第二話 追放の兆し
塔から放たれた黒い稲妻は、村の空を切り裂いた。
まるで大気そのものが断末魔をあげるかのように、風は止み、鳥の声が消えた。
村人たちは家から飛び出し、皆、ひとつの方向を見つめていた。
——塔だ。
その漆黒の姿はいつもと変わらないのに、そこから発せられる“何か”が違っていた。
「……また、塔が鳴ったぞ」
「まさか、本当に……」
「魔の血が目覚めたのか……?」
恐れと疑念の目が、村の空気を覆っていく。
そんななか、リアンは自室の床に座り込んでいた。
胸の奥で、熱はまだ収まっていない。
触れてはいないはずの石が、心の中で呼びかけてくるような感覚。
それは懐かしくもあり、恐ろしくもあった。
ドアの向こうで足音が止まる。
——重たい、固い、訓練された兵のような足音。
ゴンッ、と戸が乱暴に叩かれた。
「リアン・アルステッド!中にいるな、出てこい!」
村の長老の補佐、ベルトランの声だった。
リアンは立ち上がり、戸口を見つめた。
「……何の用ですか」
「塔に行っただろう。塔はお前を呼んだ。そして……空が応えた。説明してもらおうか」
扉の外に立つ男たちの影。その手には槍が握られていた。
ミーナが慌てて家に駆け込んでくる。
「やめて!リアンは何もしてないわ!塔が鳴ったのは偶然でしょ!」
「偶然かどうかを決めるのは我々だ。あの塔は封印の場所。村の掟を破った者には、相応の罰を」
リアンは拳を握りしめた。
なぜ、自分だけが——。
ただ、知りたかっただけなのに。
なぜ、恐れられ、拒まれるのか。
そのとき、ミーナが小さくつぶやいた。
「……逃げて」
リアンの目が見開かれる。
だが、ミーナの目はまっすぐだった。
「今逃げなきゃ、本当に“おしまい”になる」
その瞬間、彼の中の熱が爆ぜた。
掌に、見たことのない光が集まり始める。
——魔法。
それは、確かに存在した。
リアンの中に、確かに生きていた。
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