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疑惑とその裏にいる恐ろしい影

 七章


 7月にはパリ最大の祭りがある。14日の革命記念日だ。メインイベントはシャンゼリゼ大通りの軍事パレードと、それに続く大統領の祝辞だが、人々の楽しみはそんな無粋なものではない。

 前夜祭として13日の夜に街のいたるところで開かれるダンスパーティ、そして、14日の夜、エッフェル塔下のシャンドマルス公園から、セーヌ河に向かって打ち上げられる花火大会がパリっ子の目当てだった。

 当日と前日の2日間、パリは祭り一色となり、前夜祭のダンスパーティでは素敵な異性に出会おうと、若い男女は皆、気合を入れて出来る限りのオシャレをする。

 そんな革命記念日の数日前、日本大使館の海軍武官室で、大きな執務机についた古賀大佐を前に丈太郎は緊張の面持ちで立っていた。

 古賀は丈太郎が書き上げた視察仮報告書の最終ページを読み終えて、机の上に静かに綴りを置いた。丈太郎を怖い目でにらみ、すぐに笑顔になる。

「よくやった。素晴らしい報告書だ。フランスの航空機運用法と防空体制、そしてその問題点が一目瞭然でわかる。これはきっと我が海軍航空隊の貴重な研究資料となるだろう」

 丈太郎は敬礼をした。

「ありがとうございます。これで国費の無駄づかいと罵られなくて済みます」

 古賀は笑顔を返し、執務机の上に置いてある卓上カレンダーを見た。

「もうすぐ革命記念日だ。貴様のフランスでの仕事は終わった。祭りまではのんびりしていけ。祭りを楽しんだら、ゆっくり準備をして帰国すればいい。マルセイユから横浜まで長いこと船に閉じ込められるから、パリで元気を発散させておけよ」

「お気づかいありがとうございます」

 再び敬礼をして、丈太郎は海軍武官室を出て行こうとした。古賀は思い出したように呼び止める。

「そういえば貴様、たまにル・ブルージュ飛行場に行っていたな。最近、行ったか?」

「いえ、近頃は・・・・・・」

「そうか。ル・ブルージュにフレデリック・レナールの格納庫があるのは知っているだろう? あそこにすごいのが入ってきたそうだ。カーチスR3C-1といったかな。シュナイダーカップとかいうレースの優勝機を陸上機に改造したやつだ。機会があったら見に行ってみろ」

 パリ郊外のル・ブルージュ飛行場は民間機と軍用機が半々で使っている飛行場で、その片隅にフレデリック・レナールというベルギー人所有の格納庫がある。

 レナールはヨーロッパを中心に活動している武器商人で、この格納庫は軍用機を買いたいという客に見せるための、デモンストレーション機が置いてあった。丈太郎もどこかの国の軍人が、オランダのフォッカー戦闘機に試乗しているところを見たことがある。

「カーチスR3C-1ですか。あれば名機です」

 水上機版のR3C-2は1925年のシュナイダーカップで、アメリカに優勝をもたらした機体だ。R3C-1はそれのフロートを外して車輪をつけたもので、パワー、操縦性、ともにこの時代の戦闘機としては世界最高水準にあると言ってよかった。

 丈太郎はすでに戦闘機から心が離れているので以前ほど気持ちは動かない。だが、それでも純粋に飛行機屋としての目で見ると、カーチスR3C-1の完成度は感動的ですらある。古賀に「機会があったら見に行きます」と答えて海軍武官室を出た。

 長い廊下の端にある窓辺に歩み寄り、丈太郎は外の景色を眺めた。果てしなく石畳が続く美しいパリの街から去るのも、時間の問題となってきた。

 ―いよいよだ。ジジにどう言えばいいだろう・・・・・―

 丈太郎の熱い想いに油を注ぐように、真夏の太陽は強烈な日差しをパリに降り注いでいた。



 翌日の夕刻。モンパルナスのラ・ロトンドで、丈太郎はそわそわしながら1人でビールを飲んでいた。もうこれで3杯目になる。今日はついに覚悟を決めてジジに海軍を辞めて旅客機メーカーを作りたいということを話し、結婚を申込むつもりで待ち合わせしていた。

 だが、緊張のあまり、うまく話せるか自信がない。そこで、酒の力を借りて落ち着こうと、少し早めに来て飲んでいた。胸が高鳴り、いっそのこと早く話してしまいたいと思っているのに、大切な時に限ってジジは来るのが遅い。すでに30分も遅刻している。

 何度もやったプロポーズのシミュレーションをもう一度頭の中で繰り返している時、入り口から、いつものように仕立てのいい服を着た薩摩治郎八が入ってきた。今日は珍しく美女を連れてはいないが、店内をキョロキョロ見回しているところを見ると、彼もここで誰かと待合わせのようだった。

 薩摩は丈太郎に気づき笑顔を浮かべ、帽子を取りながら近づいてきた。

「こんばんは、ムッシュ・ジョー」

 彼は最初、丈太郎のことを『大尉さん』と呼んでいた。だが、丈太郎がジジとの仲がきっかけでモンパルナスの住人たちと付き合っているのを見ると、親しみをこめて『ムッシュ・ジョー』と呼んでいた。

 薩摩はあり余る財力を背景にモンパルナスの芸術家や女たち以外にも、政治家や経済人、軍人などパリのそうそうたる名士と付き合いがある。

 しかし、本音を言えば威張りくさった政治家や軍人は好きではなかった。だから『大尉さん』から『ムッシュ・ジョー』と呼び方を変えてから、初めて丈太郎に気さくに話をしてくれるようになっていた。

 薩摩は丈太郎の向かいの席に腰を下ろし、ポケットからハンカチを取り出し額の汗を拭った。

「いやはや、もうそろそろ夜なのに暑いですね。もうすぐ革命記念日なんだから、暑いのは当たり前なんですがね」

 そしてウェイターに自分もビールを注文する。

「お互いに人待ちらしいですね。ムッシュのお相手は今夜もジジですか?」

「もちろんです。僕はジジ以外の女性には、相手にしてもらえませんから」

 薩摩はにこやかに笑う。

「ジジが相手なら言うことないでしょう。でもね、今じゃあなたも“モンパルナスの月を夢中にさせた男”として、パリの女性の間じゃ結構人気があるんですよ。女性たちからは『見た目は物静かだけど胸の内は情熱的で、心に決めた女性を一途に愛し抜くサムライ』と言われている」

「やめてくださいよ、そんな冗談は」

 ウェイターがビールを運んできた。薩摩の前に置くと、彼はウェイターに気前よくチップをやった。ウェイターはにっこり微笑んでカウンターの奥に戻る。

 運ばれてきたグラスのビールを薩摩は一気に半分ほど飲んだ。そして満足気に息を吐く。

「はー。やっぱり、夏はビールに限りますね」

 まだ時間が早いので店の中は空いていた。たまに隅の方に座っている2人組の客が大きな声を上げているが、それ以外はバーテンがカウンターの中でキューブアイスを刻むリズミカルな音ぐらいしか聞こえない。いつも騒がしいモンパルナスのカフェにしては、珍しいひと時だった。

 薩摩はさりげなく近くに人がいないかを確認し、テーブルに両手をついて急に声をひそめた。

「私はあなたに不愉快な思いをさせたり、傷つけたりしたくはありません。しかし、お伝えしておかねばならないことがあるのです」

 いつも陽気なこの男の目が、このときは妙に暗かった。

「私はパリにいろんな友人を持っています。その中の1人が教えてくれました。ジジは怪しい連中と付き合い、良からぬことに関わっているという噂があるのです。とてもお気の毒なことですが、これ以上、彼女に深入りしない方がいい」

 穏やかだった丈太郎の顔が見る見るうちに固くなっていく。薩摩を少し怒りの混じった目で見た。

「これは、いつも楽しい薩摩さんらしくもない。一体、何を根拠にそんなことをおっしゃるのですか? そんなお話なら、これ以上聞くことはできません」

 薩摩は落胆の色を顔に浮かて、上着の内ポケットに手を突っ込んだ。

「やはり、私のような者の言うことでは信用してもらえませんか・・・・・・では、これを見れば真剣に聞いてもらえるでしょうか?」

 そして、内ポケットから小さな紙切れを取り出して丈太郎の前に置いた。丈太郎はそれをつまみあげる。紙切れには、いくつかのフランス国内の町の名前が書いてあった。彼はそれらの町の名前を一つ一つ読み、少しの間を置いて大きな衝撃を受けた。まさに『頭を殴られたような』とは、このことだった。

「これは・・・・・・」

 紙切れに書かれていた町には、4月から6月にかけて丈太郎が調べて回った、フランス国内の防空施設、主要基地があった。薩摩は目を伏せた。

「ジジはこれらの情報に関心を持っています。誰から聞いたかは言えませんが・・・・・」

 薩摩はまだショックの中にある丈太郎の指から紙切れをそっと取り上げ、再び自分の上着の内ポケットに入れた。

「これは返してもらいます。後で私が自分の手で燃やさなければならないので」

 丈太郎はうめくような声を出した。

「薩摩さん・・・・・どうしてこんなことを・・・・・・?」

 少し悲しそうな笑みを薩摩は浮かべる。

「私は何年もパリに住んでいますが、いつまで経っても異邦人なのです。たまに日本が恋しくなる時がある。だから、日本の人が悲しい思いをしそうな時には、放っておけないのです。ただ、それだけです・・・・」

 その時、カフェの入り口からジジが入ってきた。すぐに丈太郎を見つけて、いつものように華やかな笑顔で近づいてくる。薩摩もジジに気がついた。

「じゃあ、私はこれで」

 残っていたビールを一気に飲んでしまい、薩摩は席を立った。やって来たジジとすれ違いざまに静かに言う。

「ボンジュール、マドモアゼル。私の友人に優しくしてやってください」

 丈太郎は思わず立ち上がった。

「待って薩摩さん! そんなこと言われたって僕は本気なんです! そんなこと聞いても信じられない!」

 彼の悲痛な叫びは日本語だった。そばにいるジジは意味がわからず、怪訝な顔で丈太郎と薩摩を見比べる。薩摩は帽子を被ると寂しそうに言った。

「あなたは本気でも、彼女はそうでないかもしれない・・・・・・」

 日本語で答えて、薩摩は誰を待つこともなく店を出て行った。丈太郎は薩摩が出て行っても、店の入り口をじっと見つめていた。

「どうしたの怖い顔して? バロンと何を話してたの?」

 ジジの問いかけにも無言で丈太郎はまだ入り口を見ていた。丈太郎にはジジと目を合わせるのに、もう少し時間が必要だった。


 その夜の丈太郎はジジが何を話しかけても虚ろな目をして、“心ここにあらず”といった様子だった。2人はレストランに食事に行ったが、丈太郎はほとんど食べず、バーでワインを飲んでも黙り込んでいる。そんな丈太郎にジジは怒りの目を向ける。

「何なの、あんた!? 今日は自分から誘ってきたくせに、その態度は何なの!? あたしをバカにしてるの!?」

 丈太郎はジジの罵声も耳に入らないかのように、暗い顔でポツリとつぶやいた。

「ジジ・・・・・少し歩かないか? 話があるんだ・・・・・・」

 ジジは丈太郎の顔をじっと見ていた。彼の目から何かを感じ取ったように瞳をそらし、自分から黙ってバーを出た。

 バーを出たところで、顔見知りの酒屋のトラックと出くわした。急ぎの注文で、これからセーヌ河に浮かぶサン・ルイ島の貴族の屋敷に、ワインとコニャックを届けに行くところだと言う。丈太郎とジジは荷台に乗せてもらうと、しばらくワインやコニャックの瓶とともに揺られセーヌ河のほとりで下ろしてもらった。

 パリの中心を流れるセーヌ河は中世より河岸が整備されており、木々の生い茂る遊歩道がいたるところにある。明るい月に照らされた遊歩道には、河から吹いてくる涼しい夜風で夕涼みをしようと、遅い時間にもかかわらず結構多くの人がいた。

 もちろん、大部分は愛を語り合う恋人たちだ。恋人たちは夜景の美しい場所のベンチをほとんど占領しており、ベンチを確保できなかった者たちは、河岸の手すりに腰を下ろしている。

 サン・ルイ島の黒い影を見ながら、丈太郎とジジは爽やかな夜風の中しばらく無言で歩いた。ひと気のないところまで来た時、丈太郎は思いつめた表情の顔を上げた。

「君と出会って僕の人生は変わった。陰気な飛行機屋がこんなにも人生に積極的になれるとは、自分でも思わなかった。すべて君のおかげだよ。ジジ、心から愛している。だから、君のことがもっと知りたい・・・・・」

 ジジは黙って歩いていた。丈太郎の言葉に何も答えない。月明かりの陰になって、彼女の顔は見えなかった。

「君が生まれ育った町、亡くなったご両親のこと、僕と会ってない時、君が何をしているのか。君のすべてが知りたいんだ」

 今まで黙っていたジジは歩みを止めず、固い口調で言った。

「あんた、いつか『言いたくないことは言わなくていい』って言ったじゃない。なんで今頃、そんなことを聞くの?」

 急に夜空に浮かんでいた雲が月を覆い隠し、辺りは一層暗くなった。ジジの姿は闇に包まれる。

「君のことをもっと知りたいんだ。こんなに君が好きなのに、僕は君のことを知らなさすぎる」

 暗闇でジジは足を止めた。夜風を通してジジの苛立ちが伝わってきた。吐き捨てるような口調だった。

「あんた、一体何が言いたいの? 夕方、バロンと何を話してたの? どうせ、あたしの悪口でしょ。パリにはあたしが捨てた男が山ほどいるわ。その中の1人がバロンにいい加減なことを告げ口して、お人よしのあんたはそんなバカなことが気になって、自分で勝手に落ち込んでるだけよ」

 丈太郎はそうであってほしいと思った。だが、どうしても薩摩が見せた紙切れが気になる。ジジの口からはっきりと否定の言葉が聞きたかった。一言『基地のことなんか関係ない』と言ってくれれば、丈太郎はそれでジジを信じる気でいた。

「悪かった。もう君が嫌がることは言わない。だから、最後に一つだけ僕の質問に答えてほしい。君は、僕が任務でフランスに来た軍人だから興味を持ったの? それとも、そんなことは関係なく僕を選んでくれたの?」

 月を覆っていた雲が晴れ、再び遊歩道に月明かりが差してきた。月に照らされたジジの顔は青白く、唇の端を固く結んでいた。いつも丈太郎に微笑みかけてくれる優しい顔ではなかった。

「・・・・・・何それ? 言ってることが意味わかんない。あんた、おかしいよ」

 急にジジが自分の手から遠ざかっていくような気がした。何とか引き止めたい。

「頼む。答えてくれ。そしたらもう、嫌なことは言わないから」

 だが、ジジの顔はますます青白くなり、唇は皮肉に歪む。

「バカじゃないの? 会話が意味不明だよ」

「お願いだ。一言、任務なんか関係ないって言ってくれればいいんだ・・・・・・」

 丈太郎の言葉は懇願になっていた。ジジは暗い目で丈太郎を見た。今まで見たことのない悲しい目だった。

 急にジジは後ろを向き、丈太郎に背中を見せる。

「あー、つまんない。もうやめた。あんたみたいな陰気な男、うんざりだよ。もう会わない。街で見かけても声かけないで。家にも来ないで。じゃあ、さいなら」

 そう言ってジジは駆け出した。ハイヒールの音を響かせながら、丈太郎を振り向こうともしなかった。丈太郎も止めることはできなかった。本当は自分も走ってジジを引き止めたい。どこにも行かせたくない。しかし、丈太郎の足は動かなかった。ただ、息が詰まるほど胸が苦しい。

 ―とうとう関係ないと言ってくれなかった・・・・僕は好かれていた訳じゃない―

 涼しい夜風が頬に当たると、それに揺らぐように丈太郎は膝から崩れ落ちた。全身から力が抜け、頭の中は真っ白になっていた。



 ジジは唇を噛みしめてタクシーを降り、モンマルトルのアパルトマンに入って階段を駆け上がった。上がっていくうちに、これまでこらえていた涙が目からどんどん溢れてくる。自分の部屋の前まで来て涙でかすむ目で玄関の鍵を開け、ドアを開けて部屋に入ると同時に、暗い床に持っていたハンドバッグを叩きつけた。

「ちくしょう!」

 そのまま床に座り込んで、真っ暗な部屋ですすり泣きを始めた。いつもの気丈なジジではなかった。

 急に部屋の灯りがついた。ジジは驚いて顔を上げる。部屋の中央に椅子があり、椅子には40代後半ぐらいの上等のスーツを着た金髪の男が、脚を組んで座っていた。その目は冷たい光を放っている。彼は金髪のヒゲを片手でなでていた。

「かわいいジジ。何を悲しそうに泣いているんだね」

 ジジは涙で濡れた顔を男に向けて、しぼり出すような声で言った。声には恐れが混じっている。

「お願い、もうやめたい・・・・・もう嘘はつきたくない・・・・・・・」

 ベルギー人の武器商人、フレデリック・レナールはからかうような声を出した。

「どうした? まさか“モンパルナスの月”が、あんな黄色いちびに本気で惚れちまった訳じゃなかろう?」

 ジジは力なく首を振る。少しグリーンがかった黒髪が涙に濡れた。

「あんなに大切にしてくれた人、初めて・・・・・彼が困ることはしたくない・・・・・こんなこと、もういや・・・・・・・」

 レナールは椅子から立ち上がり、ゆっくりジジに歩み寄ると彼女の前に屈みこんだ。そして右手で涙が伝うジジの頬をなでた。冷たい手だった。突然ジジのあごを鷲づかみし、彼女の顔を強引に自分の顔の前に持ってくる。ジジの目は恐怖に見開かれた。レナールは何の表情もない顔を唇だけ歪めた。ゾッとするほど冷たい目だった。

「やめたい? 大切にしてくれた? ふざけるな。お前は自分がまともな女だと思っているのか? お前は体で男を喜ばせて、男の気持ちが緩んだ隙に情報を盗み出すのが仕事なんだ。金目当ての卑しい女なのを忘れたのか!?」

 レナールはさらに右手に力を込め、一層ジジの顔を引き寄せた。

「やめることなど許さん。仕事は予定通りにやるんだ。手はずが決まったら連絡する」

 そして感情のない暗い目でジジを見つめると、彼女を突き放した。ジジはうつ伏せで床に倒れ込む。レナールは玄関から出て行こうとして立ち止まった。

「妙なことをして計画を邪魔すると、お前を殺す」

 静かで冷たい声だった。レナールは音もなく立ち去った。

 突っ伏したままのジジは拳を握りしめ、何度も床をたたきながら大きな声で泣き出した。


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