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9.

「ふははははは! こいつらは我が私兵団マスカレード! ワシの部下たちの中でも優れた実力者で構成された集団だ。いくら最強の女騎士でもこれだけいればかなうまい!」


屈強な男たちに周りを囲まれるリリィとジェシカだが、落ち着いて状況分析する。


「ジェシカ、行けそう?」


「問題ありませんよ。貴女の笑顔を守るためならば、この程度の苦境などたやすく切り抜けます」


あくまでも余裕を崩さないリリィとジェシカが気にくわないロカリスは、フンと鼻息を荒げる。


「ふん! おざきおって。行け! あの女どもをひっ捕らえよ!」


「「「「おおおおお!」」」」


ロカリスの指示でマスカレードたちが襲い掛かってくるが、リリィを守るためジェシカが恐れることもなく立ちはだかる。


「ジェシカ」


「はい。愚か者どもを地に伏せてやりましょう。我が剣術、とくとご覧あれ! はあああああ!!」


「「「「!?」」」」


剣を手に持ったジェシカは黒ずくめの男たちを素早い動きと完成された自己流の剣術であっという間に倒してしまった。その立ち振る舞いは、水の流れるような速さで美しいと思ってしまうほど見事なものだった。もっとも、それは守られる側のリリィだけの感想になる。


「素晴らしいわジェシカ」


「もったいなきお言葉です、お嬢様」


「そ、そんな馬鹿な……ワシの精鋭の部下たちがあっという間に……!」


ロカリス目を丸くして戦慄する。年若い娘に自慢の部下たちがあっという間に倒されてしまうとは思わなかったのだ。ジェシカの強さは有名だ。だからこそ対策もしていたというのに。


「メアナイト男爵、ついでに隠れてた暗殺者も仕留めておいたぞ」


「な、何!?」


「あら? いつの間に後ろに?」


確かにそうだった。ジェシカの対策に用意した暗殺者ホッパーが、リリィのすぐ後ろで倒れていた。リリィを人質に取るための切り札でもあったようだ。それも、ジェシカによって倒されたわけだ。


「そ、そんな、凄腕暗殺者のホッパーまで………」


「最初から気づいていたさ。だから真っ先に一撃を入れた」


「この数だぞ!? どうしてここまで対応されるんだ!?」


「我が剣術スピニング・トゥ・フォークは数の利を巧みな動きで切り崩し翻弄する。もっとも、そこまでしなくてもこの程度の者たちでは私のような騎士を止められることは無かったが、お嬢様のために迅速な対応が必要だった。だからこそ披露してやったのだ」


「な、なんだそれは……でたらめだ……」


部下たちを全て倒されたロカリスは、万策尽きて絶望して項垂れた。しかも、ジェシカの言うことが正しいなら、別に剣術を披露しなくても勝てたというのだ。それほどまでにジェシカは強いと自慢されたようなものだ。馬鹿にされた気分になったロカリスだったが、もはや抗うすべもなく観念せざるを得なかった。


「わ、ワシはどうなるんだ……?」


「男爵の罪は国王陛下が裁くことになるでしょう。もうすぐ隣国のウィンドウ王国から帰ってくる頃でしょうから。ただ、その際は次期王太子になるトライセラ殿下も裁判に参加するでしょうから、罪は厳しく裁かれることでしょうね」


「……」


ロカリスはもはや言葉すら発することも無くなった。能天気な国王夫妻や馬鹿なマグーマならともかく、しっかり者のトライセラなら適切な処断を下すのは言われなくても分かるからだ。





一週間後、リリィとジェシカは王都の喫茶店『ウィンドスケール』でくつろいでいた。以前の喫茶店では騒がしくしてしまったため、しばらくはこちらで楽しむことにしたのだ。たとえ、二人の責任が薄くてもだ。


「ここの紅茶もいいわね」


「同感です、お嬢様」


優雅に紅茶を楽しむリリィとジェシカ。二人の会話は二日前の裁判が話題になる。


「マグーマ王子は……いえ、今はティレックス伯爵ですか。王太子から侯爵。侯爵から伯爵と、随分降格しましたね」


「ええ、所詮名ばかりの地位だから中身はたいして降格と言うほどでもないんだけどね。でも一人でじゃなくて夫婦で切り盛りしていくことに変わりはないから寂しくなくてよかったんじゃない?」


捕らえられたマグーマは全てを諦めてティレックス侯爵になることを渋々受け入れたが、詳しい調査で知らず知らずにロカリス・メアナイト男爵の犯罪の手助けをしてしまっていたことが判明した。その処分を受ける形で侯爵から更に伯爵に降格してしまったのだ。そして、挙句にはそのメアナイト男爵の娘アノマと結婚することにもなった。


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