「…………」
腹辺りに直撃したコランダム。グラウンドサーベルは、そのまま少し後ろにあった木に叩きつけられる。
すぐに起きあがってこちらに怒りの視線を向けてくる。
投擲した石と同様の手段で、弓と矢を作りながら戦闘開始となった。
「アイネスさん、遅くなりました。はい、今回の報酬です。全額受け取ってくださいね? 所で夕飯、残ってますか?」
「ああ、お帰り……いつも済まないね。食事は勿論あるよ。ドライアードの分もね」
クレイゴーレムとロックゴーレムは口がないし、媒体の関係上食事が食べれないのだ。
「ありがとう。アイネス様」
「お帰り! ドライちゃん!! 後、ジェイルも」
俺はついでか。何時まで経っても変わらないな。
「あー! おかえりー、ジェイル兄ちゃん、ドライねえちゃん!」
「おかえりー」
「おかえりー」
「おかえりー」
食事を食べようとしたが、兄弟たちに囲まれる。
「今日は何を倒してきたの?」
「違うよ、お姫様を救ってきたんだろ」
「ドラゴンだよ」
「違うよ、魔王だよ」
「じゃあ、兄ちゃんは勇者?」
「違うよ、兄ちゃんはジゴロだよ」
「ああー、そうだね」
うん、好き勝手言ってるけど、よし、俺をジゴロとか行った奴、一寸前にでようか?
「ははは、似合ってるよ、ジェイル! ジョンもいい点突いてるよ」
「アルさんとは話し合わなきゃいけない事がありそうだな」
毎日がこんなに賑やかな、幸せな日々。本当、アイネスさん亡き後は俺がここの管理人になろう。
「……ジェイル」
「マスター、いい意見」
「アイが死ぬ事はあり得ないから」
まあ、想像もつかないけど……寿命とかもない?
「ないわね。だって、アイは竜人だもの」
「竜人、って、何?」
「竜と人の混血」
……じゃあ、死ぬ要素ないじゃん。
むしろ、俺が先に死ぬって。
人じゃなかったんだ。
「じゃあ、俺何を目標にしよう?」
「それについて、一寸話があるんだけど……」
「ジェイル、出て行ってくれない?」
はい?
フライング気味に内容をバラしてきたアルさんに、フリーズするしかなかった。
「アル。適当な事言わないの。実はジェイルにはアガスティア魔法学園に通ってもらおうと思ってるんだ」
「はっ、俺捨てられたんじゃ無かったのか」
「ごめんねぇ。誰が家族を捨てる神がいるって言うの。冗談よ」
ぐぐぐ……アルさん、許すマジ……。
「まあ、いいや。でも、何で急に? 後、期間は?」
「ライアン学園長がどうしても、ってね。後、ジェイルにこの先の可能性を狭めない為、かな」
「私達といたら、ジェイルはきっとこの世界に興味を持てないで終わっちゃうわ。私達の子供だもの。世界を知ってほしいわ」
息子じゃないけど……養父として認めてるのはアイネスさんだけだし。
アルさんは、姉代わりと言えばいいかな? 全く、味な事してくれるよ。
「二人とも……わかった。じゃあ、俺、行くよ。アガスティア魔法学園に」
「私も。行く」
背丈が延びた為、俺がドライアードの頭を撫でる。
その日は随分遅くまで飲み明かした。
「まあ、もう、話は済んでたからもし、いやがっても無理矢理叩き込んでたけどね」
さいあくだ。