氷の城塞を攻略せよ!
「しかし、この氷のスキルの使い手…相当な使い手ですね」
「そうなのか?でも確かに、銃で傷ひとつつかないのは相当やばいのは俺でもわかる」
「それもなんですが、この効果範囲がやばいんです。この建物を覆うほどの氷を生成できる力、そしてそれらの硬度を維持し続けるのは相当な体力と技術が必要なはずです」
「マジかよ…」
しばらく沈黙が続く。すると階段の方から急に足音が聞こえた。
雫は背負っていた大きなケースからスナイパーライフルを取り出して構える。
「なっ、」
俺と雫は驚愕した。なんと上ってきたのは人ではなく氷の人形だったからだ。
雫は迷わず、すぐに氷の人形に狙いを定め発砲した。氷の人形は建物を囲っている氷とは違い銃弾があたると
すぐに砕けちった。
突然、下の階から銃声が鳴り響いた。
「オラァ、オラァ!」
聞いたことのある声だった。俺と雫は下の階の様子を見てみると、
「あ、あいつは…」
そこにはさっき俺を見逃したゴーグルの男がいた。そいつの周りには5体ぐらいの氷人形がいた。
すると雫が
「瞬さん。ここはあの人を助けてここを出るために協力してもらいましょう」
俺は、さっきのことを思い出し少し抵抗があったものの、雫と共に氷人形を破壊した。
「助かった、お前ら。ありがとな。ん?ってお前さっきのやつじゃねーか。くっそ、このガキにはともかく
さっき見逃したやつに借りを作っちまうとはな」
「何言ってんだ、これでさっきのはチャラだ」
「あー、確かにそうだな」
「あの、瞬さん。本題に入りませんか」
「あ、あぁ。そうだな雫」
「本題?なんだそりゃ」
「ここから出るために協力していただけませんか?
西園寺 健二さん」
「なんで俺の名前知ってんだよ」
「それは私のスキル、解析のおかげです。私は見た相手の名前、年齢、所持スキルなどを見ることができます」
「そういうことかよ。じゃあさっさとエレベーターに乗って一階に行こうぜ」
健二がそう提案し、俺たち3人はエレベーターに
向かい、ボタンを押しエレベーターを待っていると、後ろから物音がして振り返ると
そこには5体の氷人形がいた。それにいち早く反応した健二は、手に持っている銃を発砲し、氷人形を破壊した。
「こいつらいったいどこから湧き出てんだよ?」
そう健二が疑問に思っていると、エレベーターが到着し、エレベーターの扉が開くと俺たちは驚愕した。
エレベーターの中には誰かが串刺しにされたかのように、氷柱が全方向から生えていて血飛沫が飛び散っていた。
「これは、エレベーターから行くのは無理ですね。やはり階段から行きましょう。あと行くときは防犯カメラを
破壊しながら行きましょう」
「なんでだ?」
俺が疑問に思い問いかけると、
「おそらくですが、氷人形が出現していたのはいつも私たちの近くでしたよね?先ほども、いきなり階段の方に
出現しましたし、健二さんの方もそうなんじゃないでしょうか?」
「思い返してみると確かにそうだな。1階は敵が多くて集中砲火から逃げるためにこの階に来て、この階の
フラッグと敵を倒していたら、アナウンスが聞こえて気付いたらいたって感じだな」
「やはり… この氷人形は位置を認識している人間の近くになら出現させられるんでしょう。遠くに行けば行くほど、出現させられる数は減ると思いますが」
その頃、一階のセキュリティールームで、アナウンスの男が一部始終を見ていた。
「へー。よく気付いたなー。厄介そうだし、さっさと潰しておくか」
そう言うと、俺たちの周りに氷人形が9体ほど出現する。すると雫が、
「瞬さん、健二さん。ここは私が引き受けるので私を置いて下に行ってください」
それに健二が、
「お前バカか?スナイパーだけでこの数は無理だろ」
「安心してください。他の銃も持ってます」
そう言うと一体の氷人形を破壊し、
「行ってください!」
そう言われ、俺と健二は防犯カメラを破壊しながら下に向かう。
(おそらくですが、これだけの数が限界でしょう。ここで私たちを仕留めようと思ったのでしょうが、ほとんど破壊せずに引きつければ、瞬さんたちにとっては楽でしょう。私もやっておきたいことがありますし、)
あれから、氷人形が出現する数が一体だけになった。
「あれから、一気に減ったな。瞬だっけか?」
「あぁ、そうだ。それで、あいつの位置はわかるか?」
「あぁ、わかるぜ。一階に着いたら、降りたところからまっすぐ行ってカウンターの奥にある扉の向こう側に
あいつはいるぜ」
そうしていると、アナウンスの男が
「おや?誰かが近づいてきたな。そろそろ僕が出ないとダメかな?」
俺と健二がセキュリティールームの扉に近づくと、突然扉がこちらに向かって飛んできた。
「なんだぁ!?」
俺と健二が驚いていると、奥から男が出てきた。
「おめでとう!よくたどり着いたね。僕の名前は、氷魔 キリ。ここに来たってことはフラッグを渡してくれるということかい?」
ふざけた感じに、キリと名乗る男は言う。それに健二は、
「はっ!違うってのはお前もわかってんだろ?白々しいんだよ!」
「あぁ、俺らの目的はお前を倒してここから出ることだ」
「なるほどね〜。でも、それは無理なんじゃない?僕の持っているポイントは現在10000pt。
君たちより圧倒的に強いんじゃないかい?それでも倒すって言うなら、かかってきな」
奴がそう言うと、まるで刃物に刺されているかのような殺気が俺たちを襲う。
動けないでいると、突如俺の脳内に声が聞こえてくる。
(おい、瞬。聞こえるか?今から俺はお前の脳に直接声を送る。お前も心の中だけでしゃべれ)
(は?なんで喋れんだよ?)
(そんなこと今はどうでもいいだろ。それよりも、今から俺がお前にあいつの考えてることを送り続ける。参考までに戦ってくれ。行くぞ)
(よくわからんが、わかった)
俺は少し不思議に思いつつも、キリに向かって銃を撃つ。
奴は飛んでくる銃弾に向かって息を吹きかける。すると、吹きかけられた銃弾が、凍っていき、下に向かって落ちていった。
「これが僕のスキル、凍てつく世界。氷を自由自在に扱うことができるのさ」
(瞬、頭上に気をつけろよ)
そう健二が脳内に話しかけてきた。すると、キリが
「アイシクル」
そう言うと、俺たちに頭上に無数の氷柱が落ちてくる
俺たちは、あらかじめ警戒していたためすぐに避けることができた。
「へー避けれるんだ。でもね、僕は目がいいからわかっちゃった。そっちの貧弱そうな方、僕が氷柱を落とす前から、なんなら詠唱する前から、避けるための前動作をしていたね。やけに上を何度も見ながらね。おそらくだが、どちらかが未来を見ることができて、何かしらの方法で教えたって感じかな?」
(マジかよ。俺のスキルはバレてないとはいえ、それでも結構バレてんじゃねーか。こいつ思ったより強敵だぞ)
(健二、今は何考えたってしょうがない。今は撃ち続けるのが一番だろ。あいつのスキルだって無限じゃないはずだ。撃ち続ければいつか、)
(んなことわかってるよ。……ふっw)
「さっさとあんな野郎ぶっ殺すぞ、瞬!」
「わかってるよ、健二」
「生意気なガキどもが…」