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プロローグ 淫魔の加護

「いやぁ…楽しかった…」


私の名前は黒瀬楓、今年で十八歳になる。


今日はずっと楽しみに待っていた世界的に有名な同人誌即売会。戦利品を両手に抱え、この世界に生を受けた事に感謝をしながら帰宅している最中。


確かに浮かれていた、だってお気に入りのサークルの新作だよ?早く家に帰って使い…もとい読みたいのは当然じゃないですか。


その時視界の端に捉えた道に落ちた一冊の本。

エロを愛する私が見過ごせるわけない、道に落ちたエロ本なんて…内容なんかどうでも良い、後悔だけはしたくないからさ!


そして私は力いっぱい走り出し…


鈍い音と共に意識は途切れた。


………………………。


「いやぁ見事にトラックに轢かれましたよね!戦利品とやらも辺りに散らばっちゃって」


現在まるで光に包まれた真っ白い部屋で私は椅子に座らされていた。


そしてその前に座ってケラケラと笑っている露出度の高い女に自分の死に様を見せられているところだ。


神様?天使?それにしては余りにも下品すぎる。

半分露出した胸、ヒラヒラとなびかせるミニスカートから覗くアダルトな下着。


「あの、ここって天国なんですか?私が死んだのはなんとなく理解したんですけど…あと出来れば散らかった戦利品には触れないで下さい」


「天国ですかぁ…まあ似たようなものですね!カエデさん!おめでたい事にあなたは異世界に転生できます!なんと私の加護付きで!」


オタクなら一度は憧れる異世界転生を加護付きで?エロ本に釣られて死んだのに?


「転生ってあれですよね!チート貰ってチヤホヤされるやつ!」


「話が早くて助かります!チートというかまぁ…」


「神様はどんなチートを下さるんですか!?」


「え…私神様じゃないですけど…」


え…じゃあお前誰なん…?


「私は見ての通りサキュバスですよ。サキュバスの王なので滅茶苦茶偉いですけど…」


「あの…なんでサキュバスが人間を転生とかさせるんですか?しかも女の私を」


男を転生させて異世界の精力を吸収したいとかなら分かるけど女を転生させる意味がよく分からない。


「えっとですね、あなたが転生する世界って結構退屈なんですよ。性の楽しみ方を知らないというか…カエデさんの世界で言う性癖とかフェチとかの概念が無いんですよ」


「それは可哀想に…」

でも概念が無いだけでそれぞれ好きなものはあるんじゃないかな?


「そうでしょう?だからカエデさん、あなたを呼んだんですよ。前世を覗かせて貰いましたが知識だけは豊富じゃないですか。だからその知識で色んな人に性の楽しみを教えてあげて下さい」


「見てたの!?やめてよ恥ずかしい!神様どころか悪魔じゃん!」


いや…この人神様じゃないわ…サキュバスってどっちかっていうと悪魔側だわ…。


「まあもう良いですけど…ところでその加護って何が出来るんですか?」


「カエデさんの世界で言うフェチや性癖を見ることができますよ、相手の」


「相手のフェチや性癖を見る加護…?そんな能力を使ってどうやって異世界を生き抜けと?」


「大丈夫です!相手のフェチや性癖を刺激して興奮させたらその興奮を回収して下さい、回収したエネルギー…淫魔力でアイテムを得ることができますよ!」


「そんな事したらすぐに襲われて大変な事にならない?」


「大丈夫です!淫魔力を回収してしまえば相手の欲求は治るので襲われる事はありません!」


さっきから大丈夫大丈夫って言ってるけど本当に大丈夫?こんな下ネタみたいな加護で異世界生活なんて。


「じゃ、じゃあ例えば大勢の前で脱いだり…裸で男の人に抱きついたらすぐに強くなれるって事?」


「それは大丈夫じゃありません。あくまで性癖やフェチの刺激による興奮ですので裸で抱きついたりしても基本溜まりません。それに大勢の前で脱いだりしても全員のフェチを刺激できるわけではないのでただの頭のおかしい女の子って思われるだけですよ?最悪すぐに襲われちゃいます」


えぇ…なにその無理やりRー18にならないように配慮したみたいな設定…。


「なんかあまりチートっぽくないですね…」


「でもカエデさんってすごいむっつりスケベじゃないですか?だから結構楽しめると思いますよ」


「な…確かにエッチなのは好きですけど…そんなの人間なら誰でもある程度は…」


「戦利品?でしたっけ?随分と多種多様な…」


「わぁぁああ!!分かった!やる!やるからそれ以上はやめてよ!!」


「ありがとうございます!それでは楽しい異世界ライフを!言語や文字は自動で翻訳されるようにしておきましたので!服装も現地のものに着替えた方が良いですね!」


サキュバスがそう口にした次の瞬間、上から怒号が聞こえた。


「ちょっと待ったぁ!!!」


何?今度は誰?すごい怒ってるじゃん…。


「ちょっとリリベル!アンタ今度は何する気!?」


サキュバスの名前ってリリベルって言うんだ…。へぇ…


「げっ…ガブリエル…何しに来たんですか?何もしてませんよ?」


「してるでしょ?サキュバスのアンタが勝手に転生なんかさせて…しかも加護まで与える気?」


「だって…」


「だってじゃありません!アナタの加護は危険すぎます!」


性癖とフェチの加護が危険なの?エッチなだけなのに?


「でももう与えちゃいましたし…奪い方しらないし…」


「なんですかその言い方…うーん…じゃあ私から制約をつけさせて頂きます、いいですね?」


勝手に話が進んでるけど…結局どうなるの?私。


「急に現れて制約ですか?なんですかアナタ偉そうに」


「は?」


「はい…お好きにどうぞ」


「それでは…カエデさん。申し遅れましたが私は天使のガブリエルと申します。この淫乱バカ女が貴方に授けた加護ですが…なんと申しますか…まあ危険すぎます。なので私から制約をつけさせて頂きます」


「制約?一体…」


「それでは、神の名の下に大天使ガブリエルから制約を課します。貴方が非処女になった瞬間、淫魔の加護は消滅します」


えぇ…急に現れて何してくれてんの…。異世界でも処女のままなの?私。


「ちょっと待って下さい、非処女と加護に何の関係が?」


「はい!もう良いでしょう!加護にも制約つけたし!ガブリエルはもう帰って下さい!急いで!お仕事あるでしょ!!帰れ!帰れぇ!!」


まだ何か言いたそうなガブリエルはリリベルが作り出した扉に無理矢理押し込まれ帰っていった…。


「さて!クソ真面目バカ天使も帰ったところで!服は異世界のものの方が良いですね!それっ!」


次の瞬間私の身体は光の包まれ、地味なシャツとスカートの姿に変わる。


「うーん…」


「どうしました?服装は豪華にしすぎると逆に不自然なのでそのくらいが妥当かと…」


ちょっとだけ気になるなこのミニスカート…。


「あの…」


私は転生前に一つだけサキュバスに希望を出す。


『このスカート、あと5センチ短くなりませんか?』


「やる気満々ですね!はい!短くしましたよ!それでは宜しくお願いしますね!」


色々と疑問は残るが私のちょっと?エッチな異世界生活が今から始まる。


正直…ワクワクが止まらない!



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