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44話 イザクVS二体の怪物

予告していたサブタイトルを変更しました。

 凄まじい衝撃を放ちながら、ディオニュソスとサラマンドラが激突する。

 二体から少し離れたところで、ローグとキヨメはその死闘を見つめていた。


「しかし、とんでもない戦いだな。あれじゃ、簡単に近づけねえ」


「拙者に妙案が」


「何?」


「拙者がローグ殿を二体の間に投げ飛ばすというのはどうでしょう」


「聞かなきゃよかった」


「むう、ローグ殿ほどの実力ならば平気かと思ったのですが……」


「……え」


 その一言に、ローグはつい満更でもないような顔をしてしまう。


「フ、フフン。まあ、俺ほどの実力があればできないこともないかな」


「では早速!」


 グッ、とキヨメがローグの袖を力強く掴む。


「あ、ゴメン、調子に乗っただけなの。本当にされたらタダじゃ済まないの。だからやめよう?ね!」


「そうご謙遜なさらずに」


「してねー!」


 するとそこにやってきたイザクが呆れた顔で声を掛けた。


「何遊んでんだお前ら?」


 引っ張るキヨメとそれに抵抗するローグ。傍から見ればじゃれ合っているように見えても仕方がない。


「ハッハッハ。神種(ゴッド)竜種(ドラゴン)を前にしてふざけてられるとは、なかなかに肝の据わったガキ共だ」


「オッサン!何で出てきた?片がつくまで隠れてろって」


「いいや。俺の手で片をつけに来たのさ」


「は?」


 不敵に言うイザクにローグは顔を顰める。


「――“天墜(てんつい)新星(しんせい)”、【引き寄せる星(アトラクター)】」


 イザクから放たれる空気が一変した。

 陽気で穏やかなものから、重く研ぎ澄まされたものへと。

 それは、紛れもなくトップクラスの冒険者特有のプレッシャー。


「くははっ。素晴らしい……!拙者と手合わせもがッ⁉」


 暴れ出しそうなキヨメを抑えつつ、ローグは唖然とした顔で呟いた。


「聞いたこともない魔法……。固有魔法か!」


「お前たちも【呪われ人(カースド)】の力を得たんだろう?なら、目ん玉引ん剝いてよく見ておけ」


 そう言って、イザクはディオニュソスとサラマンドラに向けて右手を突き出した。


 直後、ドシャァッ!と二体の怪物が勢いよくその場に倒れ込んだ。

 まるで上から見えない何かに圧し潰されるかのように。


「うおっ!いきなり何だ⁉」


『グルゥアアアアアッ⁉』


『ZIGAAAAAAAAッ⁉』


 二体の怪物は必死にもがくものの、地に這いつくばったまま起き上がることができないでいた。


「【引き寄せる星(アトラクター)】は、一定箇所にかかる引力を増幅させる魔法。今、奴らの周囲の重力は通常の約千倍だ。

 これが、神種(ゴッド)『アストライア』から呪法によって得た固有魔法の一つ」


神種(ゴッド)……⁉」


「坊主。呪具や妖刀がないのを見るに、お前も呪法を受けたんだろう?【呪われ人(カースド)】を得る手段の中では、呪法が最も珍しく、最も魔法発現の難易度が高いとされている。だがその反面、発現する魔法は他の固有魔法の中でも群を抜いて強力だ」


 そう言って、イザクは次なる魔法を発動するために【引き寄せる星(アトラクター)】を解除した。

 ローグは、目の前の男が何か途轍もない魔法を発動しようとしていると直感し、慌てて声を上げた。


「待った!あの竜種(ドラゴン)は仲間が呼び出した奴なんだ!殺さないでやってくれ!」


「……ふむ、そういうことなら、竜種(ドラゴン)には退場してもらおう。

 ――“乱廻(らんかい)新星(しんせい)”、【反転する星(リパルサー)】」


 イザクが魔法を切り替えている間に、重力の拘束から解き放たれたサラマンドラが起き上がる。しかし、その巨体は突然、後方に吹っ飛んだ。


『グルゥアアオオオッ⁉』


 自ら飛んだわけでも、何かに殴り飛ばされたわけでもない。

 ローグはその魔法の正体をすぐさま見破った。


「重力の向きを、変えたのか⁉」


「ご明答。【反転する星(リパルサー)】は対象にかかる重力の向きをあらゆる方向に変化させる。奴は地面と水平方向に()()()のさ」


 いきなりあらぬ方向より力を受けたサラマンドラは、その雄々しき翼を使う余裕すらなく、このエリアの外壁まで()()()()()()。未だ泥酔状態にあるその竜種(ドラゴン)は、再び外敵を見失い、その場で無心に暴れ始める。これでしばらくは、ローグたちのいる戦場まで戻ってくることはないだろう。

 そうなると残る怪物は一体。


『ZIGAAAAAAAAッ‼』


 ディオニュソスが咆哮し、その髑髏の仮面の奥で揺らめく双眸が爛爛と燃え盛る。

 その殺意は、イザク一人に向けられていた。


「やべえぞ、オッサン!」


 ローグが声を上げるとほぼ同時、ディオニュソスが右手の杖を振るった。ローグたちの周囲の植物がざわざわと蠢き始める。

 イザクは眉一つ動かさず、


「――“歪曲(わいきょく)新星(しんせい)”、『捻じ曲がる星(ツイスター)』」


 右手を突き出し、内側に捻る。

 それに連動するように、ディオニュソスの右腕が杖ごと、螺旋状に捻じ曲がった。


『ZIGYAAAAAAッ⁉』


 杖が破壊されたことで、植物の動きが止まる。


「これであの防御膜も使えないな」


「固有魔法を三つも……⁉凄い……」


 驚愕の声を上げたのはキヨメ。彼女もまたローグと同じく発現した固有魔法の数は二つだけだった。

 イザクはローグとキヨメを一瞥し、


「俺は六つある魔法スロットすべてに固有魔法を発現できた。――そして今から見せるのが俺の最大魔法だ!」


 そして獰猛な視線を苦しみもがく神種(ゴッド)へとぶつける。




**********

『45話 最大魔法』に続く

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