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異世界風聞録  作者: 焼魚圭
第一幕 リリとの出会い
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待ち続け

 一雨来るかも知れないわ、その言葉の意味を知ろうにも分かり得ない幹人。リリの言葉、リリの想い、どこまでも深い霧に包み確認されているような計り知れないものを感じていた。

 本心が分からない、普段の冗談のような言葉、泣いていたあの時、素直に喜んでいたあの顔、なにも知らない分からない。見通すことも聞き取ることも拾い上げることも、何も何も全て総て許されない乙女の想いの綿心。

――でも

 やるべきこと、否。

――やりたいことは

 幹人自身の本心だけ、ただそれだけは。

――分かってる

 リリは家の中で手のひらに収まる小さなふたつのリンゴ、ふたつの首飾りを握り締め、胸に当てて瞳を閉じていた。

 何を想い、何をしようとしているのか、全く分からない。けれどもどれだけ側にいても他人は他人、親密になったのちにも他人と呼べなくなった他の人。分かるはずもなかった。

 疑っていても始まらない。分からなくてもどうであれども幹人にできることなど決まり切っていた。

――信じるんだ、リリのことを

 やがてリリは立ち上がって幹人に歩み寄り、これから行うことを告げる。盗賊団を潰す。ようやく動き始めるふたり。リズは相変わらず幹人の頭の上に乗っかり長い耳を揺らすだけ。

 しかし、幹人の頭の上。そこから伝わる温もりの中に、ふたりを守る決意の鼓動を感じていた。



  ☆



 盗賊たちに支配された村の中、男の集団に紛れてひとりの少女はナイフを構えて森の方を睨み続けていた。

――殺す

 盗賊たちの間では幹人が魔法使いである、その噂が広まり充満していた。

――魔法使いだろうとなんだろうと関係ない

 それはあまりにも単純で純粋な殺意。

――あの男だけ幸せにした女もあの男自身も、絶対許さねえ

 いくつかの丸太を結んで組み立てられた燭台、油の入った器に浸けられ浸され燃やされ灯っている炎。その輝きは少女の殺意をメラメラゆらゆらと灯していた。



  ☆



 スコップで掘り返す。村の様々なところを掘って探してはそこに無いと知ってため息をつく。

「ダメだ、リリと戦う前に見つけなければ」

 探し物、目的。それは己の人生すらも一転させるある物質。盗賊には高価な宝石とだけ説明して無理やり攻め入ったものの、男の目的は別にあった。

――俺が生きてる内に、見つかってくれ

 リリの怒りを想像して、震える。ペンダントを落としてしまったのだと分かった時には灯火の明るみに姿を現した後だった。きっとすぐにでも母のかたきを討ちに来るであろう。


 だから、早く速く迅くはやく。


 掘って掘って掘って、全ての民家に入って探してもありはしなくて。

――どこにあるんだ

 真実かどうかもわからないうわさ話に踊らされていた。

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