表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/45

19.最強が居るチーム達に乱入する存在


 「ぎゃあああ! こっちに来るなあああ!?」


 一人の男が、背後から迫るイノシシから全速力で逃げている。


 「頑張って! あと少しだよ!」


 一人の男が、一人の男に向かって応援している。


 「……あんな無様に逃げているなんて、何だが滑稽に思えてくるわね……」


 一人の女が、一人の男を哀れみの目で見ている。


 「駄目だよ、そんなこと言っちゃ……よし、そろそろかな」


 目の前の光景を見て頃合いとみた男は、全速力でイノシシから逃げている男に向かって叫ぶ。


 「────ワルゴ、今だ! よろしく頼むよ!」


 「やっとかよ! よし!」


 男の声を確かに聞いたワルゴは、勢いよく身体を反転させ、立ち止まる。


 目の前に迫るは、怒り狂った瞳を光らせながら突進してくる数多のイノシシ。


 「これでも喰らいやがれ……!」


 ワルゴは両手にアルカナを集中させ、青白く光らせる。


 『サンダーバインド』


 アルティメットを叫ぶと同時に、両手を地面に押し当てる。


 ワルゴの手から雷のような電流が地面を走り抜け、瞬く間に、青白い閃光がイノシシ達の足元を駆け巡り、次々と痺れさせる。


 「グオオォォォ!?」


 数多のイノシシは、悲痛な叫び声を上げる。それを確認したワルゴは────


 「ぜえ、はあ……後は、頼んだぜ! ユーマ!」


 遠くでエクスカリバーを鞘から抜いているユーマの方に向かって、大声で叫んだ。


 「任せて!」


 既に満身創痍になりかけのワルゴに応えるように、両手でエクスカリバーの切っ先を天に向けた。


 「我が手に宿りし聖剣よ……」


 刀身には、アルカナが貯まっていく。


 「闇を裂き、天を貫く光となれ!」


 周囲の空気が張り詰めていく。


 『エクスカリバー』


 ユーマの声が響き渡ると同時に、アルカナが一気に解放される。 刃を振り下ろし、エクスカリバーの切っ先から放たれた光線が轟音と共に、大量のイノシシの方に向かう。


 「グアアアァァァァ!」


  放たれた純白の光は、全てのイノシシを一瞬で飲み込み、まるでそこに存在しなかったかのようにかき消した。


 「……やっぱり、ユーマ君最高!」


 その光景を見ていた女……マユは、目をキラキラさせ、頬を紅く染めながらウットリとしていた。


 「あはは、ありがとう」


 そんなマユに、ユーマは爽やかな笑顔でお礼を言う。


 「ぐっ……」


 あまりにも爽やかな笑顔だったため、マユは思わず胸を押さえる。実は、トリアル先生の笑顔にも胸を押さえていた女子達の内の一人が、マユでもあった。


 実はこの女、人の笑顔に弱いのである。


 「おーいマユ! 早くこっちに来て俺を治療してくれえ!」


 遠くからワルゴの声が聞こえてくる。


 「あっ……ユーマ君に見惚れてたら、すっかり忘れてたわ」


 「忘れるなよ!?」


 マユがため息を吐きながら、ユーマの元を離れ、地面に寝転んでいるワルゴの方に近付いていく。


  「はいはい、おとなしくしていなさいよ……何でイノシシから逃げるだけでこんなに怪我してるのよ」


 「しゃーねーだろ。逃げてる時に何回かこけたんだから」


 呆れたようにマユは言うと、ワルゴの怪我に両手で押し当てる。


 『キュアー』


 アルティメットを口にすると、両手から淡い緑色のアルカナが生成され、ワルゴの怪我を癒していく。


 マユは、ワルゴの怪我がそこまで深刻では無いと判断し、軽い治療を施すことにした。


 「おー、みるみる怪我が無くなっていく」


 「感心するのは良いけど、動かないでよ」


 「へいへい」


 マユに言われた通りに、おとなしくするワルゴ。


 やがて、マユの手からアルカナが消滅し、同時に、ワルゴが怪我していた部分は跡形もなく消えていた。


 「おーサンキューなマユ! これで俺もまた華麗に戦うことが出来るぜ!」


 「よく言うわね、さっき情けなく逃げてただけのくせに」


 「さ、さっきのは作戦のためにそうしてただけだから仕方ないだろ!」


 「あと、相変わらずアルティメットの名前センス無いわね」


 「それは今関係ないしかっこいいだろ!?」


 マユとワルゴが言い合いしている間に、既にエクスカリバーを鞘に収めていたユーマが近付いてくる。


 「2人とも、お疲れ様。相変わらず仲が良いね」


 ユーマがそう言うと、2人して「仲良くない!」と叫ぶ。


 ユーマにとっては既に何回か見た光景に微笑ましく思っていると、ワルゴがなあなあと言いながら、ユーマに質問する。


 「そういえばよユーマ。あんだけイノシシ倒したんだから、俺達結構ポイント稼いだんじゃねえか?」


 「確かに、かなりの数だったからね。ちょっと確認してみようか」


 ユーマは端末をタップし、目の前にホログラムを映し出される。先程言い合いしていた二人は、ユーマの背後からホログラムを覗き込む。


 「わ、もう1500ポイント!?」


 「おいおいすげえな! この調子で行けば10000ポイントなんてあっという間に達成するんじゃねえか!?」


 エクスカリバーで倒したイノシシの合計は15体。


 1体倒せば100ポイントだから、割りと旨い異形(モンスター)であった。そもそも、15体のイノシシを一網打尽で倒すのは正規の方法では無いのだろう。ワルゴとユーマが居たから、出来たことである。


 最も、ユーマだけでも出来そうな気はするが。


 「今のランキングを見てみようか……うん、今のところ僕達が1位みたいだね。まだ始まったばかりだからどうなるか分からないけど、このまま行けば1位も夢じゃない」


 「そりゃユーマが居るんだから余裕だろ! 他のチームの奴らが可哀想だぜ!」


 「ちょっと、そんなこと言って1位取れなかったらどうするのよ……ま、確かにユーマ君が1位以外って想像できないけど」


 ユーマは買い被りすぎだよと言いながら、ホログラムを閉じる。


 「よし、ここのイノシシ達は殲滅させたし、他のところに行こうか!」


 「あっじゃあさ! あそこの火山の方に行こうぜ! ドラゴンとか居るかもしれねえしさ!」


 ワルゴが指差した先にあるのは火山地帯。ダンジョンの中でも、一筋縄では行かないバイオームとなっていることは間違いない。


 「……うん、良いんじゃないかな。道中で異形(モンスター)と遭遇したら倒していけば良いし、1位の座にも一気に近付くかもしれないしね」


 「ユーマ君が良いなら私も賛成! でも、あんたは行かない方が良いんじゃない? 頭から溶岩に突っ込みそうだし」


 「突っ込むわけないだろ!? 髪の毛が全部無くなるわ!」


 「髪の毛以上に顔ごと消滅すると思うんだけど……」


 二人で相変わらず言い合いしながら火山地帯へと歩みを進める。


 「……うん、このまま何事もなければ、1位獲得は安定かな」


 主人公は、そんなフラグになりそうな事を呟きながら、二人の後を追った。




 ◇




 「はあああぁぁぁ!」


 右手に握った氷の剣を振るい、飛びかかってくるコウモリ達を次々と撃退していく。


 だが、このコウモリは集団で襲いに来る性質がある。数が多すぎると、剣だけでは捌ききれない。


 そういう時は、左手にアルカナを集中させ、氷のツララを次々と生成し、放つ。鋭い氷の矢がコウモリの群れを次々と貫き、数を確実に減らしていく。


 「ロセリアさん、そっちにデカいのが行きました!」


 「後はお願いします!」


 「ええ、分かっているわ」


 先程のコウモリと比べて一際デカいコウモリが、ロセリアに向かって突撃してくる。


 数多のコウモリがロセリアに敗れた今、ボスコウモリには捨て身タックルしか残されていなかった。


 当然、ロセリアはそれを逃すはずはない。


 「そんな攻撃だったら、アルティメットを使う必要は無さそうね」


 右手に握りしめている氷の剣の切先をボスコウモリに向ける。


 「キシャアアアァァァ!」


 そんなことはお構い無しと突っ込んでくるボスコウモリ。


 「────はあ!」


 ロセリアは地面を強く蹴りだし、瞬く間に距離が縮まる。迫るコウモリの鋭い牙が見えている。


 ロセリアは全く怯えることなく、氷の剣を振り抜き、凍てつく刃がボスコウモリを縦に真っ二つに切り裂いた。


 「ギシャアアアァァァ!?」


 ボスコウモリは雄叫びを上げながら、塵となり消滅した。


 「……ふう」


 周囲には既に、コウモリの影すら存在しない。ようやく一段落したと内心思ったロセリアは、一息つくことにした。


 「いやあ、やっぱりロセリアさんはすごいなあ。俺達なんか両手で数えるほどしか倒せてないよ」


 「そりゃロセリアさんだから当たり前だろ。あのユーマの次に強いんだぜ。俺達にとっちゃ高嶺の花のような存在だ」


 「そうだよね。平凡な俺達がロセリアさんと一緒のチームになれたのって運命だよね」


 「当たり前だろ! 俺なんかさっき、後はお願いしますとか言っちゃったけど、変に思われてねえかな!?」


 「何言ってるんですか。変に思われてるに決まっているでしょう」


 「はっ!? そういうお前こそ緊張して敬語になってたじゃねえか!」


 「俺は元々敬語だから良いんです!」


 「そういえばそうだったな!?」


 「……」


 男二人がこちらを見ながらひそひそと喋っているが、ロセリアには全て聞こえていた。


 「……高嶺の花、ね」


 ロセリアは、何かあればすぐにそう呼ばれてきた。そのせいか、気を許せる友人は今まで居たことが無い。


 チームを組んで共に戦ったとしても、きっと今回も、遠巻きに見られるのに落ち着くだろう。


 「って、そんなこと気にしてる場合じゃないわ。どれぐらいのポイントを稼げたかしら」


 首を左右に軽く振った後、端末をタップし、現在のポイントと順位を確認する。


 「2位の1300ポイント……まずまずといったところね。やっぱり、コウモリだけじゃ一気に稼ぐことは難しいわね」


 ため息を軽く吐いた後、他のチームのポイントと順位を確認する。


 「1位はユーマ・グレーシアチームの1850ポイント……さすがといったところかしら。こんな短時間でここまでのポイントを獲得するなんて……」


 負けていられない。ロセリアはそう決意する。


 そこで、端末から軽快な効果音が鳴った。


 「……あら? 順位が変動した……って、1500ポイント……!? 一体どうやって……ドラゴンでも倒したのかしら」


 先程まで2位だったロセリアチームを、一瞬で3位に落とした現2位のチーム。


 「……一体、どんなチームなのかしら」


 一気に1500ポイントも稼いだチーム。気になったロセリアは、2位のチームメンバーをおもむろに確認した。


 「……」


 確認したところ、ルナクラスの生徒ということが分かった。3人の内の二人は、顔も名前も知らない男女がそれぞれ1人ずつ。ロセリアはステラクラスの生徒なので、ルナクラスの生徒の事は知らなくても別におかしなことではなかった。


 ただ、そんなロセリアでも……いや、割りと皆が知っているであろう人物が、そのチームに所属していた。


 確か、名前は……


 「コママ・アルクレナ」


 ゼラフ・アルクレナの実の娘だ。

   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ