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第四話


ユイナに案内されて、平民街の端にある平屋に来た。

中は適度に清掃されていて、今も誰かが住んでいるような生活感がある。


「おい、これって誰かの家なんじゃ......」


「そーだよ?私の家だもん」


ちなみに妹は実家の方にいるよん、とユイナがツインテールを揺らしながら答える。

リビングに通され促されるままにテーブルに着くやいなやエルザが口を開いた。


「っていうか案内されるがままに着いてきたけど、こんな時間から話す必要あったわけ?」


彼女の言う通り、日の出まであと数刻はありそうだ。

先ほど起こされたばかりのミラも寝ぼけまなこを擦っている。


「はは......ごもっともなんだけど、こっちもあんまり時間が無くてね。だから唯一の協力者になってくれそうな君たちに早く話しておきたくってさ」


「話?つってもミラから大体の話は聞いてるぜ。次期皇帝の座を争ってるって話だろ?」


「大体はそうなんだけどさ、じゃあ皇后様の話は聞いた?」


「皇后?皇后ってーと......」


オルは皇后についての話を思い出せず、ミラに目線を送る。

目の合ったミラは首を振って否定の意を示した。


「皇后様について私は何も知らないです。そもそも私は妾の子で直接的な関わりが無いですし、皇帝様が亡くなられた時にお姿を拝見したくらいで......」


「うん、多分ミラ皇女殿下はこのことを知らないと思う......というより、多分この国で知ってるのは私だけ」


「ちょっと、もったいぶらないで早く教えてくれない?その様子だと眠気が覚めるくらいのやつなんでしょうね」


走った後で眠たいのかエルザが説明を急かす。

目は据わっており、見ようによってはユイナを睨んでいるようにも見える。


「うん。驚かないで聞いて欲しいんだけど、今の皇后様は魔族が成り代わってるの」


「なっ......!」


「えっ......」


「嘘でしょ......!」


ユイナの発言に三者三様の驚きを見せる。

魔族────かの魔王の眷属たちの総称だった。魔王が死んだ今かなりの数の減少を見せているが、まさか帝国のトップが魔族だとは誰も予想していなかったのだ。


「それ、人に擬態してる魔物?それとも魔人?」


「......魔人」


絞り出したように言うユイナに、エルザは椅子の背もたれに寄りかかり天を見上げる。


「あ、あの......それって何が違うんですか?」


ミラが恐る恐る挙手をして深刻な顔をしているオルに問う。


「簡単に言えば強さが違うんだ。魔物で人に擬態できるってことは、基本が不定形のことがほとんどっていうことで、極論どこまでいってもスライムみたいなもんだ」


もちろん、例外は居るけどな。と付け足す。


「ただ、魔人。こっちは正直言ってヤバい。完璧に人型を保ててる時点でその体内に込められてる魔素の量が段違いで、知能が高く基本的に魔物よりも上の立場に立っていることが多い」


「付け加えると、魔人と言うのは総じて馬鹿みたいにプライドの高いやつが多いの。ただ、そんなやつらの中で人間に擬態しているとなると、魔人の中でもさらに知能の高いやつになるわ。所詮伝聞だけど、かの四天王にも匹敵するかもしれないわね」


「そ、そんなに強い魔族が......い、いつから皇后様に成り代わっていたんですか?」


「はっきりとは分からないですが、およそ数か月前かと思われます。おそらく、第一皇女様の従者を狙った時にはもう......」


「そんな......」


顔を伏せるミラを横目にオルが口を開く。


「待てよ、ティアン騎士団ってのはそれ見逃してんのか?ミラを直接攫いに来たのもあんただったし、他の騎士団の連中は何してんだよ」


「......何かが原因でその皇后側についてんでしょ。といっても、忠誠心の高いティアン騎士団がそんなことするとあんまり思えないけど」


「そこの...「エルザ」...エルっちの言う通り、今ティアン騎士団は魔族の洗脳の受けてるみたいなの。この際だから言っちゃうけど、うちの騎士団は団長のアンたん──パイシュレー隊のアンジェちゃんがやられちゃったらすぐ瓦解するくらい脆くてさ......」


初めてあだ名で呼ばれたからか、うわごとのようにエルっちと呟いて使い物にならなくなってしまった相棒を放置してオルが口を開く。


「はー......ティアン騎士団はそれぞれ隊長が千人力はあるって聞いてたんだが」


「実力はね......実力は。......ホントだよ?」


「それで......あの、オルさんとエルザさん」


「ん、ああ、大丈夫だ。俺らは降りないよ。ちゃんとミラを女帝にしてみせるぜ」


エルザの降りる発言からおろおろしていたミラだったがこの発言で胸をなでおろした。

残念ながらオルのキメ顔は無視されてしまっているが。


「え、まって、キミらそんなこと考えてたわけ?」


オルの女帝にする発言にユイナが崩れ落ちるように体勢を崩す。


「そうよ。馬鹿げた内容でも報酬のためなら何でもやるわ。私たちの計画を詳しく話してもいいけど、その前に聞かせて」


「ん?なに?」


「騎士団が洗脳されたって言ってたけど、どうしてあんたは洗脳されてないの?」


「クレイア隊への洗脳が最後だったからかな。おそらく城のどこかに洗脳するための部屋があって、そこにアンたんを使って呼び出してたみたいなんだけど、話した時にちょっと違和感があってね。先にクレイア隊のみんなを行かせたら......って感じ。それ以降私も捜索はされてるみたいだから、お城の方には近づいてないようにしてた」


「自分の隊を行かせるって......結構薄情なのね」


「もちろんみんなには悪いと思ってるよ?でも他の隊に手を出されてなかったし、とりあえずは安全かなとおもってさ」


「一理あるわね。わかった、私たちはあんたを信用するわ。じゃあ作戦の説明するわよ────」


早く一区切りつかせて眠りにつきたかったエルザは、ユイナの返答を待たずに説明を始めた。

といっても、そこまで深く練られた作戦でも無かったので結果として悪い意味でユイナを驚愕させてしまうだけに終わったのだが。


「き、キミたちかなりぶっ飛んでるねぇ......」


「ふふ、誉め言葉として受け取っておくわ」


「ただ事情が変わりましたね......。騎士団の皆さんが洗脳されているとなるとどうしたら......」


「ミラ、別に作戦を練り直す必要は無いと思うぜ。魔族が皇后に成り代わってるなら、皇后ぶっ倒しゃいい話だろ?それで騎士団と大臣たちの洗脳も解けてハッピーエンドだろ」


「いや、大臣たちについては今までの案でいいと思うよ。多分一部の人間しか洗脳を受けてないだろうし、洗脳が無くても結局同じ結末辿ってただろうしね」


ユイナも大臣たちには飽き飽きしていたようで疲れ切った顔を見せた。

よくそんな人間たちがこの国を守っていたものだ。


「じゃあ大臣たちはそのままぶっとばす方針で行こう」


「後は決行日ね。予定通りだと明日の夜だったけど、ユイナもそれでいいかしら?」


「うん、何事も早い方が良いしね。私も賛成!」


「じゃあそれで決まりね。......あんたはどうするの?こことか襲撃を受けそうな気しかしないんだけど」


「心配してくれてありがと、でも私は大丈夫!他にも隠れ家あるし、万が一が起こった時のために分散してた方がいいでしょ?」


「それもそーだな。うし、じゃ今日は会わない方がいいとして......明日の夕方には一回集まった方がいいな」


「そだね。ただ私は顔が割れてて騒ぎになるといけないから......」


そうして、結局集合場所をこことは違うユイナの隠れ家にすることに全員が賛成し、別れた俺たちは宿へと向かっていた。


「大丈夫でしょうか......魔族が相手だなんて」


「大丈夫なわけ無いじゃない。もちろん、あんたにも戦ってもらうから」


「えっ、わ、私もですか......!?少しは魔導の心得がありますが、それでも......」


「馬鹿ね。何もしないわけ無いじゃない。一夜漬けでなんとかするわよ」


「え、えぇーーっ......!!」

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