演奏の準備
トーナメントは決まったもののどうすれば良いんだろう。
僕の闘いは9戦目、時間が有り余ってる。
そういや、参加者限定案内表あるの忘れてたな。
え〜、11時に試合開始と。
待っている間は地下にある食堂で軽食を済ますもよし。
映画もよし。演奏もいいでしょう。
ほうほう、地下か......行き方、書いてねぇじゃん......
スタッフの人に聞くか......
ん? 案内表の1番下になんか書いてあるな。
『スタッフを呼びたい方は、指を鳴らしてください』
やってみるか。
俺は書かれてある通りに指を鳴らした。
「お呼びでしょうか。コンダクト様」
俺は声がした方向にゆっくり振り向いた。
そこには黒いタキシードを羽織った黒髪の細身の男がいた。
「速いですね......」
というか今、僕の名前を......
「お褒めに預かり光栄です。私は専属スタッフのトリルと申します。短い時間でございますが、どうぞよろしくお願い致します」
嘘だろ......? 僕に専属スタッフ!?
憧れたことはあるけど、まさか、それが実現するとは......!
「専属スタッフ......」
俺は幸福の余韻にしばし、浸っていた。
「はい、そうです。それで、失礼ながら聞かせてもらいますが、ご用件は?」
あ、忘れてた。
「地下へ行きたいんですけど、入口ってどこにありますかね?」
「成程、地下への入口ですね? コンダクト様、あなたはかなり幸運かと思われます。地下への入口はスタッフの能力によってその形を変えます。今回は存在してはいるのですが、認知することが出来ないタイプでして、それを出せるのは私しかいないのです。では、解放と行きましょうか」
トリルは純金で装飾された杖を取り出すと、素早く繊細でありつつも派手な音楽を奏でた。
すると、隠されていた地下への入口が開く。
その場所はコンダクトの丁度真正面だった。
「終わりました。今の音でスタッフ一同が気付いたと思いますので、他の参加者もこれで地下へ行けるでしょう。さっ、コンダクト様もお入りなさってください」
「凄いですね! 今のが能力ってやつですか!」
やっぱりスタッフさん達も能力持ってるのかなぁ。
ものすごく帰りたくなって来た。
「まぁ、そうですね。私の場合は主に素早く目立たせると言ったところでしょう。入口も音なので私が合図するのが手っ取り早いんですよ。とりあえず、入りましょうか」
トリルが先に入らせるような仕草をするので、僕は入口に入った。
その後からトリルが入ってくる。
入口の先には豪勢な部屋が用意されていた。
映画館もあれば、ゲームセンターだってある。
訓練場もあるけど行きたくは無いかな。
少ない自信が折れそう。
そして、めちゃくちゃ美味しそうな香りが辺りを漂う。