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秘密のライン通知と、ほんのちょっとのドキドキ

 その日、図書室での研究会はあっさりと終わった。

 いつもより相談が少なかったらしく、星乃は「じゃ、また明日ねー」と軽い感じで帰っていった。


 俺は一人残って、少しだけ自習を装いながら時間をつぶしていた。

 理由はない。ただ、なんとなくもう少しこの空気にいたかった。


 学校を出て、電車に揺られて家に着いたのは18時過ぎ。

 制服を脱いで、冷蔵庫から適当にウーロン茶を取り出してリビングへ。

 いつもの日常、いつもの帰宅――


 と思っていたら。


 スマホが振動した。ラインの通知。


 画面を見た瞬間、心臓が変な跳ね方をした。


 送信者:星乃美月


 ……あれ? 星乃って、俺のライン知ってたっけ?


 しかも、内容がひとこと。


「今日ありがと」


 たったそれだけなのに、なんかこう、胸の奥がじわっと熱くなる感じがした。


 俺は、なんて返せばいいかちょっと迷った。

 既読をつけるだけでも、意味がある気がするくらいには、俺は今混乱している。


 なんとなく文字を打ち始めた。


「こちらこそ。なんか、役に立ってたらいいけど」


 すぐに既読がついて、返信が来た。


「めっちゃ立ってた! てか話してて楽だったし」


 やっぱり昨日も同じようなこと言ってたよな。

 でも何度でも言ってくれると、なんか嬉しいのはなんなんだ。


 さらに続いてメッセージが来た。


「てかさ、あたし、学校だとだる絡みキャラって思われてるけど、あんた相手だと自然に話せるっぽい」


「そうなんだ?」


「うん。てか、LINEとか迷惑じゃなかった?」


「全然。むしろびっくりしたけど」


「ふふ。これからもちょいちょい送るかもー」


 俺はスマホを見つめながら、正直に思った。


 ……このギャル、たぶん俺のことちょっと油断してる。

 良くも悪くも“無害な陰キャ”ポジションで、たぶん恋愛対象には入ってない。


 でも、少なくとも誰にも言えない秘密を共有してる仲ではある。


 俺は思い切って、もうひとことだけ送った。


「じゃあ、次回の配信、またちょっと案出すよ。夜とかでもOK?」


 既読。少し間が空いて。


「夜でも全然いいよ。てか、あんたと話すとメンタル落ち着くっぽい」


 そう返ってきたとき、俺の中で何かが少しだけ変わった気がした。


 たぶん、俺は。


 たぶん、ほんのちょっとだけ。


 彼女のことを、ただの「ギャルVtuber」だとは思わなくなってきてる。


 画面の向こうで作られたキャラクターじゃなくて、

 放課後の図書室で、スマホを並べて、一緒に笑ってくれる彼女。


 その存在が、ゆっくり、でも確実に俺の中に入り込んでくる。


 スマホの画面を伏せて、仰向けに寝転がった天井は、

 いつもと同じなのに、少しだけ明るく見えた。

おもしろい!と思ったら☆☆☆☆☆

つまんねー!と思ったら☆


今後の参考のために入れてもらえると嬉しいです!

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