40.アンチ主人公の使命
学園バトルロワイヤルは学園側の判断によってら実質的に中止にすることになった。
突如ダンジョンに潜入してきた謎の集団……ドミニオン財団によって、その決断は余儀なくされるのだった。
「みんなこべんねえええぇぇぇぇ!!」
トリアル先生が顔をぐちゃぐちゃにして泣いている。
どうやら自分は何も出来なかったと嘆いているらしい。
だが、俺は知っている。
トリアル先生の一押しによって、ユーマはラスボスを倒すことができたと言うことを。
「泣かないでください先生。既に脅威は去りました、もう何も心配する必要はありませんよ……先生のおかげでもあるのですから」
ユーマは泣き叫んでいるトリアル先生の両手を持ち上げ、自身の両手で包み込む。
「そうだぜ先生! 皆無事……あー、無事じゃない奴も要るのか。でも、こうして皆で生きて帰ってこれたんだッ! 俺達の強さを侮ってもらったら困るぜ!」
「だから先生、ユーマ君も言っていることだし、もう泣き止んでくださいよ」
ワルゴとマユも先生を慰めるように声をかける。
「うわあああああああああん!!」
さらに泣いちゃった。
「お前も無事で良かった、シムノ」
「ん……レイソンに……その愉快な仲間達か」
「雑にまとめるのは止めて貰えるかしら」
「あははは……確かに愉快かもしれないね」
「愉快でもなんでも良いです! こうしてお友達になれたのですから!」
レイソンだけでなく、ロセリア、ユカネ、サコユも俺に近付いてくる。
1人の男が3人の女を侍らせているように見えなくもないなこれ。
「……今回の騒動、私はなんの役にもたたなかったわ。最終的に、レイソン君に助けられたわけだし……情けないわ」
ロセリアは遠くに居るユーマを見つめながら拳を握りしめ、己の無力感を感じていた。
何でも、ダンジョンに襲撃に来た人物に遭遇したらしく、そこで刃を交えたようだった。結果として、相手が逃亡したらしいが。
「そんなこと言うな。俺もロセリアと合流する前はせいぜいゴブリンを爆破しただけだ。何も気に止む必要はない」
「そうですよ、私もレイソン君の隣で歌を歌っていただけですから……」
なんだそのよく分からない状況、すごく気になる。
「……ユカネは俺達とはぐれた後大丈夫だったか?」
詳細をすごく詳しく聞きたいが、俺は我慢してユカネに話を振った。
「うん、私? 私はずっと逃げ回っていたよ。異形にも襲われていたし……せいぜい少しだけ異形を倒したぐらいかな?」
ユカネは人差し指を顎に添え、可愛らしくそう答える。
「……」
嘘だな。
ユカネは異形に襲われて逃げるような人ではない。容易に薙ぎ倒すことが出来るはずだ。
むしろ、この中で唯一────
「そういえば、私はシムノ君にずっと聞きたいことがあったんだよね」
私の話は終わりと言わんばかりに、今度はユカネが俺に話を振ってきた。
「学園バトルロワイヤル自体は中止になったらしいけどね、最終的に稼いだポイントの結果は一応公開することになったんだって」
そこで、ユカネは腕に付けてある遺物に触れ、ホログラムを表示させる。
「1位はユーマ君のチームだったんだけどね……」
さすが主人公。さらっと10000ポイントを稼いで1位に君臨している、さすがだ。
「2位が9950ポイントで……私達のチームなんだ」
なんで?
「なんでだ?」
「どうしてかしら」
「すごいですね!」
皆が俺の内心を代弁してくれた。
「私は飛ばされた後異形に遭遇しないように逃げ回っていたから、ほんの少ししかポイントも稼いでないんだよね……だから、レイソン君がゴブリンを倒しまくったって言ってたし、それのことなのかなって」
なるほど、それなら納得だ。
「いや、ゴブリンはそんなに強い異形ではない。確かに大量に爆破させたが、それで稼いだとしてもせいぜい7500ポイントが関の山だろう」
まじかよ。
「シムノ君は何か知ってる?」
ユカネに聞かれ、俺はダンジョンに居た時の事を振り返る。
俺も特別何かした記憶は無い。主人公を不意打ちで殺そうとした不届き者を執行したぐらいだ。
そこでふと、俺が岩の欠片を異形に投擲している姿を思い出す。
俺が倒した異形は、スライム、ゴーレム、デビル、ドラゴンがだったような────
……あれ、俺が原因じゃないか?
「何も知らないな、俺もずっと逃げ回っていたぐらいだからな」
「そっか。でも、不思議だねー……」
この事は墓にまで持っていくことにした。
「まあ、過ぎたことはもう良いだろう。こんな騒動が起きたから、今日はもう早退しても良いそうだ」
「ホント!? それじゃあ皆で帰ろうよ!」
「私も一緒なのかしら?」
「ロセリアさん! 一緒に帰りましょう!」
「……まあ、良いわよ」
「ふむ、ならば帰りにアイスでも食べるか? 俺が全員分おごってやろう」
「良いの? やった!」
「レイソン君はアイスが好きなんですか?」
「ああ、思わず20段以上のアイスを頼むぐらいにはな」
「すごいですね!」
「なにもすごくないわよ、ただの変人じゃない」
先程の話は無かったかのように、各自が帰宅準備をする。
「ほら行くよシムノ君! レイソン君にアイス奢ってもらお!」
ユカネが俺の腕を引いてくる。
「分かった。ぜひ、30段アイスを奢ってもらうか」
「レイソン君の真似しなくて良いんだよ?」
もちろん嘘だから安心してほしい。
そもそも誰が30段のアイスを食うんだ。体が凍えて死んでしまう、そういう変人はレイソンだけで良い。
そんなことを内心で思いながら、遠くに居るユーマを見つめる。
ユーマは、周囲に群がる生徒達の相手をしているようだった。
そんなユーマを見つめながら。
「────必ず、最後まで紡がせてみせる」
身を翻し、4人の後をついていった。
第二章、完結しました。
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