第一話 黒き塔の少年
黒き塔は、村のはずれにそびえていた。
誰も近づこうとはしない。
呪われた地、魔の血の眠る場所。
大人たちはそう呼び、子どもたちにも決して近づくなと教え込んでいた。
——けれど。
「また行ってたんでしょ、リアン」
夕暮れ時、木の枝を拾って帰ってきた少年に、年上の少女・ミーナが眉をひそめる。
リアンは苦笑いを浮かべた。
「別にいいじゃないか。塔はただの古い石だよ。何かあるわけでもない」
「それでも、変なんだよ。あの塔に近づいた夜は、星が騒ぐ。風が止まる。空気が重たくなるの」
ミーナは本気だった。村で唯一、星の言葉を聴ける娘。
彼女の予感は、誰よりも当たる。
リアンはふと、昼間見た夢を思い出す。
塔の上で、誰かが彼の名を呼んでいた。
燃えるような瞳の女だった。
夢の中の彼女は、こう言った。
「目を覚ませ、リアン。お前が最後の魔法使いだ」
ありえない、と自分に言い聞かせる。
だが、塔の石壁に触れたとき、たしかに“何か”が脈打った。
「ミーナ……もし僕が、魔法を使えるとしたら、どうする?」
「——冗談でも言わないで」
彼女の声は震えていた。
「魔法使いはもういないの。そうじゃなきゃ……また、世界が……」
そのときだった。
塔の方角で、雷が落ちた。
晴れていた空に、黒い稲妻。
まるで、何かが封印から解き放たれたかのように。
リアンの足元が、かすかに揺れた。
——そして、その胸の奥が、熱を帯び始めた。
「リアン、逃げて——!」
ミーナの叫びが、暗転する世界に響いた。
物語が、静かに動き始めた瞬間だった。
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