最強
警察内で、唯一仕事をしない奴がいる。
理由は単純だ。
能力試験で、試験会場をめちゃくちゃにしたから。
つまり、被害が出る。
保護という名の隔離。あるいは最終兵器。
――女子高校生が、だ。
今、そのそいつが隣にいる。……怖い。
なぜ隣にいるのかって?
こいつの行動を制限して、能力が暴走したらたまったもんじゃないかららしい。
警察内では要望は絶対通るし、自由に出歩いていい。
……だからって、俺の隣に座らせるなよ。
「……話しかけて」
「……何でしょうか?」
「……暇だから」
「……はい……」
この空気どうするんだよ、と心の中で思う。
「ヒカリは……死ぬ時、何を願ったんだ?」
「…………」
「……すまん」
ヤバい。
割とここでは鉄板ネタだったんだが、地雷踏んだか?
最強だもんな。そりゃ、相当な気持ちだよな。
どうする……話、逸らすか……?
「……世界を、変えたい」
「……え?」
「私だけ、いつも不幸だった」
淡々と、でも止まらない。
「頑張っても報われないし、イジメられるし」
「証拠が無いからって、教師は見て見ぬ振りだし」
「帰ったら暴力だし、アザ残ってて長袖しか着れないし」
「相談しても、誰も助けてくれなかったし」
一息。
「……世界には、もっと不幸な人がいるとか、知らないし」
「飛び降りた時ね」
「消えゆく意識の中で思ったの」
「……周りが悪いんだって」
「世界を変えたいって」
「壊したいって」
少し間が空く。
「でも、生き返って能力検査したら」
「周りは優しいし、何でも言う事聞いてくれるし」
「……悪くないかなぁ、って」
「……そ、そうか……」
喉が乾く。
「……アンタは?」
「好きな人を、守りたかったんだ」
「その人……」
「……死んじゃったのね」
「……あぁ」
「……そっか……」
短い沈黙。
「……話、聞いてくれてありがとう」
ヒカリは、そう言って立ち上がり、
何事もなかったみたいに去っていった。




