第1話 パンチラ
目を開けるとそこには広大な草原、奥には町だろうか、異世界テンプレの中世の街並みが見える。
まず町を目指せという事だろう。
言葉は分かるようになっているらしいけど…流石に心細いな…。
とりあえずステータス的なものとかは…。
すると目の前にステータスウィンドウが現れた。念じればいいのかな?
しかし内容は…。
・淫魔力:0
これだけだった…。スカートを短くする前に色々聞いておけば良かったなぁ。
突っ立っていても仕方ないので町に向かって歩き出す。門番に止められてそのまま詰みみたいな事だけは避けたいけど…。
ウォン!!
少し歩くと後ろから犬の鳴き声が聞こえた。特に危機感もなく後ろを振り向くとそこには…犬とは違う…狼?明らかに殺意を身に纏ったタイプの…。
「ぎゃーす!!」
私は叫びながら全速力で逃げ出し、近くの木に登って…無理!オタクの体力舐めないで欲しい!
「助けてぇええ!びえええん!死にたくないがー!」
ギリギリ狼から届かない高さで木にしがみつき泣きじゃくる私。
早い!ここまま死んだらいくらなんでも!
ウォンウォンと下から聞こえる野獣の声…もうダメだ…手が痺れて…。
一瞬意識が途切れて私の身体は落下を始める、あぁ…小説にしたら二話の序盤くらいかな…私の第二の人生…。
「ぎゃん!」
無様な声を上げて地面に落下し、全てを諦めて空を見上げていると狼の鳴き声は聞こえない。
その代わりに優しい男女の声が聞こえた。
「大丈夫かい?危なかったところだったね」
「お嬢ちゃんこんなところで何してたの?危ないわよ、女の子の一人歩きなんて」
声の方に目を向けると…あらま、イケメンと美女…。
男性の方はプラチナブロンドの髪に碧眼の美少年、女性の方はエメラルド色の瞳でウェーブがかった金髪が風になびかせていた。
そして気になるそんな美男の頭の上の頭のおかしい表記…
パンチラ?女性の方は霞んでいてよく見えない。
「どうしたんだい?僕の顔に何かついてるかな?」
「い、いえ違います!助けて頂いてありがとうございます!」
「怖かったでしょう、お茶とお菓子があるので少し落ち着きましょうか」
さっきまでいた狼はすでに消え去っており、柔らかな物腰の女性が準備してくれたお茶を飲んで心を落ち着かせる。
「僕達は今から町に戻るところなんだけど、えーっと…」
「カエデです!名前はカエデ」
「カエデか、僕はルッツ、彼女はフィーリアだ。一応冒険者をやっているよ」
「私はその…山奥で育ったんですけど育ててくれたおばあちゃんが亡くなってしまって…」
とりあえず異世界に来た人っぽい設定にしよう。何も分からないのもこれなら大抵誤魔化せる?
「そうだったの…大変だったわね…」
そう言ってお茶を飲みながら話を聞いてくれるフィーリアさん。
しかし気になる…スカートでいわゆる体育座りをしているフィーリアさんのパンツ。
見えてる見えてる!可愛いピンクの下着が見えてる!
「あ、あのフィーリアさん…その、見えてますよ?」
「え?何がかしら?ん?」
フィーリアさんは私の視線の先が自分の下半身に向いてる事に気がつき視線を落とす。
「何かフィーリアの股に気になるものでもあるのかい?」
ルッツさんもそれに気付きフィーリアさんのスカートの中を覗き込む。
「何もないわよね?」
「うん、何も無いね」
あれ…。
「あの、恥ずかしくないんですか?その…パンツ見えても」
「なんでかしら?カエデは不思議な事を言うのね」
「大事な場所を隠しているんだから恥ずかしい事はないんじゃ無いか?」
あぁ、これがサキュバスの言ってたアレか。
性の楽しみ方を知らないって。
確かに大事なところは隠しているし服と一緒の布だろう。
しかし違う!
元々は他人に見せる前提で履くものでは無い!
この布の下にはもう女の子の部分しかないという緊張感!
性的な目で見られるかもしれない不安やドキドキ!
はしたない女の子だと思われてしまうかも知れない恥じらい!
そういう期待や不安、ドキドキを詰め込んだものが女の子のパンツなのだ!
ちなみに今私はどんなパンツ履いてるんだろ!あとで確認しなきゃ!!
つまりこの世界は恥じらいとかが足りない感じ?まだ色々知っていく必要がありそう。
「うーん…私はパンツを見られるのが少し恥ずかしいので…」
「別に履いてないとかじゃないんだろ?じゃあ別に…」
「ルッツ、女の子には色々あるのよ。きっと山奥の常識とこっちの常識は少し違うんじゃないかしら?」
なんか田舎育ちの世間知らずみたいに言われてるけど…まあ常識が無いと思われるのは好都合。色々聞きやすいしね。
「ちなみにブラジャーってあるんですか?」
「勿論あるわよ。ある程度大きくなると揺れて動きにくいもの、胸が小さい人は必要ないけど」
へぇ…私は自分の身体の視線を落とす。
うん、じゃあ私は必要ないって事で良い?揺れて邪魔になった事なんて無いからさ…。
「カエデは恥ずかしがり屋なのかな?そんなに気にしなくても良いと思うけど…」
ルッツさんは爽やかな顔でそんな事を言うけどアナタの頭の上!パンチラって書いてありますからね!!
しかしフィーリアさんのパンツは無反応なのか…何かフェチを刺激するものがあるのかな…
「それじゃそろそろ行こうか、門番には僕達から話をしてあげるよ。これでも結構信頼された冒険者だからさ」
「私達が保護したって事にすればなんとかなりそうね」
「ありがとうございます!助かります!」
運がいい、これでスムーズに街中に入る事ができそうだ。あとは中に入ってから色々考えよう。
お茶を飲み干し、片付けをして立ち上がった瞬間、急な突風で私のスカートはふわりと捲れ上がる…
「きゃっ!」
私は反射的にスカート抑えた。見られた?今どんなパンツ履いているのか分からないのに!え…まさか履いてるよね?
「ふふっ、カエデさんは随分可愛らしいのね。ルッツもそう思わない?」
微笑みながらルッツに語りかけるフィーリアさん、しかしルッツさんは…。
「あ…あぁ!そうだね…随分と可愛らしい女の子だね」
やや!何かルッツさんの身体の周りにピンクのモヤが見える。
まさかあれが興奮したって事?
確か回収して貯めたらアイテムを作成できるって話だったよね。
急がなきゃ!でもどうやって…。
一人慌てていると急に目の前にステータス画面が現れる。
【フェチによる興奮を確認しました。回収しますか?この操作は回収と念じる事で可能です】
チュートリアル?勿論回収!絶対回収!
するとルッツのピンクのモヤはふわふわと私の身体の中に入ってくる。
回収完了!あとでじっくり確認しよう!
「あれ?うーん…」
「どうしたのよルッツ、早く行きましょう」
「そ、そうだね。じゃあ行こうか!」
なるほど、なんとなく回収の仕方は分かった。
「初めての町!楽しみです!」
私はルッツさんの前を歩きくるっと身を反転して話しかける。
遠心力でスカートがふわっと浮き、チラっとパンツを見せてみた。
ルッツさんの視線はしっかり私の下半身に釘付けだ。
「う、うん…いい町だよ。きっと気にいるさ」
うん。
回収!!