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異世界風聞録  作者: 焼魚圭
第一幕 リリとの出会い
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戦いの時

 唸る魔獣は鉄のように冷たくてナイフのように鋭い目で侵入者を刺すように睨みつける。

 男がひとり、笑いながら魔獣へと近づいてゆく。

「なんだなんだ、そんな必死に睨みつけてきて可愛らしいじゃねえか。怖いんだろ、そりゃそうだよなあ、なにせ今から人間様に狩られるんだからよ」

「危ない」

 リリは慌てて不用心な若者を引っ張り寄せる。

 その瞬間、鋭い音と共に鈍い音が響く。

 始点の壁から終点の地、弧を描くように結ぶと経過地点には先ほどまで笑い声の発生源だった場にたどり着くのを見て取った。

「まったく、野蛮な挨拶だ」

 掴んでいた若者を後ろへと放り投げて魔獣のもとへと歩み寄る。

「あなたは客人に出血大サービスとでも言って痛みつける趣味をお持ちかな、鉄鉱ハリネズミ」

 その言葉は斬られた。互いに譲る気のないこの場所で、互いに戦いの構えを取っていた。ハリネズミのような魔獣のかぎ爪は鋭く大きくて硬い鉄。リリの肌はあまりにも柔らかですぐに斬れてしまいそうだった。

「先に来な、家主からの挨拶が礼儀ってものだろう」

 言葉を理解しているのかしていないのか、分かり得ないことだが魔獣は素早く詰めを振るう。リリは後ろに飛び退いて、幹人の隣りに並んでなにかをつかみ取る。

「あっ、リズ」

 リリはリズに一瞬だけ目をやってハリネズミの立つ方向へと放り投げた。リズは涙目で弧を描いて飛んで行き、恐ろしいモノの上を通り抜けて背後へとたどり着き、そこからの着地。幹人は心配しながら見守っていた。

 魔獣は振り向いてリズにかぎ爪を向ける。

 その瞬間、リリは手のひらを掲げ、炎の帯を出現させた。赤く美しく恐ろしい、そんな炎は蛇のようにうねりながら魔獣の背に嚙みついて鉄から忍び込んで身を焼き始めた。

 魔獣が苦しそうにもがき叫ぶ中、リズは魔獣に近付いて長い耳を振って大量の水を魔獣に向けて放った。熱されて急激に冷やされて、鉄は表皮と共に剥がれ落ちて身がむき出しとなる。

「幹人!」

 名を呼ばれ、即座に風を吹かせて弱りし魔獣の生命をこの世の外側へと飛ばして追い出したのだった。

 そこから3つの手が掲げられて交わされる勝利の祝福。

「やったねリリ姉」

「ふふ、幹人が頑張ったからね」

「きゅー!」

 それぞれに喜びの声を上げ、それから魔獣の身体の鉄とリリの魔法で削り取った鉱石をみんなで持って帰る。

 その様子を穴の外から見つめるひとりの少女はナイフを握る手に力を入れ、揺れる長さも持ち合わせていない短髪を掻き上げて魔女を鬼の形相で睨みつけ、どこかへと走り去って行ってしまった。

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