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2.

婚約破棄したパーティーから翌日。


「……ということが昨日の話なのよね。面白すぎて大変だったわジェシカ。まあ、貴女はパーティー会場の後ろの方で待機してくれていたんだけどね」


「お嬢様。それはまことに大変でしたね。心中お察しします。今度からはあの『元』王太子は切り捨てましょう」


「ありがとうジェシカ。でも、切り捨てなくてもいいからね」


「流石はお嬢様。寛大でおらっしゃる」


貴族街の喫茶店『スナックとコーヒー』で優雅にコーヒーを飲むのは公爵令嬢リリィ・プラチナム。肩まで伸びる銀髪に白銀の瞳の美女だ。彼女は昨日、婚約者の王太子マグーマ・ツインローズに婚約破棄を受けたが言い返して、逆に婚約破棄をしてやったのだ。見かけによらず図太い性格をしている。


そんなリリィの話を真剣に聞いているのは公爵家に支える騎士ジェシカ。ポニーテールにした黒髪に緑の瞳の女性で、リリィに対して高い(狂信的な)忠誠を誓っている。


「しかし、あのクズ王子風情がお嬢様を婚約破棄しようなど愚かしいことでしたね。自分自身が浮気をしている分際で何を言っているのでしょうか」


「そうね。アノマ・メアナイト男爵令嬢にぞっこんになっていることは目に見えて分かっていたわ。彼女に夢中になっていたからこそ周りが見えない。つまり、こちらが不貞の証拠を掴んでいると分かっていなかった。とんでもない王太子ね」


「私がこっそりパーティー会場に入ったときに、ダメ王子が婚約破棄を無かったことにしようとした時は思わず笑いがこみ上げましたが、今度はクズ王子が婚約破棄を突き付けられた時の顔ときたら………傑作でしたね」


ジェシカはクスクスと笑う。その顔はそこらの令嬢と変わらないものだ。これが王国最強の女騎士だとは、騎士の格好をしていなければ到底思えない。


「ええ。結果としては晴れてメアナイト男爵令嬢と結ばれるんですもの。喜んでほしいものね。王太子の身分は失って名ばかりの侯爵にまで降格という制限付きだけどね」


「ティレックス侯爵になられたのですね。あの王太子はどこまで生きられるか分かったものではありませんね」


「もう王太子じゃないわ。愛した女性と結ばれる形でマグーマ・ティレックス侯爵になったのよ」


ティレックス侯爵位。侯爵の身分だが、実際は全く旨味のない土地を押し付けられただけなのだ。土地の広さは男爵並み、しかも乾燥地帯が多く、領民も少ない。ハッキリ言って誰も欲しがらない地位だ。そんな地を納めていかなければならないということは、侯爵とは名ばかりの大きな罰のようなものだ。さぞ笑い者として多くの貴族の話のネタにされることだろう。


「メアナイト男爵令嬢は残念そうでしたが、まさか自分が王太子の婚約者に成り代われるなどと本気で思っていたのでしょうかね? あんな馬鹿王子に国王が務まるはずがないと分からないのでしょうか?」


「だとしたら、性格が悪いうえに頭が悪すぎるわね。どんな育ち方したのかしら?」


実際は残念どころか膝から崩れ落ちるほど絶望していた。ティレックス侯爵の土地がどれだけ悪いか知っていたようだ。


「王太子妃の立場を欲しがるなんて、多くの男を手玉に取れた手腕はあったみたいだけど、高望みしすぎたわね」


「あのような女が貴族にいるだけで嘆かわしいですね」


「ええ。王太子を第二王子に選ばなかった国王陛下にももの申したいと私が思うくらいだからね」


二人はそういうが全く嘆いたそぶりはなかった。むしろ笑い話にしている感じだった。

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