第5話 ちくちくマーメイド
朝目が覚めると身体が軽い。スッキリして寝たからだろうか。
ソーマはもう出かけてしまったのかな。覗き穴は塞がれ、物音は聞こえない。
さて…
私はステータスを開き淫魔力の確認をする。
淫魔力:120
結構貯まったなぁ…一体どれほど興奮してくれたのだろうか…。これを嬉しいと思うあたり私は人よりほんの少しだけエッチなのかも知れないね。
この前はポーションを出したけど…ポーションだけじゃなくてその…媚薬とか?あったら?良いな?みたいな?
【媚薬(下級)の交換が可能です。交換しますか?】
本当にあった?みたいな?
媚薬か…実際効果はどれほどなのだろう。
今はスッキリしているし朝から媚薬飲むほど私はバカではない。
まずは宿代を稼がないといけないんだ。
後ろ髪を引かれる思いだったが私は準備をしてギルドへ向かった。
「リンさーん!仕事ありますか?」
「お、やる気っすね!大衆浴場の掃除はもう埋まっちゃったっすけど…衣料品店の仕事がさっき入ってきたっす!」
大衆浴場人気だなぁ…ちょっと寝坊したらこれか。
「じゃあその仕事行きます!」
「カエデさんならピッタリっすね!じゃあお願いするっす!!」
私にピッタリ?何?私エロ以外特にできないけど…。
そしてリンさんに言われた衣料品店に到着した私。
「衣料品店…ちくちくマーメイド…」
そうポップな字で書いてある看板が目を引くが…センス尖りすぎてない?
すごく不安だが仕事をしないと宿に泊まれない…恐る恐る扉を開くと店名通りのファンシーな世界が広がっていた。
ドレスにメイド服、普通のシャツやスカートも多いが基本的に高そう…。
言ってしまえば凝ったデザインだ。
「あら!あらあら!可愛いお客様!何をお探し!?」
女性…だよね?
ギリギリ女性に見えなくもない大柄な女性、フリフリの服を着ているが犬にカッパのコスプレをさせているような妙な違和感がある。
「あの…仕事の依頼で…」
「あらまぁん!!こんな可愛い子が来てくれたのぉ?今日はツイてるわぁん!」
あらまーん?声は女性だし…もう女性と思わないとちょっと気味が悪い。
そして頭の上には…コスプレの文字?
「今日のお仕事はねぇ、新作のアイディア出しなのよぉん!」
「アイディア出しですか…?」
「そうなのよぉん!私実は結構名の知れたデザイナーなんだけどね、最近行き詰まってて…そこで誰かと一緒に考えたら何か良い物が出来るかなって考えたわけぇ!!!」
わけぇ!!の語尾強いな!急に大きい声出さないでよ…。
「お客さんとかにアイディア聞いたらどうなんですか?」
「ダメよぉん!お客様はお客様!それに私の店に来ないような人の意見が欲しいわけぇ!!!そう依頼書にも書いたから貴方が来たんでしょ?」
なるほど、だからリンさんは私にピッタリって言ったのか。
納得。
しかしチャンスだ。ここで衣装を作って貰えたらフェチ刺激の幅が広がる。
「分かりました!がんばります!」
「お願いするわぁん!」
………………………。
数時間後…
「カエデちゃん…あなた天才かしら…」
前世の記憶で服のデザインなら山ほどある。
セーラー服にチャイナ服、ワイシャツ、ナース服に童貞を殺すセーターまで今の所思いついた服のアイディアを出してみた。
ついでにニーソックスもね。
「みなぎってきたわぁん!!!天啓!天啓よぉん!!忙しくなってきったぁん!!」
「お役に立てて良かったです!」
「今日はもう大丈夫よぉん!お給金は多めに出しておくからまた明日来てちょうだい!出来るかぎり作ってみるから試着をお願いするわ!!」
銀貨三十枚という破格の給料を貰い、とんでもないスピードで作業に戻る店主…名前聞いてないや。
とりあえず宿代貰ったし…家に帰って媚薬の効果でも…。
「カエデ!お出かけかい?」
声のする方を向くと見覚えのあるプラチナブロンドの髪の毛、パンチラルッツだ!
「ルッツさん、この間はありがとうございました!今仕事が終わってどうしようかと思ってたところです。フィーリアさんは一緒じゃないんですか?」
「フィーリアは今浴場に行ってるんだ。僕はあまりゆっくり入る方じゃないからさ、ちょっと暇つぶしにぶらぶらしてたんだよね」
「確かにフィーリアさんってすごい長風呂するイメージありますね、なんとなくですけど」
「そうなんだよ、ところで時間があるなら少し散歩しないかい?フィーリアが風呂から上がるまで暇なんだ」
ルッツさんとお散歩かぁ、どこに行くか気になるし行ってみようかな。
「行きましょう!どこに行くんですか?」
「そうだなぁ、カエデ一人だと町の外行けないと思うから外に出てみようか」
確かに、あんな危険な狼がワンワンしてる場所になんてそうそう行けないかも…。
「じゃあ外行きましょう!」
ルッツさんと門を出ると気持ちいい風が吹き抜ける。
いつか他の町にも行ってみたいなぁ。
「向こう側に眺めが良い丘があるんだ、そこに行ってみようか」
ルッツさん風で揺れるスカートと会話してます?せめて視線をたまにで良いので上げて下さい。
少し歩いた場所にその丘はあった。
一面の花畑が見渡せる綺麗な丘…普通の女の子なら喜ぶんだろうけど…生憎私に花を愛でる感性はなかったりする。
「わぁ…綺麗な景色」
しかし最適解の言葉は知っていたりする。
「そうだろ?僕のお気に入りの場所なんだ。いつも魔物を斬ったりしてるからさ、こういう平和な風景が心に染みるんだよね」
ルッツさんの視線は花畑に向けられ、優しく微笑む顔は私でもときめくほど綺麗だった…。
それはそうと後ろからぺったんぺったん聞こえるんだけど…
「ん?あぁスライムか…ここら辺よく出るんだよね」
「一応魔物ですよね?すごく弱そうですけど」
「すごく弱いよ?カエデでも倒せるんじゃないかな?」
私でも?風呂掃除で汗だくになるのに?
「でも攻撃手段が…」
【淫魔力でセクスプロージョンを使用しますか?】
セクスプロージョン!?バカじゃねぇの?
名前からして爆発系?名前はアレだけど一応攻撃も出来るんだ…
うーん…
「ルッツさん、ちょっと私攻撃していいですか?」
「良いよ、剣貸そうか?」
「いえ…魔法というかそれっぽいの使える気がするので…」
「魔法?それはすごいね、是非見てみたいな」
声に出したく無いんだけど…念じるだけでいいのかな…
えっと…セクスプロージョン…
スライムに手を向けて頭の中で念じると手から火球がゆっくりと飛び出し…ボンっと爆発した。
大爆発はしないと思ってたけど弱いなこれ…。
スライムは消し飛んだけど…。
「すごいじゃないか!爆発魔法なんて高度な魔法!」
「え?高度なんですか…?でもこんな小さい爆発じゃあ…しかも焦げ臭いし…って熱っ!!」
飛び火でスカートに火が!?
「カエデ!」
ルッツさんが慌てて水筒から水をかけてくれたおかげでスカートの火は鎮火した…
しかし…スカートの前の方が燃え落ちてなんとも卑猥な姿に…。
どうなのこれ、自分じゃ確認できないんだけどパンチラ判定?
「ありがとうございました…助かりました…出来ればあまり見ないで欲しいというか…」
私はギリギリ見えないようにスカートを押さえながらルッツさんに話しかけた。
なんというか…普通に恥ずかしい…。心の準備が出来ていないというか…こういう不意に見られるのは恥ずかしい!
これを乙女心というのだろう。きっと違うけど。
「と、とりあえず戻ろうか、新しいスカートを買ってあげるよ。僕にも責任あるからさ」
そんな…ルッツさん、ピンクのモヤ出しながら気遣いまでしてくれるなんて…なんてイケメンなんだ…回収。
「帰りましょうか、でも楽しかったです。たまには外に出るのも良いですね」
「そう言って貰えると嬉しいな」
私はスカートを押さえながらルッツさんについて行き、一応遠慮したのだが新しいスカートを買って貰った。
「本当にいいんですか?結構高いですけど…」
「良いんだよ、ちょっとくらい格好つけないとね!」
買ってもらったスカートは生地が前の物より上等な黒のミニスカート。
よし。
「あの、店員さん」
「はい、なんでしょう」
「このスカート、あと5センチ短くできませんか?」