表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/124

3話 追放者たちは自信がない

「ほ、本当に見せなきゃダメなんですか……?」


「この期に及んでまだそんなこと言ってんのか。俺も曝け出すんだから、お互い様だろう?」


「でも……」


「いつかは誰かに見せるんだ。今のうちに少しでも慣れておいた方がいいって」


「私、あまり経験ないので……その……恥ずかしいですっ」


「俺も追放されてからは初めてだから安心しろ。……あ、やばい、なんか緊張してきた」


「あは、ローグさんもあまり慣れていないんですね」


「バババ、バカ野郎ッ。現役の頃は経験ありまくりだっての!笑ってんじゃないよ!」


「すいませんっ。でも私のを見ても、ガッカリしないでくださいね」


「アイリスこそ。じゃあ、せーので見せ合うぞ」


「はいっ!」


「いくぞ?」



「「せーのっ!」」



 バン!と荷台の床に二枚の紙が叩きつけられた。

 それは互いのステータスが記載された紙だ。

 隊商(キャラバン)に同行して南の街スピカへと向かう旅は二日目へと突入し、日が暮れ始めた夕方。

 同じ追放された者同士ということで意気投合したローグとアイリスは、旅の暇つぶしに互いのステータスを見せ合うことにした。


「おおッ!」


 ローグはアイリスのステータスを見て、思わず感嘆の声を漏らす。



**********

 アイリス=グッドホープ

《種族》

 人間

《魔法》

怪物契約(コントラクト)

怪物召喚(アドベント)

怪物退去(リーブ)

【 】

才能(ギフト)

【ドラゴンサモナー】

【裁縫師】

**********




「【ドラゴンサモナー】⁉《希少才能(レアギフト)》じゃねーか‼……あ、でも【テイマー】の《才能(ギフト)》がないんじゃ宝の持ち腐れだな」


 サモナー系の《才能(ギフト)》によって発現する魔法は、【異界迷宮(ダンジョン)】から別の【異界迷宮(ダンジョン)】へと契約したモンスターを強制転移させることだけだ。契約したモンスターを意のままに操るなら、サモナー系の《才能(ギフト)》の他に【テイマー】の《才能(ギフト)》が必要になる。


「そうなんです……。期待されて【小心者の子馬(ミニチュア・ホース)】に入団したは良かったものの、結局期待外れだとみんなに馬鹿にされて荷物持ちに……」


「あー……、重い荷物に慣れてるってそういうことね」

(こいつも結構苦労してるなぁ)


 項垂れるアイリスにローグは同情した。


「でも俺のステータスも酷いものだろ?」



**********

 ローグ=ウォースパイト

《種族》

 半人半エルフ

《魔法》

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

【 】

才能(ギフト)

【魔術師】

【剣士】

【調剤師】

【教師】

呪われ人(カースド)


「魔法スロットが八つもある‼何で⁉それに生産系の《才能(ギフト)》だって私の【裁縫師】よりよっぽど役に立つものばかりじゃないですか!支援者ギルドならすぐ入団できますよこれ。嫌味ですか!」


「ちげえよバカ!よく見ろ!魔法が一つもないってことに!」


 ふて腐れ気味に言うアイリスに、ローグはすかさず返答した。


「あれ⁉本当だ!そんなことあるんですか⁉」


「《才能(ギフト)》に【呪われ人(カースド)】ってのがあるだろう?そいつが、イザナミノミコトっていう特級モンスターを倒したときに受けた呪いでな。八つ発現した魔法も全部なくなっちまった」


「呪い……。聞いたことがあります。もし、呪いを受けてしまうとその人は本来の魔法を失ってしまい、新たな魔法が発現するとか。でもその場合、多くの人は魔法を発現できずに冒険者を引退してしまうんですよね」


「ああ。魔法が発現する方法は、『心の成長』がきっかけだってことは知ってるよな?本来、十代の多感な時期に様々な経験を通して心を成長させて、魔法スロットの分だけ魔法を発現させていく。もし二十代を過ぎてから呪いを受けちまったら、よっぽどのことがない限り再び魔法を発現させることができない。

 俺はまだ十八だから可能性はあるはずなんだ。もう一度【異界迷宮(ダンジョン)】に入って、なんか大きな経験をすればまた魔法を発現できる!……多分……!きっと……」


 立ち上がって自分に言い聞かせるローグだったが、やはり先の見えない漠然とした不安は隠し切れない。

 最終的に二人揃ってテンションが下がってしまったローグとアイリスは、黙々とステータスの紙を丸めて懐に戻すのだった。



本作をお読みいただき、ありがとうございました。


少しでもおもしろいと思ってくださった方は、ブックマークやページ下側の「☆☆☆☆☆」をタップして頂けると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ