第4話 覗き
大衆浴場での仕事が終わり、買い物をしながら今日の宿を探す。
下着の替えくらいは買っておきたいからね。
そして浴場で聞いた場所へ向かうと思っていたより…いやかなり綺麗な宿屋に到着した。
白を基調にした二階建て、なんか少しモーテル的な…田舎にあるラブホみたいだな…。
中に入ると店主が笑顔で迎えてくれた。頭の上には…ツンデレ?やめてよそんな歳じゃないでしょうに。
前金で銀貨五枚を払い部屋に移動するとベッドにトイレ、小さな机と椅子。
個室にトイレがあるのはとてもありがたい。
しかし清潔感あふれるこの部屋に気になる点が一つ…壁に貼り付けられた明らかに怪しい布切れ、手のひらほどのサイズだが、なんだろあれ…。
近づきペラっと捲ってみると…何か棒でも突き刺したような穴が空いていた。
覗いた瞬間ナイフが飛び出すとかないよね…?
恐る恐る覗いてみると隣の部屋が見える。
いやいやダメでしょ見えちゃ!
私は受付に走り店主に穴のことを伝えた。
「あの!壁に穴が空いていて隣から覗けちゃいますよあの部屋!」
「ああ、だから布で一応塞いでいるんだよ。前に冒険者の方が槍をぶつけてしまったみたいでね、一応追加でお金も貰ったんだけど直すほどの物でもないからねぇ」
「え…壁の穴ですよ?私みたいな女の子も泊まるんじゃないですか?」
「だから両方に布で目隠しをしているんじゃないか、気になるのであれば家具を移動しても良いよ」
そっかぁ…
部屋は満室という事なので交換も出来ず…
まあ気にしなければ良いのだ。
部屋に戻りベッドにダイブしてみると思ったよりフカフカで瞼が重く…なる気もするがそれどころじゃない。
大衆浴場の仕事でソーマの良い身体を見た。
そして私の裸同然の姿を見られて…。
私はパンツを脱ぎ捨て下半身に手を伸ばす…。
こうでもしないとやってられませんよ。
……………………。
ふぅ…結局一人で盛り上がり一回では済まなかった。
壁の穴から覗かれているかもというスパイスもあって捗ったな…。
そして行為に夢中で気が付かない振りをしていたが…少し膝が痛い。
浴場で転んだ時だろう、綺麗な白い足に青いアザ…
【下級ポーションが有効です。使用しますか】
突如ステータスが開きメッセージウィンドウにこんな文字が。
なるほど、こうやって淫魔力を使うのか。
試しに使ってみようかな、どのくらいの性能か分からないし。
使用すると念じるとポンと目の前に出てきた小さな小瓶。
さて、塗るのか飲むのか…。
試しに傷口に垂らしてみると一瞬でアザが消え、綺麗な生足に…これで下級?
ついでにステータスの確認もしてみる。
淫魔力:70
増えてる!ありがとう手ブラ!
とりあえず疲れたしもう寝よう…昼から寝ちゃっても良いよね…。
………………。
目が覚めるともう夜。お腹が空いたしちょっとご飯食べに行こうかな…。
宿は酒場も併設されていて宿泊客は銀貨一枚で一食食べられるらしい、異世界の料理に胸を膨らませ酒場に向かうとガヤガヤと賑やかな声が聞こえる。
「宿泊のお客さんかな?相席で良いならすぐに案内できるよ」
エプロン姿の女性、女将さんかな?エプロン姿でガタイが良い。
「じゃあお願いします」
「あいよ!苦手なものはあるかい?」
「何でも食べます!」
「良いね!じゃああそこの席が空いてるから座って待ってな!」
案内された席には一人の青年が本を読みながら食事をしている。栗色の髪にメガネ、整った顔つきからは知性が感じられる。
そして頭の上には覗きという文字…。
こんなの色眼鏡で見ちゃうよ、毎回毎回飽きないなこの世界。
「あの…失礼します」
「ん?あぁ、随分可愛らしいお嬢さんだね、そして珍しい髪色だけど…どこから来たのかな?」
柔らかい物腰で落ち着いた声…頭の上の覗きの文字。人類皆変態か。
「えっと、山奥の方から…」
「山の方は詳しくないんだけど、きっと良い場所なんだろうね。僕はユーリ、商人をしているよ。宜しくね」
「私はカエデです、宜しくお願いします。あの、どんな本を読んでいるんですか?」
「これかい?ちょっと恥ずかしいんだけど勇者の冒険譚さ、僕は体力が無いからこういう強い男に憧れちゃうんだよね」
ユーリさん良いわ…この柔らかい物腰、そして冒険に憧れる少年心…
手ブラで興奮して自室でアレコレしてた自分が恥ずかしくなるわ。
ユーリさんに本の内容を聞いたところ楽しそうに喋り始めた。
ここの勇者がかっこいい!このシーンが熱いと語る内容は面白く聞き入ってしまう。
「おや、随分と仲が良くなったじゃないか、おまちどうさま!猪肉のステーキとサラダとスープ!パンはお代わり自由だよ!」
「あ、ごめん…ちょっと喋りすぎちゃったかな…」
「いえ!ユーリさんのお話とっても面白いです!もっと聞かせて下さい!」
「本当に!?じゃあ次はここなんだけど…」
あぁ…楽しいな。オタクの友達と喋ってるみたい…。
楽しい夜は更けて気が付けば酒場に残っているのは私達と数人のみ、そろそろ店じまいの雰囲気かな?
「おっと、つい楽しくてこんな時間に…ごめんね」
「私はお昼寝したので平気です!でもそろそろ閉店みたいなので…」
「楽しかったよ、またどこかで出会ったら話をしたいな」
「是非!私はしばらくこの町にいると思うので!」
「ここに泊まっているのかい?僕と一緒だね、じゃあ部屋に戻ろうか。今日は本当にありがとう、久しぶりにこんなに趣味の話をできたよ」
あ、良かったらこの後僕の部屋で話の続きを…みたいなの無いんだ。
まあそうよね…出会ったばかりでそれは無いよね。
………………。
「隣の部屋ですね…」
部屋に戻るまで全く同じルートだったからまさかとは思ったけど…。
「荷物の整理をするからちょっと音立てるかも知れないけど、うるさかったらごめんね。じゃあおやすみ、カエデ」
「あ、はい…おやすみなさい」
あっさり部屋に入って行ったユーリ…本当にあっさりだなぁ…。
部屋に戻るとどうしてもあの穴が気になる。
ちょっと覗いてみようかな…。
もし自分の性癖やフェチが頭の上に見えるようになったら文字で部屋が埋め尽くされるんじゃなかろうか…。
悪い事だと思いながらも勝手に身体は壁に方に…布切れをめくって穴を覗き込むと…
布しか見えねぇ…まぁ向こうにも同じ布あるよね。
その時隣の部屋からガシャンと大きな音が聞こえた。
「だ、大丈夫ですか!?」
私は咄嗟に穴から声をかける。
「えっ?」
しばらくして向こう側の布が捲れ上がり綺麗な瞳がこちらを見ていた。
「あぁ、ここ穴が空いているのか。大丈夫、ちょっと荷物を倒してしまってね。ごめんねびっくりさせて」
「いえいえ、無事で良かったです!」
「もう少し整理するけど大丈夫?」
「はい、私はしばらく起きているので気にしないで下さい」
「ありがとう、それじゃあね」
フワリと布が落ちまた向こう側が見えなくなった…。
「とりゃ!」
私は自分の部屋の布を壁から剥がす。
違うの、私は見られて興奮する変態じゃないの、信じて。本当、マジマジ。
しかし抑えきれないこの感情、相手のフェチが分かってしまうと刺激してしまいたくなる。
小悪魔系?とも違うかな、見た目が清楚系美少女なのに頭の中ピンク色で埋め尽くされてる自分に興奮してるの?
私も大概ですよ。
しかしどうしよう、そもそも覗いてくるのかが問題。
今は自分のフェチに気がついていないユーリがあの穴に目を近づけるように…。
うーん分からん…
とりあえず着替えをしたいのだが…せっかくならちょっとサービスシーンを覗いて欲しい…。
いや、無理だわ。難しいわ。
もう運良く覗かれたらくらいの気持ちで着替えて寝よ…。
思考を放棄し上着を脱いでブラジャーを外す。
しかし本当に綺麗なおっぱいだな…。自分のとは思えないくらい綺麗なピンク色じゃないか。
そしてスカートを下ろして下着も脱ぐとあらまぁ。
透き通るような肌…幼さが残るが十分魅力的な身体だ…。鏡でもあったら小一時間凝視できそう。
風邪を引くのも嫌なので新しい下着に履き替え…
パンツが膝を通過したあたりで視界にカサカサとした黒い物体が…
「ぎゃーす!!」
「ど、どうしましたか!!!」
私の悲鳴に隣から心配したユーリが声をかけてくれた。
「だ、大丈夫です!ちょっと虫が出てっ…!!うわっとっとっと…いだぁ!」
叫んだ瞬間膝にかかったパンツで脚がもつれ無様に尻餅をついた可哀想な私…。
もう笑っておくれ…私は顔から火が出そうなくらい恥ずかしいよ…。
しかし私は見逃さない、若干ではあるがあの穴からピンクのモヤが出ている事を。
誠に不本意である。
「あの…本当に大丈夫ですか…?」
今ユーリは私の恥ずかしい格好を覗いて興奮しながらも心配の言葉をかけてくれているわけか…
やばい…お腹の下あたりが疼く…!
あの憎い害虫はいつの間にか窓の隙間から外に飛んでいった…あいつマジなんなん…。
「大丈夫です…あの…申し訳ないんですけど変な汗かいたので身体を拭く物とかお借りできませんか?」
「あ…あります!今持っていきますね!」
ドタドタと音が聞こえて隣のドアが開く音がする。
え?早くない?
私は急いで毛布をひっぺがし身体に巻き付ける。全裸の女の子の部屋に飛び込むほど興奮してらっしゃる?
「持ってきました!」
「ごめんなさいこんな格好で…そこに置いておいて貰えると…」
回収…。
大量のピンクのモヤを纏ったユーリから興奮エネルギーを回収…あのクソ真面目天使…なんでこんな制約を…。
「あれ?はい、そのタオルは差し上げますので、また何かあったら言ってくださいね」
そう言って部屋に戻るユーリ、タオルを手に取るとお湯で濡らしてある…優しいけどあの短時間で?
お礼にしっかりと穴から見える位置まで移動して身体を拭き始める。
一人だったらガシガシ拭くけど今はお淑やかに…ゆっくりと拭こう…。
身体を吹き終わって私はベッドに潜り込む。
ふぅ…回収。
ピンクのモヤがまた大量に…隣の部屋からユーリさんが私の身体見て興奮してたのか…。
まあ私の興奮は治らないよね。
仕方ない、仕方ないんだ。
私はベッドの中でひたすらに手を動かし続け…
回収…。
そう念じて深い眠りに落ちたのだった。