第3話 手ブラ
手ブラかぁ…。
異世界で初めての仕事はお風呂掃除。
タオルを二枚身体に巻き付けるだけって裸同然では?
男女共にせかせかとお掃除を進めて特に気にする様子もない。
なんか私だけすごくエッチな子みたいじゃん…まあ実際そうなんだけど…。
そして一人の青年の頭の上にある文字が手ブラ、手ブラってあれだよね、手で胸隠すやつ…。
流石にちょっと恥ずかしいような…。
ただこの…相手のフェチを刺激して興奮させるという事に興奮を覚えるのもまた事実…。
とりあえず普通に掃除するか…仕事は仕事だしね。
大衆浴場というのもありなかなか汚れがひどい、一応石鹸はあるのかヌルヌルとする床を一生懸命に磨く。
水を流してまた磨く…体力のない私にとっては中々の重労働…滝のような汗を流しながら作業を進めていく。
「大変そうだね、手伝うよ」
さっきの手ブラの人!この顔と性格で手ブラに興奮するの?こっちの方が興奮するが?
「あ、ありがとうございます。優しいんですね」
「まあみんなでする仕事だからね、気にしないで良いよ。俺はソーマって言うんだ、君は?」
「カエデです。今日この町に来たばかりで…」
「どうりで見ない顔だと思ったよ。慣れないだろうけどもう少しで終わりだから頑張ろう!」
「はい!」
すごく良い人!しかも何?タオル一枚腰に巻いてさ!見ちゃいけないとは思うんだけどもう視線が自分でコントロールできない!
「ん?どうしたの?」
「え!?いや別に…その…タオル一枚だなぁって…」
なんで私はこういう時に気の利いた誤魔化し方が出来ないのだろう…。それもこれもきっと頭の中のピンクの何かのせいだ。
「あぁ、これね。最初はみんな服を着てやっていたんだけどさ、暑いし濡れるしここ浴場だしって事でどんどん変わったんだよね、涼しくて良い案だと思うよ」
結局最後のここ浴場だしに服全部持っていかれたわけか…北風と太陽にも教えてあげたいくらいだよ。
「随分慣れてますね、結構このお仕事するんですか?」
「俺はここの従業員だからね、毎日こうやって掃除するのが日課なんだ」
「なるほど…だからそんなに筋肉質なんですね!」
「一応この仕事以外にも鍛えてるからね、男はこうでなくっちゃ」
力を入れたのか更に引き締まる腹筋。
触りたい!素直な気持ちね!私は触って興奮する変態とかじゃないよ、本当だって、マジマジ。
「あの…その腹筋触っていいですか?」
「良いよ!これでも少し自信あるからさ!」
あれ、嬉しそう。これをウィンウィンな関係って言うのだろうか。
とりあえずラッキー!
「じゃあ失礼して!」
おぉ…実際触ると実に良いものだ…。
男の力強さみたいなものが伝わってくるような…知らんけど。
こんな身体で抱きしめられたりしたら…色々な妄想が膨らむ。
「あの…すまないがそろそろ仕事を…」
「え?あ!すみません!夢中になっちゃって!ありがとうございました!」
ご馳走様です!!!
一体どれほど私は腹筋を触っていたのだろう…妄想が膨らみすぎて股から違和感が…タオル一枚だったら危なかったな。
「もうここをやったらお終いだね、気合いを入れてやっていこう!」
「はい!じゃあ気合いを入れてぇええ!?いっだぁ!」
気合いを入れてブラシを突き出した瞬間足元がツルっと滑り、バランスを崩した私は派手に転んでしまった。
「大丈夫!?」
「いてて…まあ床の滑りが衝撃を吸収してくれたおかげで多分無事…きゃあ!!」
転んだ弾みで腰に巻いたタオルが取れてしまい下がパンツだけに…慌てて隠すが手で隠すには限界がある!
「大丈夫かっ…!わっ、ごめん…?なんだ、下着を履いていたのか、怪我はないか?」
優しく手を伸ばしてくるソーマ…この世界パンツは別になんでもないんでしたっけ?別に恥ずかしい思いをしたい訳では決してないのだけど…釈然としない。
「ん?下着が濡れているじゃないか、気持ち悪いなら脱いできても良いよ?」
「え?」
いそいそとタオルを巻き直しながらパンツを確認すると…。
「……~~~っ!!いや、これは違くて!えっと…水で濡れてですね!そう!水で濡れています!」
腹筋の魔力にやられたやつだ!流石の私も恥ずかしい!
「いやそれはそうだろう…顔も赤いし大丈夫か?」
うん…なんかエッチでごめんなさいって感じ…。
「このままで大丈夫です…早く終わらせましょう!じゃあ気を取り直してぇええええ!?ぎゃん!!」
お約束とは破られないからお約束なのである。
この人は手ブラフェチ、そしてタオルを巻いただけの胸、再度転んだ私…
タオルは解けて床に落ち、気がついたら私の綺麗なおっぱいは完全に露出していた。
今彼は後ろにいる、タオルを拾って胸に巻けば何も無かったことになるだろう。
しかしポイントは欲しいし…手ブラの私を見た彼の反応も見たい。
むしろウェイトは後者の方が上まである…。
いやしかし今は仕事中だし…普通にタオルを巻いて早く仕事を終わらせよう…。
などと考えていたが気がつけば私はしっかり両手で胸を隠してソーマの方に振り返っていた。
こっちだって仕事みたいなもんだし…。
「あの…ごめんなさい、タオル取って貰って良いですか?両手使えなくて…」
ソーマの身体からはピンクのモヤが発生し、どんどん量を増す。
「え?あ、うん…タオルね、タオル…」
目線は上のまま床に落ちたタオルを探すソーマ、人間エロが絡むと急にアホになる時あるよね。
そして私はソーマのタオルから目が離せないよ!私の会心の手ブラで反応するのかな!?反応するとしたらどれほどの…
胸に添えた手にいつもより早い心臓の鼓動が伝わる。
おへその下あたりがじんわり熱くなり…手で隠している乳首がピンと立ち上がっ…
「そろそろ終了でーす!皆さんありがとうございましたー!」
このタイミングでかかる終了の号令…
「あっ!終わりみたいだね…」
終わりか…ええい!回収!!!
「はい、これタオル。結び方にコツがあるから今度他の女の子に聞いたら良いかもね!」
しかし惜しかったなぁ…いや惜しいとかない。危なかった!
急に襲われて非処女になる可能性もあった!
ギリギリを攻めなければ…これはこれで私も生殺しみたいなところあるなぁ…
結局何事も無く銀貨八枚を手に入れた。
宿屋が一泊銀貨五枚くらいらしいので銀貨一枚千円くらい?
異世界の宿屋か…楽しみだな!
とりあえずこの火照りは沈めないと!