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第十話 相手のことは良く知っておいた方がいい

技の名前考えてるときが一番楽しいです。


オルとアンジェが近接戦闘を繰り広げている頃。

こちらでも激しい戦闘が開始していた。


「ミラ!援護!」


「は、はい!『サンダースパイク』!!」


魔族の足元に幾何学模様の魔法陣が展開され棘状の雷が飛び出すが、魔族は避けるそぶりを見せない。

そのまま飛び出した雷は魔族の身体に当たり、硝子のように粉々に砕け散った。


「き、効かない......!」


「何を驚くことがある。低俗な魔術で我の身体に傷をつけられるとでも?」


「よそ見してると舌噛むわよ」


ミラを見下す魔族の足元に姿勢を低くしたエルザが潜り込んでいた。

右手に持った杖を魔族の顎に向かって突き出すが、これは躱されてしまう。


「『積爆三層』」


魔族がエルザに手をかざすと三層の魔法陣が現れ、空気が手先に集まるように流れだす。

とっさに防御姿勢をとるエルザはボン、ボン、ボンと三度の爆発に身体を覆われた。


「エルザさんっ!!」


魔族とエルザの姿が爆風で隠れ、ミラの悲痛な叫びがこだまする。

魔族も、この一撃には確かに命中した感触があった。


「自ら死に近づいてくるとは......人間は愚かなものだ」


「なんちゃって」


「何......!」


しかし、爆風が晴れると倒れ伏しているはずのエルザがなぜか魔族の背後から現れた。

魔族が反応するよりも先にひざの関節部分に横からの蹴りがヒットすると、魔族はがくっと態勢を崩した。


「ミラ!私のことは気にせず魔法を打ち続けなさい!」


「は、はい!『フレイムランス』!」


ミラが両手を前に出すと、再び魔法陣手の先に現れ炎の槍が飛んでいく。

しかし、これも魔族に当たった瞬間砕け散って消えてしまう。


「ちまちまと何を無駄なことを......」


「あら、私のこと忘れてない?」


姿勢を崩した魔族を次に襲ったのはエルザの弓蹴りだった。

ぐぐぐっ......と引き絞られた弓のように構えた足が放たれて魔族の脳天に落下する。


「がはっ......────!!」


叩きつけられた魔族が肺から勢いよく空気を吐きだす。

ミラの魔術と異なり、エルザの打撃は明確に魔族にダメージを与えていた。


「あんた、あんまり戦闘が得意なタイプじゃなさそうね?下級の魔族が何だかんだ言ってたけど、あんまり変わんないんじゃない~?」


「ぐ......ほざけ!人間ごときが!」


突如、魔族の身体を中心に衝撃波が放たれる。

恐らく防衛用の何かの術なのだろう、エルザは地を蹴って離れるとそのままミラの横についた。


「ミラ、やっぱりあいつ魔術だけは自信があるみたいだけど、戦闘経験はからっきしみたい。いい?私が隙を作るから今度は『アレ』やるわよ」


「は、はい......!」


「たかが打撃を二発入れたところで勝ったつもりか?貴様ら人間が知らんはずも無いだろう。我ら魔族が脆弱な人間よりも上たる所以を」


魔族が立ち上がる。

その顔には、エルザに叩きつけられた時についたはずの傷は一切無かった。


「あれが、魔族の再生能力......!」


百年間の人間と魔族の戦争の末、魔族の特徴がいくつか見つかった。

その中でも最も大きな特徴は、体を形成する高濃度の魔素による修復機能。

魔族の身体はガワこそ人間の様だが、その体内はまるで人間とは異なる。

臓器などと言うものは無く、体内には魔素が詰まっているだけ。だから傷を負ったとしても、体内の魔素や空気中の魔素を使って身体の形成を補うことによって傷の修復を行うことができる。

それが魔族を人より上位の存在とする大きな理由だった。


「この力を見るのは初めてか?ミラ・ティアン。もっとも、貴様の魔術では傷の一つさえも与えられていないがな」


「ぐっ......!」


「魔族とかいうのは人間を見下しているだけだと思ってたけど、存外おしゃべりなのね」


実際、記録されている限りでは人間と魔族の会話の記録というものはほとんど残っていない。

そのほとんどは人語を理解していないか、人間と会話する気が無いという結論が出されているが、この魔族は例外のようだ。


「(まあ、国を乗っ取ろうとかいうめんどくさい方法使ってる時点であんまり普通じゃないわよね......)」


「ははは、久々に人間を殺せることに興奮しているのだろうよ。いい機会だ、貴様の名を聞いておこう。人間、名は何という?」


「......オル」


「オル......それが貴様の名か。魔族に臆さない人間は珍しい、覚えておいてやろう」


信じられないような顔でこちらを見てくるミラにエルザは視線で圧を掛ける。

魔族はこめかみをトントンと指で叩き、記憶するような動作を行うと二人へと向き直った。


「ところでオルとやら」


「......何?」


オルと呼ばれてエルザは一瞬固まったが、反応して返事をする。


「その杖、貴様魔導士だろう。どうして魔術を使わない?」


「ふふ、内緒♡」


「まさか......手加減か?」


「さぁ?どうかしらね」


その言葉に、魔族の額に青筋が浮き立つ。

ミラでも分かるほどに、魔族の身体から魔素が漏れ出していた。


「貴様......上位存在の魔族に向かって手加減だと?随分と自信があるようだな。いいだろう、自身の油断が過ちを起こすことを身をもって知るが良い」


「はん、臨むところよ」


「......次はこちらから行くぞ。『積爆地層』」


エルザとミラの足元に魔法陣が現れ、二人は咄嗟に飛びのくと同時に居た場所が爆発する。

着地と同時にミラが魔術を詠唱する。


「『アイススピア』!やあああああっ!!」


ミラは氷の槍を手に取り、魔族に迫る。

槍の射程内に入り横に薙ぐが、魔族はまたも避ける様子を見せずに受けて槍が砕け散る。


「何度も何度も......学習能力の無い猿か?『積爆────」


「どこ見てんの......よっ!」


「っ────!」


ミラに向かって魔術を放とうとした瞬間、エルザの杖が魔族の頭に振り落とされた。

魔族はモロに喰らい地面に叩きつけられるが、付いた傷はすぐに修復されていく。


「ミラ!」


「はいっ!」


エルザの合図で魔族に触れる距離まで近づくミラ。

しかし一歩踏み込んだ瞬間、魔族の口が開いた。


「『積爆五層』」


魔族の詠唱に魔法陣を警戒するが、見える範囲に魔法陣が現れない。

二人が魔法陣を探したその一瞬。

伏した魔族の手がミラに向いていたのにエルザが気づいたのは、術の発動する直前だった。

魔族の腕の中に生成された魔法陣が光り、腕全体が光り輝く。


「(こいつ......!自身の腕ごと────)」


魔族の腕が膨張し破裂する。

迫りくる爆発に死を覚悟し衝撃を待つミラだったが、熱こそ伝わってくれど体が爆発に覆われることは無かった。

不思議に思ったミラが目を開けると、目の前には赤い髪がなびく背中があった。


「え、エルザさん......!」


「傭兵なめんじゃないわよ。雇い主に傷一つでも付ける訳無いでしょ」


それを言うならそもそも雇い主に戦わせている時点で傭兵失格だが、この場ではそれについて言及する者はいなかった。


「貴様......一体何の術を使っている?これで二回目だ」


「あら、何の話?」


「とぼけるな。並の人間ならとうに死んでいる威力だぞ。それがなぜ貴様は二回も喰らって無傷で立っていられるというのだ!」


魔族が語気を荒立てる。

その迫力にミラは気圧されるが、エルザはどこ吹く風というようでまるで答えるつもりが無い。


「さぁ?私を殺して解剖でもしたら秘密が分かるんじゃない?」


「......そうさせてもらうぞ」


破裂したはずの腕はすでに再生しきっており、エルザに向かって手の平を向ける。


「『積爆八────「と、いいたいところだけど。残念、そろそろ時間みたいね」」


魔族が魔術の詠唱を途中でやめた。いや、やめさせられていた。

なぜなら、オルに羽交い絞めされていたからだ。


「捕まえたぜぇ......!!」

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