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プロローグ

 俺は少し前、友人の前で言った。


 この現実社会には、デスゲームも異世界転移も有り得ない、と。


 もし、俺の前に声高らかにデスゲームや異世界転移等とのたまう奴が現れたら……恐らく鼻で笑うか、付き合いを止める事だろう。


 俺は霞純也カスミジュンヤ。都内の二流大学に通う懸賞が趣味の普通の学生である。


 普通じゃない事といえば……ついこの間まで、世界中で大ヒットしたVRMMO、オンラインオンラインをハードプレイしていた事位だろうか。


 友人に薦められて始めたが随分ハマって昼夜問わずプレイしていた。


 まあ、おかげで俺は恋人も出来たし、(不本意ながら)将来も決まった。


 閑話休題。兎も角、ゲーム名はオンラインオンライン、通称OO。


 俗に言う、よくわからない名前のスーパーコンピューターの力で、殆ど無限の職業とスキルが作り出され、アイテムやモンスターですらも素体名に追加され無作為につくられるのでこれも無限の数と言われていた。


 珍しい、スキルやアイテムにすらレベル制を採用していた。

 更に上昇するステータスもランダムで、同じスキルでも個々で差別化がはかられていた。


 て、何で急にこんな話をしているかと言えば……今日あったことを思い返してるからだ。


 俗に言う現実逃避ってやつだな、これが。


 今日は、悪友であり、親友であり、手下であり、非常に残念ながら義兄になってしまう俺のOOを始める切っ掛けになった男、天井院翔からの連絡から始まった。


「起きたか? 純也? 実はな、今日夕方から……」

「…………少し黙れ。これ以上今の俺に情報を与えるならば、貴様の家のポストに牛乳雑巾を叩き込む」

「いや待ってください落ち着いてくださいそんな事をされたら配達物が閲覧できなくなってしまいます」


 寝起きにハイテンションの奴の声を聞いて、軽くイラついたが、顔を洗ってからしっかり話を聞くと俺と翔のOOでの仲間とイベントをするから参加しないか。と、言う事だった。


「お前……聞いてないのか? 今日は朝から美玲と海に行く予定なんだが……」

「マジか!? 昨日はそんな事一言も言ってなかったぞ! でもなぁ……もう言っちゃったしなぁ……」


 こいつは……俺の返答なく決めたのか? そもそも家族なんだから、俺の予定くらい確認しとけよ。


「まあいいか。で、9時からなんだがいけるな? いけるよな? ななな!?」

「声が殺気立ってて気持ち悪い。いや、むしろ普段から気持ち悪いから、相殺か……」

「くっ!? 義兄になったら俺が優位に立てると密かに思っていたのにこの扱い……連合軍の黒い悪魔は健在か!!」


 古いあだ名を……そもそもそれはアニメのパクリでつけたやつだろ。


「な、お前も来いよ、純也」

「……いやに勧めるな。何があるんだ?」

「いや、その、大したことじゃないんだが……」


 大方、話に上がった時に断りきれなくなったんだろうがな。


「どうしても断りきれなくて……」


 そのままか!? こいつ、侮れん。


「わかったよ、行くよ」

「マジか!? 有り難い!」


 全く、仕方ない奴だ。


「ただし……美玲に了解を得ろ」

「俺がか!? 死ぬだろ!」

「そんな死ぬ事態を俺に回すな。お前が事前に話をしとけばよかっただけだろ」

「くぅぅ~仕方ない。純也! 俺の粉骨砕身の働き! とくと見てろ! 時間は1時間後だぞ! 遅れんなよ! じゃあ、また後でな!」

「言いたい事言ったら、すぐ切りやがった。ま、行いいんだが。きっと今の会話もあの人には筒抜けだろうから、この時間は折檻タイムかな? 一寸ノンビリしてるか……と、言うわけだ。俺も美玲も、出掛け前久しぶりにあいつ等にあって見ようぜ。だからそう怒るなよって伝えといてくれ」


 通話の切れた携帯に使って話しかける。


 俺は非常に愛されてる為、盗聴や盗撮なんてのが山ほどセットされている。

 愛のあかしと考えて、半分は放置してるため、こう言うだけでだいたいは通じるのだ。


 なので、まず食事を作ってから簡単にシャワーを浴びた。

 


 うん。ここまではおかしくない。


 じゃあ次か……時間が余ったから、時間までクロスワードを解いていた。


「ん? そろそろ時間か。と、1ヶ月以上使ってないから、ヘルメット埃だらけじゃないのか? 俺、被るんだぞ」


 うわ、積もってるし、埃。


 まずは、掃除だな。ログインは多少遅れても大丈夫だろう。

 どの位の時間使うかわからないから、まずは自分の体調を優先しないと。


 あ、重曹も切れてる……仕方ない。一寸買ってくるか。ああ、カビトリ剤もないじゃないか。












「よし、もっと頻繁に部屋も掃除しないとな。さて、行くか」


 ヘルメット装着。


 電源を入れ、俺は正に現実を浸食しかねない疑似リアルの電脳空間に降り立った。














 筈だった……うん、おかしいのはここだな。


 俺はOOの世界にログインした筈だ。


 それとも、何か。久しぶり過ぎるせいで、変な場所に繋がったのか?


 お約束通りにログアウト出来ない。出来ないって言うか、コマンドメニューが開けない。


 コマンドがないって言うか、メニューが開けない。


 そして、なにより一番おかしい事と言えば……。


「明らかに地球とは思えないOOの世界の筈なのに、五感を感じる事だよな」


 視覚や聴覚などの五感。MMOの世界では、これは再現されない。

 いくら現実を浸食する勢いの疑似体験でも、精神が異世界に引っ張られることで現実世界で支障が出てしまう危険があるためだ。


 たとえ技術があってもこれは再現されてはならない。

 法令で決まっているのだ。


 なのに……。


「この風とひんやりとした気温、足から感じる岩場で感じる痛み……どういうことだ?」


 周りは何も見えない。


 足場や壁を触った感じからすると、ここは洞窟のような場所だろうか? もしくは……考えたくはないが牢屋。洞窟ならその随分奥にいるみたいだ。正直暗くてよく見えない。


「痛っ……むぅ……これは……」


 俺は自身の手をじっとみる。


 手を壁? についた時に何処かが尖っていたのだろう。

 指から出血したようだ。


 見えないが、反射的に口に指を咥えた時に錆びた鉄のような血の味を感じた。


 そこで更にこれはあり得ないことだと思った。


 VRMMOは血を再現する事が出来ない。


 これも先程の五感の関係と同様、大前提なのだ。


 あくまでゲームであって、犯罪者養成所じゃない。


 それは全てにおいて適応されており、戦闘でモンスターを攻撃した時は勿論、自分が負傷した時や料理で食材を調理した時等も含まれる。


「言いたくないが……ここは異世界なんだろうか……」


 頭がおかしくなったのかと自分でも思ったが、隣で弱肉強食を体現してる鳥とより大きな鳥を見ながら、現実を否定していた。

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