第15話 旅の途中
「それで、サキュバスの街には何を買いに行くんですか?」
「アロマキャンドルとか香水とかかな、独特の匂いなんだけど良く売れるんだよね」
催淫効果とかあるのかな…いや、この世界にそんな小洒落たアイテムがあるわけない。
きっと普通に独特な匂いがするんだろう、カレーとか?
「へぇ、それでその…サキュバスの街ってどんな所なんですか?」
「カエデは山奥から来たんだったね。そうだなぁ…一応色町かな、ぼ、僕はそういった店には入らないけどね!」
慌てて否定するところがなんか少年っぽくて可愛いな、別に気にしなくて良いのに。
今喋ってる女の子は完全にそっち寄りの女の子ですのよ。
「あの…変な事聞きますけど普通なんですか?その…サキュバスのお店って」
「ん?普通っていうと?」
「その…例えば」
覗き専門店とかSMとかイメクラ的なアレとかなんだけど、急にこんな事聞くのもなぁ…。
少し恥ずかしい。
「いえ、なんでも無いです!楽しみにしておきます!」
「女の子も買い物に良く行くからね、可愛い服もいっぱいあるよ」
「おぉ!楽しみです」
きっとおへそが出てる感じのアレとかだと思う、もうビキニみたいな服なんだろうなぁ。
サキュバスの話はここまでにして道中はユーリさんの好きな本の話で盛り上がった。
娯楽が少ないこの世界、ユーリさんが楽しそうに話す冒険譚はとても楽しいものだった。
……………。
そして数時間後…
トイレに行きたい!限界が近い!
良く考えたら旅の途中でトイレなんかあるワケないよね。
良い旅夢気分で紅茶をガブガブ飲んでいたのが良くなかった。
しかし遅かれ早かれではあるよね。
「あの…ちょっとトイレに…」
「え?ここでかい?もう少し我慢できるかな?ここは魔獣が出るから…もう少し進んだら安全なんだけど…」
魔獣より先に色々出そうなんですけど…?
「ちょっと限界というか…いえ…もう少しだけならなんとか…」
「分かった!ちょっと飛ばすよ!」
えっ…
馬車は急にスピードを上げて走り出す。ガタンガタンと振動が…いや!いけないよこれは!
「ちょ、ちょっと待って下さい!ウソです!限界です!私の魔法で魔物は吹き飛ばす覚悟でトイレに行こうと思います!今!!」
「そうか、カエデは爆発魔法が使えるんだったね、でも危ないから僕もついていくよ」
どっち!?普通に心配なのかフェチ関連なのか!いや…どっちにしても女の子のトイレに付いて来るのはどうかと思う!
……………。
結局少し離れて見張りをしてもらう事で手打ちとなった。
そして今私は茂みの中にしゃがみ込んでいる。
なんかすごく緊張するんですが…。
いや今更何をそんなに恥ずかしがると思うかも知れないけど布団の中でモゾモゾするのと人前でトイレをするのは違うんだよなぁ…。
本当に見えないよね…そんな不安の中でも膀胱は限界だったので結局チョロチョロと用を足したのだった…。
…………。
「あの…お待たせしました…」
何これ、なんかすごく恥ずかしい!慣れてはいけないタイプの羞恥だと思う!
「こ、今度は安全な場所を通る時は声をかけるよ、僕の配慮が足りなかったね」
あ、はい…なんかピンクのモヤ出てるんで回収しておきますね。別に良いですけどもう。
「気を取り直して行きましょう!今日はどこに泊まるんですか?」
「今日は野宿になるかな、もう少し進んだら今日の目的地だよ」
野宿!やっぱり冒険と言えば野宿!焚き火を囲んで身の上話とかして仲良くなるんだよね。知ってる!アニメで見た!幾度も!
……………。
「じゃあ今日はここでキャンプかな、どう?結構良いところでしょ?魔獣もここには近付かないし」
ユーリさんの言うとおり開けた野原で川も近い、しかしなぜ魔獣が近付かないかは全く分からないな。
「なんで魔獣は来ないんですか?道中も魔獣が出るところと出ないところあるみたいな事言ってましたよね?」
「うーん…よく分からないんだけど出ないんだよ、経験則みたいなものかな?」
ビックリするくらいふんわりしているね?命に関わる事だと思うんだけど…。
でも商人の言う事だし適当という事もないのかな?
「じゃあまずテントの準備をしようか、カエデは休んでて良いからね」
「いえいえ!私も何か手伝います!」
「そうかい?じゃあ焚き木を拾ってきて貰える?」
「はい!任せて下さい!」
私は良い返事をして薪を拾いに行く。少し歩いて森の中に入ると手頃な薪がチラホラと…どのくらい必要なのか分からないので両手いっぱいになるまで集めてみた。
「そんなに集めてくれたんだ、ありがとうカエデ」
キャンプに戻るとしっかりとテントが設営されており、ユーリさんは晩御飯の準備をしてくれていたようだった。
「そういえば火ってどうやって起こすんですか?」
「便利なものがあるんだ、これなんだけど」
ユーリさんが出したのは火の灯ったランプ、まあ便利だよね。でも私が聞いているのはそのランプにどうやって火を着けたの?って事なんだけどね。
「このランプに灯した火は消えないんだ。魔道具なんだけどね」
それは便利だわ…でも消す時とかは?いや、なんか私面倒な女になりつつあるな、これ以上の詮索はしないでおこう。
ユーリさんの魔神が出ないタイプの魔法のランプを使って焚き木に火を着ける、子供の頃にキャンプに行った事を思い出すな…。
あの時は無邪気だった、いつからこんなエッチな女の子に…。
人生は最高だね。
「カエデは休んでてよ、温めるだけだからさ」
流石商人、レトルトなんて持ち歩いてらっしゃる。少し野生的な串焼きみたいな物とか干し肉とかを期待したんだけど…。
ユーリさんの料理が終わるまで座して待つ、いや…ここは一つ…。
私は体育座りで待つ、スカートの中を覗くというのは覗きになるのだろうか。
普通に気になる。
「もうすぐ出来るからね」
こちらをチラリと見るユーリさんだがピンクのモヤは発生しない、やっぱりパンチラと覗きは違うわけか…。
ここはもう少し脚を開いて…
「あの…カエデ、余計なお世話かも知れないけど…その、あまり女の子がそんな格好するもんじゃないよ?」
私ってもしかしてエロが絡むとバカになるのか?改めて自分の格好を見てみると殆どM字開脚じゃないか、不自然にも程がある!
「わわっ…!ごめんなさい!少しそのっ…あれです!自由でした!」
「自由なのは良いんだけどさ、ほら…僕も一応男だから…」
少し罰の悪そうに鼻をかくユーリさん、そうですよね!全く!なんで煩悩って百八つもあるんだか!困ったもんだ!
「そ、そろそろご飯出来ましたか?」
「あ、うん。じゃあ食べようか」
私はしっかりと脚を閉じて優雅にご飯を頂く。食欲と性欲って両立しないって本当だな。
レトルトのシチュー?すごく美味しい!
……………。
「じゃあ明日も早いから寝ようか、カエデはテント使ってよ。僕は馬車の方で寝るからさ」
「はい!おやすみなさい!」
流石に一緒のテントって事はないよね。
処女じゃなくなったらこのちょっと便利な能力失っちゃうし、この淫魔力の使い方にはまだまだ可能性がある気がするし…。
でも一体どんな感じなんだろ、男の人と一つになるっていうのは。
想像は出来るけどきっととっても気持ちよくて…。
一人テントでそんな事を考えていると自然に手が下半身に伸びていく。
一回だけ…
私は火照った身体を鎮めるように指を動かし、控えめな水音はきっと木々のざわめきが消してくれる…。
「カエデ、そういえば毛布とかはあるかい?無かったらこれを使って…」
「ひゃ!」
急にテントの入り口からユーリさんが顔を出す。完全に無防備な私、だらしなく脚を開いてテント内にはメスの匂いが充満していた。
今私どんな顔してる!?顔が一気に熱くなる。
「あっ…!ごめんカエデ!なんかその…忙しそうな…」
ユーリさんからはピンクのモヤは出ていない。しかし彼の目は湿った私の下半身に釘付けに見える。
「あ、あの!違うんです!」
私は咄嗟にスカートで大事な部分を隠して口を開く、いや、なんて言えば良いんだろ!?言い訳が思いつかないが?
「うん…カエデ、良かったら……いや!違う!ごめんね!毛布はここに置いておくからさ!おやすみ!」
ユーリさんは慌てた様子でテントを閉めて馬車に戻って行った。
良かったら…なんて言おうとしたんだろ。
いや…危なかった…。
フェチの興奮は吸収出来ても普通の興奮は吸収出来ない。
出会ったのが良い人ばかりだったからなんとかなったけど…私は少し魔法が使える女の子だ。
最近少し調子に乗って誘惑みたいな事してたけど気をつけた方が良いかもしれない。
私がもしユーリさんの立場だったら…押し倒してしまっているかも…。
彼の理性に救われたな…。
少し反省しよう…。淫魔力がなくなったら自衛もままならないし…。
とりあえず…
中途半端でおあずけだったから一回はしっかりやってから寝よう。
私はもしユーリさんが押し倒して来たらという妄想でその後数回盛り上がったのだった。
妄想で処女は喪失しないからね!