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第五章、正直本編はここから始まりますか?(2)

 初陣でアイネスさんとゴブリン退治をする事になった俺。


 無駄に気を使わせてしまった俺は、アイネスさんが去った方向にその姿を追って移動する。


「アイネスさーん。何処ですかぁ?」


 辺りを見回してもその姿は見えない。


 はて……俺より強い人の心配なんておこがましいんだが、やはり姿が見えないと一寸気になってしまう。


 行く先行く先で、ゴブリンの死体が見つかる事からどんどん進んでると思うんだが……。


「ここに来たのが運の尽きだな。爺。有り金と、持ち物全て出せば命だけは助けてやらなくはないぜ?」

「その後に命乞いをして俺等が気に入ればの話だがなぁ」


 何か人の声が聞こえるな、あっちかな? お、まだゴブリンがいたのか……。


「ブルアアアアアアアア!!」

「リーチの差が有りすぎるだろ? 棍棒と槍だぞ? ほい、アタック!」


 棍棒を振り上げながら襲いかかってくるが、手にした槍で一突きする。


「ありゃりゃ。背後の木まで貫通しちったな。ただの石なのに、よく槍が壊れなかったな」


 結果的にゴブリンを縫いつけるような形になってしまった石の槍。

 抜くのも面倒くさかったので、そのままにして地に落ちてる石ころを集めて鍛冶スキルを発動させる。


「ほい、new石の槍の完成っと」

「ぎゃあああああああああ!! いてえ、いてえよぉ!」

「兄貴! なんで木から槍が出てくるんだよ!?」


 ん、何かうるさいな。裏からか?


「全く……誰だか知らないが、森の中は精霊や動物達の領域だろう? でかい声で騒ぐ奴があるか……」

「うぎゃああああああああ! いてえよぉ!」

「誰だ! ……餓鬼じゃねえか! あっちいってろ、今、取り込んでんでぇ! 兄貴、今抜きますからね! おい、てめえ等! 兄貴をお救いしろ!」


 何だか、ローブを来た老人と、チンピラみたいな粗末な服を着た男達がたくさん、それに木から生えてる槍に肩を貫かれてる一際大柄な男。


「この辺では木から出た槍に肩を刺すのが流行ってるのか?」

「んなわけねぇだろ! 急に木から生えてきたんだよ! さっさと向こうに行ってろ!! おい、裏に回れ! 引き抜け!」

「駄目です! ゴブリンに槍が刺さってます! とてもじゃないけど、抜けません!!」

「兄貴を抜くしかないと思うっす」

「ざけんなあああああ! いてえっていってんだろろらら、ろ」


 うるさいなぁ。その位自分でなんとかすればいいのに。


「じいさん、あんたは何でここに? こいつ等の仲間じゃないだろ?」

「当然じゃ、旅人……みたいなものかの。状況はわかったが……坊や、よく平気じゃの。奴らはこの辺に出没する盗賊の集団じゃぞ」

「あー、やっぱりそうか。まあ、別に……あの程度なら負けませんから」

「お主、どれだけの力で突けば木を貫けるんじゃ?」


 どれだけって……普通?


「おい、兄貴の体を持て! せえの、で行くぞ! せえの!!」

「ぐうううううあう! おい、てめえ等! 二人ともぶっ殺せ!」

「え、でも、ガキには手を挙げないんじゃ……」

「馬鹿かてめえ等! 状況を考えりゃ、あのガキが俺を襲ったに決まってんだろうが!」

「……なるほど! 流石は兄貴! 博識だ」

「ガキに手を挙げるのは気が進まねえが、兄貴の仇討ちだ!」


 仇討ちって、やっぱり、山賊や盗賊団って、日本語……なのかはわからないが色々不自由なんだろうな。


「ふむ、結局こうなるのかの」

「じいさん、俺の後ろに下がってな」


 槍を構えながら、老人に声をかける。


「戦えるのか?」

「当然。じいさん駆り出すほど落ちぶれちゃいないよ」


 人を相手にするのは初めてだな。わかりやすく言うと、人殺しか。


 まず襲ってきた盗賊Aを槍で一突き。正直、人の方が急所を理解してる分、一撃で仕留められる率がゴブリンより高いな。


 声も上げずに崩れ落ちる盗賊A。


 血の付いた槍と、自分の手を見る。


 なんか……別に何の感慨もないな。


 もっと、苦悩とか後悔とかあるかと思ったけど……こんな状況に納得してる時点で俺も大概壊れてるのかな?


「何ぼけっとしてんだ! 死ねやぁ、クソ餓鬼!」

「坊や!」 


 人が自分の異常性に別の意味でショックを受けてるんたから、一寸黙ってろよ。


 片手で持った石の槍を相手に向かって向ける。


「ぐげえ!」

「そっちから向かってきてくれるなら、俺はこれを前に構えるだけでお前等はアウトだな」

「ガキの分際で、なめやがってぇ!」


 今の俺の緊急的に改善しなければならない弱点。

 それは、人を殺める事が出来るかどうかだったが、これは自分でも拍子抜けする位簡単に為った。

 後は絶対的な経験不足だ。今回折角の経験だ。全員逃すつもりはない。俺の糧になってもらおう。


 木に刺さったままのゴブリンや盗賊の兄貴を貫いていた槍を引き抜く。

 別に力を入れた訳じゃないが、それだけで下っ端盗賊達は後ずさりする。


 この位でビビっちゃうなら今すぐ逃げろよ。面倒くさいなぁ。


 槍を足元で凪ぎ払うようにして、足払いをかける。

 そして、体勢を崩した盗賊達を着実に仕留めていった。


「なんだ……てめぇ……」

「何だって……ねぇ?」


 何を聞かれてるのかよくわからない為小首を傾げる。


「忘れてない? あんたをゴブリンと一緒に木に縫いつけたのは俺だよ? 勝てると思ったのかい?」

「……化け物め!」


 失礼な、一寸チートなだけだ。


「死ねや、おらぁ!」

「いや、いるのは初めから知ってるから。不意をつきたいなら黙ってやりなよ」


 いつの間に登ったかはわからないけど、木の上から弓を射ってくる、見た目NO2の盗賊。


 その矢は槍で受け流して、槍を投擲して打ち貫く。


「ぐらはぁ……あ、あに、き……」

「ダランヤナ! このガキイィィィィィイ!」

「仲間意識や感傷があるなら、盗賊なんてヤクザなジョブやめなよ……来世では真面目に生きろよ」


 逆上した親分? だが、力一杯振ってくる剣なんて俺には当たらない。

 その腰に下げていた短剣、ダガーか? を勝手に引き抜くと、それを使って所有者の心臓を貫いた。






「じいさん、怪我はないか?」

「おお、大丈夫じゃよ。それしても強いのぉ、しかも、躊躇いがない。坊や、誰に習ったんじゃ?」


 習ってないなぁ。一寸やり過ぎたかなぁ。


「ここか? ジェイル、探したよ。何処に行ったかと……おお、暴れたねぇ……」

「あ、アイネスさん。なんか、成り行きで……」

「アイネスか……納得じゃな」


 本当に探してたのかわからないようなのんびりした調子で、森の中、獣道か姿を表すアイネスさん。


 この辺に盗賊がいる事も知ってて、姿を消したとか……ありえる。


「ライアン学園長じゃないですか? こんな森の中で何をされてるんですか?」



 なんか偉い人らしい。なんか俺やっちまったかな?

 イヤな予感がぷんぷんとする。


 そんな初クエストだった。

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