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20.百点満点!


 「私のスライム達がああぁぁ……」


 「まだ引きずっているのかユカネ。確かに文献に載っていた情報とほとんど違い無かったが、あれは教師達が用意した偽物に過ぎないものだぞ」


 「そうかもしれないけどさあ……」


 あれから俺達三人は、地面から出てきたスライムを無双するように殲滅させた。倒せば倒すほど、地面から生えて絶え間なく襲ってきたから大変だった。だが、おかげで大量のポイントを手に入れることが出来たはずだ。


 「大丈夫だ。可愛いスライム達が犠牲になってくれたおかげで、ポイントは潤っただろ?」


 「いや、スライムゆえか、ポイントは270ポイントしか増えていないぞ」


 前言撤回。大量のポイントなぞ夢物語でしか無かった。


 「うう……54体も倒しちゃったのにそれだけしか貰えないなんて……」


 「倒したスライムを数えてたのか……」


 おそらく、異形(モンスター)の中でも、スライムの戦闘力はかなり低いのだろう。俺達もそこまで苦戦することなく倒せていたから、1体5ポイントというのも納得できた。


 主に倒していたのは俺を除いた二人だったが。


 「まあまあ、結果的に皆で協力しながらポイントをゲット出来たんだから良いんじゃないか?」


 「シムノ君、君は良いことを言っているつもりかもしれないけど、私とレイソン君がアルカナを使って泣きながら倒している中、手にスライムをはめてスライムを倒していくのを私はこの目でばっちりと見たんだからね?」


 「ああ、俺自身は泣いていないが、いくらスライムが偽物でも人の心が無いとは思ったな」


 ユカネとレイソンが、俺のしたことが信じられないといったような冷ややかな目を向けてきた。


 「仕方無いだろ。スライムが俺に襲いかかってくるから、反撃しようと腕を振ったらそのまま手を取り込まれたんだからな」


 そして、スライムを手から引き離せなくなった俺は、その状態のまま襲いかかってきたスライムを叩き潰してみた。


 そしたらなんと、すんなりと叩き潰されてくれたのだ。


 おそらくだが、スライム達は俺の手を取り込んだスライムを見て、襲うことを躊躇していた。襲いかかれば、俺がスライムを盾にしてスライム達の攻撃を防ぐのでは無いかと考えたのだろう。そんなことしたら傷つくのは俺ではなくスライムになるからな。


 もちろん、俺はそのつもりでいた。だが、俺は躊躇するその隙を付いて、残りのスライムを叩き潰していったのだ。


 その光景を近くで見ていたユカネは号泣しながら、自分に襲いかかってくるスライムを鎌で一刀両断していたのは記憶に新しい。


 「異形(モンスター)異形(モンスター)で倒す光景を、教師が見たらどう思うんだろうか」


 「即追放、そして死刑、だね」


 「罪が重すぎるだろ」


 そんな会話をしながら、俺達は次の異形(モンスター)を見つけるために移動する。

 

 ダンジョンとは思えない爽やかな風を感じながら移動していると、周囲からは生徒と異形(モンスター)との戦闘の騒音が絶え間なく響いていた。清らかな風が肌を撫でる一方で、耳をつんざくような叫び声と剣やアルカナの交錯音が、俺たちは今学園バトルロワイヤルをしているんだと再認識する。


 「そういえば私達、学バトの最中だったね……スライムの事がショックすぎて忘れてたよ」


 「他のチームも異形(モンスター)と遭遇して戦っているみたいだな、特に森の奥の方からはより一層騒音が聞こえてくる」


 俺も内心、大変そうだなあと思う。まあ、俺には二人が居るから特別何かする必要もないしな。


 呑気にそんなことを考えていると────


 「うわああああぁぁぁ!」


 「ぎゃああああぁぁぁ!」


 「くっくそ、こいつらめ! これでもく……ぐわああっ!」


 森の奥から、悲痛な叫び声が聞こえてきた。


 「この叫び声は……」


 「森の奥から聞こえてきたよ!」


 森の方向に指を差しながら俺達の方に振り返るユカネ。


 「二人とも、森の奥に入って何があったか確認しようよ!」


 先程の悲痛な叫び声がどうしても気になるのか、今にも森の奥に向かって走り出す雰囲気を醸し出していた。


 だが、ユカネが森の奥に行く必要は無い。


 「ユカネ、上の方を見てみろ」


 「上?……ってなにあれ!?」


 何故なら、叫び声を上げていたであろう男三人組が、謎の球体に包まれたまま空に向かって上昇しているから。


 「なんだこの球体!?」


 「こんなのがあるって聞いてねえぞ!?」


 「……やられかけていた俺達を、救ってくれたのか?」


 謎の球体に閉じ込められた三人の内二人は喚いており、一人は冷静に分析していた。


 それに応えるかのように、ダンジョン全体にある声が響いてきた。


 『あちゃー、脱落者がちらほら出てきちゃったねえ』


 「この声は……トリアル先生!?」


 まさか、トリアル先生の声がダンジョンを通じて聞こえてくるとは思っていなかったのか、ユカネが驚愕の表情を浮かべながら空を見ている。


 『君達の声は私には届かないから、一方的に私の方から喋る形になっちゃうけど……重要なことを今ここで言うから、出来れば一回で聞いてね!』


 そういうのは最初に言うべきだと思うんだが。


 そんな想いは当然届くことはなく、生徒全員に忠告した後、咳払いして一拍置くトリアル先生。


 『敢えて最初に公表しなかったけど、君達は今、10000ポイントのために異形(モンスター)に立ち向かって、倒して、ポイントを手に入れてるよね? でも、これはただのイベントだから良いけど、本来なら死んでもおかしくない環境を身に置いてることになるんだよね』


 もう一度言う。


 そういうのは最初に言うべきだと思うんだが、何故今になってそれを言い出すのか。


 だが、あの謎の球体に包まれながら上昇している三人組を見ていると、何となく察することができた。


 『これは学園側が用意したダンジョンなんだけどね……あくまでシュミレーターでは無いから、普通に痛みとかも感じるようになっているんだ』


 「ああなるほど。だからスライムでスライムを叩き潰した時に若干痛みを感じていたのか」


 「止めてシムノ君。さっきのことは思い出させないで」


 ユカネに肩を強く掴まれ軽く揺らしてくる。


 そんなにショックだったのか。ユカネも自慢の鎌で一刀両断していたというのに。


 『当然、痛いということは、それだけ苦しいってことになるんだよね。私達教師は、皆が死ぬほど苦しい状況になっているまま放置なんて当然しないの。だから、異形(モンスター)と戦闘するのが続行不可と判断した場合、球体で自動的に保護するようにして、脱落するシステムを設けたんだ!』


 何故かトリアル先生のドヤ顔が脳内で浮かんだが、その上でもう一度だけ言う。


 そういうのは、最初に、言うべきだと思うんだが。


 『補足しておくと、私達はあくまで1人ずつバイタルをチェックしているから、チームメンバーの1人が脱落したからって、そのチーム全員は脱落ということにはならないから、そこは安心して学園バトルロワイヤルを続行することが出来るね!』


 「1人でも欠けたら、普通は不安になるに決まっているだろうに……」


 レイソンが珍しくまともなことを呟いた。


 「おいちょっと待て、だったら俺達はどうなるんだ!? まさかこのまま脱落ってことか!?」


 球体に包まれている3人組の内の一人が、声を荒げてトリアル先生に質問する。


 トリアル先生は聞こえたわけじゃないが、きっと学園からその様子を見ていたんだろう。内容を察して、再び喋り始める。


 『……えっと、そこのチームは3人とも一気に脱落してしまったみたいだね。その場合は……』


 次の瞬間、比較的明るい声を作りながら言った。


 『残念だけど、チームメンバー誰一人として生き残っていないから、学園に強制帰還となって終了になるよ! 私と一緒に、学園バトルロワイヤルを観戦しよう、ね!』


 特に3人組にとって残酷なことを告げられた瞬間、3人組を包んでいた球体が七色に輝き始める。


 「……ちっ」


 そして3人は、身体を震わせ、悔しい表情を浮かべながら────


 『ちっくしょおおおおおぉぉぉ!』


 悔しさを雄叫びのように叫び、球体は七色の放物線を描きながら空の彼方に消えていった。


 「脱落したら終わりだなんて……2人とも、ここからは気を引き締めていかないと駄目だね」


 「ああ、10000ポイントを一番に達成出来るかどうかは分からないが、全員が脱落してしまったら、ポイントも得ることが出来ない。脱落だけは避けるべきだろう」


 トリアル先生の一方的な説明を受けて、二人とも冷静になって今後のことを話す。


 現に、上空には七色の放物線がいくつか出来ている。つまり、既に何人かは脱落していることになる。


 大半は、アルカナランクが低い生徒だろうが……その点、俺は安心だな。とりあえず2人に寄生しておいて、ユーマを見つけたらそっちを観察して、脱落することなく、学園バトルロワイヤルを謳歌すれば問題ないのだから。


 「それじゃあ、森に居る異形(モンスター)を倒していくか?」


 3人組は、どんな異形(モンスター)にやられたのか。少しだけ気になった俺は、2人に倒すかどうかの旨を提案してみる。


 「うんうん! あの3人の仇をとるためにも、私達で倒しちゃおう!……あっでも、スライムみたいな可愛い系だったらどうしよう……」


 「全ての異形(モンスター)が可愛いとは限らんが……とっ、どうやら向こうから来てくれたみたいだぞ」


 おそらく、俺達の会話が聞こえていたのだろう。異形(モンスター)の方からこっちに寄ってきてくれた。


 「可愛い系だと良いなあ……でもポイントのためには倒さないといけないし……」


 ユカネがまだ何か言っていたが、間もなくして、異形(モンスター)は森の奥から現れた。


 「グギャハハハハハ!」


 「……」


 悶々としていたユカネに、静寂が訪れる。


 背丈こそ人間の子供ほどだが、緑がかった灰色の肌はざらつき、腕と脚は細長く、不釣り合いに大きな手には鋭い爪が生えている。小さな頭部に宿るのは、ぎらぎらと光る赤い瞳。牙がむき出しになった口元には、絶えず不快な笑みが浮かんでいる。


 レイソンはその姿を見て、ただ一言呟く。


 「ゴブリン……」


 現れたのは、ゴブリンでした。


 「……どうする、ユカネ。またスライムのように可愛がってみるか?」


 俺は一応、ユカネに聞いてみることにした。


 「一匹残らず殲滅しよっか!」


 鎌を構えながら満面の笑みで返事した。


 その笑顔、百点満点。

 

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